出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2 作:SS_TAKERU
お楽しみ頂ければ、幸いです。
オールマイトside
「ここは窮屈だよ。オールマイト」
「例えば…背中が痒くなり、背もたれで身体を擦る。すると途端にそこかしこの銃口がこちらを向く」
「バイタルサインに加え、脳波まで常にチェックされているんだ。“個性”を発動しようと考えた時点で、既に命を握られている」
「地下深くに収監され、幾層ものセキュリティに覆われ…徹底的にイレギュラーを排除する」
「世間はここをギリシャ神話に
「そう、タルタロス。
「さすがの僕も、そんな場所での反逆は一苦労するだろう」
分厚い特殊強化ガラス越しに、言葉を紡ぎ続けるオール・フォー・ワン。実に楽し気な奴に対し―
「一苦労? 馬鹿を言うな。お前は
私は必要最低限の言葉を返す。奴を前にしているのだ。コンマ1秒も油断は出来ない。
「…出られないか。フフッ、
「グラントリノはどうした? 1人で来たという事は、独断かな?」
「“
「よく喋るな」
「察してくれよ! 久々に会話が成り立つんだぜ?」
「お前の心中を察するなど、御免被る……本題だ。
「知らないね。
「………オール・フォー・ワン。貴様は何がしたい。何がしたかった」
「人の理を超え、その身を保ち、生き永らえながら…その全てを、搾取、支配、人を弄ぶことに費やして……何を為そうとした」
「生産性の無い話題だね。聞いたとしても理解も納得も出来やしないくせに…
「同じさ。
「理想を抱き、体現出来る力を持っていた。永遠に理想の中を生きられるなら、その為の努力は惜しまない」
「ならば、何故後継など……」
「君がそれを聞くとは!」
私が問うた内容が、余程予想外だったのか…オール・フォー・ワンは、突然笑い出し―
「君が全て奪ったからだろう!?」
「僕の体を見ろ。この管で僕はようやく生命を維持している」
「無限に思えた僕の理想は、オールマイト。君の登場によって有限となったんだ」
「終わりがある事を知れば、
「皆がやっている事を僕もやろうとしているだけさ」
「………」
奴の主張に反論しようとしたその時―
『オールマイト。あと3分ほどで…』
この会話を監視している看守が、
「待ってくれ! そりゃあ無いだろう。話をしたいんだよ、もっと…そうだな」
「世間は、君の引退にかなり動揺したと思うんだが…様子はどうだ?」
『外の情報は遮断しています。軽率な発言はお控え願います…』
私が拒絶するよりも早く、看守の声が響き渡る。
「……だそうだ」
「残念だな………」
奴は情報が得られない事に、心底残念そうな声を上げながら…
「きっと…こうかなぁ…」
自分の
「今頃メディアは、君がいなくなった事への不安、そして新たなナンバー
「一方で、不安定になりつつある空気を察知して、ヒーローを支持しない…所謂日陰者が行動を起こし始める」
「彼らは、自分達も社会を動かせる。などと淡い幻想を抱き、組織立って動き始めている筈だ」
「弔達は…暫く潜伏を続けるだろう。あちこちで生まれるであろう組織。それらを見極める為にね。どこも勢力を拡大したいだろうから、
「僕の描いたシナリオが正しく機能していれば、大体そんな流れになっているんじゃないかな」
「………」
オール・フォー・ワンの口から語られる推測を、私は表情を変えずに黙って聞き続ける。迂闊に口を開けば、その推測が当たっている事を悟られてしまう…。
「仮にそうなっているとして…原因は全て、
「ッ!?」
「おや? 微かに動揺したね。そうさ、今後君は、人を救う事叶わず、自身が原因で増加する
「無力さに打ち
「どんな気分なんだい?」
「クッ…」
奴の言葉に冷静さを欠き、思わず立ち上がりかけるが―
『オールマイト、離れてください』
看守の声に落ち着きを取り戻す。危ないところだった…。
「心を言い当てられると、人ってのはよく怒る!」
「残念だなぁ…ここじゃ、僕を殴れない」
私から冷静さを奪おうと、更に私を煽るオール・フォー・ワン。だが、その手は食わない。私は着席してから深呼吸を繰り返し、気持ちを落ち着かせると―
「貴様だけが…
反撃を開始した。
「貴様の考えはよくわかっている…お師匠の、志村菜奈の血縁である死柄木に、私……あるいは、私と
「…で?」
-駄目だ。見つけてどうする?。-
-お前はもう奴を
-素性がどうであれ、奴は犯罪者だ-
グラントリノに言われた言葉を、心の中で繰り返しながら、私は―
「私は死なないぞ。死柄木に私は、少年達は殺させない」
「私も少年達も殺されないぞ! 貴様の思い描く未来にはならない! 絶対にだ!」
そう宣言した。
「フッ…『ケジメをつけるだけ』って、それを言いに来たのかい?」
『オールマイト、時間です。退出を』
「貴様の未来は…私が砕く…! 何度でもな」
「貴様こそ…ここで指を咥え…余生を過ごせ」
奴の呆れたような声にそう返し、私は立ち上がると―
「君が砕く? “
「私の“
「………なに?」
「お師匠からの、歴代継承者の方々からの
最後にそう言い残して、退室した。
「フフフ…ハハハハハッ! そうか! これは些か
「最初から結果のわかっているゲームほど、
分厚い扉が完全に閉まるまで、奴の笑い声は響き続け…その間、私は奴を睨み続けていた。
雷鳥side
「POWERRRR!!」
床に沈んでは、突然出現するを繰り返し、隙を見て俺を攻撃してくる通形先輩。
俺はその攻撃を防御、もしくは捌き―
「はぁっ!」
反撃を放つが、それは通形先輩を
「あぁっ! またすり抜けた! 何なんだよ、あの“個性”!」
「攻撃はすり抜けるし、ワープするし、複合系の“個性”か!?」
周囲の様子を窺うと、峰田や瀬呂の焦ったような声や―
「吸阪も攻撃を上手く凌いでいるが…通形先輩には、そもそも攻撃がすり抜けて当たらない…」
「今のままでは、吸阪の方がジリ貧…か?」
轟と常闇の勝負を分析する声が聞こえてくる。ふむ、そろそろ
そう思った次の瞬間、通形先輩が地面に沈んだ。俺は感覚を研ぎ澄まし―
「そこっ!」
通形先輩の出現する位置を予測して、蹴りを放つ!
通形side
俺が地面から飛び出した瞬間を狙い、放たれた吸阪君の蹴り。反応じゃない…俺がここに出てくるのを予測したのか!?
「だが甘い!」
俺と対峙した相手は、殆ど全員がそうやってカウンターを画策してきた。ならば当然、カウンター対策はしているよね!
俺は吸阪君の蹴りを透過しつつ、腕を伸ばして
目潰しを受けたと錯覚し、怯んだところを仕留めれば、それで終わりさ!
「ッ!?」
だけど、その目潰しは
それを見た途端、俺は自分のミスを悟る。吸阪君はわざとカウンターを放ち、俺に反撃させたんだ!
そして今の俺は、吸阪君が怯んでいる事を前提に動いていたから、“個性”を解除してしまっている。拙い、早く“個性”を―
「かはっ…」
発動しないと…
雷鳥side
「手応えあり」
そんな事を言いながら、距離を取ると同時に、たたらを踏んで座り込む通形先輩。
「通形君、ダウン! カウントを取ります! 1! 2! 3!」
「……っと、まだやれます!」
カウント6で立ったか。予想よりも打たれ強いな。
「いやぁ、クリーンヒットを食らったのは久しぶりだよ。やるねぇ! 吸阪君!」
「そりゃどうも。まぁ、先輩の“個性”は
「え?」
俺の言葉に、意味が解らないと言いたげな顔をする通形先輩。それなら説明してあげましょう。
「3日前、俺と出久の前に現れましたよね。ご丁寧に壁から顔出したり、地面から顔出したり…あの後、出久が“個性”の
「……あぁ!」
どうやら、わかったようだな。
「分析は、出久の
「そして、残りの2割はこれまでの戦いで調べさせてもらいました。あのワープの原理も、仮説レベルなら語れますよ?」
「ハハッ、オールマイトの弟子2人に興味があって近づいてみたけど…失敗だったかな」
「
自虐的な笑みを浮かべる通形先輩をバッサリ切り捨て、俺は一気に間合いを詰める。
「せいっ!」
顔面狙いで右ストレートを放てば、通形先輩はそれを透過して無効化。そのままカウンターを放とうとするが―
「げほっ…」
残念。俺の左ボディが
出久side
「吸阪の攻撃が当たり始めた!」
「いいぞ! 吸阪!」
切島君や砂藤君の声が響く中―
「緑谷」
轟君が声をかけてきた。
「吸阪は
その言葉に僕は小さく頷く。雷鳥兄ちゃんが、生体電流の読み取りによる予知を使っている事に、もう気が付くなんて、流石は轟君だ。
「俺もアレには苦しめられた…先輩も混乱しているかもな」
「そうだね。通形先輩の“個性”は、凄くテクニカルな物。ちょっとした動作にも、幾つかの手順を踏む必要がある」
「だから、様々な動作を状況に応じて的確に選択し、機械のような正確さで…それこそ反射レベルで実行出来るよう、相当な鍛錬を積んでいる筈」
「だけど、機械のように正確だからこそ、雷鳥兄ちゃんの予知の前では無力になる」
「…攻撃を無力化する為に“個性”を発動するタイミングも、攻撃する為に“個性”を解除するタイミングも、全てが知られている訳だからな…本当に恐ろしい技だ」
轟君が呟く間も、雷鳥兄ちゃんは何度も通形先輩に
「げぼっ…」
遂に雷鳥兄ちゃんの左拳が、通形先輩のボディ…肝臓の辺りに炸裂した。
雷鳥side
「げぼっ…」
左ボディ…
そんな状態じゃ“個性”の発動も難しいだろうが、
「げ、あ…」
陸に打ち上げられた魚の様に、口をパクパクと動かし、必死に酸素を求める通形先輩。だが、無駄だ。
鳩尾を打ち抜いた事で、横隔膜の動きが一時的に止まり、呼吸が出来なくなっているからな。
さぁ、これでフィナーレだ。
「せいっ!」
最初にダウンを奪った時の様に、俺は通形先輩の顎を打ち抜く事で、その意識を刈り取り―
「そこまで! この勝負、吸阪君の勝利!」
模擬戦に勝利するのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。