出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。
お楽しみ頂ければ、幸いです。


第15話:2つの戦い

オールマイトside

 

「ここは窮屈だよ。オールマイト」

「例えば…背中が痒くなり、背もたれで身体を擦る。すると途端にそこかしこの銃口がこちらを向く」

「バイタルサインに加え、脳波まで常にチェックされているんだ。“個性”を発動しようと考えた時点で、既に命を握られている」

 

「地下深くに収監され、幾層ものセキュリティに覆われ…徹底的にイレギュラーを排除する」

「世間はここをギリシャ神話に(なぞら)え…ここを『タルタロス』と呼ぶ」

「そう、タルタロス。()()を表す神の名にして奈落そのもの…ハーデスが管理する冥界の底よりも更に奥深く…神々への反逆者が送り込まれる地だ」

「さすがの僕も、そんな場所での反逆は一苦労するだろう」

 

 分厚い特殊強化ガラス越しに、言葉を紡ぎ続けるオール・フォー・ワン。実に楽し気な奴に対し―

 

「一苦労? 馬鹿を言うな。お前は()()()()()()()()

 

 私は必要最低限の言葉を返す。奴を前にしているのだ。コンマ1秒も油断は出来ない。

 

「…出られないか。フフッ、()()そういう事にしておこう。それで? 君は何を求めてる?」

「グラントリノはどうした? 1人で来たという事は、独断かな?」

「“個性(ちから)”を失ったというのに、その未練がましい戦闘服(コスチューム)は何だ? 君、まさかとは思うが、まだヒーローをやってる訳じゃないだろう?」

「よく喋るな」 

「察してくれよ! 久々に会話が成り立つんだぜ?」

「お前の心中を察するなど、御免被る……本題だ。()()()()()()()()()()()()?」

「知らないね。()()と違い、彼はもう僕の手を離れている」

 

 死柄木の居場所(私の問い)を知らないと答えるオール・フォー・ワン…嘘をついているとは思えん。本当に知らないのか…。

 

「………オール・フォー・ワン。貴様は何がしたい。何がしたかった」

「人の理を超え、その身を保ち、生き永らえながら…その全てを、搾取、支配、人を弄ぶことに費やして……何を為そうとした」

「生産性の無い話題だね。聞いたとしても理解も納得も出来やしないくせに…()()()()()()()()()ってのは、必ずいるんだから」

「同じさ。()()()()だよ。君がヒーロー(正義)に憧れたように、僕は魔王()に憧れた。シンプルだろ?」

「理想を抱き、体現出来る力を持っていた。永遠に理想の中を生きられるなら、その為の努力は惜しまない」

「ならば、何故後継など……」

「君がそれを聞くとは!」

 

 私が問うた内容が、余程予想外だったのか…オール・フォー・ワンは、突然笑い出し―

 

「君が全て奪ったからだろう!?」

 

 一頻り(ひとしきり)笑ってから、答え始めた。

 

「僕の体を見ろ。この管で僕はようやく生命を維持している」

「無限に思えた僕の理想は、オールマイト。君の登場によって有限となったんだ」

「終わりがある事を知れば、()()()()。何だってそうさ。そこかしこに建つビルや家。何気なく口にする食品。全て人から人へ託され、発展してきた」

「皆がやっている事を僕もやろうとしているだけさ」

「………」

 

 奴の主張に反論しようとしたその時―

 

『オールマイト。あと3分ほどで…』

 

 この会話を監視している看守が、時間制限(タイムリミット)を告げてきた。

 

「待ってくれ! そりゃあ無いだろう。話をしたいんだよ、もっと…そうだな」

「世間は、君の引退にかなり動揺したと思うんだが…様子はどうだ?」

 

 時間制限(タイムリミット)を知り、外の情報を得ようとするオール・フォー・ワンだったが―

 

『外の情報は遮断しています。軽率な発言はお控え願います…』

 

 私が拒絶するよりも早く、看守の声が響き渡る。

 

「……だそうだ」

「残念だな………」

 

 奴は情報が得られない事に、心底残念そうな声を上げながら…

 

「きっと…こうかなぁ…」

 

 自分の()()を語り始めた。

 

「今頃メディアは、君がいなくなった事への不安、そして新たなナンバー(ワン)、エンデヴァーへの懸念が重なり、ヒーロー社会全体の団結を訴えている」

「一方で、不安定になりつつある空気を察知して、ヒーローを支持しない…所謂日陰者が行動を起こし始める」

「彼らは、自分達も社会を動かせる。などと淡い幻想を抱き、組織立って動き始めている筈だ」

「弔達は…暫く潜伏を続けるだろう。あちこちで生まれるであろう組織。それらを見極める為にね。どこも勢力を拡大したいだろうから、(ヴィラン)同士での争いも勃発するだろう」

「僕の描いたシナリオが正しく機能していれば、大体そんな流れになっているんじゃないかな」

「………」

 

 オール・フォー・ワンの口から語られる推測を、私は表情を変えずに黙って聞き続ける。迂闊に口を開けば、その推測が当たっている事を悟られてしまう…。

 

「仮にそうなっているとして…原因は全て、()()()()()姿()()()退()な訳だ」

「ッ!?」

「おや? 微かに動揺したね。そうさ、今後君は、人を救う事叶わず、自身が原因で増加する(ヴィラン)どもを、指を咥えて眺めるしか出来ず…」

「無力さに打ち(ひし)がれながら、余生を過ごすと思うんだが…教えてくれないか?」

「どんな気分なんだい?」

「クッ…」

 

 奴の言葉に冷静さを欠き、思わず立ち上がりかけるが―

 

『オールマイト、離れてください』

 

 看守の声に落ち着きを取り戻す。危ないところだった…。

 

「心を言い当てられると、人ってのはよく怒る!」

「残念だなぁ…ここじゃ、僕を殴れない」

 

 私から冷静さを奪おうと、更に私を煽るオール・フォー・ワン。だが、その手は食わない。私は着席してから深呼吸を繰り返し、気持ちを落ち着かせると―

 

「貴様だけが…()()()()()()()()()()()()()()

 

 反撃を開始した。

 

「貴様の考えはよくわかっている…お師匠の、志村菜奈の血縁である死柄木に、私……あるいは、私と()()()を殺させる。それが筋書きだな」

「…で?」

 

 -駄目だ。見つけてどうする?。-

 -お前はもう奴を(ヴィラン)として見れてない。必ず迷う-

 -素性がどうであれ、奴は犯罪者だ-

 

 グラントリノに言われた言葉を、心の中で繰り返しながら、私は―

 

「私は死なないぞ。死柄木に私は、少年達は殺させない」

「私も少年達も殺されないぞ! 貴様の思い描く未来にはならない! 絶対にだ!」

 

 そう宣言した。

 

「フッ…『ケジメをつけるだけ』って、それを言いに来たのかい?」

『オールマイト、時間です。退出を』

「貴様の未来は…私が砕く…! 何度でもな」

「貴様こそ…ここで指を咥え…余生を過ごせ」

 

 奴の呆れたような声にそう返し、私は立ち上がると―

 

「君が砕く? “個性(ちから)”を失った君に何が出来ると―」

「私の“個性(ちから)”は失われてはいない」

「………なに?」

「お師匠からの、歴代継承者の方々からの贈り物(ギフト)だ。『ワン・フォー・オール』を舐めるなよ」

 

 最後にそう言い残して、退室した。

 

「フフフ…ハハハハハッ! そうか! これは些か()()()だ! いや、こうではなくてはいけないよ!」

「最初から結果のわかっているゲームほど、()()()()()()()()()()! 精々足搔いてみたまえ! オールマイト!!」

 

 分厚い扉が完全に閉まるまで、奴の笑い声は響き続け…その間、私は奴を睨み続けていた。

 

 

雷鳥side

 

「POWERRRR!!」

 

 床に沈んでは、突然出現するを繰り返し、隙を見て俺を攻撃してくる通形先輩。

 俺はその攻撃を防御、もしくは捌き―

 

「はぁっ!」

 

 反撃を放つが、それは通形先輩を()()()()()。試合開始からそろそろ3分経つが、この繰り返しだ。

 

「あぁっ! またすり抜けた! 何なんだよ、あの“個性”!」

「攻撃はすり抜けるし、ワープするし、複合系の“個性”か!?」

 

 周囲の様子を窺うと、峰田や瀬呂の焦ったような声や―

 

「吸阪も攻撃を上手く凌いでいるが…通形先輩には、そもそも攻撃がすり抜けて当たらない…」

「今のままでは、吸阪の方がジリ貧…か?」

 

 轟と常闇の勝負を分析する声が聞こえてくる。ふむ、そろそろ()()()()()

 そう思った次の瞬間、通形先輩が地面に沈んだ。俺は感覚を研ぎ澄まし―

 

「そこっ!」

 

 通形先輩の出現する位置を予測して、蹴りを放つ!

 

 

通形side

 

 俺が地面から飛び出した瞬間を狙い、放たれた吸阪君の蹴り。反応じゃない…俺がここに出てくるのを予測したのか!?

 

「だが甘い!」

 

 俺と対峙した相手は、殆ど全員がそうやってカウンターを画策してきた。ならば当然、カウンター対策はしているよね!

 俺は吸阪君の蹴りを透過しつつ、腕を伸ばして()()()を仕掛けた。透過したままだから、そもそも当たらない訳だけど、こうすると勝手に錯覚してくれる!

 目潰しを受けたと錯覚し、怯んだところを仕留めれば、それで終わりさ!

 

「ッ!?」

 

 だけど、その目潰しは()()()()()()()。吸阪君が頭を動かして、目潰しを避けたからだ。

 それを見た途端、俺は自分のミスを悟る。吸阪君はわざとカウンターを放ち、俺に反撃させたんだ!

 そして今の俺は、吸阪君が怯んでいる事を前提に動いていたから、“個性”を解除してしまっている。拙い、早く“個性”を―

 

「かはっ…」

 

 発動しないと…

 

 

雷鳥side

 

「手応えあり」

 

 そんな事を言いながら、距離を取ると同時に、たたらを踏んで座り込む通形先輩。()()()顎を打ち抜いてやったから、こんなもんだな。

 

「通形君、ダウン! カウントを取ります! 1! 2! 3!」

「……っと、まだやれます!」

 

 カウント6で立ったか。予想よりも打たれ強いな。

 

「いやぁ、クリーンヒットを食らったのは久しぶりだよ。やるねぇ! 吸阪君!」

「そりゃどうも。まぁ、先輩の“個性”は()()()()ですからね」

「え?」

 

 俺の言葉に、意味が解らないと言いたげな顔をする通形先輩。それなら説明してあげましょう。

 

「3日前、俺と出久の前に現れましたよね。ご丁寧に壁から顔出したり、地面から顔出したり…あの後、出久が“個性”の()()()()()()()()

「……あぁ!」

 

 どうやら、わかったようだな。 

 

「分析は、出久の十八番(おはこ)ですからね。完璧ではないにせよ、8割がた暴いてくれましたよ」

「そして、残りの2割はこれまでの戦いで調べさせてもらいました。あのワープの原理も、仮説レベルなら語れますよ?」

「ハハッ、オールマイトの弟子2人に興味があって近づいてみたけど…失敗だったかな」

()()()()だったのかもしれませんが、大失敗でしたね」

 

 自虐的な笑みを浮かべる通形先輩をバッサリ切り捨て、俺は一気に間合いを詰める。

 

「せいっ!」

 

 顔面狙いで右ストレートを放てば、通形先輩はそれを透過して無効化。そのままカウンターを放とうとするが―

 

「げほっ…」

 

 残念。俺の左ボディが()()()()()

 

 

出久side

 

「吸阪の攻撃が当たり始めた!」

「いいぞ! 吸阪!」

 

 切島君や砂藤君の声が響く中―

 

「緑谷」

 

 轟君が声をかけてきた。

 

「吸阪は()()を使っているな?」

 

 その言葉に僕は小さく頷く。雷鳥兄ちゃんが、生体電流の読み取りによる予知を使っている事に、もう気が付くなんて、流石は轟君だ。

 

「俺もアレには苦しめられた…先輩も混乱しているかもな」

「そうだね。通形先輩の“個性”は、凄くテクニカルな物。ちょっとした動作にも、幾つかの手順を踏む必要がある」

「だから、様々な動作を状況に応じて的確に選択し、機械のような正確さで…それこそ反射レベルで実行出来るよう、相当な鍛錬を積んでいる筈」

「だけど、機械のように正確だからこそ、雷鳥兄ちゃんの予知の前では無力になる」

「…攻撃を無力化する為に“個性”を発動するタイミングも、攻撃する為に“個性”を解除するタイミングも、全てが知られている訳だからな…本当に恐ろしい技だ」

 

 轟君が呟く間も、雷鳥兄ちゃんは何度も通形先輩に()()()()()()()()()()()を叩き込んでいた。そして―

 

「げぼっ…」

 

 遂に雷鳥兄ちゃんの左拳が、通形先輩のボディ…肝臓の辺りに炸裂した。肝臓打ち(リバーブロー)、あれは…キツイ。

 

 

雷鳥side

 

「げぼっ…」

 

 左ボディ…肝臓打ち(リバーブロー)を受けて悶絶する通形先輩。痛いだけじゃなく、呼吸するのも困難だろう?

 そんな状態じゃ“個性”の発動も難しいだろうが、()()()()()()だ。今度は、()()を狙って…下から上へと掬い上げるように、パンチを打ち込む!

 

「げ、あ…」

 

 陸に打ち上げられた魚の様に、口をパクパクと動かし、必死に酸素を求める通形先輩。だが、無駄だ。

 鳩尾を打ち抜いた事で、横隔膜の動きが一時的に止まり、呼吸が出来なくなっているからな。

 さぁ、これでフィナーレだ。

 

「せいっ!」

 

 最初にダウンを奪った時の様に、俺は通形先輩の顎を打ち抜く事で、その意識を刈り取り―

 

「そこまで! この勝負、吸阪君の勝利!」

 

 模擬戦に勝利するのだった。




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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