出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2 作:SS_TAKERU
お楽しみ頂ければ、幸いです。
また、今回の短編を製作するにあたり、幾つかのグルメ漫画やレシピ本を参考にしました。
雷鳥side
昼食を終えた俺達は、片付けや雑談などをしながら2時間ほどのんびりと過ごした後、男女に分かれてそれぞれに活動を再開した。
活動の内容は、
「さて、釣りを始める前に確認しておきたいが…釣り初心者の奴、手ぇ上げ」
手を上げたのは…青山、飯田、轟の3人か。あとの皆はキャンプや林間学校で経験ありと…よし。
「じゃあ、3人には俺が簡単にレクチャーしよう。サビキ釣り*1なら、
夕飯に釣りたての魚を食べる為にも、それなりの数を釣らないとな。
轟side
「そうそう、指でブレーキをかけるようにして、糸をゆっくり落としていくんだ」
「ゆっくり…」
「底に着いたら糸が緩むから、ベールを戻して糸が張るくらいまで巻く」
「わかった」
吸阪からレクチャーを受け、俺は慎重に糸を巻く。緩んでいた糸がピンと張ったところで、竿を上下に動かし、先端に付いた籠から餌を撒いていく。
吸阪の話だと、こうやって撒き餌で煙幕を作り、その中に疑似餌針を隠す事で、撒き餌に誘き寄せられた魚を釣っていくらしい。
サビキ釣り。初心者向きだと言っていたが、よく考えられた―
「ッ!」
その瞬間、竿越しに伝わる感触。疑似餌針に魚がかかったのか?
「轟! 巻くんだ!」
促されるまま、俺は糸を巻いていく。そして―
「鯖か!」
釣れたのは鯖。それも30cm強のものが3匹いっぺんにだ。これを俺が釣ったのか…。
驚きと感動が入り混じった感覚を味わっていると―
「轟、感動しているところ悪いが、鯖は下処理が肝心なんで…教えておくな」
吸阪に声をかけられ、我に返る。そのまま吸阪に教わった通り、鯖の首を折ってから海水を入れたバケツに入れて血を抜いていく。
「血が抜けたら、海水で作った氷を入れたクーラーボックスに移す。こうしておけば、かなりの時間新鮮さを保てる筈だ」
そう言い残して、青山や心操の様子を見に行く吸阪。釣りも
出久side
雷鳥兄ちゃんが轟君達へ釣りのレクチャーをしている中、僕と口田君、砂藤君、障子君の4人は防波堤の先端に陣取り、泳がせ釣り*2を楽しんでいた。
「今の時期だったら、
「緑谷、詳しいな」
「雷鳥兄ちゃんの受け売り。僕の釣りの師匠だから」
砂藤君の声にそう答えながら、僕は竿を振って仕掛けを海に投げ入れる。
雷鳥兄ちゃんは、小学生の時から僕をよく釣りに連れ出してくれた。勿論、魚を釣る事がメインではあったけど、それとは別に母さんには言えない…“無個性”絡みの悩みを聞いて、アドバイスする事が目的でもあったんだと思う。閑話休題。
「なるほどな…まぁ、大物を釣ってくるって、皆には啖呵切ってきたからよ。何が何でも釣って戻ろうぜ!」
「そうだな。俺は
「僕は真鯒を狙ってみる」
「僕は…
「望むところだ」
障子君とそんなやり取りを交わしていると―
「来たっ!」
竿越しに気配が伝わってきた。こいつは…
耳郎side
3対3のビーチバレー*3を思いっきり楽しんだ後、ウチ達はシャワーで火照った体を冷まし、よく冷えたジュースやアイスティー片手にお喋りを楽しんでいたんだけど―
「ただいま!」
「たっぷり釣れたぜ!」
男性陣が釣りから帰ってきたところで、お喋りはお終い。さっそく釣りの成果を見せてもらう。
「うわぁ、すっごい量だね!」
「魚屋さんが開けるよ!」
部屋中に響いた芦戸と葉隠の声。その声の通り、男性陣の成果は凄まじいものだった。2つのクーラーボックス、その1つが満杯になるほど大量の鯵や鯖といった青魚。
「大物狙い組の釣果は、まず真鯒が7匹! 俺が3匹、口田が4匹だ!」
そして、2つ目。大型のクーラーボックスには、潰れた体つきの…ちょっと見た目が良くないマゴチ?って魚と―
「僕と障子君で
「俺と緑谷で2匹ずつだが…一番の大物は緑谷が釣ったものだ」
それぞれ優に80cmは超えている
「夕飯は魚尽くしで確定だな。さて、メニューは……考えるから10…5分くれ」
そう言ってメニューを考え始める吸阪。ウチ達は…出来る準備を進めておこう。
雷鳥side
「よし、これでいくか」
考えること5分。夕飯のメニューを決めた俺は、紙へ魚ごとのメニューを書き―
「流石に量が量なので、皆にも協力してもらいたい。頼む」
近くに待機していた出久、梅雨ちゃん、麗日、砂藤、瀬呂、耳郎に頭を下げた。
「任せてよ、雷鳥兄ちゃん」
「沢山のお魚、腕が鳴るわ。ケロケロ」
「昼、任せっきりだったからな。夕飯には全力尽くすぜ」
すぐさま、出久、梅雨ちゃん、砂藤が声を上げ、麗日、瀬呂、耳郎も大きく頷く。
「吸阪君! 僕達も微力ながら手伝う! すまないが、指示を頼む!」
飯田達もやる気満々のようだ。俺は皆に指示を下し―
「よし、焦らず急いで慎重にやっていこう」
調理を開始した。
梅雨side
吸阪ちゃんの一声で始まった夕食作り。私は口田ちゃん、轟ちゃん、心操ちゃんと、葉隠ちゃんと一緒に鯵の担当よ。
まずは80匹近い鯵を片っ端から3枚におろし、腹骨を削いで、小骨を丁寧に抜いたら―
「半分はなめろう、半分はさんが焼きにしていくのね」
吸阪ちゃんの指示に従い、調理を進めていく。
「口田ちゃんは大葉と生姜を粗目の微塵切りに、心操ちゃんと葉隠ちゃんは長葱と茗荷を小口切りにしてちょうだい」
「粗目の微塵切りだね、頑張るよ」
「わかった」
「まかせて!」
「轟ちゃんは、私と一緒に鯵を細切りにしていきましょう」
「細切りだな。わかった」
私と轟ちゃんで全ての鰺を細切りにしたところで、口田ちゃんが微塵切りにしてくれた大葉と生姜、心操ちゃんと葉隠ちゃんが小口切りにしてくれた長葱と茗荷、そして味噌を乗せ―
「ここからは、ひたすらに叩いていくわ」
鯵と薬味、味噌がよく混ざるように包丁で叩いていく。全体がよく混ざったら、最後に少量の醤油と煎り胡麻を加えれば、なめろうの完成ね。
「それじゃあ、一口味見してみましょう」
スプーンに出来立てのなめろうをほんの少し掬って、一口。
「…凄い!」
「美味しーい!」
「飯が進む味…だな」
「あぁ、美味い」
「あまりの美味しさに、皿を舐めてしまう。だから、なめろうと名付けられた。と聞いた事があるけど…納得だわ」
私達はなめろうの美味しさに驚きながら、完成したなめろうの半分をお皿に盛って冷蔵庫で冷やすと、残り半分をミニハンバーグサイズに成型。オリーブオイルで焼いて、さんが焼きにしていく。
これも食べる前から、美味しいのが解るわね。
耳郎side
「それでは、いただきます!」
「「「「「いただきます!」」」」」
飯田の声に続いて皆の声が響き、賑やかな夕食が始まる。今日のメニューは―
・鱸のアクアパッツァ*4
・鱸と真鯒のフィッシュ・アンド・チップス*5
・鯵のなめろう&さんが焼き*6
・鯖のホイル焼き*7
・鱸の炙り刺し土佐造り*8
・鱸と真鯒の潮汁*9
・ご飯
和洋折衷な魚尽くしのメニュー。大き目の鱸2匹を使ったアクアパッツァが特に目を引くけど…。
「まずはお吸い物から」
ウチはまず、緑谷の作ったスープに口をつけ―
「ッ!?」
一口飲んだ瞬間、衝撃を受けた。口一杯に広がる上品な魚の旨味。生臭さなんて欠片も感じない。鱸と真鯒のアラで、こんな美味しいお吸い物が作れるなんて…。
「緑谷、このお吸い物…凄いね!」
「よかった! 魚の旨味を活かす為に、味付けは最低限の塩とお酒、あとおろし生姜だけにしたから、ちょっと薄かったかもって、不安だったんです」
「全然、薄くなんてないよ。うん、ウチはこの味が好き」
「気に入ってくれたなら、嬉しいです」
屈託の無い笑顔を向ける緑谷を見ながら、お吸い物をもう一口…うん、美味しい…そして、ウチはやっぱり、緑谷の事が好きだ。
この気持ち…夕食を終えたら、正直に伝えよう。
「なるほどねぇ~」
耳郎さんと緑谷君のやり取りを見ながら、私は自分の中のセンサーがビビッ! と反応するのに気付いた。
うんうん、まさに青春の1ページだわ。好み!!
「はい、お待たせしました」
その時、私の目の前に置かれたのは、香ばしい香りを漂わせる茶色い揚げ物。これは…
「鯵と鯖の中骨を生姜醤油に漬け込んだ後、小麦粉をまぶして二度揚げした骨唐揚げです」
骨唐揚げ! 如何にも酒飲みが好みそうな一品に、思わず喉が鳴る。
「んー!」
サクサクした歯ざわりといい、ちょっと濃い目の味付けといい、酒の肴に最適ね!
そして、ここにビールを加えたら…
「くぁぁぁっ、たまらないわ!」
フィッシュ・アンド・チップスや炙り刺しも最高だったけど、
出久side
「ふぅ、ちょっと食べすぎたかも…」
楽しい夕食を終え、後片付けを済ませたところで、僕ははち切れそうなお腹を抑えながら、ソファーに腰を下ろした。
見れば、周りの誰もが満腹でお腹を擦っている。
「ん?」
マナーモードにしていたスマホが反応したのはその時だ。手に取って見てみると耳郎さんからのメッセージ。
不自然にならないよう気を付けながら、その場を離れ、内容を確認する。
-急にごめん。ちょっと話したい事があるから、海岸まで来れる?-
きっとこの前の件だ。こっちから連絡しようと思っていたけど、耳郎さんに気を使わせちゃったな。
-わかりました。すぐに行きます-
僕はそう返信を返すと―
「皆ごめん、
適当な理由を作って、海岸へと急ぐ。
「お待たせしました。耳郎さん」
「あ、うん。ごめんね、呼び出したりして」
「い、いえ、僕も連絡しようと思ってましたから…その、この前の件、ですよね?」
海岸で待っていた耳郎さんに、 待たせた事を謝りながら、そう問いかけると―
「う、うん。ちょっと歩こうか…防波堤の辺りまで」
顔を赤くした耳郎さんは、そう言って歩き出した。僕も歩調を合わせて付いていく。
「………」
「………」
互いに無言のまま歩き続け、とうとう防波堤までやってきた。すると―
「………よし」
大きく深呼吸した耳郎さんが、こちらへ振り返った。その表情に、僕も疎かな対応をしないよう覚悟を決める。
「…緑谷」
「はい」
「麗日との関係、わかった上で言うね……ウチは、緑谷が好き」
「え…」
「初めての戦闘訓練で、轟の氷結から守ってくれたよね? あの時から、ずっと…」
そこまで言って黙り込む耳郎さん。僕は耳郎さんの言葉にどう答えるべきなのか…迷いながらも口を開く。
「耳ろ―」
「言わないで! 答えは聞かないから、麗日にも悪いし、ウチはただ…自分の気持ちを心の奥に押し込めていたくなかっただけ…それだけだから!」
だけど、耳郎さんは早口で僕の声をかき消し、そのまま走り去ってしまった。
「僕は…」
僕は耳郎さんの思いに、どう答えるべきなんだろう? 海を見ながら考えても、答えは浮かんでこなかった…。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。