出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2 作:SS_TAKERU
お楽しみ頂ければ、幸いです。
なお、本作ではサー・ナイトアイの“個性”『予知』の独自解釈。
及びサー・ナイトアイに対する辛辣な表現が存在します。
閲覧の際はご注意ください。
雷鳥side
さて、大慌ての通形先輩に、警察や労基への通報を止められた俺と出久は―
「えっと…バブルガールさん、でしたね。大丈夫ですか?」
怪しげな機械に拘束されていた女性…サーナイトアイのサイドキック、バブルガールさんを拘束から解放し、状態を確認していた。
「え、えぇ…大丈夫…」
息も絶え絶えの状態ながら、俺達への礼を口にするバブルガールさんに許可を取り、俺は『
ふむ、
「笑い過ぎで心臓発作を起こし、そのまま亡くなってしまった事例が存在するのは、ご存じですか? もし、御存知だったのなら…サー・ナイトアイは、随分と
念の為、デスクでゲン〇ウポーズを取っているサー・ナイトアイに、皮肉交じりで釘を刺しておく。
「………」
サー・ナイトアイも、俺のような
「今後の参考にさせてもらう」
と、呟いてきた。
「はい、是非とも参考になさってください」
俺も営業スマイルを返すと、その場を嫌な沈黙が包む。うん、これは
出久side
室内を沈黙が包んで3分後。
「なるほど…私の下で
通形先輩が介入した事で、何とか面談はスタート。僕と雷鳥兄ちゃんは、
「………
僅かな沈黙を経て、サー・ナイトアイは机の引き出しから印鑑を取り出した。どうやら、受け入れてくれるみたいだ。
「どうぞ」
僕と雷鳥兄ちゃんはそれぞれ、持参した
「
「一般企業に見られるような、長くても1週間程度の気軽な
「まだ授業の多い1年生であれば、公欠も増える。クラスメートとも一律には歩めないだろう。それでも構わないな?」
印鑑に朱肉を付けながら、最終確認をしてきた。
「覚悟の上です」
「ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いします」
僕達がそう答えると、サー・ナイトアイは
その後も、印鑑でデスクを連打するが、一向に
「なるほど…
「その通りだ」
雷鳥兄ちゃんの指摘に即答するサー・ナイトアイ。何だろう。凄く嫌な予感がする…。
雷鳥side
「バブルガール、ミリオ。すまないが暫く部屋の外へ出ていてくれ。この2人と
静かな…だが有無を言わせない口調で、通形先輩達へ退室するよう命じるサー・ナイトアイ。2人が戸惑いながらも退室すると―
「業腹ではあるが、貴様達の実力は認めている」
再びゲン〇ウポーズを取りながら、喋り始めた。
「ヒーロー殺し、血狂いマスキュラー、マッドホーン。これだけの大物
「何より、神野区での戦いぶり。なるほど、そちらの
「そこまで評価してくださるなら、印鑑を押していただけませんかね?」
「それとこれとは、話が別だ。現在この事務所は、サイドキック2名、インターン1名で滞りなく運営出来ている。そこに実力があるとはいえ、過剰な人員を加えることは円滑な運用に支障を来す」
「貴様達を加えることで、この事務所にどんな利益を齎すのか。いや、ヒーローとして活動する以上、
「オールマイトは、そのパワーとユーモアを用いて示した。
「貴様達がこの事務所に、社会にどう利益となるか…
そこまで言うと、サー・ナイトアイは立ち上がり―
「簡単なテストだ。それぞれ3分以内に私からこの印鑑を奪ってみせろ。私の下で
俺達へそう宣告した。
「
「えぇ、その優しさに涙が出そうですよ」
サー・ナイトアイの皮肉に、こちらも皮肉で返し―
「それじゃあ、俺から挑戦させていただきましょう」
一歩前へ出た。サー・ナイトアイも眼鏡の位置を直しながらデスクから離れていく。
「私からは手を出さないし、
そして、テストの補足説明を行っていくが……この部屋がどうなっても良いとは…随分と舐められたもんだ。
「まもなく、時計のアラームが鳴る。それが開始の合図だ」
「了解です。確認ですが…本当に
「くどい。この部屋が
「了解です」
…
それからジャスト10秒後。アラームが鳴り響くと同時に―
「フラッシュストッパー!!」
俺は全身から強烈な閃光を放った。
サー・ナイトアイside
「くっ…」
アラームが鳴ると同時に、
恐らく、一般的な
咄嗟に左手をかざして閃光から目を守りながら、印鑑を握る右手を意識する。
だが、来ると解っている攻撃をくらう程、私は馬鹿ではない。さぁ、どこからでも攻撃してくるがいい。その全てを防ぎ、捌き、避けてみせよう。
「………」
おかしい。何故、
「貴様っ…」
私は
雷鳥side
「だから言ったんですよ。本当に
これ以上無い程の怒りを露わにしているサー・ナイトアイへ、俺は敢えて淡々と告げる。
そう、俺が今立っているのは、オールマイト関連の書籍やDVDなどが収められた棚の
この部屋は、あちこちにオールマイトグッズが飾られているが…その中でも特に重点的に飾られた一角だ。
「まぁ、言うなれば…人質ならぬ
「そのオールマイトグッズを壊されたくなければ、印鑑を渡せ。とでも言うつもりか?」
「いやぁ、そこまで
「それはオールマイトの活動10周年を記念して作られた非売品のタペストリーだ! 仮にオークションに出れば、80万は下らない貴重品だぞっ!!」
聞いてもいないのに、説明してくれた。うん、やっぱりこの人、
「80万! それはかなりの貴重品だ…だけど、
そんな筋金入りだからこそ―
「やめろぉ!」
「もらった!」
俺はタペストリーに意識が向いたサー・ナイトアイ目掛けて、電撃を放射!!
「ぐぅっ……」
直後、呻き声をあげながら右手を抑え、蹲るサー・ナイトアイ。
「ちょっと強めのスタンガン程度まで出力は抑えてますから…10分もすれば、痺れは消えるでしょう」
俺は淡々とそう告げると、サー・ナイトアイの右手から零れ落ちた印鑑を拾い、
「印鑑、頂きました」
出久side
「雷鳥兄ちゃんもえげつないなぁ…」
サー・ナイトアイが落とした印鑑を拾い、
部屋中に飾られたオールマイトのグッズを見ればわかる。サー・ナイトアイは
そんな彼にとって、雷鳥兄ちゃんの脅しはこれ以上無い程効果的。まさに寿命が縮む思いだっただろう。でも…
「………事前に調べて、理解していたつもりだったが…想定が甘かったか…」
「でしょうね。俺の事を本当に理解していたなら、少なくとも
雷鳥兄ちゃんは、
そういう意味では、サー・ナイトアイ自らが招いた失敗と言えるだろう。
「…この件は、今後の反省材料にさせてもらう」
「それが宜しいかと…」
サー・ナイトアイの呟きに雷鳥兄ちゃんがそう答えた直後、再び室内を沈黙が支配する。うん、これは良くない。
「あの、サー・ナイトアイ。1つ質問を許してください」
僕はこの時間を利用して、どうしても
「なんだ?」
「貴方がオールマイトを強く敬愛している事は、この部屋を見ればわかります。通形先輩も、貴方がいつもオールマイトの動画を見ていると言っていました」
「………」
「無礼を承知でお尋ねします。どうして、オールマイトと疎遠になってしまったんですか?」
「そう言えば、オールマイトも貴方と疎遠になった事を後悔している様子でしたね。余計なお世話かも知れませんが…オールマイトと和解したいと仰るなら、微力を尽くしますが?」
僕の問いかけに続くように、雷鳥兄ちゃんも声を上げる。果たして、サー・ナイトアイの反応は…
「……がないだろう」
「え?」
「和解出来る訳が無いだろうっ!!」
「私は…私は…」
「オールマイトの死を予知してしまったんだぞ!!」
今までとはまるで違う…生の感情を剥き出しにしたサー・ナイトアイの言葉とその内容に、僕達は言葉を失った。
オールマイトが…死ぬ……?
サー・ナイトアイside
「……すまない」
柄にもなく感情を露にしてしまった事を2人に詫び、私は語り始めた。
元々オールマイトの大ファンだった私が、サイドキックを持たない主義だった彼の元へ押しかけ、根負けさせる形でサイドキックとなる事を認めさせた事。
それから5年間、彼のブレーンとして活動を支え続けた事。そして―
「6年前…『オール・フォー・ワン』との戦いが切っ掛けとなり…私は彼の元を離れた」
6年前に起きた全てを。
「…無茶だ。オールマイト…もう、引退すべきだ……」
「それは……出来ないね」
絞り出すような声で発した私の願いを、同じ様に絞り出した声で拒否するオールマイト。
いつもの
「ニュース…見てないのか…? 皆が、私を…探している」
「待っているなら………行かなきゃあな…」
そんな状態にも拘らず、壁伝いにゆっくりと歩き出すオールマイト。その姿はとても…痛々しい。
「その体で、ヒーローを続けても…皆が辛くなるだけだ。呼吸器官の半壊に、胃袋の全摘出…とても以前のようにはいかない」
「貴方の願う平和の為にも…伝説のまま、引退すべきだ」
「『ワンフォー・オール』の後継なら、
根津校長も私の意見に同調してくれた。私は何とかオールマイトを止めようと言葉を続ける。
「もう、フカフカのベッドで安眠をとって良いんだ。明るく、強く、親しみのある人間。あなたのような人間を見つけ…託そう」
「その人間が見つかるまでの象徴は? 『オール・フォー・ワン』がいなくなっても…超人社会…すぐに次の『
「オールマイト!」
私の声に反論した直後、バランスを崩したオールマイトを私は咄嗟に支え―
「象徴論はわかる! 敬服している! けれど…なぁ…今のあなたは……
頑なな彼の考えを変えようと言葉を尽くした。だが、彼の考えは…変わらない。だから、私は……
「これ以上、ヒーロー活動を続けるなら……私はサポートしない…! 出来ない…! したくない…!!」
ついていけないと…突き放してしまった。それによって―
「…
「私の事は見なくてもいいって…言った筈だろ。ナイトアイ…」
彼も
「あなたが引退しても次のナンバー
「そのホンの少しの間に、どれだけの人々が脅えなくてはならない?」
「オールマイト!!」
「それに…君の『予知』が外れたことはないだろう」
「前例が今まで無かっただけだ!! 未来など私が変えてやる!!」
「このままじゃ、
私を振り払い、ゆっくりと進んでいくオールマイトの背中へ、私は叫んだ。だけど、彼は止まらない。
「私は…あなたの為になりたくて、ここにいるんだ! オールマイト!!」
「私は、世の中の為に…ここにいるべきじゃないんだよ…ナイトアイ」
「…止まれ、止まってくれ。オールマイト!」
「このままいけば、あなたは
私の叫びを振り切るように…彼は行ってしまった。
「それから6年……私はオールマイトと一度も会っていない。去年の春に電話が一度あったが…その時も喧嘩別れだ」
そう言って、自虐的な笑みを浮かべていると―
「………幾つか質問を」
雷鳥side
「………幾つか質問を」
サー・ナイトアイの話を聞いている内に
「サー・ナイトアイ。貴方の“個性”である『予知』。それはあらゆる事を予知出来るんですか? 例えば…天変地異とか」
「いや、一定の条件を満たした上で接触した人物の取り得る行動を予知出来るという物だ」
「なるほど…ちなみにそれは、どのくらい先の未来まで見えるんですか?」
「…状況にもよるが長くて数年先。オールマイトの死を予知した時は6~7年後の未来だった」
「ハッキリとした日時は、わからないんですか?」
「近い未来ならともかく、遠い未来は先になればなる程、時間的なブレが大きくなる」
「予知した未来が外れた事は?」
「一度もない。これまでに行動を予知した
「…あと2つだけ。その
「………いや、どれも
「最後の質問です…オールマイト以外で人の死を予知した事は?」
「…後にも先にもオールマイトだけだ。私の『予知』は、予知する事で未来を確定させてしまう」
「ありがとうございます」
サー・ナイトアイの答えを聞いて、俺は確信した。
「サー・ナイトアイ。貴方の“個性”は…
思い出した
サー・ナイトアイside
「………何を馬鹿な事を」
「いいえ、きちんと根拠あっての発言です」
「俺みたいに、相手の生体電流読み取って、コンマ5秒先の行動を予知するとかならまだしも…数日先、長ければ数年先の相手の行動を予知するなんて、いくら“個性”でも無理があるんですよ」
「だが、私は実際に予知している」
「そもそもそれが予知なのか? という話なんです。そう思う根拠は2つ。1つは、未来の出来事全てではなく、個人の行動しか知る事が出来ない点。もう1つは、予知した相手の行動全てが常識的…言い方を変えれば、
「雷鳥兄ちゃん…ちょっと待って、それって…もしかして……」
しかし、そんな筈は……だが、そう考えれば辻褄が合う。合ってしまう…。
「そう…サー・ナイトアイが行っているのは、予知じゃない。超高精度の予測だ。おそらく、一定の条件を満たす事で、対象の記憶を読み取り、それを基に行動予測を立てているんだ。同時に立てた予測を相手に送り込んでもいる筈だ」
「そうする事で、対象は無意識の内に予測通りの行動を取ってしまう。今まで行動を予知した相手が、誰一人として突飛な行動を取らなかった事は、これで説明がつく」
「だ、だが…それでは、オールマイトの死を予知した事への説明が……」
違う。本当はもうわかっている。わかっているが…
「オールマイトの死を予知した時、オールマイトは重傷なんて言葉が生温く感じるくらい、酷い状態だった。おそらく死んでしまってもおかしくない程に」
「そんな状態じゃ、オールマイトが死んでしまうと予測してもおかしくない。むしろ当然だ」
そう、私は瀕死のオールマイトに対して、予知を行い…あの最悪な未来を見た。だが、それは…
「サー・ナイトアイの心が生み出した…幻」
その通りだ。オールマイトが死ぬかもしれないという恐怖が、あの予知を生んだのだ。
「フフフ…ハハハハハッ、お笑いだな。6年もの間、私は…本当にお笑いだ…」
本当に…お笑いだ。
出久side
あの後、サー・ナイトアイは一頻り、自虐の笑い声をあげた後、僕の
雷鳥兄ちゃんのテストで気が変わった。と言っていたけど…
「まぁ、思わぬラッキーだったと考えとけ」
事務所からの帰り道、どうも釈然としない僕へ、声をかけてくれる雷鳥兄ちゃん。
うん、そうだね。ここは切り替えて、明日からの
「よーし、頑張るぞ!」
「その意気だ。出久!」
僕は改めて気合を入れなおし、
最後までお読みいただき、ありがとうございました。