出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2 作:SS_TAKERU
お楽しみ頂ければ、幸いです。
死柄木side
オーバーホールとの会談の際に手に入れた
そいつに何か
『お前さん、この弾丸を
2時間と経たない内に連絡を取ってきたドクターの、困惑と興奮の混ざった声に、俺は自分の直感が正しかった事を…いや―
「見解の相違で決裂した会談相手のヤクザが撃った物だ。絶無が上手く弾いたんで、入手できた」
『そうか…そいつは幸運じゃったな。
続けてドクターが発した含みのある言葉で、
「ドクター、あの弾丸は一体何だ? 話せる範囲で良い。教えてくれ」
『あの弾丸は―』
そして、ドクターから一通りの説明を受けた俺は、改めて決意した。
オーバーホール、奴は必ず潰す。2度と大それた真似が出来ないよう、
さて、
「弔君! 大変です!」
栗毛の
「随分と慌てているな…一体どうした?」
「見たんです! オールマイトの弟子の2人を! 名前は…そう、緑谷君と吸阪君!」
「デクとスカシ野郎だと!」
俺が反応するよりも早く、怒りの声を上げる絶無。気持ちは解るが少し落ち着け。
「トガ、どういう事だ。詳しく説明しろ」
右手を挙げて絶無を制しつつ、トガに説明を求めるが―
「だから、見たんです。買い物の帰りに2人を。えーと、ここから走って5分くらいのところです。ビルに入っていきました」
その説明はイマイチ要領を得ない。すると―
「2人が入って行ったのは、ナイトアイ事務所。オールマイトのサイドキックを務めた事もある実力派、サー・ナイトアイが運営している事務所だね」
部屋に入ってきた
「おじさんが調べたところによると、サー・ナイトアイ事務所は
流石に名前まではわからなかったけどね。と笑うMr.コンプレス。この短時間でそこまで調べられれば上出来と言って良いが…
「そして、ここからがレア情報」
どうやら、取って置きの情報があったようだな。そしてその情報は―
「良くやった。コンプレス…おかげで
文字通り、値千金のものだった。俺は躊躇いなくスマホへ手を伸ばし―
「ドクター! 頼みがある。実は…」
ドクターへ、計画への協力を要請した。
『ホホッ! お前さんもなかなか
ドクターの協力も無事に取り付けられた。あとは
雷鳥side
さて、サー・ナイトアイのテストに合格した翌日。俺と出久は、
朝、指定された時間の15分前に事務所を訪れ、
「「おはようございます! 今日からよろしくお願いします!」」
挨拶と共に頭を下げた。
「あぁ、よろしく頼む。現場では何が起こるかわからない。君達の力、当てにさせてもらおう」
俺達の挨拶に対し、そう答えるサー・ナイトアイ。口調は昨日と変わらないが、昨日あった刺々しさが無くなっている。昨日の一件で、俺達の事を完全に認めてくれたようだな。
その後、俺達は始業までの間、雑談に興じた訳だが―
「実は昨日の晩…オールマイトに電話をかけた」
「…久しぶりに、彼と腹を割って話せたよ。不義理を詫びることも出来たし…今抱えている
そう話すサー・ナイトアイの表情は、どこか柔らかさを感じるものだった。
出久side
始業時間となり、通形先輩やバブルガールさんと合流した僕達に早速伝えられる任務内容。それは…
「本日はパトロール兼監視。私とバブルガールのペア、ミリオと吸阪、緑谷のトリオで二手に分かれ行う」
「監視ですか…」
「そう、ナイトアイ事務所は今、秘密の捜査中なんだよ」
「『
「そこの若頭である『治崎』という男が、妙な動きを見せ始めた」
そう言ってサー・ナイトアイが差し出した写真に写っていたのは、鳥の嘴のような形をしたマスクを着けた男。この男が治崎…。
「
一方の雷鳥兄ちゃんは、治崎をそう評していた。瘴気論…聞いた事が無い言葉だ。
「瘴気論を信奉しているかどうかは不明だが、潔癖症ではあるようだ」
「あぁ…なるほど」
サー・ナイトアイの潔癖症という言葉を聞き、納得したように頷く雷鳥兄ちゃん。あとで、どういう事なのか聞いてみよう。それにしても…
「
今の時代、昔ながらのヤクザは絶滅危惧種。まともに活動しているヤクザなんて、片手で足りる筈だ…
「過去に大解体されてるからね。でも、この治崎って奴は、そんな連中をどういう訳か集め始めている」
僕のそんな心中を察したのか、バブルガールさんが補足説明を加えるけど―
「数日前には、あの
その次に明かされた情報は、僕達を驚愕させるに十分だった。
「
「えぇ、でも顛末は不明よ」
「そして、奴が何か悪事を企んでいるという証拠も掴めていない。その為、
「我がナイトアイ事務所が狙うのは、奴らの
「「「「イエッサー!!」」」」
サー・ナイトアイの声に元気よく答え、僕と雷鳥兄ちゃんは通形先輩と共に、行動を開始した。
………15分と経たない内に、思わぬ出会いをする事になるなんて、この時は想像もしていなかった。
「そう言えば、俺のヒーロー名教えてなかったね!」
僕達の緊張を解そうとしたのか、市街地のパトロールを行いながら、そんなことを言い出す通形先輩。
うん、初対面の時は、色々と考えが足りない人だと思ったけど…良い人であることは間違いないみたいだ。
「俺は『ルミリオン』!
「レミオロメン…」
駄目だ。レミオロメンが何を意味するのか、全くわからない。雷鳥兄ちゃんは頷いているから…瘴気論と合わせて、後で質問しよう。
「
「はい! ルミリオン!」
「微力を尽くします」
そんな話をしながら、パトロールを続けていると―
「ッ!」
路地から飛び出してきた女の子が、僕とぶつかりそうになった。
「っと」
僕は女の子を咄嗟に受け止めると、そのまま片膝を突いて、女の子と目線を合わせ―
「ごめんね。大丈夫だった?」
笑顔を見せながら、声をかけた。
「……あ」
でも、女の子は怯えた表情を見せるばかりで、答えてはくれない。これは…
「駄目じゃないか。ヒーローに迷惑かけちゃあ」
次の瞬間聞こえてきた声。視線を女の子から外し上に動かしていくと…
「帰るぞ。エリ」
そこには写真の男。死穢八齋會若頭、治崎が立っていた。僕は湧き上がる動揺を必死に抑え、平静を装って立ち上がる。
「うちの娘がすみませんね。ヒーロー」
「遊び盛りで、怪我が多いんですよ。困ったものです」
穏やかな笑みを見せながら、この子の保護者を名乗る治崎。だけど、それは
僕に向けている穏やかな笑みは、上っ面だけ。心の中では碌でもない事を考えていると見て、間違いない。
「………」
震えながら、僕の
「いえ、こちらこそ注意が散漫になっていたみたいで…その素敵なマスクは、八齋會の方ですね! この辺じゃ有名だって聞きました」
「ええ、マスクの事は気になさらず…
他愛もない会話をしながら、全力で考えを巡らせる。
下手に騒ぎを起こせば、サー・ナイトアイ達が調べている事を察知されてしまう。それは何としてでも避けないといけない。
「お三方とも初めて見るヒーローだ。新人ですか? 随分とお若い」
「…えぇ、まだ新人なんで、緊張しちゃって! さぁ、そろそろ行こうか。時間が押してるぜ」
見かねたルミリオンが間に入り、僕をその場から連れ出そうとするけど―
「どこの事務所所属なんです?」
治崎の雰囲気が変わり始めた。拙い…明らかに警戒し始めてる。
「まだ学生ですよ! 所属だなんておこがましいくらいのヒヨッ子ですて…職場体験で色々回らせてもらっているんです」
「では、我々。昼までにこの区画を回らなくてはいかんので! さぁ、行くよ!」
ルミリオンもそれを察知したのか、半ば無理やり話を打ち切った。駄目だ…時間が足りない!
「失礼ながら……」
その時、今まで沈黙を貫いていた雷鳥兄ちゃんが動いた。僕の
「あなた…この子の
笑顔でそう断言した。
雷鳥side
「あなた…この子の
治崎の前に立ち、笑顔でそう告げる。
「父親じゃないとは…何の根拠があって、そんなことを?」
「いやぁ、実は俺…“個性”の関係で、
「………そうですね。たしかに、私はその子の父親ではありません」
随分あっさりと認めたな…次はどう出る?
「本当の事を言いましょう。訳あってその子の両親から預かっているんです。説明が複雑になるので、親だと称したんですよ」
なるほど、
「あぁ、そういう事でしたか」
「えぇ、誤解を招く表現をしてしまい、申し訳ない」
「いえいえ、誰しも事情がありますからね」
お互い上っ面だけの笑顔を向け、会話を交わす。恐らく、治崎は上手く誤魔化せたと思っているだろうが…
「ご理解いただけましたか。では、その子を…」
「では、あなたが
残念だが、そうは問屋が卸さない。
「証、明…」
「えぇ、例えばこの子の
「そ、それは…」
僅かに動揺を見せる治崎。俺は隙を見て、背後にいる出久にハンドサインを送る。サインの内容は『
「証明出来る物をお見せ頂けないと…酷く怯えているこの子をお渡しする事は出来ませんね。如何せん、そういうルールですので」
「…ルール?」
「はい、ご存じありませんか? ヒーロー活動における基本的な法律なのですが」
「………残念ながら不勉強でして」
露骨に顔を歪ませながら、声を搾り出す治崎。
前世の話になるが、こういうインテリヤクザの類は往々にして、法的にグレーな部分を利用する事で、利益を得ていた。
そして、違法と合法の狭間を行き来しているが故に、法律という物にはすこぶる敏感だった。
前世ですらそうだったのだ。常に監視され、細々と活動しているこの世界のヤクザは…言うまでもあるまい。
「この子の全身、包帯だらけです。ただ遊んでいるだけで、こうなるのは…不自然ですよね?」
「それに、こんな小さな子が声も出さずに怯えるなんて、普通じゃない。正直に言って、虐待が疑われる事例です。申し訳ありませんが、この子は僕達が一時保護します」
「あくまでも、一時的な処置ですので。あなたがこの子の保護者だと確認出来て、虐待の事実が確認出来なければ、すぐにお返ししますので」
出久の声に続き、俺も営業スマイル満開で、治崎にそう宣告する。
「ふざけた事を…」
流石に治崎も我慢の限界だったのだろう。取り繕った笑顔すら捨てて、俺達を睨みつけるが―
「ねぇ、何か揉めてない?」
「ヒーローと…あれ、ヤクザじゃね? ほら、シエ…何とかカイ」
「ヤクザが何かやらかしたのか?」
俺と出久が時間を稼いだ事で、周囲の人々が異常を察知し、野次馬となり始めていた。こうなってしまえば、
「………わかりました。証明出来る物を、お持ちすれば良いんですね?」
「えぇ、お願いします。あ、連絡は児童相談所まで」
治崎にそう言い残し、俺達は女の子を連れて、その場を後にする。
さて、サー・ナイトアイへの言い訳を考えないとな。
「クソ…英雄症候群の病人どもが…」
計画の『核』となる壊理を、まさかこんな形で奪われるとは…想定外にも程があるぞ。
俺は地下の施設へと続く通路を歩きながら、狂ってしまった計画の修正案を考え続ける。
「す…すんません! 若頭! ちょっと目を離した隙に、ガキが―」
壊理を逃がすという大失態を犯しながら、見苦しく言い訳を並べるクズを一瞬で
「掃除をしておけ」
壁の汚い染みとなったクズを片付けるよう命じながら、地下の研究施設に足を踏み入れた俺は―
「想定は…しておくべきだな」
想定出来る幾つかの事態への対応策を練っていく。
「学生と言っていたな…ガキはこれだから嫌なんだ。病に侵されている事にも気づかず、本気で何者かになれると思い込んでいる」
汚らしい病人が、俺の手を煩わせる…やはり、こんな世界は変革しなくては…
最後までお読みいただき、ありがとうございました。