出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2   作:SS_TAKERU

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お楽しみ頂ければ、幸いです。


第19話:予期せぬ出会い

死柄木side

 

 オーバーホールとの会談の際に手に入れた手詰め(ハンドロード)の弾丸。

 そいつに何か()()()()と感じた俺は、黒霧に命じて、ドクターに届けさせた訳だが…

 

『お前さん、この弾丸を()()()()()()()()?』

 

 2時間と経たない内に連絡を取ってきたドクターの、困惑と興奮の混ざった声に、俺は自分の直感が正しかった事を…いや―

 

「見解の相違で決裂した会談相手のヤクザが撃った物だ。絶無が上手く弾いたんで、入手できた」

『そうか…そいつは幸運じゃったな。()()()()()()

 

 続けてドクターが発した含みのある言葉で、手詰めの弾丸(あれ)が想像以上に()()()()()である事を察する。

 

「ドクター、あの弾丸は一体何だ? 話せる範囲で良い。教えてくれ」

『あの弾丸は―』

 

 そして、ドクターから一通りの説明を受けた俺は、改めて決意した。

 オーバーホール、奴は必ず潰す。2度と大それた真似が出来ないよう、()()()()…な。

 

 

 さて、オーバーホール(やつ)を潰すと決意してから4日。

 

「弔君! 大変です!」

 

 栗毛の(かつら)と伊達眼鏡で変装し、食糧調達に行っていた筈のトガが、大慌てで戻ってきたことをきっかけに()()()()()()

 

「随分と慌てているな…一体どうした?」

「見たんです! オールマイトの弟子の2人を! 名前は…そう、緑谷君と吸阪君!」

「デクとスカシ野郎だと!」

 

 俺が反応するよりも早く、怒りの声を上げる絶無。気持ちは解るが少し落ち着け。

 

「トガ、どういう事だ。詳しく説明しろ」

 

 右手を挙げて絶無を制しつつ、トガに説明を求めるが―

 

「だから、見たんです。買い物の帰りに2人を。えーと、ここから走って5分くらいのところです。ビルに入っていきました」

 

 その説明はイマイチ要領を得ない。すると―

 

「2人が入って行ったのは、ナイトアイ事務所。オールマイトのサイドキックを務めた事もある実力派、サー・ナイトアイが運営している事務所だね」

 

 部屋に入ってきた白髪混じり(ロマンスグレー)の 男が、フォローを入れてきた。トガ同様、変装して食料調達に行っていたMr.コンプレスだ。

 

「おじさんが調べたところによると、サー・ナイトアイ事務所は校外活動(インターン)を受け付けているみたいだね。トガちゃんが例の2人を見かけた時一緒にいた男子は、1年以上校外活動(インターン)を続けているそうだ」

 

 流石に名前まではわからなかったけどね。と笑うMr.コンプレス。この短時間でそこまで調べられれば上出来と言って良いが…

 

「そして、ここからがレア情報」

 

 どうやら、取って置きの情報があったようだな。そしてその情報は―

 

「良くやった。コンプレス…おかげでオーバーホール(あの野郎)()()()()()()()()()算段がついた」

 

 文字通り、値千金のものだった。俺は躊躇いなくスマホへ手を伸ばし―

 

「ドクター! 頼みがある。実は…」

 

 ドクターへ、計画への協力を要請した。

 

『ホホッ! お前さんもなかなか()()()()()()を考えるのぉ! よろしい、すぐに取り掛かろう!』

 

 ドクターの協力も無事に取り付けられた。あとは()()()()()を待つだけだ。

 

 

雷鳥side

 

 さて、サー・ナイトアイのテストに合格した翌日。俺と出久は、校外活動(ヒーローインターン)を本格的に始める事となった。

 朝、指定された時間の15分前に事務所を訪れ、戦闘服(コスチューム)に着替えた俺達は、サー・ナイトアイのオフィスへと向かい―

 

「「おはようございます! 今日からよろしくお願いします!」」

 

 挨拶と共に頭を下げた。

 

「あぁ、よろしく頼む。現場では何が起こるかわからない。君達の力、当てにさせてもらおう」

 

 俺達の挨拶に対し、そう答えるサー・ナイトアイ。口調は昨日と変わらないが、昨日あった刺々しさが無くなっている。昨日の一件で、俺達の事を完全に認めてくれたようだな。

 その後、俺達は始業までの間、雑談に興じた訳だが―

 

「実は昨日の晩…オールマイトに電話をかけた」

「…久しぶりに、彼と腹を割って話せたよ。不義理を詫びることも出来たし…今抱えている案件(ヤマ)が片付いたら、直接会って話をしようと約束することも出来た」

 

 そう話すサー・ナイトアイの表情は、どこか柔らかさを感じるものだった。

 

 

出久side

 

 始業時間となり、通形先輩やバブルガールさんと合流した僕達に早速伝えられる任務内容。それは…

 

「本日はパトロール兼監視。私とバブルガールのペア、ミリオと吸阪、緑谷のトリオで二手に分かれ行う」

「監視ですか…」

「そう、ナイトアイ事務所は今、秘密の捜査中なんだよ」

「『死穢八斎會(しえはっさいかい)』という小さな指定(ヴィラン)団体だ」

「そこの若頭である『治崎』という男が、妙な動きを見せ始めた」

 

 そう言ってサー・ナイトアイが差し出した写真に写っていたのは、鳥の嘴のような形をしたマスクを着けた男。この男が治崎…。

 

()()()()()()とは…随分と古典的(クラシック)な物着けてますね。インテリヤクザみたいな外見の割に、()()()でも信奉してんですかね?」

 

 一方の雷鳥兄ちゃんは、治崎をそう評していた。瘴気論…聞いた事が無い言葉だ。

 

「瘴気論を信奉しているかどうかは不明だが、潔癖症ではあるようだ」

「あぁ…なるほど」

 

 サー・ナイトアイの潔癖症という言葉を聞き、納得したように頷く雷鳥兄ちゃん。あとで、どういう事なのか聞いてみよう。それにしても…

 

指定敵団体(ヤクザ者)…今はそういう人達って、大人しいイメージですけど…」

 

 今の時代、昔ながらのヤクザは絶滅危惧種。まともに活動しているヤクザなんて、片手で足りる筈だ…

 

「過去に大解体されてるからね。でも、この治崎って奴は、そんな連中をどういう訳か集め始めている」

 

 僕のそんな心中を察したのか、バブルガールさんが補足説明を加えるけど―

 

「数日前には、あの(ヴィラン)連合とも接触を計っているわ」

 

 その次に明かされた情報は、僕達を驚愕させるに十分だった。

 

(ヴィラン)連合…!?」

「えぇ、でも顛末は不明よ」

「そして、奴が何か悪事を企んでいるという証拠も掴めていない。その為、死穢八齋會(しえはっさいかい)()()()()()()()(ヴィラン)扱いが出来ない状態だ」

「我がナイトアイ事務所が狙うのは、奴らの犯行証拠(シッポ)。くれぐれも向こうに気取られぬように」

「「「「イエッサー!!」」」」

 

 サー・ナイトアイの声に元気よく答え、僕と雷鳥兄ちゃんは通形先輩と共に、行動を開始した。

 ………15分と経たない内に、思わぬ出会いをする事になるなんて、この時は想像もしていなかった。

 

 

「そう言えば、俺のヒーロー名教えてなかったね!」

 

 僕達の緊張を解そうとしたのか、市街地のパトロールを行いながら、そんなことを言い出す通形先輩。

 うん、初対面の時は、色々と考えが足りない人だと思ったけど…良い人であることは間違いないみたいだ。

 

「俺は『ルミリオン』! 全て(オール)とまではいかないが、百万(ミリオン)を救う人間になれるよう命名した! 『レミオロメン』みたいで格好良いだろ?」

「レミオロメン…」

 

 駄目だ。レミオロメンが何を意味するのか、全くわからない。雷鳥兄ちゃんは頷いているから…瘴気論と合わせて、後で質問しよう。

 

戦闘服(コスチューム)を纏って街に出れば、俺達は()()()()だ! 油断せずにいこう! ライコウ! グリュフリート!」

「はい! ルミリオン!」

「微力を尽くします」 

 

 そんな話をしながら、パトロールを続けていると―

 

「ッ!」

 

 路地から飛び出してきた女の子が、僕とぶつかりそうになった。

 

「っと」

 

 僕は女の子を咄嗟に受け止めると、そのまま片膝を突いて、女の子と目線を合わせ―

 

「ごめんね。大丈夫だった?」

 

 笑顔を見せながら、声をかけた。

 

「……あ」

 

 でも、女の子は怯えた表情を見せるばかりで、答えてはくれない。これは…()()()()()()()

 

「駄目じゃないか。ヒーローに迷惑かけちゃあ」

 

 次の瞬間聞こえてきた声。視線を女の子から外し上に動かしていくと…

 

「帰るぞ。エリ」

 

 そこには写真の男。死穢八齋會若頭、治崎が立っていた。僕は湧き上がる動揺を必死に抑え、平静を装って立ち上がる。

 

「うちの娘がすみませんね。ヒーロー」

「遊び盛りで、怪我が多いんですよ。困ったものです」

 

 穏やかな笑みを見せながら、この子の保護者を名乗る治崎。だけど、それは()()()()()()だ。

 僕に向けている穏やかな笑みは、上っ面だけ。心の中では碌でもない事を考えていると見て、間違いない。

 

「………」

 

 震えながら、僕の戦闘服(コスチューム)の裾を掴んでいるこの子が何よりの証拠だ。

 

「いえ、こちらこそ注意が散漫になっていたみたいで…その素敵なマスクは、八齋會の方ですね! この辺じゃ有名だって聞きました」

「ええ、マスクの事は気になさらず…()()に敏感でして…」

 

 他愛もない会話をしながら、全力で考えを巡らせる。治崎(こいつ)にこの子を渡してはいけない。だから、何とかしてこの子を保護しないと…だけど、どうやって?

 下手に騒ぎを起こせば、サー・ナイトアイ達が調べている事を察知されてしまう。それは何としてでも避けないといけない。

 

「お三方とも初めて見るヒーローだ。新人ですか? 随分とお若い」

「…えぇ、まだ新人なんで、緊張しちゃって! さぁ、そろそろ行こうか。時間が押してるぜ」

 

 見かねたルミリオンが間に入り、僕をその場から連れ出そうとするけど―

 

「どこの事務所所属なんです?」

 

 治崎の雰囲気が変わり始めた。拙い…明らかに警戒し始めてる。

 

「まだ学生ですよ! 所属だなんておこがましいくらいのヒヨッ子ですて…職場体験で色々回らせてもらっているんです」

「では、我々。昼までにこの区画を回らなくてはいかんので! さぁ、行くよ!」

 

 ルミリオンもそれを察知したのか、半ば無理やり話を打ち切った。駄目だ…時間が足りない!

 

「失礼ながら……」

 

 その時、今まで沈黙を貫いていた雷鳥兄ちゃんが動いた。僕の戦闘服(コスチューム)の裾を掴んだままの女の子を庇う様に、治崎の前に立ち―

 

「あなた…この子の()()()()()()ですよね?」

 

 笑顔でそう断言した。

 

 

雷鳥side

 

「あなた…この子の()()()()()()ですよね?」

 

 治崎の前に立ち、笑顔でそう告げる。前世の記憶(原作知識)があやふやとはいえ、あの女の子が()()()()だって事は何となく覚えているからな。何とか、保護出来るよう頑張らないとな。

 

「父親じゃないとは…何の根拠があって、そんなことを?」

「いやぁ、実は俺…“個性”の関係で、()()()()()()()()()()()()()()んですよ。あなたはさっきこの子の事を『娘』と言った。でも、それは文字通り…真っ赤な嘘」

「………そうですね。たしかに、私はその子の父親ではありません」

 

 随分あっさりと認めたな…次はどう出る?

 

「本当の事を言いましょう。訳あってその子の両親から預かっているんです。説明が複雑になるので、親だと称したんですよ」

 

 なるほど、()()()()()

 

「あぁ、そういう事でしたか」

「えぇ、誤解を招く表現をしてしまい、申し訳ない」

「いえいえ、誰しも事情がありますからね」

 

 お互い上っ面だけの笑顔を向け、会話を交わす。恐らく、治崎は上手く誤魔化せたと思っているだろうが…

 

「ご理解いただけましたか。では、その子を…」

「では、あなたが()()()()()()()()()()()()()()()を見せてください」

 

 残念だが、そうは問屋が卸さない。

 

「証、明…」

「えぇ、例えばこの子の()()()とか。さっき言っていたじゃないですか。『遊び盛りで、怪我が多いんですよ』って、ご両親から預かっているなら、保険証なんかも預かってますよね?」

「そ、それは…」

 

 僅かに動揺を見せる治崎。俺は隙を見て、背後にいる出久にハンドサインを送る。サインの内容は『俺の(オレノ) 話に(ハナシニ) 合わせろ(アワセロ)

 

「証明出来る物をお見せ頂けないと…酷く怯えているこの子をお渡しする事は出来ませんね。如何せん、そういうルールですので」

「…ルール?」

「はい、ご存じありませんか? ヒーロー活動における基本的な法律なのですが」

「………残念ながら不勉強でして」

 

 露骨に顔を歪ませながら、声を搾り出す治崎。

 前世の話になるが、こういうインテリヤクザの類は往々にして、法的にグレーな部分を利用する事で、利益を得ていた。

 そして、違法と合法の狭間を行き来しているが故に、法律という物にはすこぶる敏感だった。

 前世ですらそうだったのだ。常に監視され、細々と活動しているこの世界のヤクザは…言うまでもあるまい。

 

「この子の全身、包帯だらけです。ただ遊んでいるだけで、こうなるのは…不自然ですよね?」

「それに、こんな小さな子が声も出さずに怯えるなんて、普通じゃない。正直に言って、虐待が疑われる事例です。申し訳ありませんが、この子は僕達が一時保護します」

「あくまでも、一時的な処置ですので。あなたがこの子の保護者だと確認出来て、虐待の事実が確認出来なければ、すぐにお返ししますので」

 

 出久の声に続き、俺も営業スマイル満開で、治崎にそう宣告する。

 

「ふざけた事を…」

 

 流石に治崎も我慢の限界だったのだろう。取り繕った笑顔すら捨てて、俺達を睨みつけるが―

 

「ねぇ、何か揉めてない?」

「ヒーローと…あれ、ヤクザじゃね? ほら、シエ…何とかカイ」

「ヤクザが何かやらかしたのか?」

 

 俺と出久が時間を稼いだ事で、周囲の人々が異常を察知し、野次馬となり始めていた。こうなってしまえば、()()()()()()だ。

 

「………わかりました。証明出来る物を、お持ちすれば良いんですね?」

「えぇ、お願いします。あ、連絡は児童相談所まで」

 

 治崎にそう言い残し、俺達は女の子を連れて、その場を後にする。

 さて、サー・ナイトアイへの言い訳を考えないとな。

 

 

オーバーホール(治崎)side

 

「クソ…英雄症候群の病人どもが…」

 

 計画の『核』となる壊理を、まさかこんな形で奪われるとは…想定外にも程があるぞ。

 俺は地下の施設へと続く通路を歩きながら、狂ってしまった計画の修正案を考え続ける。

 

「す…すんません! 若頭! ちょっと目を離した隙に、ガキが―」

 

 壊理を逃がすという大失態を犯しながら、見苦しく言い訳を並べるクズを一瞬で()()するが、苛立ちは収まりそうにない。

 

「掃除をしておけ」

 

 壁の汚い染みとなったクズを片付けるよう命じながら、地下の研究施設に足を踏み入れた俺は―

 

「想定は…しておくべきだな」 

 

 想定出来る幾つかの事態への対応策を練っていく。

 

「学生と言っていたな…ガキはこれだから嫌なんだ。病に侵されている事にも気づかず、本気で何者かになれると思い込んでいる」

 

 汚らしい病人が、俺の手を煩わせる…やはり、こんな世界は変革しなくては… 




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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