出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。
お楽しみ頂ければ、幸いです。


第20話:暗躍と想定外

雷鳥side

 

「えぇ、お願いします。あ、連絡は児童相談所まで」

 

 治崎にそう言い残した後、保護した女の子(エリちゃん)を連れて、その場を後にした俺達だったが―

 

「…先輩(ルミリオン)出久(グリュンフリート)

「うん、わかってるよ」

「15m後方…3人だね」

「ご名答」

 

 3分と経たない内に、俺達を尾行する気配に気が付いた。

 

「おっと、靴紐が…」

 

 その場に立ち止まり、解けた靴紐を結び直すフリをしながら、様子を窺えば…3人のチンピラが物陰からこちらを窺っているのが確認出来た。

 治崎が差し向けたのか、独自の判断で動いているのかはわからないが…治崎が差し向けたのであれば、もっと()()()()()()()を使うべきだったな。

 俺達の戦闘服(コスチューム)が目印になるから、気付かれ難くする為に距離を取った。それは良いが…身の隠し方が下手すぎる。

 

「あいつらは俺が引き受けます。先輩(ルミリオン)出久(グリュンフリート)は、エリちゃんを連れて先に戻っててください」

「ハハッ、勝手に仕切らないでよ。と言いたいけど、この中で一番強いのは吸阪君(ライコウ)だから仕方ないね!」

 

 そう言って苦笑いする先輩(ルミリオン)。だが、話が早いのはありがたい。

 

「それじゃあ、次の角を曲がったらダッシュ。ということで」

「了解」

「エリちゃん、ちょっとごめんね」

 

 角を曲がる直前、ダッシュに備えてエリちゃんを抱きかかえる出久(グリュンフリート)

 

「…あ………」

 

 それによって、何かを察したのだろう。エリちゃんは怯えたような表情を見せるが―

 

「大丈夫! こう見えてもお兄さん、滅茶苦茶強いから!」

 

 俺は敢えて明るく声をかけ、角を曲がると同時に走り出した出久(グリュンフリート)達と別れるように、近くの路地裏へ姿を隠す。その直後。

 

「クソッ! 逃げられた!」

「まさか、尾行が気付かれてたのかよ!?」

「ア、アニキに連絡しねぇと!」

 

 尾行対象に逃げられた事を察したチンピラ3人組が、駆け込んできた。さぁ、始めるとするか。

 

「やぁ、ど三一(さんぴん)ども。ちょっと話を聞かせてもらうぞ」

 

 

オーバーホール(治崎)side

 

「わ、若頭! も、申し訳ない!」

 

 耳障りな大声で謝罪しながら、俺の前で土下座する中年の構成員。こいつは、俺に何の相談もなく、()()()()()()()()

 壊理を連れて行ったあのガキどもを、下っ端に尾行させる。壊理を取り戻せていたなら、何の問題は無かったが、尾行は見事に失敗。

 全員無様に叩きのめされて逮捕された…要するに、ただ状況を悪化させただけだ。

 

「この失態、責任を取らせていただきます」

「指でも詰めるか? やめておけ、お前の指なんかにどれだけの価値がある?」

 

 懐から短刀(ドス)を取り出したところで、俺はそう声をかけ―

 

「たとえ、両手の指全部詰めたとしても、()()()()()()んだよ」

 

 一瞬で奴を()()する。余計な手間を取らせてくれた…これだから、()()()()()は嫌いなんだ。

 床に出来た染みの掃除を部下に任せ、俺は悪化した状況への対策を考える。スマホが鳴り出したのは、その時だ。

 

「もしもし…」

『治崎さんかい? 先日はどうも、死柄木だ』

 

 電話を掛けてきたのは、(ヴィラン)連合の死柄木弔。返事を寄越すまでに4日。まぁ、許容範囲か…。

 

「連絡が来て、ホッとしているよ。それで? 良い返事を頂けるのかな?」

 

 ここで(ヴィラン)連合と手を組む事が出来れば、状況をひっくり返す事は十分可能だ。この際、多少の譲歩は止む無し―

 

『悪いんだが、先日の話は()()()()()にしてくれ』

「………は?」

 

 なんだと、何を言っている? 死穢八齋會(うち)と組む事は、お前らにも相当なメリットがある筈だろう!?

 

『理解出来ない様子だな。おたくと手を組めない理由を話そうか?』

「……是非とも」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()だよ』

「ッ!?」

 

 まさか、さっきのやり取りが見られていた? いや、死柄木弔やその取り巻きの姿は、無かった筈だ!

 

『俺達の姿が無かったから、見られていないとでも思ったか? だったら、俺達を甘く見過ぎだよ』

「………」

『天下の往来で()()()()()を起こすなんて、ヒーローにマークしてください。と言っているようなものだ…()()()()()()()んじゃないか?』

『おたくらと手を組んだら、俺達の身も危険に晒されそうだ。だから、手は組めない。理解したか?』

「ま、待ってくれ! まだ話していなかったが、取って置きのネタがある! それを聞けば―」

『悪いが、どんな儲け話も聞く気はない。話は終わりだ』

 

 呆気なく終わってしまった通話。慌ててこちらから掛け直すが、既に着信拒否にされていた…。

 

「………ぬぁぁぁぁぁっ!!」

 

 怒りのままに“個性”を発動し、部屋に置かれた物を手当たり次第に分解していく。何故だ! 何故こうなった! 計画が…計画が狂っていく!

 

 

雷鳥side

 

 さて、尾行していた3人のチンピラを()()()()俺は、出久達の30分遅れでナイトアイ事務所に戻り―

 

「…という訳で、俺達を尾行していた3人は、無事に警察へ引き渡してきました」

 

 ナイトアイへ事態を報告した。

 

「了解した。後でその件に関しての報告書を書いてもらう。書式等に関しては、そこにいるセンチピーダーに聞くように」

「サー・ナイトアイのサイドキックを務めております。センチピーダーです。よろしく」

「ライコウです。よろしくお願いします!」

 

 ナイトアイの指示を受けた後、ここ数日別行動を取っていたもう1人のサイドキック、センチピーダーと挨拶を交わし、いよいよ()()に入る。

 

「さて、君達が保護したあのエリという少女に関してだが…バブルガール」

「はい! 同性ということで、私がエリちゃんの対応を行いました。今は、隣の仮眠室で眠っています。それで、その…言い難いのですが…」

 

 エリちゃんの状態について、言い淀んでしまうバブルガール。それを―

 

「バブルガール、報告は一息にスラスラと行うように」

「バブルガールさん、大丈夫です。俺達も()()はしています」

 

 ナイトアイと俺が促す。すると、バブルガールも覚悟を決め、話し始めてくれた。

 

 

「………予想はしていたけど、最悪だ」

 

 バブルガールさんの話を聞き、顔を大きく歪ませる出久。いや、出久だけじゃない。この部屋にいる全員が、顔を歪ませている。

 エリちゃんの全身に巻かれた包帯。その下にあったのは夥しい数の切創*1や注射痕。

 更に簡易検査を行った結果、かなりの量の()()が抜き取られていた事もわかった。

 詳しくは精密検査を行う必要があるが…栄養状態も良くないようで、低身長、低体重なのは間違いないだろう。

 

「どうして、どうして治崎は、エリちゃんをそんな目にあわせたんだ!」

 

 血が出るほど拳を握りしめ、治崎の行いに怒りを露にする通形先輩に対し―

 

「治崎が嗜好的児童性虐待者(チャイルド・マレスター)かつ暴君型サディストという、絵に描いたような糞野郎だという可能性は?」

「可能性は否定出来ないが、他に大きな理由がある筈だ」

 

 センチピーダーとナイトアイは、努めて冷静に分析を行っていた。

 俺は俺で、何かヒントになるものは無いかと、前世の記憶を辿ってみるが…これといった成果は無く、室内を重苦しい雰囲気が包み始めたその時―

 

「お話中失礼します。サー・ナイトアイ、メール便が届いたのでお持ちしました」

 

 事務方を担当している女性スタッフが持ってきたメール便。それが事態を動かす切っ掛けとなった。

 

 

サー・ナイトアイside

 

 女性スタッフが持ってきた封筒を受け取り、宛名を確認したが…

 

「山田太郎…明らかに偽名だな」

 

 封筒の中身への警戒レベルを一段階上げながら、ペーパーナイフを使って封筒を開封していく。

 爆発物の類が入っていない事は既に確認済みだが…中には何が入っている?

 

「これは…」

 

 中に入っていたのは、書類の束と、手書きの手紙が1枚。危険物の類が入っていないことに安堵しつつ、手紙に目をやると―

 

「なん、だと…」

 

 手紙の内容と送り主。その両方に、私は驚きを隠せなかった。

 

「サー、何事ですか?」

「どうしたんですか? サー」

 

 心配するセンチピーダーとバブルガール、そしてミリオ達を手で制しつつ、私は手紙を読み進め…そのまま書類の束へと視線を走らせる。

 

「何という事だ…治崎がこのような事を…」

 

 書類を一通り読み終えた私は、手紙と書類を()()()()読むようにセンチピーダー達へ伝え、一時オフィスを離れた。

 その足で仮眠室に向かい、ベッドで眠っている少女…エリの様子を確認する。

 

「こんな幼い子が…」

 

 あの書類に書かれてある事が全て事実なら、この子の全身に付いた傷の説明もつく。何とおぞましい事だ…。

 そして、そのおぞましい事を実行していた治崎は、鬼畜という言葉ではとても表現しきれないほどの極悪人だ。

 

「ヒーローとして、いや1人の人間として、許す訳にはいかんな」

 

 エリの寝顔を見ながら、私は何としてもこの子を守ろうと決意を固めるのだった。

 

 

出久side

 

 ナイトアイがオフィスを出て15分後。

 

「全員、手紙と書類は読んだな?」

 

 そんな声と共に、ナイトアイが戻ってきた。僕達はナイトアイの言葉に頷き、彼が席に着き、次の言葉を発するのを待つ。

 

「今後は、書類に書かれていた内容、『“個性”を破壊する弾丸』の存在と、そのメカニズム。そして、弾丸…正確には、弾丸に仕込まれている薬品の()()については、全て真実であるとの前提の元、話を進めていく。全員、異議は無いな?」

「「「「はい!」」」」

 

 ナイトアイの声に僕達は答え、話し合いが再開した。

 

「では、ライコウとグリュンフリート。この書類を、()()()()()()()()()()()()()()()()()()を2人に尋ねたい」

「そうですね……少なくとも、この手紙に書かれている『義憤に駆られた』とか、『(ヴィラン)であっても通さなければならない筋はある』とかいうのは…建前でしょうね」

 

 ナイトアイの問いかけに、少し考えた後答える雷鳥兄ちゃん。 

 そう、この手紙と書類の送り主は、死柄木弔だった。死柄木は、手紙の中で―

 

 -人の血や肉を材料にした弾丸を作り出すなど、鬼畜にも劣る浅ましい蛮行である-

 -人としての道を外れた治崎に対し、我々は義憤に駆られた-

 -(ヴィラン)であっても通さなければならない筋はある。よって、我々は治崎の行いを告発するものである-

 

 などと書いていた。うん、文字面は良いけど…100%本心とは言えないだろう。

 

「推測ですが…」

 

 僕も考えを纏め、意見を述べていく。

 

「数日前に(ヴィラン)連合と治崎が接触した時に、何かしらのトラブルがあったのではないでしょうか。死柄木はその事で、治崎に強い敵意を抱いた」

「死柄木は考えた筈です。どうすれば、治崎に一番()()()()()()()()()()()…その最中に、ナイトアイ事務所(ここ)が、死穢八斎會を調べている事を知ったとしたら?」

「…ヒーローに情報を流して、死穢八斎會を潰すように仕向ければ、自分の手は一切汚さず、治崎への復讐が出来る…ってところか?」

「そういう事だね」

 

 流石は雷鳥兄ちゃん。僕の考えをすぐに理解してくれた。

 

「弾丸の情報については、どうだ? これほど詳細に調べるには、実物を入手する必要があると思うが…」

「単純に考えるなら、手を組むフリをして内部に潜りこみ、情報を得ている…でしょうか」

「もしくは…治崎と揉めた時に、治崎側が弾丸を使ったって可能性もあるな。手作りの弾丸だ。()()()の類があってもおかしくない」

「………どちらにせよ、整合性は取れるか。よし」

「警察と協力し、近日中に死穢八斎會事務所への家宅捜索を行う。目的は治崎、並びに関係者全員の確保。そして“個性”を破壊する弾丸全ての押収とする」

 

 ナイトアイの声に僕達は大きく頷く。治崎の身柄は勿論、こんな弾丸(もの)は1発だって世に出しちゃいけない。

 

「それから…あのエリという少女に関してだが、早い内に安全な場所へ移動させた方が良い。事務所(ここ)死穢八斎會事務所(敵地)に近過ぎる。治崎達が勘付き、奪い返しに来ないとも限らない」

「たしかに、その可能性は高いと思われます」

「しかし、サー。安全な場所と言っても…一般の病院という訳にはいきませんし、警察に保護を求めるのは…正直不安があります」

「たしかに、“個性”の使用が許可されていない警察では、(ヴィラン)の襲撃に対し、十分な対応が出来ないですね…」

 

 エリちゃんの避難先についてナイトアイ、センチピーダー、バブルガールさんが意見を交わす中―

 

「それでしたら…1つ当てがあります」

 

 雷鳥兄ちゃんが手を挙げた。1つ当てがある…もしかして!

*1
主に刃物によって出来た切り傷




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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