出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2 作:SS_TAKERU
お楽しみ頂ければ、幸いです。
雷鳥side
「えぇ、お願いします。あ、連絡は児童相談所まで」
治崎にそう言い残した後、
「…
「うん、わかってるよ」
「15m後方…3人だね」
「ご名答」
3分と経たない内に、俺達を尾行する気配に気が付いた。
「おっと、靴紐が…」
その場に立ち止まり、解けた靴紐を結び直すフリをしながら、様子を窺えば…3人のチンピラが物陰からこちらを窺っているのが確認出来た。
治崎が差し向けたのか、独自の判断で動いているのかはわからないが…治崎が差し向けたのであれば、もっと
俺達の
「あいつらは俺が引き受けます。
「ハハッ、勝手に仕切らないでよ。と言いたいけど、この中で一番強いのは
そう言って苦笑いする
「それじゃあ、次の角を曲がったらダッシュ。ということで」
「了解」
「エリちゃん、ちょっとごめんね」
角を曲がる直前、ダッシュに備えてエリちゃんを抱きかかえる
「…あ………」
それによって、何かを察したのだろう。エリちゃんは怯えたような表情を見せるが―
「大丈夫! こう見えてもお兄さん、滅茶苦茶強いから!」
俺は敢えて明るく声をかけ、角を曲がると同時に走り出した
「クソッ! 逃げられた!」
「まさか、尾行が気付かれてたのかよ!?」
「ア、アニキに連絡しねぇと!」
尾行対象に逃げられた事を察したチンピラ3人組が、駆け込んできた。さぁ、始めるとするか。
「やぁ、ど
「わ、若頭! も、申し訳ない!」
耳障りな大声で謝罪しながら、俺の前で土下座する中年の構成員。こいつは、俺に何の相談もなく、
壊理を連れて行ったあのガキどもを、下っ端に尾行させる。壊理を取り戻せていたなら、何の問題は無かったが、尾行は見事に失敗。
全員無様に叩きのめされて逮捕された…要するに、ただ状況を悪化させただけだ。
「この失態、責任を取らせていただきます」
「指でも詰めるか? やめておけ、お前の指なんかにどれだけの価値がある?」
懐から
「たとえ、両手の指全部詰めたとしても、
一瞬で奴を
床に出来た染みの掃除を部下に任せ、俺は悪化した状況への対策を考える。スマホが鳴り出したのは、その時だ。
「もしもし…」
『治崎さんかい? 先日はどうも、死柄木だ』
電話を掛けてきたのは、
「連絡が来て、ホッとしているよ。それで? 良い返事を頂けるのかな?」
ここで
『悪いんだが、先日の話は
「………は?」
なんだと、何を言っている?
『理解出来ない様子だな。おたくと手を組めない理由を話そうか?』
「……是非とも」
『
「ッ!?」
まさか、さっきのやり取りが見られていた? いや、死柄木弔やその取り巻きの姿は、無かった筈だ!
『俺達の姿が無かったから、見られていないとでも思ったか? だったら、俺達を甘く見過ぎだよ』
「………」
『天下の往来で
『おたくらと手を組んだら、俺達の身も危険に晒されそうだ。だから、手は組めない。理解したか?』
「ま、待ってくれ! まだ話していなかったが、取って置きのネタがある! それを聞けば―」
『悪いが、どんな儲け話も聞く気はない。話は終わりだ』
呆気なく終わってしまった通話。慌ててこちらから掛け直すが、既に着信拒否にされていた…。
「………ぬぁぁぁぁぁっ!!」
怒りのままに“個性”を発動し、部屋に置かれた物を手当たり次第に分解していく。何故だ! 何故こうなった! 計画が…計画が狂っていく!
雷鳥side
さて、尾行していた3人のチンピラを
「…という訳で、俺達を尾行していた3人は、無事に警察へ引き渡してきました」
ナイトアイへ事態を報告した。
「了解した。後でその件に関しての報告書を書いてもらう。書式等に関しては、そこにいるセンチピーダーに聞くように」
「サー・ナイトアイのサイドキックを務めております。センチピーダーです。よろしく」
「ライコウです。よろしくお願いします!」
ナイトアイの指示を受けた後、ここ数日別行動を取っていたもう1人のサイドキック、センチピーダーと挨拶を交わし、いよいよ
「さて、君達が保護したあのエリという少女に関してだが…バブルガール」
「はい! 同性ということで、私がエリちゃんの対応を行いました。今は、隣の仮眠室で眠っています。それで、その…言い難いのですが…」
エリちゃんの状態について、言い淀んでしまうバブルガール。それを―
「バブルガール、報告は一息にスラスラと行うように」
「バブルガールさん、大丈夫です。俺達も
ナイトアイと俺が促す。すると、バブルガールも覚悟を決め、話し始めてくれた。
「………予想はしていたけど、最悪だ」
バブルガールさんの話を聞き、顔を大きく歪ませる出久。いや、出久だけじゃない。この部屋にいる全員が、顔を歪ませている。
エリちゃんの全身に巻かれた包帯。その下にあったのは夥しい数の切創*1や注射痕。
更に簡易検査を行った結果、かなりの量の
詳しくは精密検査を行う必要があるが…栄養状態も良くないようで、低身長、低体重なのは間違いないだろう。
「どうして、どうして治崎は、エリちゃんをそんな目にあわせたんだ!」
血が出るほど拳を握りしめ、治崎の行いに怒りを露にする通形先輩に対し―
「治崎が
「可能性は否定出来ないが、他に大きな理由がある筈だ」
センチピーダーとナイトアイは、努めて冷静に分析を行っていた。
俺は俺で、何かヒントになるものは無いかと、前世の記憶を辿ってみるが…これといった成果は無く、室内を重苦しい雰囲気が包み始めたその時―
「お話中失礼します。サー・ナイトアイ、メール便が届いたのでお持ちしました」
事務方を担当している女性スタッフが持ってきたメール便。それが事態を動かす切っ掛けとなった。
サー・ナイトアイside
女性スタッフが持ってきた封筒を受け取り、宛名を確認したが…
「山田太郎…明らかに偽名だな」
封筒の中身への警戒レベルを一段階上げながら、ペーパーナイフを使って封筒を開封していく。
爆発物の類が入っていない事は既に確認済みだが…中には何が入っている?
「これは…」
中に入っていたのは、書類の束と、手書きの手紙が1枚。危険物の類が入っていないことに安堵しつつ、手紙に目をやると―
「なん、だと…」
手紙の内容と送り主。その両方に、私は驚きを隠せなかった。
「サー、何事ですか?」
「どうしたんですか? サー」
心配するセンチピーダーとバブルガール、そしてミリオ達を手で制しつつ、私は手紙を読み進め…そのまま書類の束へと視線を走らせる。
「何という事だ…治崎がこのような事を…」
書類を一通り読み終えた私は、手紙と書類を
その足で仮眠室に向かい、ベッドで眠っている少女…エリの様子を確認する。
「こんな幼い子が…」
あの書類に書かれてある事が全て事実なら、この子の全身に付いた傷の説明もつく。何とおぞましい事だ…。
そして、そのおぞましい事を実行していた治崎は、鬼畜という言葉ではとても表現しきれないほどの極悪人だ。
「ヒーローとして、いや1人の人間として、許す訳にはいかんな」
エリの寝顔を見ながら、私は何としてもこの子を守ろうと決意を固めるのだった。
出久side
ナイトアイがオフィスを出て15分後。
「全員、手紙と書類は読んだな?」
そんな声と共に、ナイトアイが戻ってきた。僕達はナイトアイの言葉に頷き、彼が席に着き、次の言葉を発するのを待つ。
「今後は、書類に書かれていた内容、『“個性”を破壊する弾丸』の存在と、そのメカニズム。そして、弾丸…正確には、弾丸に仕込まれている薬品の
「「「「はい!」」」」
ナイトアイの声に僕達は答え、話し合いが再開した。
「では、ライコウとグリュンフリート。この書類を、
「そうですね……少なくとも、この手紙に書かれている『義憤に駆られた』とか、『
ナイトアイの問いかけに、少し考えた後答える雷鳥兄ちゃん。
そう、この手紙と書類の送り主は、死柄木弔だった。死柄木は、手紙の中で―
-人の血や肉を材料にした弾丸を作り出すなど、鬼畜にも劣る浅ましい蛮行である-
-人としての道を外れた治崎に対し、我々は義憤に駆られた-
-
などと書いていた。うん、文字面は良いけど…100%本心とは言えないだろう。
「推測ですが…」
僕も考えを纏め、意見を述べていく。
「数日前に
「死柄木は考えた筈です。どうすれば、治崎に一番
「…ヒーローに情報を流して、死穢八斎會を潰すように仕向ければ、自分の手は一切汚さず、治崎への復讐が出来る…ってところか?」
「そういう事だね」
流石は雷鳥兄ちゃん。僕の考えをすぐに理解してくれた。
「弾丸の情報については、どうだ? これほど詳細に調べるには、実物を入手する必要があると思うが…」
「単純に考えるなら、手を組むフリをして内部に潜りこみ、情報を得ている…でしょうか」
「もしくは…治崎と揉めた時に、治崎側が弾丸を使ったって可能性もあるな。手作りの弾丸だ。
「………どちらにせよ、整合性は取れるか。よし」
「警察と協力し、近日中に死穢八斎會事務所への家宅捜索を行う。目的は治崎、並びに関係者全員の確保。そして“個性”を破壊する弾丸全ての押収とする」
ナイトアイの声に僕達は大きく頷く。治崎の身柄は勿論、こんな
「それから…あのエリという少女に関してだが、早い内に安全な場所へ移動させた方が良い。
「たしかに、その可能性は高いと思われます」
「しかし、サー。安全な場所と言っても…一般の病院という訳にはいきませんし、警察に保護を求めるのは…正直不安があります」
「たしかに、“個性”の使用が許可されていない警察では、
エリちゃんの避難先についてナイトアイ、センチピーダー、バブルガールさんが意見を交わす中―
「それでしたら…1つ当てがあります」
雷鳥兄ちゃんが手を挙げた。1つ当てがある…もしかして!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。