出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2 作:SS_TAKERU
お楽しみ頂ければ、幸いです。
午前中の授業を終え、書類仕事も済ませた昼休み。俺は昼食を摂る為、大食堂に足を運んでいた。
「ここが最後尾か」
生徒達に混ざって列に並び、順番を待つ。少し前なら不合理だ何だと理由をつけて避けていたが…1週間も続ければ慣れたものだ。
「日替わりを」
大食堂で頼むのは決まって日替わりランチ。味は保証されているし、メニューも毎日変わるから食べ飽きる事も無い。
メニューが豊富過ぎるほど豊富な大食堂で、何を食べるか悩まずに済むのは、実に合理的だ。
「はい、日替わりランチお待たせ! ラタトゥイユは大盛りにしておきましたよ!」
ランチラッシュが直々に配膳したトレイを受け取り、空いてる席に腰を下ろすと―
「ふむ…」
食べ始める前に、献立の書かれたカードに目を通していく。如何なる時も情報を入手する事を怠ってはならないからな。
今日の献立は―
・照り焼きチキンとごぼうサラダのピタパンサンド
・ラタトゥイユ*1
・ファラフェル*2
・コーンポタージュ
以上4品。料理名だけ聞いてもよくわからんが、簡単な説明が書いてあるのはありがたい。さて、食べるとするか。
「いただきます」
キチンと手を合わせ、食べ始める。日替わりランチは味の良さやメニューの豊富もだが、栄養のバランスが取れているのも都合が良い。
吸阪や蛙吹から『3食キチンと野菜を摂れ』『炭水化物だけで食事を済ませるな』などと散々言われているからな。
担任として、教え子の頼みを端から無視する訳にもいかん。
「ラ…」
…ん?
「ラタトゥイユにピタパンサンドって!? なに、お洒落なCafeみたいなランチやってんだよ! イレイザー!!」
俺の昼食を目にした途端、騒ぎ出すマイク。毎回毎回この騒ぎ様…いい加減に慣れてほしいものだ。
「あぁ、明日の天気がマジで心配だぜ! いや、火山か? 地震か? 隕せ―」
あまりに煩いので、捕縛布で締め上げて黙らせる。俺がまともな昼飯を食ったくらいで、騒ぎすぎだ…。
「ふぅ…」
昼食を食べ終え、残り時間で仮眠をとろうと立ち上がったその時―
「吸阪から…だと」
突然鳴り出したスマホと、表示された名前に
「……もしもし」
俺は瞬時に心を落ち着け、通話を開始する。
『相澤先生、吸阪です。お昼休み中にすみません。ちょっとご相談したい事が…』
雷鳥side
『…状況は解った。校長の方には、俺の方から話を通しておく』
「ありがとうございます!」
相澤先生の声に、俺は深々と頭を下げながらお礼の言葉を口にする。そう、先程当てがあると言っていたのは、雄英高校の事だ。
教職員としてヒーローが多数常駐しているし、雄英バリアーなどセキュリティも充実。オマケに今は全寮制だから、空き部屋をエリちゃんが使う事も出来る。俺の知る限り、最も安全にエリちゃんを匿える場所だ。
『それで、他に俺が出来る事はあるか?』
「それでは、八百万の力を借りたいので…外出の許可を出して頂けますか?」
『わかった。すぐに出しておく』
「よろしくお願いします!」
相澤先生との通話を終えた俺は、すぐに八百万へ連絡。話せる範囲で事情を話し、協力を求めると―
『お任せください! すぐに手配いたしますわ!』
八百万は協力を快諾してくれた。
「助かるよ、八百万。それで…時間はどのくらいかかる?」
『…2時間。いえ、90分だけお待ちください。
だから、八百万にヘリを手配してもらうつもりだったが…まぁ、いいか。
さて、待つこと80分。
『吸阪さん、お待たせしました! あと10分ほどでそちらに到着します。屋上でお待ち願えますか?』
八百万から連絡が来た。すぐさま俺と出久、サー・ナイトアイは、目を覚ましていたエリちゃんと共に屋上へ、センチピーダーとバブルガールさんは周辺の安全を確保する為に、事務所の外へと向かう。
「エリちゃん、今からお迎えが来るんだ。空を飛んでお出かけするよ」
「………空?」
出久の言葉にキョトンとした顔を見せるエリちゃん。まぁ、無理もない反応だ。
「大丈夫だ。何も怖い事は無い」
「むしろ、ワクワクするかもしれないね」
ナイトアイや俺がそんなフォローを入れていると―
「雷鳥兄ちゃん、来たよ!」
時間通りに迎えのヘリがやって来た。
『吸阪さん、緑谷さん、お待たせいたしました!』
一度に10人以上が乗れそうな機体から聞こえてくる八百万の声。機体の側面には『Y・S・S』のロゴが見える。
「
「クラスメートが、創業家の1人娘でして」
ナイトアイの呟きにそう答えつつ、エリちゃんに視線を送ると―
「………」
着陸態勢に入ったヘリコプターを、ポカンとした顔で見つめていた。どうやら、かなりの衝撃だったようだな。気持ちはわかる。
そうしている内に、ヘリコプターは無事に着陸。ドアが開き、中からパンツスーツ姿の女性6人と、八百万が出てきた。
……あの6人は全員
「吸阪さん、緑谷さん、お待たせして申し訳ありません」
「いや、時間ぴったり。流石は八百万だ」
「それで、そちらの皆さんが…」
「はい、お父様にお願いして、この方々に来ていただきました。全員が、ヒーロー免許を保持する凄腕の
八百万の声に合わせ、見事な敬礼を見せてくれる6人の
「サー・ナイトアイ。警護対象は、未就学の女児と伺っておりますが」
「あぁ、現在調査中の為、詳細についてはお話出来ないが…ある
「あのように幼い子が…犯人は
「その意見に関しては、全面的に賛成だ」
リーダー格の女性とサー・ナイトアイが話をしている間に、俺達とエリちゃんは5人の
「私は、八百万百と申します。よろしくお願いしますね」
「………エリ、です」
エリちゃんと八百万が挨拶を交わしている間に、リーダー格の女性も搭乗。これで出発の準備は整った。
「ライコウ、グリュンフリート、雄英の根津校長には私からも連絡を入れておく。エリちゃんを…頼むぞ」
「はい!」
「全力を尽くします」
「では、また明日会おう」
そう言って薄く微笑むサー・ナイトアイ。直後、ヘリコプターのドアが閉められ、上昇を開始する。
「うわぁ…」
初めて見るであろう空からの景色に声を上げるエリちゃん。うん、初めて子供らしい反応をしてくれたな。
「雄英高校まではおよそ20分。短い時間だが空の旅を楽しんでくれ」
「『折紙ヒーロー パピルス』以下5名。全力を以って、君を警護する」
そんなエリちゃんに笑顔を見せながら、そう断言するパピルス。他の5人も力強く頷き、安心感を与えてくれる。
「……あ、あり、がとう」
そんな
出久side
20分の空の旅は、何のトラブルもなく終了。僕達は無事に雄英高校へ戻ってくることが出来た。
「それでは、我々はこれで」
「皆さん、ありがとうございました。おかげでエリちゃんを無事に雄英高校で匿えます」
「お役に立てたのなら、何よりだ。また、どこかの現場で会う事もあるだろう。その時はよろしく頼む」
「了解です」
「皆さんと一緒にお仕事が出来る様に、頑張ります!」
パピルスさん達と敬礼を交わして別れた後、僕達はエリちゃんを
「時間通りだな」
「待っていたよ!」
相澤先生と根津校長が僕達を待っていた。
「君がエリちゃんか。俺は、相澤消太。この雄英高校で先生をやってる。こう見えても、イレイザーヘッドという…ヒーローだ」
「僕は根津。ネズミなのか犬なのか熊なのか、かくしてその正体は…雄英高校の校長さ!」
片膝を突き、エリちゃんと目線を合わせて自己紹介する相澤先生。敢えて、いつも通りの挨拶をする根津校長。そんな2人に、エリちゃんは少しだけ沈黙し―
「わ、わたしは…エリ、です」
静かに、だがハッキリと名前を口にした。そんなエリちゃんを見つめる相澤先生達の表情は、とても優しいもので―
「ここには、俺の他にもヒーローがたくさんいるし、お兄さんやお姉さんもたくさんいる」
「ここにいれば、何の心配もいらない。僕達が君を守るのさ!」
そう宣言する相澤先生と根津校長は、とても頼もしく見えた。
瀬呂side
「さて、先程話した通り、暫くの間雄英高校で保護することになったエリちゃんだ。生活環境が急激に変わって戸惑う事も多いだろう。年長者として、色々助けてやってほしい」
相澤先生が紹介している、エリって女の子。詳しい事は教えてくれなかったけど、
あんなに小さな子が、長い間監禁されていたなんて…どれだけ怖くて、心細かったんだろうな…年上として、出来る事はしてあげないと…。
「よし! 今日の夕食は、エリちゃんの歓迎会にしようじゃないか!」
「賛成!」
「いっぱい御馳走作ろうよ!」
飯田の提案に、芦戸や葉隠が賛同するけど…待てよ、
「あー、その件なんだが…御馳走は暫く待った方がいい。エリちゃんは長い監禁生活の影響で、あまり栄養状態が良くないんだ。慢性的な低栄養…とまではいかないと思うけどな」
「万一、エリちゃんが低栄養状態だった場合、急に栄養補給を行うと、リフィーティング症候群*3を起こす恐れがあります。御馳走を食べるのは、リカバリーガールに検査していただき、エリちゃんの状態を確認してからの方が宜しいかと」
おっと、俺より先に吸阪と八百万が指摘したな。
「すまない…考えが浅かったよ」
「歓迎会は、エリちゃんの検査が終わってからだね」
「うん、その時を待とう」
考えが浅かったと謝罪する飯田達。でも、気持ちはわかるぜ。今まで辛い思いばっかりだったエリちゃんを喜ばせたい、楽しませたい、と思うのは、俺だって同じだ。
その後、エリちゃんはリカバリーガールの診察を受け―
「低栄養とまではなっていないけど、あまり良くはない状態だね。身長に対して、体重が少ない。成長曲線から判断して、余裕で
「それに胃腸の力もだいぶ落ちている。暫くは胃腸に負担をかけず、なおかつ栄養のある食事を摂らせなきゃいけないよ。必要なら、ランチラッシュに助けを求めるといい」
という診断を受けた。胃腸に負担をかけず、なおかつ栄養のある食事か…。
「消化が良くない食材…まず、脂の強い物は避けた方がいいな。豚バラとか青魚とか」
「豆腐以外の豆類や、繊維質の多い野菜もやめておいた方がいいね。あと芋類だとサツマイモがNGかな」
「あと魚介だと、イカやタコ、貝類も消化があんまり良くなかった筈だよ」
「果物だと、パイナップルやキウイなんかは避けた方が良いな」
「主食だと…蕎麦とか雑穀系は避けるべきだと思うぜ」
早速、吸阪、緑谷、耳郎、砂藤、俺の5人で意見を擦り合わせ、夕食のメニューを相談していく。その結果―
・トマトとチーズのリゾット
・南瓜のポタージュ
・鶏ささみと蕪の蒸し煮
・焼きリンゴ
に決まった。皆の夕食作りと並行してエリちゃんの食事も作っていく。こいつは、いつも以上に頑張らないとな!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。