出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。
お楽しみ頂ければ、幸いです。


第21話:最も安全に匿える場所

イレイザーヘッド(相澤消太)side

 

 午前中の授業を終え、書類仕事も済ませた昼休み。俺は昼食を摂る為、大食堂に足を運んでいた。

 

「ここが最後尾か」

 

 生徒達に混ざって列に並び、順番を待つ。少し前なら不合理だ何だと理由をつけて避けていたが…1週間も続ければ慣れたものだ。

 

「日替わりを」

 

 大食堂で頼むのは決まって日替わりランチ。味は保証されているし、メニューも毎日変わるから食べ飽きる事も無い。

 メニューが豊富過ぎるほど豊富な大食堂で、何を食べるか悩まずに済むのは、実に合理的だ。

 

「はい、日替わりランチお待たせ! ラタトゥイユは大盛りにしておきましたよ!」

 

 ランチラッシュが直々に配膳したトレイを受け取り、空いてる席に腰を下ろすと―

 

「ふむ…」

 

 食べ始める前に、献立の書かれたカードに目を通していく。如何なる時も情報を入手する事を怠ってはならないからな。

 今日の献立は―

 

・照り焼きチキンとごぼうサラダのピタパンサンド

・ラタトゥイユ*1

・ファラフェル*2

・コーンポタージュ

 

 以上4品。料理名だけ聞いてもよくわからんが、簡単な説明が書いてあるのはありがたい。さて、食べるとするか。

 

「いただきます」

 

 キチンと手を合わせ、食べ始める。日替わりランチは味の良さやメニューの豊富もだが、栄養のバランスが取れているのも都合が良い。

 吸阪や蛙吹から『3食キチンと野菜を摂れ』『炭水化物だけで食事を済ませるな』などと散々言われているからな。

 担任として、教え子の頼みを端から無視する訳にもいかん。

 

「ラ…」

 

 …ん?

 

「ラタトゥイユにピタパンサンドって!? なに、お洒落なCafeみたいなランチやってんだよ! イレイザー!!」

 

 俺の昼食を目にした途端、騒ぎ出すマイク。毎回毎回この騒ぎ様…いい加減に慣れてほしいものだ。

 

「あぁ、明日の天気がマジで心配だぜ! いや、火山か? 地震か? 隕せ―」

 

 あまりに煩いので、捕縛布で締め上げて黙らせる。俺がまともな昼飯を食ったくらいで、騒ぎすぎだ…。

 

 

「ふぅ…」

 

 昼食を食べ終え、残り時間で仮眠をとろうと立ち上がったその時―

 

「吸阪から…だと」

 

 突然鳴り出したスマホと、表示された名前に()()()()が脳裏をよぎる。

 

「……もしもし」

 

 俺は瞬時に心を落ち着け、通話を開始する。

 

『相澤先生、吸阪です。お昼休み中にすみません。ちょっとご相談したい事が…』

 

 ()()()ね…。嫌な予感がするが…気のせいであってくれよ…。

 

 

雷鳥side

 

『…状況は解った。校長の方には、俺の方から話を通しておく』

「ありがとうございます!」

 

 相澤先生の声に、俺は深々と頭を下げながらお礼の言葉を口にする。そう、先程当てがあると言っていたのは、雄英高校の事だ。

 教職員としてヒーローが多数常駐しているし、雄英バリアーなどセキュリティも充実。オマケに今は全寮制だから、空き部屋をエリちゃんが使う事も出来る。俺の知る限り、最も安全にエリちゃんを匿える場所だ。

 

『それで、他に俺が出来る事はあるか?』

「それでは、八百万の力を借りたいので…外出の許可を出して頂けますか?」

『わかった。すぐに出しておく』

「よろしくお願いします!」

 

 相澤先生との通話を終えた俺は、すぐに八百万へ連絡。話せる範囲で事情を話し、協力を求めると―

 

『お任せください! すぐに手配いたしますわ!』

 

 八百万は協力を快諾してくれた。

 

「助かるよ、八百万。それで…時間はどのくらいかかる?」

『…2時間。いえ、90分だけお待ちください。()()()()()()をご用意します!』

 

 ()()()()()()か…車や電車で移動すると、治崎がエリちゃんを奪いに襲撃してくる可能性がある。

 だから、八百万にヘリを手配してもらうつもりだったが…まぁ、いいか。

 

 

 さて、待つこと80分。

 

『吸阪さん、お待たせしました! あと10分ほどでそちらに到着します。屋上でお待ち願えますか?』

 

 八百万から連絡が来た。すぐさま俺と出久、サー・ナイトアイは、目を覚ましていたエリちゃんと共に屋上へ、センチピーダーとバブルガールさんは周辺の安全を確保する為に、事務所の外へと向かう。

 

「エリちゃん、今からお迎えが来るんだ。空を飛んでお出かけするよ」

「………空?」

 

 出久の言葉にキョトンとした顔を見せるエリちゃん。まぁ、無理もない反応だ。

 

「大丈夫だ。何も怖い事は無い」

「むしろ、ワクワクするかもしれないね」

 

 ナイトアイや俺がそんなフォローを入れていると―

 

「雷鳥兄ちゃん、来たよ!」

 

 時間通りに迎えのヘリがやって来た。

 

『吸阪さん、緑谷さん、お待たせいたしました!』

 

 一度に10人以上が乗れそうな機体から聞こえてくる八百万の声。機体の側面には『Y・S・S』のロゴが見える。

 

YAOYOROZU()Security()Service()…まさか、八百万グループに所属する企業の1つにして、()()()()()()()()()()()()に伝手があったとは…」

「クラスメートが、創業家の1人娘でして」

 

 ナイトアイの呟きにそう答えつつ、エリちゃんに視線を送ると―

 

「………」

 

 着陸態勢に入ったヘリコプターを、ポカンとした顔で見つめていた。どうやら、かなりの衝撃だったようだな。気持ちはわかる。

 そうしている内に、ヘリコプターは無事に着陸。ドアが開き、中からパンツスーツ姿の女性6人と、八百万が出てきた。

 ……あの6人は全員()()()()()()()だな。特にリーダー格らしき、オレンジの髪をショートボブにした女性は、相当な強者とみて間違いない。

 

「吸阪さん、緑谷さん、お待たせして申し訳ありません」

「いや、時間ぴったり。流石は八百万だ」

「それで、そちらの皆さんが…」

「はい、お父様にお願いして、この方々に来ていただきました。全員が、ヒーロー免許を保持する凄腕の身辺警護人(ボディガード)です!」

 

 八百万の声に合わせ、見事な敬礼を見せてくれる6人の身辺警護人(ボディガード)。うん、実に心強い。

 

「サー・ナイトアイ。警護対象は、未就学の女児と伺っておりますが」

「あぁ、現在調査中の為、詳細についてはお話出来ないが…ある(ヴィラン)犯罪の関係…いや、被害者だ。長期に渡って監禁されていただけでなく、肉体的及び精神的な虐待を受けていた」

「あのように幼い子が…犯人は()()()()()()()()()()かっ!」

「その意見に関しては、全面的に賛成だ」

 

 リーダー格の女性とサー・ナイトアイが話をしている間に、俺達とエリちゃんは5人の身辺警護人(ボディガード)に守られながらヘリコプターへ搭乗。

 

「私は、八百万百と申します。よろしくお願いしますね」

「………エリ、です」

 

 エリちゃんと八百万が挨拶を交わしている間に、リーダー格の女性も搭乗。これで出発の準備は整った。

 

「ライコウ、グリュンフリート、雄英の根津校長には私からも連絡を入れておく。エリちゃんを…頼むぞ」

「はい!」

「全力を尽くします」

「では、また明日会おう」

 

 そう言って薄く微笑むサー・ナイトアイ。直後、ヘリコプターのドアが閉められ、上昇を開始する。

 

「うわぁ…」

 

 初めて見るであろう空からの景色に声を上げるエリちゃん。うん、初めて子供らしい反応をしてくれたな。

 

「雄英高校まではおよそ20分。短い時間だが空の旅を楽しんでくれ」

「『折紙ヒーロー パピルス』以下5名。全力を以って、君を警護する」

 

 そんなエリちゃんに笑顔を見せながら、そう断言するパピルス。他の5人も力強く頷き、安心感を与えてくれる。

 

「……あ、あり、がとう」

 

 そんな身辺警護人(ボディガード)の皆さんに、涙混じりにお礼を言うエリちゃん。うん、ちょっとずつでも、世界には()()()()()もたくさんある事を知っていけば良いと思うよ。

 

 

出久side

 

 20分の空の旅は、何のトラブルもなく終了。僕達は無事に雄英高校へ戻ってくることが出来た。

 

「それでは、我々はこれで」

「皆さん、ありがとうございました。おかげでエリちゃんを無事に雄英高校で匿えます」

「お役に立てたのなら、何よりだ。また、どこかの現場で会う事もあるだろう。その時はよろしく頼む」

「了解です」

「皆さんと一緒にお仕事が出来る様に、頑張ります!」

 

 パピルスさん達と敬礼を交わして別れた後、僕達はエリちゃんを(ハイツ・アライアンス)へと案内。その入り口では―

 

「時間通りだな」

「待っていたよ!」

 

 相澤先生と根津校長が僕達を待っていた。

 

「君がエリちゃんか。俺は、相澤消太。この雄英高校で先生をやってる。こう見えても、イレイザーヘッドという…ヒーローだ」

「僕は根津。ネズミなのか犬なのか熊なのか、かくしてその正体は…雄英高校の校長さ!」

 

 片膝を突き、エリちゃんと目線を合わせて自己紹介する相澤先生。敢えて、いつも通りの挨拶をする根津校長。そんな2人に、エリちゃんは少しだけ沈黙し―

 

「わ、わたしは…エリ、です」

 

 静かに、だがハッキリと名前を口にした。そんなエリちゃんを見つめる相澤先生達の表情は、とても優しいもので―

 

「ここには、俺の他にもヒーローがたくさんいるし、お兄さんやお姉さんもたくさんいる」

「ここにいれば、何の心配もいらない。僕達が君を守るのさ!」

 

 そう宣言する相澤先生と根津校長は、とても頼もしく見えた。

 

 

瀬呂side

 

「さて、先程話した通り、暫くの間雄英高校で保護することになったエリちゃんだ。生活環境が急激に変わって戸惑う事も多いだろう。年長者として、色々助けてやってほしい」

 

 相澤先生が紹介している、エリって女の子。詳しい事は教えてくれなかったけど、(ヴィラン)犯罪の被害者で、長い間監禁されていたのを吸阪と緑谷が偶然保護したらしい。

 あんなに小さな子が、長い間監禁されていたなんて…どれだけ怖くて、心細かったんだろうな…年上として、出来る事はしてあげないと…。

 

「よし! 今日の夕食は、エリちゃんの歓迎会にしようじゃないか!」

「賛成!」

「いっぱい御馳走作ろうよ!」

 

 飯田の提案に、芦戸や葉隠が賛同するけど…待てよ、()()()()()()()()()()って事は…

 

「あー、その件なんだが…御馳走は暫く待った方がいい。エリちゃんは長い監禁生活の影響で、あまり栄養状態が良くないんだ。慢性的な低栄養…とまではいかないと思うけどな」

「万一、エリちゃんが低栄養状態だった場合、急に栄養補給を行うと、リフィーティング症候群*3を起こす恐れがあります。御馳走を食べるのは、リカバリーガールに検査していただき、エリちゃんの状態を確認してからの方が宜しいかと」

 

 おっと、俺より先に吸阪と八百万が指摘したな。

 

「すまない…考えが浅かったよ」

「歓迎会は、エリちゃんの検査が終わってからだね」

「うん、その時を待とう」

 

 考えが浅かったと謝罪する飯田達。でも、気持ちはわかるぜ。今まで辛い思いばっかりだったエリちゃんを喜ばせたい、楽しませたい、と思うのは、俺だって同じだ。

 

 

 その後、エリちゃんはリカバリーガールの診察を受け―

 

「低栄養とまではなっていないけど、あまり良くはない状態だね。身長に対して、体重が少ない。成長曲線から判断して、余裕で()()()()の判定さね」 

「それに胃腸の力もだいぶ落ちている。暫くは胃腸に負担をかけず、なおかつ栄養のある食事を摂らせなきゃいけないよ。必要なら、ランチラッシュに助けを求めるといい」

 

 という診断を受けた。胃腸に負担をかけず、なおかつ栄養のある食事か…。

 

「消化が良くない食材…まず、脂の強い物は避けた方がいいな。豚バラとか青魚とか」

「豆腐以外の豆類や、繊維質の多い野菜もやめておいた方がいいね。あと芋類だとサツマイモがNGかな」

「あと魚介だと、イカやタコ、貝類も消化があんまり良くなかった筈だよ」

「果物だと、パイナップルやキウイなんかは避けた方が良いな」

「主食だと…蕎麦とか雑穀系は避けるべきだと思うぜ」

 

 早速、吸阪、緑谷、耳郎、砂藤、俺の5人で意見を擦り合わせ、夕食のメニューを相談していく。その結果―

 

・トマトとチーズのリゾット

・南瓜のポタージュ

・鶏ささみと蕪の蒸し煮

・焼きリンゴ

 

 に決まった。皆の夕食作りと並行してエリちゃんの食事も作っていく。こいつは、いつも以上に頑張らないとな!

*1
南仏風の夏野菜煮込み

*2
ひよこ豆やそら豆で作る中東風コロッケ

*3
慢性的な栄養不良状態が続き、高度の低栄養状態にある患者へ、いきなり十分量の栄養補給を行うことにより発症する一連の代謝合併症の総称




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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