出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2   作:SS_TAKERU

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お楽しみ頂ければ、幸いです。


第22話:鮮烈デビューの3人

雷鳥side

 

 さて、『胃腸に負担をかけず、なおかつ栄養のある食事』をテーマに、手分けして作った特製メニューも無事完成。

 俺達用の料理と共に、食堂へと運んでいく。なお、俺達のメニューは―

 

・トマトとチーズのリゾット

・南瓜のポタージュ

・鶏もも肉のパン粉焼き

・パプリカとキノコのマリネ

・焼きリンゴ

 

 以上5品だ。ちなみに、リゾットとポタージュは、エリちゃんの分と一緒に作り、味付けの時に分けることで調理の手間を省き、焼きリンゴはエリちゃんが食べる分と同じ物を出している。

 

「………」

「エリちゃん、雷鳥兄ちゃんの料理、とっても美味しいよ。食べてみて」

 

 僅かに緊張した様子で、目の前に並ぶメニューを見つめているエリちゃんに、優しく声をかける出久。

 

「……うん。い、いただきます」

 

 その声に頷いたエリちゃんは、スプーンを取り、リゾットを一口。すると…

 

「………」

 

 突然ポロポロと涙を流し始めた。一瞬、料理が口に合わなかったかと思ったが…違うな。

 

「おい、しい…あったかい……」

 

 治崎によって長い間監禁され、非道な仕打ちを受け続けていたエリちゃん。

 こういう()()()()()も、()()()()()()()も、随分と久しぶりなのだろう。

 

「エリちゃん。相澤先生や校長先生が言っていたように、ここにいれば大丈夫。何にも心配いらないからね」

「…うんっ」

 

 出久の声に泣きながら頷いたエリちゃんは、それから堰を切ったように食事を食べ始めた。うん、これで大丈夫かな。

 

「よし、俺達も食べるか! 飯田、号令を頼む」

「あぁ! それでは、いただきます!」

「「「「「いただきます!」」」」」

 

 飯田の号令で、俺達も夕食を食べ始める。そう言えば、梅雨ちゃんと麗日、切島、常闇は校外活動(ヒーローインターン)の関係で、今日は泊まりだったな。ちゃんと飯食ってるんだろうか?

 

 

波動side

 

(ヴィラン)グループ同士の抗争です! 『巨大化』系の“個性”保持者2名が、エスパ通り一帯を巻き込み戦闘中! 至急ヒーローの要請を―」

 

 警察官(おまわりさん)が無線機片手に叫んでいる中、たくさんの人が大慌てで避難している。その後ろでは巨大化した2体の(ヴィラン)が、取っ組み合いの喧嘩をしていた。

 私は“個性”の応用で、空中を移動しながらパワーを充填。

 

「チャージ満タン。出力30…ねじれる波動(グリングウェイブ)!!」

 

 衝撃波を発射して、(ヴィラン)達を転倒させる。その後で―

 

「ねぇねぇ、何で喧嘩するの? “個性”同じだから? 変なのっ」

 

 心に浮かんだ疑問をぶつけてみるけど、(ヴィラン)達は何も答えずに立ち上がろうとする。無視するなんてひどい!

 

「今だよー! 2人とも!」

 

 だけど、このタイミングを逃す訳にはいかない。私は近くで待機していた2人に声をかけた。すぐに飛び出してきたのは、今日から校外活動(ヒーローインターン)に参加するFROPPY(フロッピー)とウラビティ。

 

「私は右の(ヴィラン)を、ウラビティは左の(ヴィラン)をお願い!」

「了解!」

 

 2人はそれぞれ攻撃する目標を定め―

 

FROPPY().Combination().Arts().version1()!」

 

 FROPPY(フロッピー)は、長い舌での一撃と左右連続踵落としのコンビネーション。

 

「ウラビティ! 二段返し!」

 

 ウラビティは(ヴィラン)を背負い投げした後、一緒に浮き上がって、空中でもう一回背負い投げをする…何だか凄い投げ技で、(ヴィラン)を戦闘不能にしちゃった。凄い凄い!

 

 

「よかったよー。凄かったよー。ねぇ…キンチョーした!?」

 

 警察官(おまわりさん)達が気絶した(ヴィラン)達を連行していく中、私はFROPPY(フロッピー)とウラビティに声をかける。

 

「大丈夫です! 思い通りに動けました!」

「ケロケロ、落ち着いてやれたわ」

 

 2人は全然緊張していなかったみたいで、様子を見ていたリューキュウも―

 

「流石に、何度も()()()を潜って来ただけのことはあるね。私から指摘する点は特に無し。むしろ、判断の速さや無駄の無い動きは、サイドキック達に見習わせたいくらいだよ」

 

 そう言って感心してた。

 

「ねじれも転倒させるタイミング、直ってきたね。あとは思った事を何でもかんでも口にするのを直すように。ミッドナイトさんが心配してたよ。今のままじゃ()()()()()()()()()()()って」

「…はーい」

 

 なんだか、私だけ注意されてる。不思議!

 

「それにしても、受け入れ人数制限が(つくづく)残念だね。それさえ無ければ、あと何人か受け入れたんだけど…」

 

 残念そうに呟くリューキュウ。そう、事務所間格差を是正する為、校外活動(ヒーローインターン)の受け入れは、基本1つの事務所で2人、最高でも3人までにしなきゃいけないってルールが実はある。私もこの前知ったんだけどね。

 だから、この間の事で1-Aに謝りに行った時、女子の皆にリューキュウへの仲介を頼まれたけど、2人までしか仲介出来なかった。すごく残念!

 

「まぁ、過ぎた事を残念がっても仕方ない。2人には即戦力として頑張ってもらうよ!」

「「はい!」」

「あなた達なら『あの案件』でも絶対活躍出来るからね!」

「アノアンケン?」

「オールマイトの元サイドキック、サー・ナイトアイからのチームアップ要請。指定(ヴィラン)団体、死穢八齋會(しえはっさいかい)の調査及び包囲。かなりの大仕事だよ」

 

 リューキュウの言葉に、緊張した様子の2人。うん、凄い事になりそうだね!

 

 

切島side

 

「最近、チンピラやらチーマーやらのイザコザが多くてなぁ!!」

「腹が減ってしゃあないわ!!」

 

 そんな事を言いながら、巨大タコ焼きをパクついているのは、BMIヒーロー“ファットガム”さん。天喰先輩の校外活動(ヒーローインターン)先だ。

 

「せやから、ここらのヒーロー事務所も()()()欲しがっとんねん。烈怒頼雄斗(レッドライオット)は、まさに適材やで!」

「はい! よろしくお願いします!」

 

 そして俺も縁あって受け入れてもらった。全力で頑張るぜ!

 

「フォースカインドさんの都合が悪くて、受け入れてもらえなかったんで、拾ってもらってありがてーっす!!」

「天喰先輩もファットガムさんへの仲介、ありがとうございました!」

 

 俺の猛アタックに根負けして、仲介を引き受けてくれた天喰先輩も改めてお礼を言う。だけど…

 

「ミリオや波動さんの都合がついていれば……君、グイグイ来て、恐ろしかった」

 

 天喰先輩は俺と視線を合わせず、小声で呟くだけだ。なんて言うか…勿体無えよな…。

 

「環は、その()()()()()()さえどうにかなれば、逸材やのにな!!」

「そのプレッシャーが、俺を更なる低みへ導く…」

「いつもこうなんだ! この人は俺をいたぶる為にスカウトしたんだ! パワハラさ! 帰りたい!」

 

 ファットガムさんの声で、ますますネガティブになる天喰先輩。俺は思わず―

 

「天喰先輩! ファットガムさんには、パワハラのつもりなんて1ミリも無い筈っすよ! きっと激励くれてるんですよ!」

 

 大声で天喰先輩を励ましちまった。だけど―

 

「君やミリオのように、明るく前向きにはなれない」

「俺もそんなっすよ。クラスの仲間が体張ってる時、何も出来ずにただ見守るしか出来ない事があって…今じゃ、そいつらとは実力も経験値も大差付けられちまってます」

「だから、せめてそいつらと並び立てるよう、差を埋めたいんすよ!」

「一般世間では、それを前向きというんだよ…1年生」

 

 どこまでもネガティブな天喰先輩。俺が偶然見かけた時は、放課後1人で訓練していた時は、あんな凄え事やってたのに…ホント、勿体無えよ…。

 

「ケンカだぁ! 誰かぁ!!」

 

 異変を知らせる叫び声が聞こえたのは、その時だ。

 

「噂をすれば! やな!」

 

 俺達3人が戦闘態勢に入った直後―

 

「バカが! ウチのシマで勝手に商売始めやがって!!」

「っちくしょう! ついてねぇ!!」

「せっかくこれから一旗あげようって時に!!」

 

 路地から5人の男達が飛び出してきた。何秒か遅れて更に3人路地から出てくるけど、そいつらはファットガムさんを見た途端、慌てて路地へと逆戻りしていく。

 

「一旦バラけるぞ!」

「「「「おう!」」」」

 

 先の5人組は、もう追跡されていない事に気付かないまま、分散しようとするけど―

 

「させへん!」

「ファットや! あかん沈む…」

「沈ませ屋さんのファットさんや!」

 

 その内3人は、ファットガムさんが手早く拘束。

 

「3人確保! 残りは任せたで!」

 

 それぞれの“個性”を使ってファットガムさんを躱した2人には、天喰先輩と俺が対処する。

 

「ッ!? 何じゃ、このタコォォォォォッ!?」

「酷い言い方をしてくれる…」

 

 体を細長くさせる“個性”の持ち主は、右手の指を蛸の触腕、左手をアサリの貝殻に変えた天喰先輩に、拘束された上―

 

「タコやないんかい…ワレ…」

「アサリは便利なんだ…攻防に長ける…だから毎日食べるようにしているんだ」

 

 強烈な一撃を食らって戦闘不能。

 

「ドケや! クソガキィィィィィ!」

 

 残る1人は体を球体にする“個性”を発動し、俺を轢き潰そうとしたけど―

 

「ぬぁぁぁぁぁっ!」

 

 俺は真正面からそれを受け止めてから、上に投げ飛ばす!

 

「えっ、ちょ、待てやぁ!」

 

 “個性”を解除した男は、空中で手足をバタつけせるけど、それでどうにかなる筈もなく、地面に落下していく。俺はそれを待ち構え…

 

烈怒頑斗裂屠(レッドガントレット)!!」

 

 硬化した拳の一撃を叩き込んで、キッチリ意識を刈り取った。よし、上手く動けたぜ!

 それにしても、天喰先輩は凄えな…()()()()()()()()()()()()()“個性”も凄えけど、それを自由自在に使いこなす技量や判断力が凄え。

 

「上手く……出来ていただろうか……」

「すげーっす! 迅速で“個性”を使いこなす技量も際立ってて…」

「技量で言えば、とうに並のプロを超えとるんやで、ウチの天喰環(サンイーター)は! まぁ、メンタルが育たへんのが玉に瑕やけど!」

 

 ファットガムさんの言葉に続くように湧き上がった歓声に、顔を真っ赤にして俯く天喰先輩(サンイーター)

 次の瞬間、野次馬の中で()()()()()()

 

「ッ!」

「あかん! 伏せるんや!」

 

 異変に気付いたファットガムさんの声が響くのと、体が咄嗟に動いたのは同時だった。直後、乾いた音が2回響き、天喰先輩(サンイーター)を庇った俺の額と右肩に()()が命中した。だけど…

 

烈怒頼雄斗(レッドライオット)!」

「大丈夫っす! 硬化して弾きました!!」

 

 “個性”を発動していたおかげで、命中した何か…銃弾は、俺の体を傷つけることなく地面に転がっている。そして―

 

「何や、このポンコツはぁ!」

 

 俺を撃ったチンピラは、持っていた拳銃を文句と共に投げ捨て、発砲によってパニック状態となった人込みを掻き分けて、その場から逃げ出した。

 

「待たんかい!」

「逃がさねぇ!」

 

 当然、俺もファットガムさんも奴を逃がすつもりは、全く無い。拘束した奴らを天喰先輩(サンイーター)に任せ、全速力で追いかける!

 

「ちょ、ごめんな! 通して! お願い!」

 

 だけど、ファットガムさんはその巨体が災いして、人込みからなかなか抜け出せずにいる。こうなったら()()()だ!

 

「ホバリングモード起動!」

 

 その声と共に、履いているブーツに仕込まれたギミックが発動。脹脛部分から吸い込んだ空気を踵から放出する事で、俺の体を2m半程押し上げた。

 メリッサさんが開発したサポートアイテム『ヘルメスブーツ』。こういう時にはピッタリだぜ!

 

「っしゃぁ!」

 

 人込みを掻き分ける必要が無くなった俺は、文字通り()()()()()()チンピラを追いかけ―

 

「な、なんや! なんやそれ! 反則やないか!」

「うるせぇ! 仲間助けるなら助けるで、最後まで貫けよ!」

「や、やかましぃ! ヒーローやっとるお前なんかに、お、俺達の気持ちがわか、わかる訳ないんじゃぁぁぁっ!!」

 

 泣き喚きながら、刃渡り10cm程の刃を生やした両腕を滅茶苦茶に振り回すチンピラに肉薄。

 

烈怒頑斗裂屠(レッドガントレット)参連(トリプル)!!」

 

 右ボディ、左フック、右アッパーのコンビネーションを叩き込んで、キッチリ意識を刈り取った。

 

「吸阪や緑谷から言われてるからな。追い込まれた(ヴィラン)は、何をするかわからない。だから、確実に戦闘不能にしろって」

 

 白目を剥いて気絶しているチンピラを担ぎ、こちらへ走ってくるファットガムさんと合流する。すると―

 

「凄いなぁ! 兄ちゃん! ファットの所の新人か?」

「ワテらも長年ヒーロー見とるからわかんねん! 刃物ならまだしも、銃相手に自分を盾に出来る奴なんて滅多におらん!」

「凄いやっちゃ! 名前聞かせてや!」

 

 周りの人達が、口々に俺を称賛してきた。いや、俺はただ我武者羅だっただけで…

 

「華々しいデビューやなぁ。俺のデビュー時とは大違いや…ほら、胸張って名乗りや!」

「今回のMVPは、お前やで! 烈怒頼雄斗(レッドライオット)!」

 

 そんな俺の気持ちを察しただろう。ファットガムさんがお膳立てしてくれた。俺は大きく頷き―

 

「あざっす!! ファットガムさんの所で、校外活動(ヒーローインターン)やらせてもらってます! 烈怒頼雄斗(レッドライオット)です! よろしくお願いします!!」

 

 大きな声で名乗り、頭を下げる。

 

「よし! 烈怒頼雄斗(レッドライオット)のデビュー祝いや! 今日の夕飯は俺がご馳走したる! 大阪グルメの神髄を体験させたるから、大急ぎで事後処理済ませるで!」

「はい!」

 

 俺への拍手喝采が響く中、ファットガムさんが嬉しい事を言ってくれた。さぁ、事後処理も頑張らねえとな!!




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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