出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2 作:SS_TAKERU
お楽しみ頂ければ、幸いです。
雷鳥side
さて、『胃腸に負担をかけず、なおかつ栄養のある食事』をテーマに、手分けして作った特製メニューも無事完成。
俺達用の料理と共に、食堂へと運んでいく。なお、俺達のメニューは―
・トマトとチーズのリゾット
・南瓜のポタージュ
・鶏もも肉のパン粉焼き
・パプリカとキノコのマリネ
・焼きリンゴ
以上5品だ。ちなみに、リゾットとポタージュは、エリちゃんの分と一緒に作り、味付けの時に分けることで調理の手間を省き、焼きリンゴはエリちゃんが食べる分と同じ物を出している。
「………」
「エリちゃん、雷鳥兄ちゃんの料理、とっても美味しいよ。食べてみて」
僅かに緊張した様子で、目の前に並ぶメニューを見つめているエリちゃんに、優しく声をかける出久。
「……うん。い、いただきます」
その声に頷いたエリちゃんは、スプーンを取り、リゾットを一口。すると…
「………」
突然ポロポロと涙を流し始めた。一瞬、料理が口に合わなかったかと思ったが…違うな。
「おい、しい…あったかい……」
治崎によって長い間監禁され、非道な仕打ちを受け続けていたエリちゃん。
こういう
「エリちゃん。相澤先生や校長先生が言っていたように、ここにいれば大丈夫。何にも心配いらないからね」
「…うんっ」
出久の声に泣きながら頷いたエリちゃんは、それから堰を切ったように食事を食べ始めた。うん、これで大丈夫かな。
「よし、俺達も食べるか! 飯田、号令を頼む」
「あぁ! それでは、いただきます!」
「「「「「いただきます!」」」」」
飯田の号令で、俺達も夕食を食べ始める。そう言えば、梅雨ちゃんと麗日、切島、常闇は
波動side
「
私は“個性”の応用で、空中を移動しながらパワーを充填。
「チャージ満タン。出力30…
衝撃波を発射して、
「ねぇねぇ、何で喧嘩するの? “個性”同じだから? 変なのっ」
心に浮かんだ疑問をぶつけてみるけど、
「今だよー! 2人とも!」
だけど、このタイミングを逃す訳にはいかない。私は近くで待機していた2人に声をかけた。すぐに飛び出してきたのは、今日から
「私は右の
「了解!」
2人はそれぞれ攻撃する目標を定め―
「
「ウラビティ! 二段返し!」
ウラビティは
「よかったよー。凄かったよー。ねぇ…キンチョーした!?」
「大丈夫です! 思い通りに動けました!」
「ケロケロ、落ち着いてやれたわ」
2人は全然緊張していなかったみたいで、様子を見ていたリューキュウも―
「流石に、何度も
そう言って感心してた。
「ねじれも転倒させるタイミング、直ってきたね。あとは思った事を何でもかんでも口にするのを直すように。ミッドナイトさんが心配してたよ。今のままじゃ
「…はーい」
なんだか、私だけ注意されてる。不思議!
「それにしても、受け入れ人数制限が
残念そうに呟くリューキュウ。そう、事務所間格差を是正する為、
だから、この間の事で1-Aに謝りに行った時、女子の皆にリューキュウへの仲介を頼まれたけど、2人までしか仲介出来なかった。すごく残念!
「まぁ、過ぎた事を残念がっても仕方ない。2人には即戦力として頑張ってもらうよ!」
「「はい!」」
「あなた達なら『あの案件』でも絶対活躍出来るからね!」
「アノアンケン?」
「オールマイトの元サイドキック、サー・ナイトアイからのチームアップ要請。指定
リューキュウの言葉に、緊張した様子の2人。うん、凄い事になりそうだね!
切島side
「最近、チンピラやらチーマーやらのイザコザが多くてなぁ!!」
「腹が減ってしゃあないわ!!」
そんな事を言いながら、巨大タコ焼きをパクついているのは、BMIヒーロー“ファットガム”さん。天喰先輩の
「せやから、ここらのヒーロー事務所も
「はい! よろしくお願いします!」
そして俺も縁あって受け入れてもらった。全力で頑張るぜ!
「フォースカインドさんの都合が悪くて、受け入れてもらえなかったんで、拾ってもらってありがてーっす!!」
「天喰先輩もファットガムさんへの仲介、ありがとうございました!」
俺の猛アタックに根負けして、仲介を引き受けてくれた天喰先輩も改めてお礼を言う。だけど…
「ミリオや波動さんの都合がついていれば……君、グイグイ来て、恐ろしかった」
天喰先輩は俺と視線を合わせず、小声で呟くだけだ。なんて言うか…勿体無えよな…。
「環は、その
「そのプレッシャーが、俺を更なる低みへ導く…」
「いつもこうなんだ! この人は俺をいたぶる為にスカウトしたんだ! パワハラさ! 帰りたい!」
ファットガムさんの声で、ますますネガティブになる天喰先輩。俺は思わず―
「天喰先輩! ファットガムさんには、パワハラのつもりなんて1ミリも無い筈っすよ! きっと激励くれてるんですよ!」
大声で天喰先輩を励ましちまった。だけど―
「君やミリオのように、明るく前向きにはなれない」
「俺もそんなっすよ。クラスの仲間が体張ってる時、何も出来ずにただ見守るしか出来ない事があって…今じゃ、そいつらとは実力も経験値も大差付けられちまってます」
「だから、せめてそいつらと並び立てるよう、差を埋めたいんすよ!」
「一般世間では、それを前向きというんだよ…1年生」
どこまでもネガティブな天喰先輩。俺が偶然見かけた時は、放課後1人で訓練していた時は、あんな凄え事やってたのに…ホント、勿体無えよ…。
「ケンカだぁ! 誰かぁ!!」
異変を知らせる叫び声が聞こえたのは、その時だ。
「噂をすれば! やな!」
俺達3人が戦闘態勢に入った直後―
「バカが! ウチのシマで勝手に商売始めやがって!!」
「っちくしょう! ついてねぇ!!」
「せっかくこれから一旗あげようって時に!!」
路地から5人の男達が飛び出してきた。何秒か遅れて更に3人路地から出てくるけど、そいつらはファットガムさんを見た途端、慌てて路地へと逆戻りしていく。
「一旦バラけるぞ!」
「「「「おう!」」」」
先の5人組は、もう追跡されていない事に気付かないまま、分散しようとするけど―
「させへん!」
「ファットや! あかん沈む…」
「沈ませ屋さんのファットさんや!」
その内3人は、ファットガムさんが手早く拘束。
「3人確保! 残りは任せたで!」
それぞれの“個性”を使ってファットガムさんを躱した2人には、天喰先輩と俺が対処する。
「ッ!? 何じゃ、このタコォォォォォッ!?」
「酷い言い方をしてくれる…」
体を細長くさせる“個性”の持ち主は、右手の指を蛸の触腕、左手をアサリの貝殻に変えた天喰先輩に、拘束された上―
「タコやないんかい…ワレ…」
「アサリは便利なんだ…攻防に長ける…だから毎日食べるようにしているんだ」
強烈な一撃を食らって戦闘不能。
「ドケや! クソガキィィィィィ!」
残る1人は体を球体にする“個性”を発動し、俺を轢き潰そうとしたけど―
「ぬぁぁぁぁぁっ!」
俺は真正面からそれを受け止めてから、上に投げ飛ばす!
「えっ、ちょ、待てやぁ!」
“個性”を解除した男は、空中で手足をバタつけせるけど、それでどうにかなる筈もなく、地面に落下していく。俺はそれを待ち構え…
「
硬化した拳の一撃を叩き込んで、キッチリ意識を刈り取った。よし、上手く動けたぜ!
それにしても、天喰先輩は凄えな…
「上手く……出来ていただろうか……」
「すげーっす! 迅速で“個性”を使いこなす技量も際立ってて…」
「技量で言えば、とうに並のプロを超えとるんやで、ウチの
ファットガムさんの言葉に続くように湧き上がった歓声に、顔を真っ赤にして俯く
次の瞬間、野次馬の中で
「ッ!」
「あかん! 伏せるんや!」
異変に気付いたファットガムさんの声が響くのと、体が咄嗟に動いたのは同時だった。直後、乾いた音が2回響き、
「
「大丈夫っす! 硬化して弾きました!!」
“個性”を発動していたおかげで、命中した何か…銃弾は、俺の体を傷つけることなく地面に転がっている。そして―
「何や、このポンコツはぁ!」
俺を撃ったチンピラは、持っていた拳銃を文句と共に投げ捨て、発砲によってパニック状態となった人込みを掻き分けて、その場から逃げ出した。
「待たんかい!」
「逃がさねぇ!」
当然、俺もファットガムさんも奴を逃がすつもりは、全く無い。拘束した奴らを
「ちょ、ごめんな! 通して! お願い!」
だけど、ファットガムさんはその巨体が災いして、人込みからなかなか抜け出せずにいる。こうなったら
「ホバリングモード起動!」
その声と共に、履いているブーツに仕込まれたギミックが発動。脹脛部分から吸い込んだ空気を踵から放出する事で、俺の体を2m半程押し上げた。
メリッサさんが開発したサポートアイテム『ヘルメスブーツ』。こういう時にはピッタリだぜ!
「っしゃぁ!」
人込みを掻き分ける必要が無くなった俺は、文字通り
「な、なんや! なんやそれ! 反則やないか!」
「うるせぇ! 仲間助けるなら助けるで、最後まで貫けよ!」
「や、やかましぃ! ヒーローやっとるお前なんかに、お、俺達の気持ちがわか、わかる訳ないんじゃぁぁぁっ!!」
泣き喚きながら、刃渡り10cm程の刃を生やした両腕を滅茶苦茶に振り回すチンピラに肉薄。
「
右ボディ、左フック、右アッパーのコンビネーションを叩き込んで、キッチリ意識を刈り取った。
「吸阪や緑谷から言われてるからな。追い込まれた
白目を剥いて気絶しているチンピラを担ぎ、こちらへ走ってくるファットガムさんと合流する。すると―
「凄いなぁ! 兄ちゃん! ファットの所の新人か?」
「ワテらも長年ヒーロー見とるからわかんねん! 刃物ならまだしも、銃相手に自分を盾に出来る奴なんて滅多におらん!」
「凄いやっちゃ! 名前聞かせてや!」
周りの人達が、口々に俺を称賛してきた。いや、俺はただ我武者羅だっただけで…
「華々しいデビューやなぁ。俺のデビュー時とは大違いや…ほら、胸張って名乗りや!」
「今回のMVPは、お前やで!
そんな俺の気持ちを察しただろう。ファットガムさんがお膳立てしてくれた。俺は大きく頷き―
「あざっす!! ファットガムさんの所で、
大きな声で名乗り、頭を下げる。
「よし!
「はい!」
俺への拍手喝采が響く中、ファットガムさんが嬉しい事を言ってくれた。さぁ、事後処理も頑張らねえとな!!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。