出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2 作:SS_TAKERU
お楽しみ頂ければ、幸いです。
雷鳥side
エリちゃんが
朝食を済ませ、教室に移動した俺達は、
「おいおい切島!」
「名前! ヒーローネームが、ネットニュースに載ってるぞ!」
突然、スマホ片手に声を上げる瀬呂。何事かとネットニュースを見てみると―
『新米サイドキック、
『初日から
昨日の夜、泊りがけの
「梅雨ちゃんに麗日、すごいよー! 名前出てる!」
続いて響く芦戸の声。別の記事に目をやれば―
『リューキュウ事務所に新たな
『インターンシップで所属した2人! キュートなルックスながら侮るなかれ!』
『雄英体育祭で好成績を残し、インターン初日から巨大
と、これまた昨日の夜帰ってきた
「うへぇー、嬉しいなぁ、本当だ!」
「この写真、どこから撮ったのかしら」
「すっごいねー! もうMt.レディみたいにファンついてるかもねぇ!」
「おぉ、うらやまー!」
写真付きの記事に照れている梅雨ちゃんと麗日を、囃し立てる芦戸と葉隠。
うむ、クラスメートが注目を集めるのは、気分が良いものだ。
「仮免といえど、街へ出れば同じヒーロー……素晴らしい活躍だ!」
「だが、学業は学生の本分! 居眠りはダメだよ!」
「おうよ飯田! 覚悟の上さ!」
飯田の声に気合満点で答える切島。そうしている間にチャイムが鳴り―
「おはよう」
声と共に入室してきた相澤先生を静寂の中で出迎え、
「連絡事項は以上だ。質問が無いようなら、
今日の
「じゃ…待たせて悪かったマイク」
待機していたプレゼント・マイク先生に後を任せて、教室を出て行った。
「一限は、英語だぁぁぁぁぁっ! すなわち俺の時間!」
「今日もノリノリのアゲアゲでいくぜぇぇぇっ!」
相澤先生と入れ替わりで入ってきたプレゼント・マイク先生は、テンション高く授業を開始…
「おっと、その前に」
する前に、教室の窓際。その一番奥に用意された小さめの机と椅子。そこに行儀良く座っているエリちゃんへ近づき、3枚のプリントを差し出した。
「エリちゃん。今日の課題はこれだ。アルファベットの練習。とりあえずAからFまで頑張ろうな」
そう、俺達が授業を受けている間、エリちゃんを1人で
ちなみにエリちゃん用の課題は、
「がんばります」
「Good! 良い返事だ!」
エリちゃんの返事に気を良くしたプレゼント・マイク先生は、教壇へ戻り―
「さぁ、Everybody! エリちゃんもヤル気出してることだし! 負けずに頑張れよ!」
「ノリノリのアゲアゲでいくぜぇぇぇっ!」
テンション高く授業を開始した。その内容は…言うまでもあるまい。
八百万side
「エリちゃん、美味しいですか?」
「うん!」
お昼休み。ランチラッシュ先生特製のスペシャルランチ。そのメインディッシュである『鶏挽肉と豆腐のハンバーグ・野菜あんかけ』を一口食べ、満面の笑顔を浮かべるエリちゃん。
3日前、雄英高校に来たばかりの時は、まだどこか余所余所しい…緊張した様子でしたが、寝食を共にしたことでスッカリ心を開いてくれたようです。
私は一人娘ですが、もしも年の離れた
そう思うからこそ、エリちゃんを長期に渡って監禁し、虐待を繰り返していたという
守秘義務がある為、吸阪さんや緑谷さんは詳しい事を話してはくれませんが…おそらく近い内に
その時には吸阪さん達に、
………それはそれとして…厨房スタッフの皆さんは、どうしてエリちゃんをそんなに緩んだ顔で見つめているのでしょう?
出久side
エリちゃんが
その間も僕と雷鳥兄ちゃんは、
「あれ!? 皆こっち? 切島君は関西だし、麗日さんと梅雨ちゃんも方向逆…だよね?」
「ん? あぁ、なんか集合場所が急遽変更になったみたいなんだよ」
「私達も集合場所が変更になったって、リューキュウさんから連絡があったんだ」
「ケロケロ。そういう訳だから途中までご一緒させてちょうだい」
今日は途中まで切島君、麗日さん、梅雨ちゃんと一緒だ。集合場所が急遽変更になるなんて、大変だなぁ。
「皆同じ駅なの? 奇遇だね」
「波動先輩と現地集合なのよ」
なんて思っていたけど…
「方向も同じ…!?」
これって…もしかして…
「曲がり角も同じ………」
やっぱりそうだ! 僕達は
「お!」
「わ!」
「………」
「BIG3もお揃いで…」
BIG3と合流した事で確信に至った。これは…何か大きな事が起きる。間違いない!
「これは…」
僕達8人がナイトアイ事務所の2階にある大会議室へ足を踏み入れると、そこは既に複数のヒーローでごった返していた。
ヒーロービルボードチャートの上位に入る有名ヒーローから、地方都市で活躍しているマイナーヒーローまで、バラエティ豊かな顔ぶれに、思わずワクワク…いけないいけない。こういう時こそ冷静にならなきゃ。
心を落ち着けて、周囲を観察すると…思わぬ人物を発見した。
「グラントリノ!? それに相ざ…イレイザーヘッドも!?」
「こいつは…ド派手な事になりそうだな…」
予想外の2人がここにいる事に、思わず呟く雷鳥兄ちゃん。その声に頷いていると―
「リューキュウ!」
波動先輩が、
「ねえねえ。これ何、何するの? 会議って言ってたけどー知ってるけど! 何の?」
「すぐわかるよ。ナイトアイさん。そろそろ始めましょ」
「そうですね。時間も頃合い…始めるとしましょう」
リューキュウの声に答え、立ち上がったナイトアイは、その場にいる全員の顔を見回し、宣言した。
「あなた方に提供して頂いた情報のおかげで、調査が大幅に進みました」
「
雷鳥side
「まさか
「あぁ、一昨日の夜。連絡を貰ってな。協力を頼まれた」
俺の声にそう答えた
「エリちゃんを保護している関係で、事前にザックリとだが事情を聞いた……念の為聞くが、間違いないのか?」
「十中八九…いえ、九分九厘」
「……反吐が出るな」
「同感です」
小声で例の情報について確認してきたので、俺も小声で答える。
「あの、俺置いてけぼりなんすけど…ハッサイ? 何なんすか?」
「あぁ、悪い事考えとるかもしれんから、皆で煮詰めましょのお時間や。
切島は未だ状況が掴めずにいるが…
そうしている間に、俺達を含む全員が着席し―
「えー、それでは始めてまいります」
バブルガールの進行で、会議が始まった。
「我々ナイトアイ事務所は、約2週間程前から
「キッカケは?」
「レザボアドッグスと名乗る強盗団の事故からです。警察は事故として片づけてしまいましたが、腑に落ちない点が多く、追跡を始めました」
バブルガールが口にした『レザボアドッグス』という名前に、納得した顔で頷くヒーロー達。
ナイトアイに聞いた話だと、強盗団が逃走中に
警察は、巻き込まれたのが治崎達
だが、どこをどう考えてもおかしい事には間違いない。
「私、サイドキックのセンチピーダーが、ナイトアイの指示の下追跡調査を続けておりました」
「調べたところ、ここ1年以内の間に全国の組外の人間や、同じく闇稼業団体との接触が急増しており、組織の拡大・金集め目的に動いているものと見ています」
「そして、調査開始からすぐに…
「
センチピーダーの説明に補足を加えるグラントリノ。塚内さんは別の目撃情報を調べる為、不在とのことだ。そして―
「グリュンフリート、ライコウ」
「「はい」」
「まさかこうなるとは思わんだ…面倒なことに引き入れちまったな…」
グラントリノはそう言って、俺と
当然、そんな事を俺達はこれっぽっちも考えていない。
「いえ、面倒だなんて思ってないです」
「オールマイトの弟子としては、避けられない事だと覚悟しています」
「…続けて」
「えー、このような過程があり、『HN』で皆さんに協力を求めた訳で」
「あ、そこ飛ばして良いよ」
「うん!」
真正直に書かれた内容全てを読むバブルガールに、センチピーダーがアドバイスしていると―
「HN?」
「ヒーローネットワークだよ。プロ免許を持った人だけが使えるネットサービス。全国のヒーローの活動報告が見れたり、便利な“個性”のヒーローに協力を申請出来たり出来るんだって!」
麗日の質問に、波動先輩が答えていた。
「雄英生とはいえ、
そんな光景に悪態をつく1人のヒーロー。たしか、ロックロックだったか…すみませんね、ガキがここにいて。
「ロックロック、彼ら学生も関係者であり、私がこの会議への参加を依頼しています。お気持ちは理解しますが、不和を招くような発言はご遠慮願いたい」
「………了解した」
苦虫を嚙み潰したような顔をしながらも、悪態をつく事をやめるロックロック。ナイトアイは静かに頷き―
「それでは、今日皆さんをお呼びした
センチピーダーとバブルガールに資料を配らせる。内容は…先日送られてきたあの資料のコピーだ。
あれを読んだヒーローが、どんな反応を示すか…言うまでもあるまい。
「ナイトアイ! ここに書かれている内容は、事実なのか!」
「“
「だが、この情報を提供したのは、
会議に参加しているヒーロー達が次々と声を上げ、紛糾する会議。それをナイトアイが手を上げることで鎮め、口を開く。
「死柄木弔から提供された情報ということで、その真偽については十分に審査を行っています。行った上で、この資料……少なくとも、“個性”を破壊する弾丸とそのメカニズム、材料については事実だと判断しました」
「死柄木弔が情報を提供した理由は?」
「先程センチピーダーからの報告にもありました通り、
「この弾丸云々に関して事実だと言っていたが、なにか証拠でもあるのか?」
「証拠ならありまっせ!」
ロックロックの疑問に答えるように立ち上がったのは、ファットガム。彼は会議の参加者を一度見回し―
「とりあえず、初対面の方も多い思いますんで! ファットガムです。よろしくね!」
まずは自己紹介。
「「丸くてカワイイ」」
「おおきに! 後で飴あげるさかい! 待っててや、嬢ちゃん達!」
「
「まぁ、昔はゴリゴリにそういう類の連中をブッ潰しとりました! そんで、本題はここから…」
「先日、ここに座っとる
「拳銃の現物は、そいつが逃げる時に“個性”で破壊しましたけど…警察の調査で、東南アジアで作られた密造銃に手を加えた物であることがわかっおります。弾丸に関しては、発砲した2発しか所持してへんかった。けど…」
「この
ファットガムの声で、全員の視線が
「そして、その弾丸を調べた結果…この資料に書かれてあるのと、同じモンが出てきた」
「人の血ィや細胞…ホンマ、胸糞悪いわ……」
ファットガムの吐き捨てるような言葉に、静まり返る室内。
「
やがて1人のヒーローがそのように発言した。遂に来たか…
「その件に関しての心配は不要です。1週間前、当事務所で
サー・ナイトアイの言葉に、
そう、
「その人物の名前はエリ。6歳の少女です。治崎は自分の娘だと証言していましたが、ライコウによって、それは嘘であることがわかっています」
「その時点では詳細が分かっていませんでしたが、虐待の疑いが濃厚であった為、ヒーローによる緊急保護という形で、身柄を保護。現在は雄英高校で預かっていただいています」
「エリちゃんについてこちらで調べたところ、出生届は提出されておらず、本当の両親をはじめとする詳細は、一切が不明です」
「しかしながら、保護された当時、彼女の手足には夥しく包帯が巻かれており、その下には無数の切創や注射痕が確認出来、相当量の血液が抜き取られてました」
「そして、治崎の“個性”は『オーバーホール』。物体の分解・修復を可能にする“個性”です。分解…一度壊し、その後で修復する」
「まさか…そんな悍ましい事……」
「今は超人社会…やろうと思えば、誰もが何だって出来ちまう。倫理観や道徳を一切合切無視すれば…な」
リューキュウの呟きに淡々と答えるグラントリノ。その直後―
「それじゃあ、それじゃあ吸阪! 緑谷! エリちゃんが受けていた虐待って…」
耐えきれなくなったのか、
「イチイチ熱くなるなよ…わかってんだろ? 治崎は、そのエリって子の身体を材料に、“個性”を破壊する弾丸作って、捌いていたって事だ」
「実際に販売されているかは、わかりません」
ナイトアイは敢えてそれを無視して、言葉を紡いでいく。
「ファットガムが入手した弾丸を調査した結果、その効果は“個性”を数時間使えなくする程度。現時点では性能があまりに中途半端です」
「ただ…仮にそれが試作段階であるとすれば、試作品をプレゼンの為に使っていたとも考えられる」
「試作品を餌に仲間を、資金を集め、完成品開発につぎ込んでいたとしたら? もしも完成品が“個性”を完全に破壊するものだとしたら…」
「悪事のアイデアは、幾らでも湧いてくる」
「想像しただけで腹ワタ煮えくり返る! 今すぐガサ入れじゃ!」
「あぁ、材料にされていた子をこっちが保護しているなら、あとは今ある分を抑えりゃいい」
ファットガム、そしてロックロックの声に、多くのヒーローが賛同の声を上げる。だが―
「いえ、今ガサ入れを行っても、万が一の可能性があります」
ナイトアイはその声を鎮めると同時に、バブルガールに合図を送り、スクリーンに地図を表示させた。
「『“個性”を破壊する弾丸』は、この超人社会を根底から揺るがしかねない危険物です。完成品はもちろん、試作品であってもこれ以上世に出る事を許してはならない」
「そこで、
「皆さんには各自その個所を探っていただき、『“個性”を破壊する弾丸』の現物、データ、生産設備など関係するありとあらゆる物が存在するか否かを調べていただきたい!」
「なるほど、それで俺達のようなマイナーヒーローが…」
「見ろ、ここにいるヒーローの活動地区とリストがリンクしてる! 土地勘のあるヒーローが選ばれてんだ」
ナイトアイの言葉に感心した声を上げるマイナーヒーローの皆さん。これは成功の確率を上げる為、念には念を入れた作戦だな。
「1ついいか」
ここで、グラントリノが手を上げ―
「治崎の行い、ソイツは鬼畜なんて言葉が生温く感じるほどの悪行だ。それに憤る気持ちはこの場にいるヒーロー全員に共通した感情だろう」
「だが、焦っちゃあいけねえ。万が一にも取りこぼしがあれば、元の木阿弥だ。焦らず急いで慎重に作戦を進めていこう」
ベテランヒーローとして、実に重みのある言葉を言ってくれた。慌てず急いで慎重にか…肝に銘じなくてはいけないな。
「それでは、皆さん。ご協力をお願いします」
最後にナイトアイの声が響き…会議は終了した。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。