出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。短編を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。


第1.7話:夏の思い出作り‐その3‐

出久side

 

 耳郎さんが走り去った後、僕は海を見つめながらこれまでの事を思い返していた訳だけど…

 

 -あのさ、緑谷…助けてくれたのは嬉しいんだけど…降ろしてくれない?-

 -…あぁ! ご、ごご、ごめんなさい!-

 

 戦闘訓練の(あの)時も―

 

 -うん、全力で頑張るよ。耳郎さんの為にも-

 -う、うん…期待、しているから-

 

 雄英体育祭の(あの)時も―

 

 -2人とも! そんな事を言ったら、耳郎さんに失礼だよ!-

 -耳郎さん、僕は凄く似合っていると思うよ。耳郎さんのクールなイメージにピッタリだと思う!-

 -あ、ありがと…-

 

 Iアイランドの(あの)時も…僕と1対1で話す時、耳郎さんはいつも顔を赤くしていた。今になって考えてみると、それはつまり…

 

「………僕は、僕は馬鹿か!」

 

 己の察しの悪さ、鈍感さに心底腹が立つ。耳郎さんはずっと僕に好意を抱いていてくれたのに…全く気が付かなかったなんて!

 

「僕は、耳郎さんの気持ちにどう答えればいいんだろう…」

 

 海を見つめても答えは出てこない。僕は溜息を一つ付き、コテージへ戻る為、歩き出した。

 

 

耳郎side

 

 緑谷に思いを伝えたウチは、答えを聞く事もなく逃げるようにコテージへ戻った訳だけど…

 

「おかえりなさい。耳郎さん」

 

 そこでは、香山先生や芦戸達が手ぐすね引いて待ち構えていた。ウチはアッサリと捕まり―

 

「ふーん、なるほどねぇ…」

「………」

 

 恋愛相談(・・・・)という名の尋問(・・)を受け、これまでの経緯を根掘り葉掘り聞かれてしまった。

 

「耳郎さん」

「はいっ!」

 

 ただ名前を呼ばれただけなのに、飛び上がりたくなる程驚いてしまう。何時に無く真面目な顔をした香山先生の視線が怖い…。

 

「耳郎さんの気持ちは、良くわかったわ…」

「はい…」

「恋心を封じ込めての日々。さぞ辛かったでしょうね!」

「へっ!? わぶっ!」

 

 予想外の言葉に変な声を出した直後、香山先生は私を思いっきり抱きしめた。その豊かな胸に顔が埋もれて…息が、息が出来ない!

 

「でも、もう大丈夫! 私達が力になるわ!」

 

 そう宣言して、窒息寸前の私を開放する香山先生。それにしても力になるって…

 

「ちょ、ちょっと待ってください。ウチは…別に、緑谷と今以上の関係を…望んでいる…訳じゃ…

「嘘はあかんよ」

 

 思わず口にした、取り繕うような言葉。徐々に小さくなっていく言葉(いいわけ)を切り捨てたのは、麗日だった。

 

「それは…響香ちゃんの本心なん?」

「ほ、本心に決まってるじゃない。もう、緑谷は麗日と恋人関係な訳で、それを引き裂くような真似はしたくない…」

 

 真っ直ぐにウチを見つめながら問いかける麗日から目を逸らし、少し早口で言い訳を重ねていると―

 

「響香ちゃん!」

 

 麗日がバン! とテーブルを叩いて立ち上がり、一気に近づいてきたかと思ったら、鼻先がぶつかりそうになるくらいまで顔を寄せてきた。

「響香ちゃん! 緑谷君の事、好きなんでしょう!? その気持ちに嘘ついたらアカン!!」

 

 眉を吊り上げ、ガツン! と思いをぶつけてくる麗日に、ウチはただただ目を丸くするばかり…。そして―

 

「それを何? 今以上の関係を望んでいる訳じゃない(・・・・・・・・・・・・・・・・・)引き裂くような真似はしたくない(・・・・・・・・・・・・・・・)? 好きなんでしょう! 自分の気持ちに嘘ついて、蓋して、全力を尽くさへんのやったら、ヒーロー以前に女の子失格やよ!!」

 

 ウチに怒声を叩き付ける麗日の方が、何故か目に涙を浮かべていた。

 

「お茶子ちゃん、その位にしておいた方がいいわ」

「梅雨ちゃん…うん、ごめんね…響香ちゃん、偉そうな事言って」

「ううん、麗日の言っている事が正しいから…」

 

 梅雨ちゃんが間に入った事で、ウチと麗日は互いに謝りながら席に着く。

 それぞれ飲み物を口にして、落ち着いたところで香山先生が口を開いた。

 

「それじゃあ、改めて聞かせてもらうわね。耳郎さんはどうしたいの?」

「ウチは…」

 

 香山先生の問いかけに、ウチは暫し沈黙し…。

 

「緑谷と一緒になりたい。でも、それで麗日が傷つく事になるのは…嫌、です」

 

 自分の本心を曝け出す。うん、緑谷と恋人になりたいけど、麗日は傷つけたくない。なんて矛盾した内容。きっと皆も呆れて…

 

「わかったわ。じゃあ、その方向で上手くいくように考えましょう」

「え!?」

 

 香山先生の言葉に、思わず声が出る。こんな矛盾した思い、実現なんてする訳…。

 

「『三人寄れば文殊の知恵』。凡人でも集まって相談すれば、思いがけない良い知恵が生まれるものよ」

「で、でも…」

「耳郎、大丈夫だって! 私、頭はあんまり良くないけど、全力で考えるから!」

「ここには女子が7人だから、3人より…2.33倍良い知恵が生まれるよね!」

 

 香山先生の言葉を聞いても不安を隠せないウチに、芦戸と葉隠がそう声をかけ―

 

「耳郎さん! 私も全力でサポートさせていただきますわ!」

 

 ヤオモモもプリプリした笑顔で、そう言ってきた。麗日と梅雨ちゃんは…言うまでもない。

 

「皆…ありがとう」

 

 ここまでやってくれる皆に、ウチは泣きながら頭を下げ、打ち合わせ(・・・・・)が始まった。

 

 

雷鳥side

 

「ほら、まずはこれでも飲んで落ち着け」

 

 コテージに戻ってくるなり、俺と轟に頭を下げ、アドバイスを求めてきた出久に、俺はアイスティーの入ったグラスを手渡しながらそう告げる。

 まったく、海岸で何があったのか予測はつくが…少し落ち着け。

 

「う、うん、ごめん…」

 

 出久自身にも突然過ぎたという自覚はあったのだろう。一言謝るとアイスティーに口をつけ―

 

「実は…」

 

 ポツリポツリと話し始めた。

 

「なるほどな…」

「そうか、耳郎から…か」

 

 相談の内容は予測通りだったが、轟には驚きだったようだ。滅多に無いレベルで表情が変化している。

 

「僕は如何すれば良いのか…」

「出久…お前は難しく考え過ぎなんだよ。耳郎の事、嫌いじゃないんだろう?」

「うん…」

「だったら、答えはシンプルだ。好意へ真摯に応えればいい」

 

 難しい顔で呟く出久に、俺は敢えて軽い調子でそう告げる。

 

「で、でも! それは凄く不誠実な事(・・・・・)じゃないの? 耳郎さんにも、麗日さんにも…」

「………まぁ、麗日と耳郎、どちらかと遊びの関係(・・・・・)だったら、不誠実だろうな。だが、お前はそうじゃないだろう? 麗日と耳郎、どちらも全力で大切にする。俺の知る緑谷出久はそんな男の筈だ」

「たしかに…緑谷が恋人を大切にする男だって事は、色事に疎い俺でもわかる」

 

 俺と轟の言葉に沈黙し、考え込む出久。仕方ない、もう一押しといくか。

 

「出久。強さとはなんだ?」

「強さ、それは…」

「昔、ある高名な空手家が言っていたそうだ。『強さとは、己の意を通す力。ぶっちゃけ、ワガママを貫く力ってことさ』とな」

「ワガママを貫く力…」

「お前はもう少し、ワガママになって良い…俺はそう思うぜ」

 

 さて、俺から言えるのはこのくらい。あとは…出久自身で決める事だ。

 

 

出久side

 

 雷鳥兄ちゃんと轟君が寝室へ向かった後も、僕はリビングに1人残り―

 

「…よし」

 

 備え付けのノートとボールペンを使って、自己分析を行っていた。

 

「僕の欠点…他者*1と比較する事による自己評価の低さ。謙虚な姿勢は裏を返せば自信の無さとも言える。それから、異性に対する鈍感さ、察しの悪さ……」

 

 ブツブツと呟きながら、ペンを走らせていく。欠点の次は、自身の長所を思いつく限り書き連ね、その次は…こんな僕を好きになってくれた麗日さんと耳郎さんについて。その次は…、

 時間の経過も忘れて、分析と筆記を続け…気が付くと―

 

「2時…か」

 

 分析を開始して4時間が経過していた。流石にそろそろ寝ないと朝からの活動に支障を来す。僕は2人を起こさないよう静かに寝室へ入り、ベッドへ潜り込む。

 

「おやすみなさい」

 

 耳郎さんの気持ちにどう応えるか。自分の中では見つける事が出来た。あとは…それがどんな結果を招くかだ。

 

 

梅雨side

 

 時刻は朝6時。朝食作りの為に早起きした私とお茶子ちゃんは、調理スペースに向かった訳だけど―

 

「おはよう、お2人さん」

「おはよう、麗日さん、梅雨ちゃん」

 

 既に吸阪ちゃんと緑谷ちゃんが準備を始めていたわ。2人はいつ起きたのかしら?

 

「なぁに、ホンの5分前さ。アイスミルクティー、飲むかい?」

「いただくわ」

「私も!」

 

 吸阪ちゃんの淹れてくれたアイスミルクティーを飲みながら、朝食について打ち合わせをしていると―

 

「おはよう」

 

 耳郎ちゃんも起きてきたわ。緑谷ちゃんと目が合って一瞬だけ俯いたけど―

 

「おはよう、耳郎さん」

「…おはよう」

 

 緑谷ちゃんからの挨拶にはちゃんと答えているし、大丈夫ね。それにしても…緑谷ちゃんのあの表情、きっと答えを見つけたのね。

 

「あ、あの! 耳郎さん!」

「ッ!」

「昨日の事で、僕なりに答えを出しました。聞いて…くれますか? 麗日さんも」

「…うん」

「いつでもいいよ、緑谷君」

 

 2人の返事を聞き、静かに深呼吸する事2回。遂にその時がやってきたわ。

 

「まず、耳郎さんの気持ちに長い間気づかなかった鈍感さをお詫びします。ごめんなさい」

「いいよ…ハッキリしなかったウチも悪いんだし……」

「そして、僕に好意を抱いてくれた事。凄く嬉しかったです。でも、僕にはもう麗日さんという恋人が―」

「うん、そうだよね。わかってる。麗日と別れて、ウチとくっつくなんて、そんな最低な事―」

「違います! そうじゃ…そうじゃないんです! 僕は……麗日さんも、耳郎さんも、大切にしたい!」

「………え?」

「2人の事、全力で大切にしたいんです! ワガママなのは百も承知。でも、僕はこのワガママを貫きたい!」

「どうか、お願いします!」

 

 そう言って深々と頭を下げる緑谷ちゃん。何と言うか…不器用な告白ね。だけど―

 

「もぅ、緑谷君はワガママやなぁ…そこまで堂々と言われたら、断れないやん」

「ホント、ワガママだよね。でも…そんな緑谷も格好良いよ」

 

 お茶子ちゃんも響香ちゃんも、そんな緑谷ちゃんを笑って受け入れたわ。

 

「これにて、一件落着…だな。さぁ、朝食作りといきますか」

 

 そんな3人を見届けて、そう宣言する吸阪ちゃん。5人で美味しい朝ご飯を作りましょう。

 

 

轟side

 

「それでは、いただきます!」

「「「「「いただきます!」」」」」

 

 飯田の号令で、始まる朝食。メニューは―

 

・そば粉のガレット*2

・夏野菜のホットサラダ*3

・ヴィシソワーズ*4

・フルーツヨーグルト*5

 

 以上4品だ。家では基本和食中心だから、こういう洋風の朝食は珍しいが…その中でもガレット…蕎麦粉で作ったクレープは、初めて食べるな。

 俺は早速ナイフとフォークを手に取り、ガレットを食べ始めた。

 

「……美味いな」

 

 ほのかに蕎麦の香りが漂う生地と、中の具材が良く合っている。蕎麦は蕎麦として食うのが一番だと思っていたが…こういうのも悪くない。

 

「それにしても…」

 

 緑谷と麗日、そして耳郎から漂ってくる雰囲気。色事に疎い俺でもわかる。むしろ―

 

「麗日に続いて耳郎もかよ…緑谷の奴……」

「峰田、そんだけ緑谷(アイツ)の好感度が高いって事だ…うん、受け入れろ」

「畜生…」

 

 あの峰田の様子を見たら、気が付かない方がおかしいレベルだ。

 

「良かったですわね。耳郎さん」

 

 近くに座っている八百万もこんな感じだし…俺も少しは、色事に詳しくならないといけないな…。

 よく冷えたヴィシソワーズを飲みながら、俺はそんな事を考えるのだった。

*1
主にオールマイトや雷鳥

*2
ベーコンと卵、チーズを具材にした物は雷鳥作、サーモンとアボカドを具材にした物は蛙吹作

*3
耳郎作

*4
出久作

*5
麗日作




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
なお、コテージの振り分けはこのような風になっております。

男子(4棟使用)

雷鳥、出久、轟

飯田、尾白、切島、常闇

口田、砂藤、障子、心操

青山、瀬呂、峰田

女子(2棟使用)

蛙吹、麗日、八百万、香山

芦戸、耳郎、葉隠


今回が今年最後の更新になると思います。
今年1年、拙作をお読みいただき、ありがとうございました。
来年も更新を頑張っていきますので、よろしくお願いいたします。

読者の皆様。良いお年をお迎えください。
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