出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2   作:SS_TAKERU

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第29話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。



第29話:外道の戦術

ファットガムside

 

「盾と盾対矛と盾の勝負。盾と盾(俺達)の勝ちやな」

 

 壁にめり込み、白目を剥いたバリア敵(天蓋)にそう宣言した俺は―

 

烈怒(レッド)! 大丈夫か?」

 

 “個性”を解除した途端、片膝を突いた烈怒頼雄斗(レッドライオット)に駆け寄った。

 

「だ、大丈夫ッス…」

「どう見ても大丈夫やないやろ! ()()()()()()やないかい!」

 

 巨漢敵(乱波)の放った最初の攻撃。あれを防御した時点でかなりのダメージを負っていた烈怒(レッド)の両腕。

 新技発動で防御力を高めていたとはいえ、そんな状態で巨漢敵(乱波)の連打を防御し続けたのだから、こうなるのは当たり前…いや、防御力を高めていたからこの程度で済んだ。と考えるべきやな。 

 

「ホントに大丈夫ッス。傷は派手だし、出血も凄いけど…骨は、多分折れてません。まぁ、ヒビくらいは入ってるかも…」

「たしかに、折れてはおらんみたいやな。せやけど、応急手当は必要やで。どこか―」

「まだだ…」

 

 手当てが出来る場所を…と続けようとした俺の声を遮ったのは、烈怒(レッド)の攻撃で吹っ飛ばされた筈の巨漢敵(乱波)

 

「殺し合いだ…まだ俺は…死んでないっ!」

 

 奴もかなりのダメージを受けてボロボロ。せやけど、2本の足でしっかりと立っとる。タフすぎやろ…! 矛と盾の矛やないんかい!?

 烈怒(レッド)を戦わせる訳にはいかん。けど、俺も脂肪を8割がた使ってしもうた…正直、奴の連打(ラッシュ)を受けきれる自信は……どないしたら…!

 

「奥の部屋で応急手当くらいは出来る。その学せ…烈怒頼雄斗(レッドライオット)手当しろ」

「………罠やん」

「罠張る男に見えるのか?」

 

 巨漢男(乱波)からの予想外の申し出に、思わず突っ込み入れてもうたけど…たしかに、罠張るような男には見えんな。

 

「それに安心しろ。俺も両肩と拳がイカレちまって、戦える状態じゃねえ…」

「…何がしたいねん?」

「喧嘩だよ。殺し合い。俺は()()()()の出だ。聞いたことくらいあるだろう? “個性”フル活用のファイトクラブ」

「俺の拳を受けて立ち上がった奴は、そういなかった。いても、そいつら決まって命乞いを始めやがる」

「わかるだろ? やりたい事が出来ない辛さ…!」

「命を賭す事でしか生まれぬ力! そのぶつけ合い!!」

「だから良かった! お前らはとても良かった!!」

「特に烈怒頼雄斗(レッドライオット)!! 俺はお前が気に入った!!」

()()()をしよう! 傷を治せ! 次はちゃんと殺してやる!!」

「……自分、この後逮捕されてブタ箱やで、わかってんのか? 次なんてあらへん。負けや」

「知るか! 誰も死んでないからドローだ!!」

「ドローちゃうわ。何シップに則っとんねん」

 

 俺の突っ込みを無視して、フラフラの足取りで奥の部屋へと入っていく巨漢敵(乱波)。ありゃ、相当な変人や。変人やけど…

 

「変人なりのポリシー…ってやつか…」

 

 欲求に忠実な分、言葉に裏が無いのが伝わってくる。

 

「正直…俺にはよくわかんねぇッス…」

 

 まだ高校生の烈怒(レッド)にはわからんかもな…

 

「まぁ、それよりも…自分、環に連れられて、うちの事務所へ面談に来た日の事…覚えてるか?」

「…はい」

「その時、こう言いよったよな。『誰かのピンチを見過ごす情けない奴には、もうなりたくない』って」

「……ウス」

「その情けなかった頃の自分に、見せてやり。今の君、(ヒーロー)どころか、敵さんにも認められる漢になってもうたで」

「あ…」

「さ! 早いとこ手当しに行こか!」

 

 俺の言葉に虚を突かれた表情の烈怒(レッド)。その背中を軽く叩くと、俺は気絶したままのバリア敵(天蓋)をしっかり拘束し、奥の部屋へと向かった。

 

 

「よし…出血の方は、これで治まる筈や。でも、鎮痛剤が効くまで、少しは安静にしとかなあかん」

 

 奥の部屋には消毒薬や鎮痛剤、清潔な包帯なんかが結構な量ストックされとった。何の目的でストックされとったかは………今は考えん方が良いやろな。

 

「治ったか! じゃあ殺す!」

「治るか! 生かせ!」

 

 治療が終わった途端、そんな事を言い出す巨漢敵(乱波)に突っ込みを入れつつ―

 

「………多少打ち解けてしもたついでで…ヒーローとしては、少々おかしな事聞くけど、乱波くん…君なんでこんな小さな組に納まっとんねん」

 

 ふと心に浮かんだ疑問を乱波にぶつけてみた。

 

「そりゃぁ、オバホは俺が唯一負けた男だからよ」

「負け…」

「組に入れってな。突然現れふっかけてきやがった……地下格闘場よ、当然勝敗に委ねるわな」

「そして、俺は死んだ」

「と思ったら、元通り」

「組に入ってから5回挑んだが、5敗。全敗だ。あの男に勝つ為に俺はここに居続けている」

「………!?」

 

 ちょっと待てや…つまり、乱波(こいつ)のあの威力とスピードを、治崎は()()()んか!?

 

「それだけの強さを持ちながら、戦闘は部下任せ…治崎(あいつ)は何故出て来うへん?」

「ここにおんねやろ? 逃げるか隠れるか、しとんねやろ?」

「エリっちゅう年端もいかん女の子切り刻んで、“個性”を破壊する弾丸作ったり、山のような銃火器買い集めたり、治崎は何がしたいねん」

「ヤクザ者の復権だとよ。そう話しているのを聞いちまった事がある。その為にいろいろ動いていたようだが…詳しい事は知らん」

「………」

 

 乱波の言葉に、俺は言葉を失った。ヤクザ者の復権なんて()()()…本気で実現出来ると思っとんのか?

 

 

ロックロックside

 

「また来てるぞ! いい加減にしてくれ!!」

 

 本部長の入中による止む事の無い攻撃に、俺は思わず声を荒げながら―

 

「天井が! 壁が! 地面が! 迫ってくる!」

「圧殺されるぞ! 粗挽きハンバーグにされちまう!」

 

 同行している警察官が発した悲鳴混じりの叫びに、内心同意する。まったく、割に合わない仕事だ!

 

「ロックロック!」

「リーダーぶるない! この窮地! もとはと言えば、あんたの失態だ!!」

 

 そんな状況でも冷静に指示を下してくるサー・ナイトアイに、悪態を吐きつつ―

 

「『本締(デッドボルト)』!!」

 

 “個性”を全開にして、迫り来る壁を次々とその場に固定していく。

 

「こっちへ! この辺はもう動かねぇ」

「狭さは言うなよ。強度MAXの『本締(デッドボルト)』だと、そう何ヶ所も締めれねぇ。これが俺の限界範囲!」

「ロックロック! 締めてねぇところからホラ! また! 来るぞ!」

「ちぃっ!」

 

 悲鳴じみた声に舌打ちしつつ、向かってきた壁に『本締(デッドボルト)』を発動しようとしたその時!

 

HYDRA(ハイドラ)!スマァァァァァッシュ!!*1

「ダブルライトニングボルトォ!」

 

 グリュンフリートとライコウが、それぞれの攻撃を叩き込んで、壁を粉砕。進路を切り開いた。

 

「今のうちだ! 急げ!」

 

 全員が大急ぎで奥へと向かうが、10mも進まない内に壁や天井が再びうねり出す。

 迫る圧壁を一ヶ所に集中させた上で、掘り進める。さっきからこの繰り返しだ。

 

「まるで愚鈍な土竜だな…」

 

 思わず警察官の誰かが、そんな呟きを漏らしたが全く同感だよ!

 

「ファットチームがいれば、もっとスムーズに行けたのになぁ! イレイザー!」

「わかってる!」

 

 苛立ち混じりにイレイザーヘッドに声をかけるが、奴も入中の姿を捉えられずにいる。くそっ、後手後手じゃねえかよ!

 

「このままじゃ、ジリ貧だぞ! 追い詰められる一方だ!」

 

 溜まる一方のストレスに、思わず叫ぶ。

 

「ッ!?」

 

 すると、俺達に迫って来ていた壁や天井が、一斉に退()()()()()

 

「開いた!?」

「今度はどういうつもりだ!?」

 

 入中の狙いが読めず、周囲を警戒する俺達。嫌な沈黙がゆっくり5を数えられるだけ続いた後―

 

「うぉっ!?」

 

 壁や天井が一斉に動き出し、()()()()()()()()()! おいおい、今更分断だと!?

 

 

雷鳥side

 

「おい! 皆! 無事か!?」

 

 壁越しにロックロックの声が響く中、俺達は素早くそれぞれの位置を確認。その結果―

 

相澤先生(イレイザーヘッド)と俺

・ロックロックと俺達に同行しているSVC隊員1名

出久(グリュンフリート)とサー・ナイトアイ、警察官の皆さん

 

 以上、3チームに分断された事が分かった訳だが…

 

「圧殺出来ねぇとなって、やり方を変えたのか?」

「却ってこっちは動きやすくなっちまってるが…」

 

 何の目的で、入中がこんな真似をしたのかがわからない。

 

「……こちらが動きやすくなる。それを補って余りある策があるという事だろう…」

「全員、最大限に警戒しろ! 必ず来るぞ! ()()()()が!」

 

 サー・ナイトアイの言葉に、全員が改めて周囲を警戒した次の瞬間!

 

「いやぁぁぁぁぁっ! 痛いっ! 痛ぃぃぃっ!」

「怖い! 怖いよぉっ! やめてぇぇぇぇぇっ!!」

 

 何処からか、()()()()()()()()()()()()()()()()()。この声は…エリちゃんか!? いや、そんな筈はない! だとすると…

 

「おい! 女の子は雄英高校で保護してるんじゃなかったのか!」

「それは間違いない! エリちゃんの安全は100%確保出来ている!」

「だったら、この悲鳴はなんだ! そこの部屋から聞こえてくるぞ!」

 

 考えを纏める間も無く、ロックロックが悲鳴の出所を発見。

 

「ドアを突き破る! SVC、手伝え!」

「了解した!」

 

 強行突入を決行しようとした。俺は咄嗟にロックロックの向かう方向にサーチを行い―

 

「ロックロック! 駄目だ! ()()()()()()()()()()()!!」

 

 ロックロックの突入を止めようとしたが、間に合わなかった。ドアを蹴破る音が聞こえた直後、()()()()()()()()

 

「ロックロック! どうした!」

相澤先生(イレイザーヘッド)! 退いてください!」

 

 俺は相澤先生(イレイザーヘッド)が退くのと同時に、壁へライトニングボルトを叩き込んで破壊。一気に壁の内側へ突入した。そこには―

 

「くそっ…ドジ、踏んじまった…」

「損傷率70%オーバー…流石に、無茶が過ぎたか…」

 

 両足に重傷を負ったロックロックと、戦闘服(コスチューム)が大破し、右腕に重傷を負ったSVC隊員の姿。

 ドアが蹴破られた部屋の内部は、幾つもの爆弾が爆発したかのように滅茶苦茶になっており、半壊したスピーカーには、焼け焦げた携帯音楽プレーヤーが繋げられていた。

 

「古典的なワイヤートラップか…」

 

 部屋に散乱した発射済みのクレイモア地雷やワイヤーなどを拾い、忌々し気に呟く相澤先生(イレイザーヘッド)

 そう、予め録音しておいたエリちゃんの悲鳴を流す事で、この部屋へ俺達を誘き出すのが入中の狙いだった。

 前以て大量のクレイモア地雷を設置し、ドアにワイヤーを繋げておけば、ドアを開くなり蹴破るなりした瞬間、クレイモア地雷が一斉点火。一網打尽に出来るという目論見だったのだろう。

 幸運にもSVC隊員が自らを盾にした事で、2人とも生き延びる事は出来たが…これ以上の行動はとても無理だ。

 

「随分とふざけた真似をしてくれる…」

 

 あぁ…あまりに激しい怒りを抱くと、却って冷静になるんだな。()()()()()()()()()()()()

 俺はサーチで、入中の潜んでいる方向と距離を把握すると、小型の容器に入れて持ち歩いていた砂鉄を操作。帯電させた状態で円盤状に収束させると―

 

「ライトニング! サーキュラー!!」

 

 高速回転させ、戦輪(チャクラム)のように射出! 壁を一気に切り開いて、奥に潜んでいた入中を暴き出した。

 

「なっ…」

 

 突然の事に驚きを隠せない入中。慌てて姿を隠そうとするが…もう遅い!

 

「サンダー! ブレーク!」

「ぬがぁぁぁぁぁっ!!」

 

 俺の電撃をまともに受けた入中は、全身から白煙を上げつつ、壁の中から転がり出てきたのが―

 

「ま、まだだ…我々は、もはや外道に堕ちた…こ、この程度で倒れる訳には……」

「ライトニングブラスト!」

 

 何やらごちゃごちゃとほざいていたので、顔面に電撃キック(ライトニングブラスト)を叩き込み、きっちり意識を刈り取った。

 

「入中を仕留めた! これで妨害は無くなる筈だ!!」

 

 

出久side

 

「入中を仕留めた! これで妨害は無くなる筈だ!!」

 

 壁越しに聞こえてきた雷鳥兄ちゃん(ライコウ)の声に、その場にいた誰もが安堵の声を上げる。あの妨害がなくなれば、治崎の追跡は格だ―

 

「ッ!?」

 

 突然聞こえてきた巨大な足音に僕の思考は中断し、その場にいた全員が足音の聞こえてきた方向に視線を向ける。

 

「あ、あれは!」

 

 そして、警察官の声と共に、足音の主が姿を現した。それは逆関節の両脚を持った二足歩行型のロボット。大きさは…3m近い。

 

「間違いない…あれはアメリカ軍が制式採用した市街地戦闘用ドロイド、『UD210*2』じゃないか!」

「でも、あの機体は3年前に全機退役した筈!」

 

 やたらとメカに詳しい警察官のおかげで、正体はわかったけど…軍用ドロイドがどうしてここに?

 

「おそらく、退役後解体処分になる前に、ブラックマーケットへ横流しされた機体があったのだろう」

「治崎があんな物まで手に入れていたとは…本当に戦争起こす気か?」

 

 サー・ナイトアイの予想に続くように、警察官が叫んだ直後―

 

「侵入者ハ全員排除スル! 射殺! 射殺!」

 

 軍用ドロイドは僕達にそう宣告し、両腕部分の銃火器。そのロックを解除した。これは…一戦交えないといけないみたいだ!

*1
この場合のハイドラは『ギリシャ神話に登場する怪物』ではなく、米軍などで運用されている航空機搭載型小翼折り畳み式ロケット弾『Hydra 70 rocket』を意味

*2
UDは

Urban warfare Droidの略




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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