出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2   作:SS_TAKERU

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第30話を投稿します。
いつもより短いですが、お楽しみ頂ければ、幸いです。


第30話:Finally caught up(やっと追いついた)

オーバーホール(治崎)side

 

「騒がしいな…ちっとも静かになりやしない。ちゃんと役に立っているのか、八斎衆(あいつら)は…」

 

 施設の最深部へ移動を始めて5分程経ったが…頭上で響く銃声は、まだまだ鳴りやみそうにない。それでも―

 

「言いたかないですが…八斎會は終わりですね」

「組長と俺さえいれば、八斎會は死なない」

 

 玄野(クロノスタシス)のボヤキに、俺はそう断言する。

 

「殆どの子分は組長派で、俺の考えについて来やしない。俺こそが、誰よりも組長の意思を尊重しているのにな」

「まぁいい……この“完成品”と、“血清”さえあれば、極道(おれたち)を再び返り咲かせる事が出来る」

「今回の件も、考えようによっては好事家への良いネタになる。『ヒーローが恐れ、潰しににかかった薬』…奴らの好む響きだ。喜んで出資してくれるさ」 

 

 そう、まだ逆転の目は残されている。ここを脱出さえ出来れば…

 

 

出久side

 

「侵入者ハ全員排除スル! 射殺! 射殺!」

 

 僕達にそう宣告し、両腕部分の銃火器。そのロックを解除するUD210(軍用ドロイド)

 僕は咄嗟に『黒鞭』を発動。近くに転がっていた床材や壁の破片を絡め取り―

 

「はぁっ!」

 

 UD210(軍用ドロイド)に投げつけた!

 

「迎撃!」

 

 当然、投擲(こんなもの)UD210(軍用ドロイド)に通用する訳がなく、容易く撃ち落されてしまう。だけど、一瞬の隙を作る事は出来た!

 僕は素早くUD210(軍用ドロイド)の足元に滑り込むと、その左脚を掴み―

 

「うぉぉぉぉぉっ!」

 

 渾身の力で持ち上げ、そのまま一気に引っ繰り返した!

 

「おぉっ! 凄い力だ! 流石はオールマイトの愛弟子!」

「引っ繰り返っちまえば、軍用ドロイドも怖くないぜ!」

 

 その光景に誰もが安堵の声を上げるけど―

 

「気をつけろ! 『UD210』は、転倒しても自力で起き上がる事が出来る!」

 

 UD210(軍用ドロイド)の事を知っていた警察官は、油断せずに声を張り上げる。

 その言葉通り、UD210(軍用ドロイド)は胴体部分に収納されていたアームを展開。引っ繰り返った状態から、起き上がろうとしていたので―

 

44MAGNUM(フォーティーフォーマグナム)! スマッシュ! シックスオンワン!!」

 

 起き上がりの最中で無防備となっている胴体に、44MAGNUMスマッシュを一点集中の6連発で打ち込んだ!

 耳障りな金属音を立てながら吹っ飛び、壁に激突したUD210(軍用ドロイド)は―

 

「シ、侵入者ハ、ハ、排除……シ、射……」

 

 断末魔の声を残し、機能を停止した。

 

「ふぅ…何とかなったな…しかし、こんな代物まで用意されていたとは…()()()()()()()()()()()()()()…」

 

 冷や汗を拭いながら、そう呟く刑事さん。だけど、その言い方…凄く嫌な予感がする。

 雷鳥兄ちゃん(ライコウ)だったら、『その発言、フラグですよ!』ってツッコミを―

 

「侵入者ヲ確認!」

 

 そう思った瞬間、声と共に現れる2体目のUD210(軍用ドロイド)。やっぱり()()()()()だ!

 すぐさま迎撃に移ろうとした瞬間、何かが僕の真横を次々と高速で通り過ぎた。それらはまるで吸い込まれるように、UD210(軍用ドロイド)の両腕部分の銃火器へ命中。

 

「侵入者ハ排除スル! 射殺!」

 

 その銃口を()()()()()事で暴発を促し、両腕を木っ端微塵に吹っ飛ばした!

 

「グリュンフリート! 今だ!」

 

 そこへ響くサー・ナイトアイの声。僕は攻撃の主がナイトアイである事を確信しつつ、UD210(軍用ドロイド)へ接近。

 

HYDRA(ハイドラ)! スマァァァァァッシュ!!」

 

 胴体に蹴りを叩き込んで吹っ飛ばし、その機能を停止させた。

 

「戦闘用サポートアイテム、超質量印。約5kgの印鑑です。サラリーマンの風体、このアイテムはユーモアが効いてるでしょう?」

「私はこれを時速150km程度で投擲する事が出来る。まぁ、下手な銃弾程度の威力はあるでしょう」

 

 淡々と説明しているサー・ナイトアイだけど、あの投擲の威力は下手な銃弾どころの話じゃない。

 質量5kgの印鑑を時速150kmで投擲した場合の運動エネルギーは、1/2×質量×速度の2乗の公式に当てはめて計算すると…、約4341(ジュール)

 この(ジュール)を1.356で除算すれば、弾丸の威力を表す、初活力*1を求める事が出来る。ちなみに、その数値は約3201ft・lbf(フィート重量ポンド)

 有名な拳銃弾である9mmパラベラム弾で約360ft・lbf(フィート重量ポンド)。.50AE(アクション・エクスプレス)弾で、約1500ft・lbf(フィート重量ポンド)である事を考えると、相当な威力である事は間違いない。

 

「ダブルライトニングボルトォ!」

 

 そんな事を考えていると、叫びと共に壁が破壊され、負傷したロックロックとSVC隊員を担いだ雷鳥兄ちゃん(ライコウ)相澤先生(イレイザーヘッド)が合流してきた。

 僕達は各自の状況を素早く確認し―

 

「些か足止めを食ったが、これで迷宮は終わった」

「先行したルミリオンが気にかかる。急いで最深部へ向かおう」

 

 負傷したロックロックとSVC隊員、そして警察の皆さんをこの場に残し、サー・ナイトアイ、相澤先生(イレイザーヘッド)雷鳥兄ちゃん(ライコウ)、僕の4人で最深部へ向かう事となった。

 

「ケッ、入中の拘束に、怪我人の警護の事も考えりゃそれが最善だな。オラ! 古典的なトラップに引っかかった馬鹿の事なんか居残りに任せて、さっさと足動かせ!」

「リューキュウ達、上にいる連中! 地下で分散された警官達! サンイーター! ファットガム! 烈怒頼雄斗(レッドライオット)! ルミリオン!」

「ここまで来たらあと一息だろう! 皆が稼いだ時間を無駄にするな!!」

 

 ロックロックの悪態混じりの激励に頷き、僕達は走り出す。全ては治崎を捕える為に!

 

 

ロックロックside

 

「ケッ………」

 

 全速力で最深部へ向かう奴らを見送り、人知れず舌を鳴らす。あの高校生(ガキ)達……別に貶したくて悪態をついていた訳じゃない。

 俺には4つ下の妻がいる。去年の暮れには念願の…息子(ガキ)が生まれた。

 雄英出身で(すこぶ)る優秀だろうと、オールマイトの愛弟子だろうと、ガキはガキ。心配だったのさ。

 だが、蓋を開けてみりゃどうだい。どいつもこいつも、俺達より立派にヒーローしやがって!

 

「必ず治崎を捕えろよ…ライコウ! グリュンフリート!」

 

 

オーバーホール(治崎)side

 

「すみません、ちょっと話を聞かせてもらっていいですか?」

 

 背後から聞こえてきたそんな声に立ち止まり、振り返ってみると、そこに立っていたのは―

 

「お前…」

 

 1週間前、エリを連れて行った忌々しい学生(ガキ)の1人。

 

「あの時の……」

 

 額に青筋が浮かぶのを必死に自制し、努めて冷静に言葉を紡ぐ。

 

「すぐ来れるような道じゃなかった筈だが…」

「近道したんで…あなたを逮捕しに来ました」

 

 逮捕…だと? 学生風情がたった1人で?

 

「………事情がわかったら、ヒーロー面か? 『学生』さん」

「あんた、あの時…残りの2人と違って、エリの事を()()()()()()()()()()()()()()よな? そんな奴が逮捕だなんだと、よくもまぁぬけぬけと…」

「……だから来た」

「訳がわからん。ヒーロー気取りのガキに付き合っている暇は無いんだ」

 

 そう言い残し、俺は学生(ガキ)に背中を向けて歩きだす。

 

「待てっ!」

 

 当然、学生(ガキ)は俺を捕らえようと動き出すが―

 

「何っ…!」

 

 突然平衡感覚を狂わせ、よろけた挙句に壁に頭をぶつけてしまう。

 

「ヒャヒャヒャヒャ! 酔っぱらっちゃったかァァ~!?」

 

 それと同時に、天井から姿を現す八齋衆の1人、酒木。

 

「ウィィィ…足元がァ、おぼつかっ、おぼつかねェェなァァ!?」

「俺もだよ! だから(した)は歩かねェェェ! 俺に近づくなよォ、酔っぱらいがうつっちまうぞ!!」

 

 酒木が酔っぱらいそのものの口調で、学生(ガキ)に声をかける中―

 

「………」

 

 潜んでいたもう1人の八齋衆、音本が銃撃を仕掛ける。どうやら回避されたようだが…まぁ、良い。

 たかが学生(ガキ)1人に、2人がかりはやり過ぎかもしれないが…念には念を、だ。

 

「その学生(ガキ)……さっさと殺せ」

 

 そう言い残して、俺と玄野(クロノスタシス)は最深部へと向かう。まったく、余計な時間を消費させられた。

 俺は面倒が嫌いなんだ。これ以上の邪魔は起きてほしくないものだよ…。

*1
発射された瞬間に弾丸が有している運動エネルギーの事




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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