出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2   作:SS_TAKERU

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第31話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。


第31話:ルミリオンvsオーバーホール

通形(ルミリオン)side

 

「その学生(ガキ)……さっさと殺せ」

 

 そう言い残し、更に奥へと進んでいく治崎。俺はそれを追いかけようとするけど―

 

「ッ!」

 

 この場に残った治崎の手下2人。その1人に発砲され、足止めされてしまう。銃弾は“個性”を発動して透過させる事が出来たけど…。

 

「どういう“個性”だ?」

「『透過』! 発動中はあらゆる物がすりぬける!」

 

 なんだ!? 奴の質問を…()()()()()()()()!?

 

「どこから湧いたのかと思ったら…なるほど、それなら入中(ミミック)達もスルー出来るという訳か」

「ヘッタクソ、外してんじゃねぇや! 酔っぱらってんのかぁぁ!?」

「それは君だ」

「俺かぁ!」

「君は黙って、この特別な私をサポートしてれば良い」

 

 そんな会話を交わしながら、再度俺に銃口を向けてくる手下。

 

「『強制的に喋らせる』…ってとこか…!」

「前線に立つタイプじゃ…ないね…!」

 

 俺は何とか立ち上がるけど、平衡感覚は相変わらず狂ったまま。すぐにバランスを崩してしまう。そこへ―

 

「故に!」

「他の使()()()()とは違う私は、八斎衆の中で唯一! 若の野望に寄り添う事を許された身!!」

 

 声と共に次々と放たれる銃弾。

 

「あんな幼い子を使って、何が野望だ…!」

 

 俺は“個性”を発動して、銃弾を透過しつつ、奴の言葉に反論する。すると―

 

「………? あぁ~」

()()()()()()()()()()()()()()()()。君もよくわかっているだろう?」

「………?」

 

 突然、手下の声が楽しげな声色に変わった。いきなり、何なんだ?

 

「先日、君達が壊理さんを保護した際、君は他の2人とは違い、保護に()()()()()()()()()。それどころか、物事を円滑に進める為、一度()()()()()()をしようとした節もある。違うかね?」

「………そうだ…」

 

 ッ!? 俺は今、何を口にした!?

 

「あぁ、勘違いしないでくれたまえ。別に私は君を責めている訳ではない。あの時は死穢八斎會(われわれ)を調査している最中だったのだろう? そうであったのなら、君の下そうとした判断は正解と言っていい」

「大多数の安全を守る為に、少数の被害に目を瞑る。実に合理的な判断だ。昔から言われているだろう。()()()()()()()()()()()()()()とね!」

「………」

「そんな君が、若を追ってきたのは何故だ? 大方、我々の計画を察知し、あの時見て見ぬふりをした事を悔やんだといったところだろう? 今更、そんな非合理的な行動を取ってどうする? ()()()()()事はやめておきたまえ!」

 

 奴の嘲笑うような声が、何度も頭の中で繰り返される。俺は…俺は…

 

 

 音本side

 

 私の声を聞き、黙り込んだヒーローの姿に内心ほくそ笑む。ああなってしまえば、奴はもう終わり。木偶人形と同じだ。

 

「見よ酒木。行ってしまう! 私は若の野望に! 若に必要とされている!」

「ついて行かねば! 共に歩み! 成就の喜びを分かち合うのだ!」

 

 歌うようにそう宣言し、私は未だ動かないヒーローに狙いを定める。

 

「さぁ! さぁ! 逝けよ邪魔者!!」

 

 私は拳銃で、酒木は投げナイフで攻撃を仕掛けた。5秒も経たない内に、奴は物言わぬ骸となる!

 ………その筈だった。 

 

「げへっ…」

「がはっ…」

 

 5秒も経たない内に、宙を舞っていたのは我々の方。ありえない! 何故、動ける!?

 

 

通形(ルミリオン)side

 

「そうだ…俺はあの時、()()()()

 

 放たれた攻撃を透過で摺り抜け、間髪入れずに反撃を叩き込みながら、俺は静かに呟く。

 たしかにあの時、俺は治崎をこれ以上刺激するリスクと、壊理ちゃんの安全確保を天秤にかけた。

 そして、それが()()()()()であった事を嫌というほど思い知った!

 あの時、吸阪君(ライコウ)緑谷君(グリュンフリート)が動いていなかったら、壊理ちゃんは未だ治崎の手の中で、悍ましい実験に苦しめられていただろう。

 サーは、俺の判断も間違ってはいなかったと言ってくれた。だけど、ヒーローとして、本当の意味で正しかったのは、あの2人。だからこそ―

 

「俺はもう間違わない」

 

 本当の意味で、百万(ミリオン)を救う人間になる為にも! こんな所で揺れたり、止まっている暇なんてない!

 

「POWERRRR!!」

 

 気合と共に追撃を叩き込んで、2人の意識をキッチリ刈り取ってから、俺は治崎へ突撃!

 

「ッ!?」

 

 奴が気配に反応し、思わず振り向いた隙に“個性”を使ってのワープで背後を取り―

 

「治崎!!」

 

 治崎の顔面に裏拳、同時にもう1人の顔面へ蹴りを叩き込んだ!

 

「くっ……」

 

 派手に回転して吹っ飛びながらも体勢を立て直し、こちらを睨みつける治崎。もう1人も倒れてはいるけど、辛うじて意識はあるみたいだ。

 2人とも気絶させたつもりだったけど…軸がブレたか。あの酔っぱらいの“個性”がまだ効いてるせいか。

 

「……汚いな」

「ッ!?」

 

 だけど、治崎を()()()にさせる事は出来たみたいだ。ゾッとするほど冷たい声を出しながら、こちらを睨みつける治崎に対し、俺は油断無く構えを取る。そして―

 

「あぁ…汚らわしい……英雄気取りの病人が…」

「俺の邪魔をするな!!」 

 

 咆哮と共に治崎が床に手を触れた途端、部屋の床全体が一気に分解され、間髪入れずに鋭い棘が次々に生えてきた。

 

「くぅっ…」

 

 ギリギリ『透過』が間に合い、ダメージを受けずに済んだけど…

 治崎の“個性”『オーバーホール』。()()()()()()()()()()()なんてレベルじゃない。速度も効果範囲も桁違いだ!

 

「お前の“個性”、『透過』だったか。“個性”だけじゃないようだな」

「………この“個性”を使って、壊理ちゃんを…」

「あぁ、何か問題があるか? 死んでもすぐに修復すれば蘇生出来る。原形を留めないほど壊れてもすぐ元通り」

「この世界全体に蔓延する“個性”という病を治療する為の薬が、ガキ1人生贄にする事で作り出せるんだ」

「ガキ1人と世界。合理云々以前の話だ。天秤にかけるまでもないだろう」

「………治崎、お前…」

「こんな単純な問題を平気で間違える。どこまでも狂った存在だよ。お前達は!」 

 

 響き渡る治崎の怒声。それと同時に新たに生えた鋭い棘が俺に襲いかかる。俺は意識を研ぎ澄まし、自分に命中する棘。その軌道だけを見極めて、『透過』で摺り抜けていく。

 

「避けるのだけは上手いようだな! だが、その後はどうする!」

「今の修復で、逃げ道は封じた。仲間が駆けつけるのは期待しない方が良いぞ!」

「それにその“個性”も、()()()を撃ち込まれりゃ消えちまいやす」

 

 そこへもう1人の男も起き上がり、拳銃をこちらへ向けてきた。顔は見えないけど、あいつはおそらく若頭補佐の玄野。

 リストに載っていた“個性”。あれだけは喰らえない!

 

「普通に撃ってもまず当たらん。上手く隙を突け」

「あんな精密な“個性”の使い方されると、隙を突けるか怪しいもんでやすね」

 

 治崎の指示にそう返しながら、発砲してくる玄野。俺は『透過』で地面に潜り、玄野の真下から出現。

 

「クロノ!」

 

 顎に一撃を叩き込む…つもりだったけど、治崎が寸前で床をジャンプ台の様に変化させて 玄野を退避させた。

 

「すいやせん。オーバーホール!」

 

 だが、この退避は玄野にとっても突然だったのだろう。拳銃を手放してしまい、謝りながら床を転がっていく。

 

「ちっ!」

 

 玄野の謝罪と床を滑っていく拳銃に、思わず舌打ちする治崎。俺はその隙を見逃さず、治崎の死角に移動。

 

「ッ!?」

「POWERRRR!!」

 

 治崎の顔面に拳を叩き込む!

 

「オーバーホール!」

 

 それを見た玄野は慌てて起き上がり、拳銃へ駆け寄るけど―

 

「させるか!」

 

 俺の方が速い! 玄野の腹に蹴りを叩き込んで吹っ飛ばしつつ、拳銃から弾倉と薬室(チャンバー)に装填されていた弾丸を抜き取って投げ捨てる。

 

「ガキがぁ! いつまでも…調子に乗るなぁ!」

 

 憤怒の表情を浮かべながら俺に突撃し、攻撃を仕掛けてくる治崎。その攻撃は一瞬でも気を抜けば、回避出来そうにない程鋭いものだ。だけど!

 

「相手をよく見て! 次の行動を予想する!」

「一介のヤクザとは思えない身のこなしだ! お前は強いよ治崎! でもね!!」

「俺の方が強い!!」

 

 俺はその全てを回避し、カウンターを叩き込んでいく。

 

「狂った野望もここで終わらせる! お前の負けだ! 治崎!!」

 

 このまま、一気に勝負を決める!!

 

 

オーバーホール(治崎)side

 

「俺の方が強い!!」

 

 俺の攻撃全てを回避し、カウンターを叩き込んでくる学生(ガキ)

 

「狂った野望もここで終わらせる! お前の負けだ! 治崎!!」

 

 派手に吹っ飛んだ俺に対し、勝利宣言とも受け取れる発言をしてきた。あぁ、そうだな…純粋な殴り合いじゃ、分が悪い。だがな…

 

「ククッ、クククッ……これで勝ったつもりか?」

 

 所詮は学生(ガキ)。まだ()()()()()()()()()()()()()()()ようだ。だからこそ、付け入る隙はある!

 

「まだ、終わりじゃない!」

 

 叫びと共に床に手を付け、三度棘を生やしていく。奴はまた摺り抜けるだろうが、それで構わん。5秒、いや3秒だけ時間が稼げればそれで良い! 

 俺は転がり込むように、この部屋の奥。つまり施設最深部の方向へ向かい、万一に備えて()()()()()()()()()()()()()()()()小型のアタッシェケースを取り出すと―

 

「ルミリオン。たしかにお前は強かったよ。だが、最後に勝つのは……俺だ!」

 

 中に収められていた何本かの()()()()()()、その1本を掴んで、首筋に打ち込んだ!

 

 

通形(ルミリオン)side

 

「なっ…」 

 

 たった3秒。たったそれだけの時間だけど、治崎の行動を許してしまった事を俺は内心悔やんだ。

 

「フハハハハッ! 病気の治療に、注射は付き物だよなぁ!!」

 

 狂気の笑みを浮かべながら叫ぶ治崎。奴が何を注射したかはわからないけど、何らかの()()()()である事は間違いない。

 問題はその違法薬物の効果が何なのか。だけど…

 

「シィィィィィッ!!」

 

 ()()()()()で俺に突進してくる治崎の姿に、思考は中断させられる。次々と放たれる連打(ラッシュ)を的確に回避し、“個性”を発動して死角に回り込む。

 

「ぐはっ…」

 

 次の瞬間、治崎の裏拳が顔面に叩き込まれ、俺は吹っ飛ばされていた。何とか体勢を立て直したけど―

 

「遅いな、ルミリオン。欠伸が出るぞ」

「ッ!?」

 

 いつの間にか、治崎が()()()()()()()()()()。反射的に距離を取ろうと、足に力を入れた直後。

 

「ぐぁぁぁぁぁっ!」

 

 奴の両手が動き、俺は両太腿の肉をごっそりと抉り取られてしまった。

 

「はぁ…感謝してくれよ。俺がその気だったら、お前の両脚は今頃消えて無くなっていたんだ」

 

 立っているのがやっとの俺を見下すように笑いながら、恩着せがましい事を言ってくる治崎。まだだ、歩く事は出来なくても、“個性”を使っての移動なら―

 

「ぐはっ!」

 

 そう考えた瞬間、顔面に叩き込まれる治崎の拳。まさか、動きが…思考が読まれている!?

 

「折角だから種明かしをしてやろう。俺が使ったのは、脳機能を賦活させる薬だ」

「薬の効果が発揮されている間、俺の脳は常人を遥かに超えるレベルで機能する。その結果、超加速*1、動きの先読み*2。心理の読み取り*3が可能になった。だから―」

 

 そこで言葉を切った治崎が軽く右手を振った直後、俺の全身あちこちが抉り取られ、血が噴き出していく。

 

「こんな事も出来る。瞬きにも満たない時間で手刀を16発打ち込ませてもらった」

「わかるか? (ゆめ)に罹ったお前が必死に鍛えた技術なんて、注射1本で覆されるレベル。犬の糞に程の価値も無いんだよ!」

 

 そう叫びながら放たれる治崎の蹴り。それを腹に受け、俺は肋骨が砕かれる感触を味わいながら吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられる。

 

「お前はたしかに強かったよ、ルミリオン。だが、最後に勝つのは、()()()()()()()()()()()()()()だ」

「遺言くらいは聞いてやる。遠慮無く言ってみろ」

 

 勝ち誇った顔の治崎。俺は残る力を振り絞り―

 

「……最後に、勝つのは…俺達(ヒーロー)だ…」

 

 そう宣言した。

 

「ふん…最後の最後までそれか。汚らしい現代病の末期患者が…」

 

 額に青筋を浮かべながら、ゆっくりと両手を床に近づけていく治崎。

 

「もういい、お前は壁の染みになれ」

 

 そして、その両手が床に付いた瞬間、鋭い棘が俺に向かって次々と生えていく。このまま串刺しになる事を覚悟したその時!

 

44MAGNUM(フォーティーフォーマグナム)! スマァァァァァッシュ!!」

「ライトニングボルトォ!!」

 

 声と共に壁が木っ端微塵に粉砕され、吸阪君(ライコウ)緑谷君(グリュンフリート)相澤先生(イレイザーヘッド)、そしてサーが飛び込んできた!

 

「よかった…間に合った……足止め、出来た…」

*1
体感時間の加速によるもの

*2
無意識レベルの筋肉の収縮や骨の摩擦音を察知する事によるもの

*3
心音の察知によるもの




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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