出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2   作:SS_TAKERU

5 / 112
お待たせしました。Season2の新年1発目として、短編を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。


第1.8話:夏の思い出作り‐その4‐

雷鳥side

 

 さて、朝食やその後の片付けを終えた俺達は水着に着替え、海へと繰り出した。

 準備運動を済ませ、いざ泳ごうとしたその時―

 

「吸阪ちゃん、ちょっといいかしら?」

 

 ワンピースの水着*1の上から、白のパーカーを羽織った梅雨ちゃんが、俺に声をかけてきた。

 

「どうしたんだい? 梅雨ちゃん」

「えぇ、ちょっとお話したい事があるの…出来れば、2人っきりで(・・・・・・)

「…了解。少し歩こうか」

 

 お話ししたい事…一体、何だろうな。

 

 

梅雨side

 

「ここまでくれば、大丈夫だろう」

「そうね」

 

 皆から30mほど離れたところで、私は吸阪ちゃんの声に頷き、砂浜へ一緒に腰を降ろしたわ。

 

「ひゃっほー!!」

「凄いすごーい!」

 

 何気なく皆の方を見てみれば、轟ちゃんが八百万ちゃんのアドバイスを受けながら作った事で、昨日より規模もディテールも向上した巨大な氷の滑り台を切島ちゃんや瀬呂ちゃん、三奈ちゃんが勢い良く滑って、海へ飛び込んでいく光景や―

 

「それじゃあ、行きます!」

「Let's go!」

「行っちゃえ! 緑谷!」

 

 僅かに宙へ浮いた緑谷ちゃんが、両手から出した黒いロープのような物で、お茶子ちゃんと響香ちゃんが乗ったバナナボートを引っ張っている光景が見える。

 皆心の底から海を楽しんでいる、見ているだけで嬉しく……いけないいけない、本題を忘れるところだったわ。

 

「それにしても、緑谷ちゃんの“個性”は凄いわね」

「あぁ、出久の『フルカウル』は、エネルギーを纏う(・・)“個性”だと思っていたが、実際はエネルギーを操作する(・・・・)“個性”だったんだ。あの戦い(・・・・)の中で、“個性”が成長した事で判明した」

 

 私の声に答えてくれた吸阪ちゃんの方へ向き直り、私は本題に入る。

 

「実は昨日の夜、お茶子ちゃんと2人でお話したの。響香ちゃんの事で…その…」

「あぁ、大丈夫だ。要するに、麗日が出久の彼女という…謂わば自分だけの指定席に、耳郎を招き入れた真意を知りたかった…そんなところだろう?」

「そんなところね…そしたら、お茶子ちゃんはこう言ったの」

 

 -あの戦い見てて…実は怖くなった(・・・・・)ん-

 -緑谷君は誰かを助けるためなら、どんな危険の中にも恐れずに飛び込んでいく…それはヒーローとしてとても大事な事で、尊敬もしとるよ-

 -でも、それは…誰かを助ける代償に自分が傷ついたり(・・・・・)………死んでしまう(・・・・・・)可能性が付きまとうって事やろ?-

 -だから、自分が傷ついたら悲しむ人がおるんやで? って考えて、もう少し自分を大切にするようになってほしいんよ-

 -それやったら、1人より2人の方がええかな? って……同じ人を好きになった(もん)同士、全力で緑谷君のストッパーになれたら良い…なんてね!-

 

「そうか…たしかに出久には、少々自己犠牲が過ぎる(・・・・・・・・)ところが有る。まぁ、昔よりは大分マシになったが…」

「とにかく、麗日には頭が下がるな…なかなか出来る事じゃない」

 

 そう言いながら、どこか遠い目をする吸阪ちゃん。私は静かに呼吸を整え―

 

「………何処かの誰かさん(・・・・・・・・)も、自分を大切にする事を忘れないでほしいわ」

 

 一番伝えたかった事を口にした。吸阪ちゃんの答えは…。

 

「…最大限努力するよ」

 

 

雷鳥side

 

 最大限努力する。そんな答えに頷いてくれた梅雨ちゃんを見て、俺は自然にその肩を抱きよせていた。

 

「吸阪ちゃん?」

「梅雨ちゃん…改めて言う。好きだ」 

「ケ、ケロ!?」

 

 突然の告白に、珍しく目を白黒させる梅雨ちゃん。だが、すぐに落ち着きを取り戻し―

 

「私もよ」

 

 頬を赤くしながら、そう答えてくれた。俺は静かに目を瞑る梅雨ちゃんの額に、そっとキス…

 

「そこっ!」

 

 する寸前で、近くに落ちていた巻貝の殻を掴むと、半ば無意識で展開している索敵に引っかかった何か(・・)へ投げつけた!

 

「痛っ!」

 

 貝殻はのぞきの犯人(ピーピング・トム)へ見事に命中。その正体は…言うまでもあるまい。

 

「峰田…」

「峰田ちゃん…」

「わ、悪い…ちょっとした、こ、好奇心だったんだよ」

 

 怒り心頭の俺と梅雨ちゃんに睨まれ、腰を抜かしたまま弁解する峰田。やれやれ…少しばかりキツイお仕置きといくか。

 

「峰田、こんな諺を知っているか? 『好奇心は猫を殺す』………この意味をしっかり噛み締めるんだな」

「ちょ、ま、待てよ…吸阪! 蛙吹! 悪かった! 悪かったから! 許、許してっ、ぎゃぁぁぁっ!」

 

 

「これで良し、行こうか梅雨ちゃん」

「そうね。しっかり反省するのよ、峰田ちゃん」

 

 峰田へのお仕置きを済ませた俺達は、峰田を残し歩き出した。

 

「なぁ! 悪かった! 悪かったよ! だから、出してくれよ!」

「か、蟹っ! 蟹が、鼻っ! み、耳っ! いってぇぇぇっ!」

 

 首から下を砂に埋められ、波打ち際に放置された峰田の声が聞こえるが…うん、暫く無視だ、無視。

 

 

瀬呂side

 

「峰田君! 君はもう少し、雄英生としての自覚を持ちたまえ! クラスメイトとはいえ、他人の恋路を出歯亀するなど、言語道断だ!」

「うぅ…悪かったよ……」

 

 時刻は11時45分。正座する峰田を説教する飯田の声が響く中、俺と切島、芦戸、葉隠の4人は昼食作りに取り掛かった。

 吸阪達に頼りっぱなしってのも気が引けるし…そろそろギャップの男、瀬呂君ここにあり! ってところを見せないとな!

 

「それにしても、峰田の顔、凄い事になってたよね!」

「磯蟹の群れに、耳や鼻、唇を挟まれまくったんだってさ!」

「まったく、出歯亀なんて男らしくねぇぜ!」

 

 芦戸や葉隠、切島の声に苦笑いしながら、チラリと峰田の方を見てみれば、飯田の説教は継続中。アイツももう少し、後先考えて行動すればいいんだけどなぁ…。

 

「おっと、沸騰したか」

 

 大鍋で沸騰したお湯の中に投入するのは、ひやむぎ。素麺とうどんの中間であるコイツは、重すぎず軽すぎず、丁度良いんだよな。

 

「茹であがったひやむぎはざるに上げ、流水で洗ってぬめりを取ってと…」

  

 皿にひやむぎを盛り、それぞれ冷水にさらした薄切り玉葱、細切りパプリカ、5mm幅に切ったレタスを乗せ、塩茹でにした海老も乗せる。

 最後にパクチーを散らして、エスニック風サラダひやむぎの完成っと!

 

「おぉーっ! エスニック!」

「ヘヘッ、食べる時はナンプラー、蜂蜜、鷹の爪、レモン汁なんかで作ったタレをかけてくれ」

 

 さぁて、どんな評価が出るか…賽は投げられたって奴だ!

 

 

常闇side

 

「それでは、いただきます!」

「「「「「いただきます!」」」」」

 

 飯田の号令で、始まる昼食。メニューは―

 

・エスニック風サラダひやむぎ*2

・豚肉とピーマンのチャンプルー*3

・焼き玉蜀黍*4

・牛乳わらび餅*5

 

 以上4品。今回は吸阪達は関わっていないそうだが、それでも見事なものだ。まずは―

 

「エスニック風サラダひやむぎか…」

 

 瀬呂の作った創作ひやむぎに箸を伸ばす。事前に言われた通り、タレをかけて混ぜ合わせてから一口。

 

「……これは!」 

 

 1口食べた瞬間、衝撃が走った。ナンプラーやレモン汁、蜂蜜で作られたというタレは一般的な麺つゆと一線を画す味わい。

 独特な魚介系の風味も、薬味として乗せられたパクチーの香りによって抑えられ、全く気にならない。それどころか大量の野菜のおかげで、後味はさっぱりしている。

 この暑さの中でもスルスルと口に入りながら、塩茹での海老が適度にボリューム感を演出して…まさに佳良な一品。

 

「瀬呂…見事なものだ」

 

 

出久side

 

「なるほど…牛乳と片栗粉を混ぜて加熱する事で、モチモチの食感を出しているのか」

 

 葉隠さん作のデザート、牛乳わらび餅を食べながら分析に精を出す。

 瀬呂君、切島君、芦戸さん、葉隠さん。皆流石の腕前だった。僕も負けていられない、夕飯作り頑張らないと!

 

「燃えてるね! 緑谷君!」

「大方、夕食作り頑張るぞ! とか思ってたんでしょ?」

 

 そこに声をかけてきたのは、麗日さんと耳郎さん。なんだか、心の中を読まれているようで恥ずかしい。

 

「今でも緑谷は料理上手なんだから、そんなに気を張らなくても良いと思うけど?」

「緑谷君の作るご飯、美味しいよ!」

「う、うん…」

 

 2人からそう言われたことで、知らず知らずの内に肩へ力が入っていた事に気が付く。いけないいけない、肩の力を抜かないと…

 血涙を流しながら、僕達を見つめている峰田君を無視しながら、僕はそう思うのだった。 

*1
白とライムグリーンのストライプ柄

*2
瀬呂作

*3
芦戸作

*4
切島作

*5
葉隠作




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回、夏の思い出作り最終回。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。