出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2 作:SS_TAKERU
お楽しみ頂ければ、幸いです。
雷鳥side
さて、朝食やその後の片付けを終えた俺達は水着に着替え、海へと繰り出した。
準備運動を済ませ、いざ泳ごうとしたその時―
「吸阪ちゃん、ちょっといいかしら?」
ワンピースの水着*1の上から、白のパーカーを羽織った梅雨ちゃんが、俺に声をかけてきた。
「どうしたんだい? 梅雨ちゃん」
「えぇ、ちょっとお話したい事があるの…出来れば、
「…了解。少し歩こうか」
お話ししたい事…一体、何だろうな。
梅雨side
「ここまでくれば、大丈夫だろう」
「そうね」
皆から30mほど離れたところで、私は吸阪ちゃんの声に頷き、砂浜へ一緒に腰を降ろしたわ。
「ひゃっほー!!」
「凄いすごーい!」
何気なく皆の方を見てみれば、轟ちゃんが八百万ちゃんのアドバイスを受けながら作った事で、昨日より規模もディテールも向上した巨大な氷の滑り台を切島ちゃんや瀬呂ちゃん、三奈ちゃんが勢い良く滑って、海へ飛び込んでいく光景や―
「それじゃあ、行きます!」
「Let's go!」
「行っちゃえ! 緑谷!」
僅かに宙へ浮いた緑谷ちゃんが、両手から出した黒いロープのような物で、お茶子ちゃんと響香ちゃんが乗ったバナナボートを引っ張っている光景が見える。
皆心の底から海を楽しんでいる、見ているだけで嬉しく……いけないいけない、本題を忘れるところだったわ。
「それにしても、緑谷ちゃんの“個性”は凄いわね」
「あぁ、出久の『フルカウル』は、エネルギーを
私の声に答えてくれた吸阪ちゃんの方へ向き直り、私は本題に入る。
「実は昨日の夜、お茶子ちゃんと2人でお話したの。響香ちゃんの事で…その…」
「あぁ、大丈夫だ。要するに、麗日が出久の彼女という…謂わば自分だけの指定席に、耳郎を招き入れた真意を知りたかった…そんなところだろう?」
「そんなところね…そしたら、お茶子ちゃんはこう言ったの」
-あの戦い見てて…実は
-緑谷君は誰かを助けるためなら、どんな危険の中にも恐れずに飛び込んでいく…それはヒーローとしてとても大事な事で、尊敬もしとるよ-
-でも、それは…誰かを助ける代償に自分が
-だから、自分が傷ついたら悲しむ人がおるんやで? って考えて、もう少し自分を大切にするようになってほしいんよ-
-それやったら、1人より2人の方がええかな? って……同じ人を好きになった
「そうか…たしかに出久には、少々
「とにかく、麗日には頭が下がるな…なかなか出来る事じゃない」
そう言いながら、どこか遠い目をする吸阪ちゃん。私は静かに呼吸を整え―
「………
一番伝えたかった事を口にした。吸阪ちゃんの答えは…。
「…最大限努力するよ」
雷鳥side
最大限努力する。そんな答えに頷いてくれた梅雨ちゃんを見て、俺は自然にその肩を抱きよせていた。
「吸阪ちゃん?」
「梅雨ちゃん…改めて言う。好きだ」
「ケ、ケロ!?」
突然の告白に、珍しく目を白黒させる梅雨ちゃん。だが、すぐに落ち着きを取り戻し―
「私もよ」
頬を赤くしながら、そう答えてくれた。俺は静かに目を瞑る梅雨ちゃんの額に、そっとキス…
「そこっ!」
する寸前で、近くに落ちていた巻貝の殻を掴むと、半ば無意識で展開している索敵に引っかかった
「痛っ!」
貝殻は
「峰田…」
「峰田ちゃん…」
「わ、悪い…ちょっとした、こ、好奇心だったんだよ」
怒り心頭の俺と梅雨ちゃんに睨まれ、腰を抜かしたまま弁解する峰田。やれやれ…少しばかりキツイお仕置きといくか。
「峰田、こんな諺を知っているか? 『好奇心は猫を殺す』………この意味をしっかり噛み締めるんだな」
「ちょ、ま、待てよ…吸阪! 蛙吹! 悪かった! 悪かったから! 許、許してっ、ぎゃぁぁぁっ!」
「これで良し、行こうか梅雨ちゃん」
「そうね。しっかり反省するのよ、峰田ちゃん」
峰田へのお仕置きを済ませた俺達は、峰田を残し歩き出した。
「なぁ! 悪かった! 悪かったよ! だから、出してくれよ!」
「か、蟹っ! 蟹が、鼻っ! み、耳っ! いってぇぇぇっ!」
首から下を砂に埋められ、波打ち際に放置された峰田の声が聞こえるが…うん、暫く無視だ、無視。
瀬呂side
「峰田君! 君はもう少し、雄英生としての自覚を持ちたまえ! クラスメイトとはいえ、他人の恋路を出歯亀するなど、言語道断だ!」
「うぅ…悪かったよ……」
時刻は11時45分。正座する峰田を説教する飯田の声が響く中、俺と切島、芦戸、葉隠の4人は昼食作りに取り掛かった。
吸阪達に頼りっぱなしってのも気が引けるし…そろそろギャップの男、瀬呂君ここにあり! ってところを見せないとな!
「それにしても、峰田の顔、凄い事になってたよね!」
「磯蟹の群れに、耳や鼻、唇を挟まれまくったんだってさ!」
「まったく、出歯亀なんて男らしくねぇぜ!」
芦戸や葉隠、切島の声に苦笑いしながら、チラリと峰田の方を見てみれば、飯田の説教は継続中。アイツももう少し、後先考えて行動すればいいんだけどなぁ…。
「おっと、沸騰したか」
大鍋で沸騰したお湯の中に投入するのは、ひやむぎ。素麺とうどんの中間であるコイツは、重すぎず軽すぎず、丁度良いんだよな。
「茹であがったひやむぎはざるに上げ、流水で洗ってぬめりを取ってと…」
皿にひやむぎを盛り、それぞれ冷水にさらした薄切り玉葱、細切りパプリカ、5mm幅に切ったレタスを乗せ、塩茹でにした海老も乗せる。
最後にパクチーを散らして、エスニック風サラダひやむぎの完成っと!
「おぉーっ! エスニック!」
「ヘヘッ、食べる時はナンプラー、蜂蜜、鷹の爪、レモン汁なんかで作ったタレをかけてくれ」
さぁて、どんな評価が出るか…賽は投げられたって奴だ!
常闇side
「それでは、いただきます!」
「「「「「いただきます!」」」」」
飯田の号令で、始まる昼食。メニューは―
・エスニック風サラダひやむぎ*2
・豚肉とピーマンのチャンプルー*3
・焼き玉蜀黍*4
・牛乳わらび餅*5
以上4品。今回は吸阪達は関わっていないそうだが、それでも見事なものだ。まずは―
「エスニック風サラダひやむぎか…」
瀬呂の作った創作ひやむぎに箸を伸ばす。事前に言われた通り、タレをかけて混ぜ合わせてから一口。
「……これは!」
1口食べた瞬間、衝撃が走った。ナンプラーやレモン汁、蜂蜜で作られたというタレは一般的な麺つゆと一線を画す味わい。
独特な魚介系の風味も、薬味として乗せられたパクチーの香りによって抑えられ、全く気にならない。それどころか大量の野菜のおかげで、後味はさっぱりしている。
この暑さの中でもスルスルと口に入りながら、塩茹での海老が適度にボリューム感を演出して…まさに佳良な一品。
「瀬呂…見事なものだ」
出久side
「なるほど…牛乳と片栗粉を混ぜて加熱する事で、モチモチの食感を出しているのか」
葉隠さん作のデザート、牛乳わらび餅を食べながら分析に精を出す。
瀬呂君、切島君、芦戸さん、葉隠さん。皆流石の腕前だった。僕も負けていられない、夕飯作り頑張らないと!
「燃えてるね! 緑谷君!」
「大方、夕食作り頑張るぞ! とか思ってたんでしょ?」
そこに声をかけてきたのは、麗日さんと耳郎さん。なんだか、心の中を読まれているようで恥ずかしい。
「今でも緑谷は料理上手なんだから、そんなに気を張らなくても良いと思うけど?」
「緑谷君の作るご飯、美味しいよ!」
「う、うん…」
2人からそう言われたことで、知らず知らずの内に肩へ力が入っていた事に気が付く。いけないいけない、肩の力を抜かないと…
血涙を流しながら、僕達を見つめている峰田君を無視しながら、僕はそう思うのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回、夏の思い出作り最終回。