出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2 作:SS_TAKERU
お楽しみいただければ幸いです。
2時間に及ぶ警察からの事情聴取。それを終えた俺はマイクと連絡を取り―
「待たせたな、イレイザー!」
夜、雄英高校から程近い居酒屋で合流した。
「とりあえず、生中2つと枝豆。あと串焼きの盛り合わせね」
予約しておいた個室に入ると、慣れた様子でマイクが注文を行い、暫くすると酒と料理が運ばれてくる。
「んじゃまぁ、とりあえずは…
いつも通りにテンションが高いマイクに苦笑しつつ、少しだけジョッキを掲げて、ビールに口をつける。
………昼前から何も口にしていなかったせいか、いつもよりビールが染み渡る気がするな。
「…それで? 墓地でお前を襲った犯人、目星はついてるのか?」
酒とツマミをある程度胃に収め、落ち着いたところで…マイクが本題に入ってきた。
「…俺を襲ったのは、猛崎…猛崎琥珀だ」
「
「あぁ、あの声…忘れようがない」
「だとすると、動機は…その……」
「弟…猛崎理央が死んだ件だ。その事で、彼女は俺を恨んでいる」
「でもよ、イレイザー。
「彼女にしてみれば、俺が弟を除籍にしなければ、弟は事故が起きた時間帯に現場へ行く事は無かった。現場へ行かなければ事故にあう事もなかった。という理屈が成り立つ」
「それに
「umm…」
腕を組んだまま黙り込むマイク。俺は僅かに残っていたビールを飲み干し―
「10日、いや1週間で片を付ける。幸い、有休は溜まりに溜まっているからな」
そう宣言する。
「おい待てよイレイザー。1人で動く気か? そいつは幾ら何でも無謀ってもんだ。俺も手を貸すし、事情を知ってるミッドナイトさんも力を―」
「これは俺の問題だ。俺がケジメをつける必要がある」
俺の様子に、説得は困難と判断したのだろう。マイクはお手上げと言わんばかりに両手を上げ―
「OKOK、わかったよ。取りあえずはお前の好きにやんな。ただ…明日は出勤しろよ。
とりあえずは俺の単独行動を黙認してくれた。それにしても、お偉いさんか…面倒な事になりそうだ。
ドクターside
「ふむ、数値は前回検査した時とそう変わってはおらぬな」
全ての検査が終了し、モニターに次々と映し出される数値。その内容はある意味予想通りであり、出来る事なら外れてほしいものでもあった。
「やはり変化無しですか」
その予想は
それはそれとして…
「その件に関しては、ゆっくり話し合うとして…まずは服を着なさい。年頃の娘が下着姿で人前に立つもんじゃない」
「……失礼しました」
まったく、自分に無頓着なのも結構じゃが、恥じらいまでは忘れてほしくないもんじゃな。
「それで、他に気になる事はあるかね?」
服を着た彼女にアイスティーを薦めつつ、儂は問診を開始する。
数値以外の面で何かしらの変化が起きておる可能性を探る為にも、これは欠かす事が出来ない訳じゃが…
「……最近、薬の効きが鈍くなってきました」
彼女が口にしたのは、最悪と言って良い類のもの。想定はしていたが、あまりに早過ぎる。
「……成分の比率を変えてみよう。これで少しはマシになる筈じゃ…ただ……」
「わかっています。薬で抑えるのも限界が近い。そういう事ですよね?」
「…左様。これから処方する物が限界ギリギリ。これが効かなくなったら、もう手の打ちようが無いと言って良い」
「ドクター、正直に答えてください。
「………正直な話、予測よりかなり悪い。一切の希望的観測を排除して考えた場合……長くて2ヶ月。短くて半月。もっと短い可能性も十分にある」
「…そうですか。やはり、今帰国して正解でした」
覚悟を決めた顔で立ち上がり、退室していく彼女。
「これからどうする気じゃ?」
「仲間と合流します。私の命が尽きる前に、決着をつけなければ」
「そうか…それなら、死柄木弔の力を借りると良い。儂から連絡を入れておこう」
「………感謝します。ドクター」
「薬はいつものルートで受け取りなさい」
「はい…もうお会いする事も無いでしょう。お元気で、ドクター」
「お大事に」
深々と頭を下げ、退室していく彼女を見送ると、儂はデスクへと戻り、腰を下ろす。
「猛崎琥珀…またの名を
彼女はこれまで儂が出会った
先生から“個性”を授けられるまで、自分は“無個性”だと思い込んでいた彼女が本来持っていた“個性”。
あれを上手く活用出来れば、先生の体を完全回復させるどころか、文字通り不滅の肉体にする事も可能なのじゃが…
「まぁ、この2年半で蓄積出来たデータがある。彼女亡き後も
雷鳥side
「そうか、久
昼休み、引子姉さんからの連絡を受けた出久から話を聞き、やたらと嬉しそうだった理由を察する。
1年半ぶりに父親と会う訳だからな。気持ちはわからないでもない。
「明日の夕方、面会に来てくれるって」
「そうか、それなら歓迎の準備をしておかないといけないな」
俺としても、1年半ぶりの義兄との再会は楽しみだったりする訳だし…な。
「ねえ、緑谷君。明日…緑谷君のお父さんに、ご挨拶しても、良いかな?」
「ウチも、一度ちゃんとご挨拶させてほしい」
「ケロケロ、私も是非ご挨拶させてほしいわ」
そこに麗日、耳郎、梅雨ちゃんが会話に加わり、久義兄さんに関する話題で盛り上がっていく。
「緑谷ちゃんのお父さんは、どんなお仕事をしているのかしら? 海外赴任中だと聞いた事はあったけど」
「
「
「え、もしかして…緑谷のお父さんって、かなりのエリート?」
「うーん、どうなんだろう…何度か
「それって、
出久の発言に驚きを隠せない麗日。うん、気持ちは解らないでもないが、落ち着け。
「大丈夫だよ、麗日さん。父さんはいつも笑顔を絶やさない優しい人だから」
「う、うん…」
出久にそういわれ、落ち着きを取り戻す麗日。さて、明日はどうなる事やら…。
さて、翌日の昼休み。マイクの言っていた
「ヒーロー公安委員会より参りました。外事第四課課長の緑谷久です。雄英高校には、息子と義弟がお世話になっております」
まさか、緑谷の父親で吸阪の義兄にあたる人物が、ヒーロー公安委員会のお偉いさんだったとは…流石に予想外だ。
「久しぶりだね!
「お久しぶりです、オールマイト。引退のニュースを知った時は驚きましたが…お元気そうで何よりです」
俺達が驚きで僅かにフリーズしている間に、随分とフレンドリーな挨拶を交わしているオールマイトさん達。どうやら、2人は親しい間柄のようだな。
「アスカロン、いや緑谷君とは、これまでに何度か
「いえいえ、『平和の象徴』と評されていたオールマイトに比べれば、浅学菲才の身に過ぎません」
オールマイトさんが認めるほどの実力者…。緑谷の才能は、父親譲りの部分もあったという事か。
「それで、緑谷さん。今日はどういったご用件で? まさか、挨拶をしに来ただけ…では、ないのでしょう?」
そんな事を考えていると、根津校長が緑谷氏に来訪の目的について問いかけていた。たしかに、単なる挨拶が目的とは考えにくいが…。
「えぇ…では、本題に入らせていただきます。実は、我々が捜査を進めていたある
「
「『ジュエルズ』。たしか『
緑谷氏と根津校長の声に耳を傾けながら、回されてきた紙資料に目を通していく。
その資料には、ジュエルズの構成員に関する大まかな情報が記されていたが…これは―
「そして昨日。構成員の1人である
合理的に考えればすぐに解る事だった。遠隔操作式の銃架や高性能爆薬を日本国内で、しかも個人が入手する事など、まず不可能。
何らかの組織、もしくは集団が、海外で入手した物を秘かに持ち込んだ。そう考えた方が、極めて自然。
「アンバーは、ある墓地に足を運んでいました。昨日発砲事件が発生した…そう、イレイザーヘッド。あなたが襲撃された墓地です」
猛崎琥珀は…
「これは偶然とは思えない…イレイザーヘッド、お話を聞かせて頂きたい」
緑谷氏からの要請に、俺は力無く頷くしか出来なかった。
偽名と偽造身分証を使い、郊外にあるウィークリーマンションを借りた私は、そこで『ジュエルズ』の仲間達と合流した。
「全員無事に合流出来て、何よりです」
「あぁ、お前の
そう言って笑う
「そうよぉ、
しなやかなポーズを決めながら、野太い声で力強く宣言する
「やる事はいつもと変わらねぇ。力の限り暴れるだけだ!」
そう言うと、力瘤を作りながら笑みを浮かべる
「…今度のゲームは、何としても負けられない」
「皆さん、ありがとうございます」
私は4人の仲間に深々と頭を下げ、イレイザーヘッド打倒に改めて闘志を燃やすのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。