出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2 作:SS_TAKERU
お楽しみいただければ幸いです。
出久side
父さんの特別授業から3日が経ったある日の放課後。
「え? 食事会?」
僕は父さんから、そんな連絡を受けていた。
『えぇ、行きつけにしている店の予約が取れたので、出久君と雷鳥君も一緒にどうかと思って。明後日の夜なのですが』
「明後日…外出の許可を貰えれば、大丈夫だと思う」
『
「うん、わかった」
『あと、
「えぇっ!?」
『引子さんから聞きましたよ。出久君に
「う、うん。一応、声をかけてみるよ」
『お願いしますね』
そう言って通話を終了する父さん。麗日さんと耳郎さんを父さんに紹介か…うん、気合を入れて頑張ろう!
雷鳥side
さて、出久が久
俺、出久、梅雨ちゃん、麗日、耳郎の5人は、制服からスマートカジュアルな服装に着替え、久義兄さんが手配してくれたタクシーを待っていた訳だが…
「吸阪ちゃん、タクシーってもしかして…」
「あぁ、あれだね」
やって来たのは一般的にイメージされるタクシーではなく、黒塗りのセダン。所謂ハイヤーだ。
なんとなく予想はしていたが…これは、麗日の反応が心配だな。
「麗日さん、大丈夫?」
「……だ、大丈夫やよ。緑谷君。わ、私だって、少しはぜ、贅沢に慣れてきてるんやから」
「いや、どう見ても動揺してるし…」
…出久と耳郎に任せれば大丈夫か。
マスタードside
「はぁっ、はぁっ、はぁっ………」
「初めてにしては…まぁまぁってところね」
ダブルサイズのベッドの上で、荒くなった呼吸を必死で整える俺と、まだまだ余裕を保っている
俺達はお互い全裸で……そう、
銃火器関係の話題で意気投合した俺と
し、仕方がないだろう!
「その、ごめん…
「気にする必要はない」
「いや、必要あ―」
「私はもう、
「え…」
淡々と告げられたその言葉。そしてその後語られた
東欧の貧しい村、その村長の家に生まれた事。4歳で“無個性”である事が判明してからは、家族から半ば縁を切られ、共に食卓を囲む事すら許されない下女のような扱いを受け続けていた事。そして…
「12歳になってすぐ、私は村を訪れた反政府組織の人間に、はした金で売り飛ばされた」
父親の手で、反政府組織に奴隷として売られた事。
「父親からすれば、“無個性”という
「その後は昼は兵士として働き、夜は
どうという事はない。そんな顔で話している
「……あんまりだろ…そんなの、あんまりだろ! なんで……子どもだろ、自分の子どもだろ! それを、そんな、野良猫みたいに……」
「くそっ! ちくしょうっ、なんで、なんで俺、そこにいなかったんだよ? なんで俺、そいつらを殴ってやれなかったんだよ!」
「俺、俺がいたらっ…俺がその場にいたら、絶対、絶対に……! ちくしょう、ちくしょうっ!」
頭の中がグチャグチャになったまま、怒りと悲しみのままに喚き散らす。すると
「ありがとう、マスタード。お前は優しい男…いい男だ」
そう言って、頭を撫でてくれた。俺は縋るように
泣いて泣いて泣き続けて、ようやく落ち着いた頃、
「マスタード、貴方に渡しておきたい物がある」
そう言って、自分の…いや、『ジュエルズ』全員の秘密を明かしてくれた。
ちくしょう…世界はどこまでも不公平で…残酷だ。
ステインside
「………惜しいな」
山荘の一角に作られたバーカウンターで、
「おや? 何か不手際でも?」
黒霧の代わりにバーテンダーを務めていたMr.コンプレスが、そう尋ねてきた。
「酒の事じゃない…『
「あぁ…」
「
「たしかに…彼らがこれからも手を貸してくれたなら、
俺の言葉に同調するMr.コンプレスに頷いていると―
「お話し中に悪いけど、私も同席させてもらえないかしら?」
「…俺も、飲ませてよ」
マグネとマスタードがバーカウンターへとやってきた。2人とも思いつめた表情をしており…そういう事か。
「お前達も…か?」
「えぇ…彼女、
「
そう言って、
「俺も同じだ」
俺も
「………もう、どうにもならないのかよ…」
「そのようだ…オール・フォー・ワンなら、なんとか出来るらしいが…な」
「じゃ、じゃあ! 今すぐタルタロスに乗り込んで!」
「やめておけ」
血気に逸り、立ち上がったマスタードを止めたのは、バーカウンターへやってきた死柄木弔の声。
「なんでだよ! 死柄木さん! オール・フォー・ワンをタルタロスから脱獄させるのは、元々の計画にあった事だろう? 予定が少し早まったって問題は―」
「先生をタルタロスから脱獄させる事は反対しない。だが、先生に『
「なんで、なんでだよ!」
「落ち着いて考えてみろ。先生ならなんとか出来るという事は、『オール・フォー・ワン』でなんとかするという事だ。つまり…『
「“無個性”として蔑まれ、どん底を味わってきたあいつらをまた“無個性”に戻すのか? 生き延びられるから、構わないだろうと嘯いて」
「そ、それは……」
「まぁ、それで
「………」
「俺だって、なんとか出来るならしてやりたいさ。だが、どうしようもない…それならせめて、望んだように最期を…迎えさせてやろうじゃないか」
死柄木弔としても、苦渋の決断だったのだろう。搾りだすようなその言葉に、黙り込むマグネとマスタード。やがて―
「そうね…冷静さを欠いて、彼女達の気持ちを蔑ろにしていたわ…」
「軽率…だったよ」
2人は死柄木弔に頭を下げ、この話題は一応解決した。
「……ねぇ、Mr.コンプレス。カクテルとか作れる?」
「…ある程度は」
「じゃあ、作れるやつで一番強いカクテル出して」
「………辛い事を酒で忘れる。オジサンとしては、オススメ出来ないね」
「頼むよ、泣き喚いたりしないから」
「……それじゃあ」
マスタードのリクエストに応え、Mr.コンプレスはシェーカーにアブサン、ドライ・ジン、ウイスキーを同量ずつ加え、シェイク。
「はい、その名もアースクェイク。辛さと涙を一緒に飲み干しちゃいなさい」
出来上がったアースクェイクというカクテルが注がれたグラスを、マスタードへ差し出した。
「…ありがとう」
マスタードはそれを一息に飲み干し―
「これ…効くね……くぅ…うぅっ……」
カウンターに突っ伏して静かに泣き始めた。
「私はマティーニを貰うわ」
マグネはマティーニを作ってもらうようだな。俺ももう一杯だけ飲むとしよう。
「「「今日はごちそうさまでした!」」」
出久君と雷鳥君の彼女さん達との顔合わせを兼ねた食事会も無事終了。最初は緊張していたお嬢さん達も、店の雰囲気と美味しい料理で次第に打ち解けてくれ…楽しい時間を過ごす事が出来ました。
「いえいえ、楽しんでもらえて何よりです。これからも出久君と雷鳥君の事をよろしくお願いしますね」
父親としてお嬢さん達に頭を下げ、ハイヤーで雄英高校へ戻る5人を見送ると―
「それじゃあ、引子さん。私達も帰りましょうか」
引子さんと2人、家路につこうとしたのですが…こういう時に限って、スマホに着信。確認すると…部下からですか。
「ちょっと失礼」
引子さんに一言断り、少し離れた所で通話を開始。果たして、どんな連絡なのか…。
『アスカロン、『ジュエルズ』が動きます』
「行動の開始予測は?」
『フェイルノートの計算によると、88.191%の確率で…明後日の晩です』
「わかりました。雄英高校の方にも連絡をお願いします」
『了解しました』
通話を終え、引子さんの元へ戻りながら、私は作戦を練り上げていく。『ジュエルズ』の作戦、必ず阻止してみせましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回の特別編、あと2話で終了の予定です。
2021/11/06追記
あと2話で終了の予定でしたが、あと3話で終了に修正します。