出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。
お楽しみいただければ幸いです。


第34.7話:決戦の夜ー前編ー

緑谷久(アスカロン)side

 

 さて、『ジュエルズ』の動きを察知して2日。雄英高校所属のプロヒーロー(外部協力者)5人*1と合流した我々は―

 

「あと10分で出発です。装備等の最終確認をお願いしますね」

 

 10分後の出発に備えていた訳ですが…

 

「アスカロン! 本部から緊急連絡! 『ジュエルズ』を名乗る(ヴィラン)集団が、繁華街で銃を乱射しているとの事です!」

「警察並びに近隣のヒーローが出動していますが、数が多いうえに全員が銃火器を所持しており、苦戦している。との事です!」

 

 この一報が、状況を大きく動かしました。

 

「先手を打たれたか!」

「いえ、それにしては()()()()があります」

 

 何人かの動揺した声が室内に響く中、私は相澤先生(イレイザーヘッド)の声へそう返しながら、考えを巡らせます。

 『ジュエルズ』はこれまで、一般市民に危害を加えるような真似は一度として行っていない。それが今回に限って、何故?

 

「……まさか」

 

 ある可能性に思い至った私は、通信機を手に取り―

 

「ムラサメ。目標(ジュエルズ)に動きは?」

 

 部下の一人で、現在『ジュエルズ』のアジトを監視しているムラサメと連絡を取りました。

 

『アスカロン、目標(ジュエルズ)()()()()()()()()

「間違いありませんね?」

『肉眼による目視に加え、各種センサーでも確認しています。間違いありません』

「了解です」

 

 ムラサメとの通信を終え、私は自分の考えが正しかった事を確信します。やはり、そういう事でしたか。

 

「皆さん、今繁華街で暴れているのは『ジュエルズ』ではありません。『ジュエルズ』を名乗る偽物です」

「恐らく我々の目を惑わす為の陽動…ですね。そろそろ続報が入る筈ですよ」

 

 そう言った直後、私の携帯端末に本部からの続報が届きました。そこには繁華街で暴れる『ジュエルズ』を名乗る輩の姿が映っており、全員の視線がそれに集中します。

 

「『ジュエルズ』メンバーとは、似ても似つかない連中ばかりね」

「別の場所を襲う事で、本来の目的からヒーローの目を逸らす…以前(ヴィラン)連合が使った手だ」

 

 忌々し気に呟くイレイザーヘッドに頷きつつ、私は考えを巡らせ―

 

「『ジュエルズ』の偽物はこちらで引き受けましょう。銃火器で武装した集団を、警察や近隣のヒーローに任せきりにするのは、少々不安がありますからね」

 

 『ジュエルズ』の偽物は外事第四課(こちら)で引き受ける事にしました。

 

「もちろん、偽物が片付き次第そちらへ急行しますが…『ジュエルズ』は任せましたよ」

 

 私のこの一言を合図に、全員が行動を開始。さぁ、始めるとしましょう。

 

 

相澤消太(イレイザーヘッド)side

 

 繁華街に出現した『ジュエルズ』の偽物。その対処を緑谷久氏(アスカロン)に任せ、俺達は『ジュエルズ』のアジトである郊外のウィークリーマンション近くへと移動。

 そこで緑谷久氏(アスカロン)の部下であるムラサメと合流した。

 

「半径2km圏内の住民には、密かに避難指示を出しておきました。『ジュエルズ』と我々以外は人っ子一人存在しません」

 

 ムラサメの言葉に頷きつつ、俺の脳裏にある違和感が湧き上がる。いくらヒーロー公安委員会の手並みが優れているとはいえ、住民の避難を『ジュエルズ』に全く気付かれずに行う事が…出来るのか?

 可能性は0では無いだろうが…何か裏がありそうな気がするな。

 

「時間です。あとは手筈通りに」

 

 だが、今更流れは変えられない。その場の判断で切り抜けるしかないか。

 覚悟を決めた俺は、ムラサメと共に『ジュエルズ』が部屋を借りている5階まで移動。

 

「夜分に申し訳ありません。電力会社の者ですが」 

 

 ムラサメがそう言いながら、ドアをノックした。

 

「電力会社? こんな時間に何の用だ」

「お寛ぎのところ申し訳ありません。実はこのあたりで原因不明の停電が頻発しておりまして…調査に出向いております。宜しければ、聞き取り調査にご協力いただきたいのですが」

 

 不機嫌そうな男の声にそう答えながら、いつでも飛び出せる態勢を整えるムラサメ。俺も同様だ。

 

「あぁ…わかったよ。鍵を開けるから待ってろ」

 

 ドア越しに男が答えた次の瞬間―

 

「どぉりゃぁ!!」

 

 叫び声と共にドアが吹っ飛んだ。間一髪でそれを回避した直後、視界に入ったのは突撃銃(アサルトライフル)を構えた女の姿。

 

「ちぃっ!」

 

 咄嗟に俺とムラサメが階下へ飛び降りた直後、軽くマガジン1個分の弾丸が乱射され―

 

「待ってたぜ! ヒーローども!!」

 

 『ジュエルズ』の5人が姿を現した。

 

 

柘榴石(ガーネット)side

 

「待ってたぜ! ヒーローども!!」

 

 叫びと共に、俺達全員が一斉に5階から1階へ飛び下りる。見事に着地を決め、待ち構えていたヒーローどもに不敵な笑みを見せながら、俺は再度口を開く。

 

「付近の住民がコソコソと動いていたからな。そろそろ来ると思って、()()()()()よ」

「やはりこちらの動きを見抜いていたか。だが、(トラップ)を仕掛ける事もせず、ただ待っていたとは…」

「不必要に一般市民を巻き込む事は、俺達の本意ではない。この場合は何もしない事が最善…そう判断したまでだ」

 

 そう、俺達には俺達の矜持という物がある。力の無い一般市民を巻き込むなどお断りだ。

 

「さて、この場にいらっしゃるヒーロー諸君! 錚々たる顔ぶれがお集まりいただいた事、我ら一同深く感謝する! お礼に…」

 

 俺はここで一旦言葉を切り…

 

「我ら『ジュエルズ』の力、存分に堪能していただこう!」

 

 力強く宣言した。同時に、それぞれが瞬時に狙いを定めたヒーローに向けて動き始める。

 紅水晶(ローズクォーツ)はミッドナイト、橄欖石(ペリドット)はエクトプラズム、藍玉(アクアマリン)はスナイプ、そして琥珀(アンバー)はイレイザーヘッド。そして―

 

「相手をしてもらうぜ。プレゼント・マイク」

 

 俺の相手はプレゼント・マイクだ。

 

柘榴石(ガーネット)(ヴィラン)だけを狙い、一般市民に手を出さないその高潔さ…正直、(ヴィラン)にしておくのは勿体ねえぜ…」

「お褒めいただき光栄だね。お礼に…と言っては何だが、()()()()()()()()

Wait(待て)! You don't need to thank me like that(そんなお礼はいらないよ)!」

Don't worry(気にするな). Sincerity from me(俺からの誠意だ)

 

 俺達の()()()()()。全力でやらせてもらうぜ!

 

 

緑谷久(アスカロン)side

 

 車を最高速度で飛ばし、繁華街に到着すると―

 

「退避っ! 退避ぃぃっ!」

「ヒャッハー! お前らなんかで俺達を止められるかよぉ!」

 

 如何にもチンピラ然とした…20人ほどの男達が、我が物顔で突撃(アサルトライフル)SMG(サブマシンガン)を乱射し、ヒーローや警官隊を圧倒していました。

 見たところ、一般市民の被害は出ていないようですが、ヒーローや警察官に負傷者が出ているようですね。

 

「フェイルノート、急いで終わらせますよ」

「了解です。10人ずつで…構いませんね?」

「構いませんよ。あぁ、間違っても()()()()()()()()()。ここは日本ですからね」

 

 愛用のコンパウンドボウと矢筒を手にしたフェイルノートに、そう釘を刺し―

 

「この場は我々が引き受けます!」

 

 そう宣言して、私は行動を開始。

 

「おい、何をする気だ! 危ないぞ! 戻れ!」

 

 慌てて止めに入った警察官を振り切り―

 

「なんだオッサン! コイツが見えないのかぁ?」

「自殺志願だったら、手伝ってやろうか?」

 

 こちらを舐め切った態度で、銃口を向けてくるチンピラ達にも怯む事無く、一直線。そんな私の態度が気に障ったのでしょう。

 

「舐めてんじゃねぇぞ!!」

 

 チンピラ達の1人が、下品な声と共に銃を発射しようとしますが…時すでに遅し。

 

「判断が甘いうえに、遅過ぎます」

「なっ…」

 

 もう、()()()()()です。

 

「余裕を見せたりせず、こちらへ銃口を向けると同時に引き金を引くべきでしたね」

 

 私はそう言いながら、一切の躊躇いなく、チンピラの右手首と右肘の関節を破壊し―

 

「ぎゃぁぁぁっ!」

 

 汚い悲鳴を上げるチンピラの腹に、()()()()()()()()掌打を打ち込んでやりました。

 

「げぼぁっ!」

 

 吐瀉物を撒き散らしながら、軽く10mは吹っ飛んでいくチンピラ。その光景があまりに衝撃的だったのか―

 

「な…」

「嘘、だろ…」

 

 チンピラ達だけでなく、警察官やヒーロー達まで呆けたような表情になってしまいました。やれやれ、それほど大した事はしていないのですが…

 

「お、お前ら! 何をボーっとしてやがる! 撃て! 撃て!」

 

 数秒の間を置き、再起動したチンピラ達。私へ一斉に銃を向けますが…あなた達の相手は私だけではありませんよ。

 

「ぎゃっ!」

「ぐぁっ!」

 

 連続で放たれた矢に肩や足を貫かれ、次々と悲鳴を上げていくチンピラ達。矢の放たれた方向に視線を送れば、コンパウンドボウを構えたフェイルノートの姿。相変わらず見事な腕です。

 

「アスカロン。こちらのノルマは終わりましたので、あとはよろしく」

「了解です」

 

 フェイルノートのおかげで、チンピラ達の数は半分程に減りました。素早く片付けるとしましょう。

 

 

「い、いてぇ! れ、連行するなら、もっと優しくしてくれよぉ…」

「煩い! とっとと歩け!」

 

 3分後、吐瀉物に塗れ、利き腕がおかしな方向に曲がったチンピラ達が連行される光景を尻目に、私とフェイルノートは警察官に事情を説明。

 

「ヒーロー公安委員会所属の…」

「任務遂行の為に移動中、事態を察知し、駆けつけました。申し訳ありませんが、あとの事はお任せします」

「は、はい! ご協力に感謝いたします!」

 

 警察官と敬礼を交わし、車に乗り込むと最高速で発進しました。移動時間を含めると、作戦開始から15分遅れで到着といったところですね。

 はたして、戦況はどうなっているのか…。

 

 

ミッドナイトside

 

 『ジュエルズ』の1人、紅水晶(ローズクォーツ)と対峙した私は、数秒の睨みあいを経た後―

 

「はぁぁぁっ!」

「いくわよっ!」

 

 同時に互いの得物である鞭を手に取ると、全力且つ連続で振るった。すると、幾度も破裂音を響かせながら、鞭同士がぶつかり、弾かれていく。鞭を扱う技量は…互角!

 

「私と互角の鞭捌きだなんて…流石ね、ミッドナイト。戦闘服(コスチューム)が少々破廉恥なのは気に入らないけど、貴女の事…嫌いじゃないわ」

「称賛は素直に受け取っておくわ。出来る事なら、素直に投降してくれるとありがたいのだけれど?」

「残念だけど、それは出来ない相談ね。私達にはもう()()()()()()

 

 そう言った直後、紅水晶(ローズクォーツ)は“個性”を発動。自身と寸分違わぬ姿の分身を1人作り出したわ。

 

「分身を作り出す“個性”…」

「そういう事。2対1だけど、卑怯だなんて言わないでよ!」

 

 分身と共に向かってくる紅水晶(ローズクォーツ)。たしかに、紅水晶(ローズクォーツ)級の使い手2人を相手にするのは、かなり分が悪いわ。

 

「だけど…突破口が無い訳じゃない」

 

 戦いの中で気が付いたけど、紅水晶(ローズクォーツ)の生み出した分身からは、気配を感じない。逆を言えば、気配を感じるのが本物という事。これを突破口に出来れば…

 

「受けなさいっ!」

 

 紅水晶(ローズクォーツ)と分身が、同時に振るった鞭を紙一重の所で避けながら、自分の鞭に『眠り香』を付着させ―

 

「そこっ!」

 

 気配の有無で判別した、紅水晶(ローズクォーツ)の本体へ鞭を振るう。このタイミングなら回避は困難。仮に避けられても、『眠り香』を嗅ぐ事はほぼ確実……その筈だった。

 

「なっ…」

 

 鞭が命中した瞬間、光の粒となって消えてしまう紅水晶(ローズクォーツ)。分身を攻撃した!? でも、気配はたしかに―

 

「うぐぅっ!」

 

 想定外の事態が起きた直後、背後から私の首に巻きつく鞭。そんな…こっちが本物なの!?

 

「気配の有無で本物と分身を見分ける。流石はミッドナイト…だけど、今回はそれが命取りよ」

「私の“個性”は『ドッペルゲンガー』。精巧な分身を生み出す“個性”なのは確かだけど、気配を分身に移す事も出来るのよ」

「高い実力の持ち主であるほど、視覚だけに頼らない戦い方をするもの…私の“個性”はある意味、対実力者用の“個性”なのよ!」

 

 そう言いながら、背中合わせの状態で私を背負い、一気に締め上げてくる紅水晶(ローズクォーツ)

 

「うぅ、ぐ、あぁ……」

「苦しむ時間が短くなるよう、一気に絞めてあげるわ!」

 

 叫びと共に締め付けが更に強くなる。このまま絞め殺…されるわけにはいかないのよ!

 私は薄れゆく意識の中、足の指を特定の順序で動かし、ブーツのヒール部分に仕込んでいたナイフを展開すると、紅水晶(ローズクォーツ)の膝裏辺りに思いっきり突き刺した!

 

「くぁぁぁっ!」

 

 想定外の攻撃を受け、激痛に声を上げる紅水晶(ローズクォーツ)。それによって、締め付けが僅かに緩んだ。私は残った力を振り絞り、鞭からの脱出に成功する。

 

「はぁっ、はぁっ…まさに間一髪…ね」

「まさか、ヒールにナイフを仕込んでいたなんて…油断したわ」

「美しさの中に、鋭い棘を隠しているのも、いい女の嗜みよ」

「仰る、とおりだわ!」

 

 私の言葉に納得しながら鞭を振るう紅水晶(ローズクォーツ)。だけど負傷の影響で、今までのようなキレがない。

 

「もらったわ!」

 

 私は鞭を回避すると同時に、紅水晶(ローズクォーツ)に飛びつくと、太腿で頭を挟みながらバク宙の要領で回転。

 

「ミッドナイトスペシャル!」

 

 その頭を地面に叩きつけたわ!

 

「ま、まさか、こんな技を…隠し持って、いたなんて……」

「ヒーローたる者、隠し技の1つや2つあって当然よ」

「お見事…だわ」

 

 感心したように呟き、私が離れると同時に崩れ落ちる紅水晶(ローズクォーツ)。ギリギリのところで加減したから、致命傷には至っていないけど、それでも暫くは指一本動かせない筈。

 

「裁判を受け、刑務所でしっかりと罪を償いなさい。貴方達の生い立ちや置かれていた状況を考えれば、情状酌量の余地はある筈よ」

「………そう言ってくれるのは嬉しいけれど…刑務所に行くのは無理ね。私達には()()()()()()()()()()()

「時間が無い。さっきもそんな事を言っていたわね。一体どういう意味なのかしら?」 

「………そうね。私に勝ったご褒美に教えてあげるわ」

 

 どこか覚悟を決めた表情で、話し始める紅水晶(ローズクォーツ)。その内容に―

 

「私は…いいえ、『ジュエルズ(私たち)』は全員…()()()()()()()()

 

 私は言葉を失った。

 

 

紅水晶(ローズクォーツ)side

 

「私は…いいえ、『ジュエルズ(私たち)』は全員…()()()()()()()()

 

 『ジュエルズ(私たち)』最大の秘密を口にしながら、私は紅水晶(ローズクォーツ)として生まれ変わった日の事を思い出していた。

 南米の小国で暮らしていた私は、“無個性”である事を理由とする差別と偏見に苦しめられながらも、毎日を貧しくも真っ当に生きていたわ。だけど、そんな日々は突然終わりを告げる。

 3年前のある日、日雇いの仕事を受ける為、いつものように町へ出た私は、見知らぬ男から声をかけられた。

 『少々キツイが、割の良い仕事がある』…男のそんな誘いに乗った私は車に乗せられ、町から200kmは離れた熱帯雨林へと連れて行かれた訳だけど…これが悪夢の始まりだったわ。

 結論を言ってしまえば、割の良い仕事というのは()()()()()()()()。獲物は私を含む10人。全員が“無個性”で…“個性”持ち且つ銃火器で武装した3人の狩人(ハンター)役から、24時間逃げ切る事が出来れば大金を支払うという…実にふざけた内容だったわ。

 当然10人全員が拒否したけれど、その結果一番の年配だった男性が射殺され…私達は獲物としての参加を強制された…。

 そして人間狩りが始まり…私達はナイフ1本だけ持たされた状態で、熱帯雨林に解き放たれ…狩人(ハンター)の追跡を受けた。

 私は逃げた。逃げて逃げて逃げ続けた。だけど半日経ったところで遂に見つかってしまい…背後から何発も銃弾を撃ち込まれ…滝壺へと落下したわ。

 真っ逆さまに落ちていく中、私は“無個性”として生まれた自らの運命を、そしてこの世界を、社会を呪ったわ。

 悪事を働くどころか、慎ましく真っ当に生きていただけなのに、何故こんな仕打ちを受けるのか?

 そして、こうも思った。もしも、もしも生まれ変われるなら、今度は“個性(ちから)”を持つ側に生まれたい。と…。

 その思いは…()()()()()

 

「次に目を覚ました時、私は清潔なベッドの上に寝かされ、銃弾を何発も撃ち込まれた体には、完璧な応急処置が施されていたわ」 

 

 状況が呑み込めず、混乱する私へ、モニター越しにコンタクトを取ってきたのが…オール・フォー・ワンだった。

 オール・フォー・ワンはまず、私を無傷で助けられなかった事を丁寧に詫びて下さり…そして、真実を教えてくださった。

 滝壺に落ちた時点で、私は死亡したも同然の状態であり、今は私を回収してくれたオール・フォー・ワン腹心の部下が発動した“個性”の働きで、辛うじて命の灯火(ともしび)を維持した状態である事。

 “個性”の維持にも限界があり、このままなら2日と経たず完全に死んでしまう事。

 そして、蘇生自体は可能だが、銃撃によって欠損してしまった体の部位を機械で補わなければならない事。

 その全てを説明した後、オール・フォー・ワンはある提案をしてきたわ。

 

 -私は、君のように慎ましく誠実に生きていながら、“無個性”故に差別され、虐げられている人間を生み出すこの世界を変える為に活動している-

 -出来る事なら、私の同志として共に活動してほしい。君が望むのであれば、()()()()()()()()()()

 -もちろん、安らかな永久(とわ)の眠りを選ぶのであれば、その選択を尊重しよう-

 

 私の答えは…決まっていたわ。

 

「そして、駆け付けた黒霧の“個性”で日本に運ばれた私は、ドクターの手による()()()()を受けた上で、オール・フォー・ワンから“個性”を授けられ、紅水晶(ローズクォーツ)として生まれ変わったという訳よ…」

「人間狩り…そんな非人道的な行為が行われていたなんて…」

「途上国では、()()()()()()として密かに行われているわ。“無個性”の人間なら、ヒーローや警察も真面目には捜査しないから」

「そんな…」

 

 私の言葉に顔を真っ青にしながら、苦しそうに呟くミッドナイト。ホント…貴女って()()()()()()()()ね。

 

「死ぬ前に、貴女みたいな真っ当なヒーローと戦えた事…光栄に思うわ」

 

 そう呟いた瞬間、一際大きく心臓が脈打ち、体の末端部分から崩壊が始まった…いよいよね。

 

「これはっ!?」

「死者を生き返らせた上、改造手術を行い、“個性”を付与する…そんな無茶苦茶な事をやって、何の代償も無い訳がない。と言うことよ…」

「“無個性”の人間に“個性”を付与した事や、体の欠損した部位を機械に置き換えた事による拒否反応…ドクターの処方した抑制剤を服用する事で、なんとか抑えていたけど…暫く服用すると、体が薬に慣れていったわ」

「新しい薬を処方してもらっては効かなくなるの繰り返し…正直、もう薬じゃどうにもならない段階だった…」

「もうすぐ私の身体は崩壊し、塵になる。だけど後悔はしていないわ。“無個性”として虐げられるだけだった人生、その最後の3年間…私達は社会に、世界に反旗を翻す事が出来た! オール・フォー・ワンの(しもべ)として、生きた証を残す事が出来た! これ以上痛快な事は無いわ!」

紅水晶(ローズクォーツ)……」

 

 後悔していない事を高らかに吠える私を見ながら、静かに涙を流すミッドナイト。敵の為に泣くなんて…

 

「まぁ…貴女みたいな真っ当なヒーローが、故郷に1人でもいたら…何かが少しでも変わったかもしれない…そう思ってしまった事が、未練かもしれないわね…」

 

 もう手も足も崩壊して無くなってしまった…もうすぐね…。

 

「地獄に行っても覚えておくわ…ミッドナイト…嫌いじゃない、貴女のことは………」

 

 柘榴石(ガーネット)橄欖石(ペリドット)藍玉(アクアマリン)琥珀(アンバー)…先に逝っているわ…地獄で…会いま……

*1
イレイザーヘッド、ミッドナイト、プレゼント・マイク、エクトプラズム、スナイプの5人




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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