出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2 作:SS_TAKERU
今回より、Season2の第4章 文化祭編をお送りします。
お楽しみ頂ければ、幸いです。
第35話:文化祭へ向けて
雷鳥side
仮免取得試験や
寒暖の差も少しずつ激しくなりつつある中、俺達は学生の本分である勉学に励んでいた。
早ければ冬頃に再開されるとの事だが…そのあたりの調整は先生方にお任せだな。
「サテ、授業ノ残リ時間5分…最後ニ一問ダケ
「アマリ美シイ問イデハナイガ…この定積分ヲ計算セヨ。正解ノワカル者ハ挙手ヲ」
そう言ってエクトプラズム先生が板書したのは、定積分の計算問題…あれ? 定積分って数Ⅲ、すなわち高校3年生レベルだったような…
「わかんねぇ…」
「見てたら頭痛くなってきたよ…」
事実、瀬呂や芦戸はお手上げ状態だし、八百万や飯田、出久も殆どペンが進んでいない。
かく言う俺も、このレベルの問題をやるのはずいぶんと久しぶりで、少々苦戦中だ。
ガリガリ…ガリガリガリガリ…ガリガリガリガリガリガリ
そうしている内に、出久のペンが激しく動き出し、それに釣られるように八百万のペンも進み始めた。
俺も負けてはいられない。脳細胞をトップギアに入れ、計算を進めていき―
「「「はい!」」」
3人同時に手を上げた。
「3名同時…デハ、一斉ニ解答セヨ」
「「「107/28です(わ)!」」」
「正解!」
俺達3人が正解を導き出したことに、満足気な笑みを浮かべるエクトプラズム先生。それと同時にチャイムが鳴り、数学の授業は終了するのだった。
梅雨side
今日の授業も無事終了。
「相澤先生。包丁の扱いは?」
「包丁は殆ど握った事が無い。だが、
「あー…じゃあ、大丈夫かな。今日のメインはコロッケの3種盛りなので、まずはジャガイモを茹でていきましょう」
「わかった」
そう、相澤先生が調理に参加しているの。夕方の
-今後の事を考えて、料理を覚えておきたい-
真顔でそう言われた時は、正直びっくりしたわ。三奈ちゃんや透ちゃんが、熱を測ろうとしたり、リカバリーガールを呼びに行こうとしたのも、無理ないわね。
でも、ここ数日の相澤先生は、その前と比べて
服装もくたびれた
正直、今までよりもずっと先生らしい格好だわ。ここまで変わるには何か…大きな出来事があった筈だけど…それを詮索するのは、不躾というものね。
「コロッケは1人前につき各種類1個ずつ、俺達20人に壊理ちゃんと相澤先生、恐らく食べに来るであろうミッドナイト先生の分、それからおかわりの分も考慮して…1種類につき33~34個作れば足りるでしょう」
「そうなると3種類で大体100個か」
「はい、今回は標準的なジャガイモ…大体150gでコロッケ3個を作りますから…34個茹でれば大丈夫ですね。まずは茹でる前の下準備。ジャガイモの中心に深さ2mm程の切れ込みを一周入れていきます。この時、芽があったら忘れずに取り除いてください」
「わかった」
吸阪ちゃんの声に答え、ペティナイフでジャガイモに切れ込みを入れ始める相澤先生。ナイフの扱いに慣れているだけあって、全く危な気が無いわ。この調子なら大丈夫そうね。
「鍋に切れ込みを入れたジャガイモを入れ、被るくらいの水を注いだら、まずは強火で加熱。沸騰したら弱めの中火にして、約25分茹でていきます」
「竹串がスッと刺さったら、茹であがりですね。笊にあげて、粗熱を取っていきます」
吸阪の説明を聞きながら、俺は自分が如何に
合理的という言葉を大義名分にして、ヒーローとして必要な知識以外を全て切り捨てた結果、芋の茹で方すら知らずにいた…情けない事だ。
彼女の為にも、これからは教師としてだけでなく、人間としても成長していかなければならない。
「相澤先生、ジャガイモを茹でる間に、それぞれの具を作っていきますので」
「あぁ、よろしく頼む」
まずは、コロッケの作り方を習得する事から…だな。
出久side
相澤先生が僕達に料理を習い始めて、数日が経ったある日の朝。
「見て見てー! 見ててー!」
芦戸さんが教室の後ろにスペースを作りながら、僕達に声をかけてきた。何事かと全員が芦戸さんに注目する中―
「いっくよー!」
芦戸さんはスマートフォンからアップテンポの曲を流すと、軽快なステップを刻み始めた。
そして、かなり激しい振り付けで踊った後飛び上がり、体を捻りながら空中で数回転。片手で着地すると同時にその動きを一度完全にストップ。
「ブレイキンブレイキン!」
最後に、背中や肩を使って風車のように回転してみせた!
「おぉー! 三奈ちゃん、すっごーい!」
「ブレイクダンスか、すっげぇな」
「彼女ダンスが趣味なんだよね☆」
踊り終えた芦戸さんに、皆が惜しみない拍手を送る中―
「下穿くならスカート脱げよなァ…!」
「セクハラ撲滅!」
「ぎゃぁぁぁっ!」
峰田君は相変わらずの発言で、雷鳥兄ちゃんから鉄拳制裁を受けていた。ブレないなぁ…。
「まぁ、それはそれとして…芦戸さんの身体の使い方は、ダンス由来なんだよね。全ての挙動に全身を使う感じだし、1本芯が通っている感じだ」
「そうだね! 昔ダンスを習った先生からも『ダンスで人を魅了したいなら、体幹を鍛えなさい』って何度も言われたよ!」
「なるほど…体幹か」
体幹とはその言葉通り、体の幹。いわば胴体の事を指す。より詳細に考えるならば、腹腔を囲んでいる部分。具体的には上部の『横隔膜』、背中側の『多裂筋』、お腹周りの『腹横筋』、下部の『骨盤底筋群』。この4つの筋肉の事だ。ここがしっかりしているという事は、体の中心がしっかりしていると同義だから…
「出久、声が漏れてるぞ」
「えっ!?」
雷鳥兄ちゃんの声で、思考が途中から口に出ていた事に気づく。あぁ、またやってしまった…。
「だが、鍛錬という意味ではダンスも魅力的だな。演武の類はよくやっているが、ダンスは流石に経験がない」
「そうだね。僕もやってみようかな」
「吸阪や緑谷なら、教えてもらえばすぐに形になるんじゃね?」
「フフフ…オーケーボォオイズ! レッツダンスィ!」
「あっ、えぇとお願いします!」
「よろしく頼む」
芦戸さんの指導を受け、僕と雷鳥兄ちゃん、青山君は簡単なステップを習い始める。
耳郎side
「ダンスか…」
芦戸から指導を受けながら、ステップを刻んでいく緑谷の姿を見ながら、ポツリと呟いていると―
「砂藤のスイーツとかもそうだけどさ。ヒーロー活動にそのまま活きる趣味は良いよな! 強い!」
瀬呂のそんな声が耳に入った。たしかに…そうかもしれない。
「趣味といえば、耳郎のも凄えよな」
「えっ!?」
思わず納得しかけた瞬間。不意打ちのように話題を振られたことで、ウチは大いに動揺してしまった。
「ちょっ、やめてよ」
「あの部屋楽器屋みて―だったもんな。あの部屋趣味の域超えてるって」
「もぉ、やめてってば、部屋王の事忘れてくんない!?」
「いや、ありゃプロの部屋だって! 正直カッ…」
「マジで!」
思わず瀬呂の眼前にイヤホンジャックを突き付け、それ以上の発言を封じると、ウチは自分の机に戻っていく。
「…なんで? 俺、なんか拙い事言った?」
瀬呂には悪いけど…触れられたくない事だってあるんだよ…。
雷鳥side
「えー、文化祭があります」
「「「「「ガッポォォォイ*2!!」」」」」
ヒーロー基礎学の授業、その初っ端に発せられた相澤先生の言葉に、クラスが大いに沸き上がった。
「文化祭!!」
「ガッポイの来ました!!」
「何するか決めよー!!」
皆それぞれに声を上げていくが―
「いいんですか!? このご時世にお気楽じゃ!?」
立ち上がりながら放たれた切島の発言で、一気に沈静化した。
「切島…変わっちまったな」
「でもそーだろ。
すかさず瀬呂がツッコミを入れるが、切島も負けていない。仲裁に入ったのは相澤先生だ。
「切島の意見も至極もっともだ。しかし、雄英もヒーロー科だけで回ってる訳じゃない」
「体育祭がヒーロー科の晴れ舞台とするなら、文化祭は
「…そう考えると…申し訳たたねェな……」
相澤先生の言葉で冷静となり、席に着く切島。相澤先生も静かに頷き―
「そういう訳だから、簡単に自粛とする事も出来ないんだ」
説明を再開。
「なお今年は
「主役じゃないとは言ったが、決まりとして1クラス1つ出し物をしなきゃならん。今日はそれを決めてもらう」
そう言うと、続きの進行を飯田と八百万に任せ、自分は近くの椅子に腰を下ろした。
「では、ここからはA組委員長飯田天哉が進行を務めさせていただきます! スムーズにまとめられる様頑張ります!!」
「まず候補を挙げていこう! 希望のある者は挙手を!」
気合全開で進行を行う飯田。奴なら、上手く話し合いを纏められると思ったが…
「そんな! もう時間切れ!?」
紛糾の果て、結局意見はまとまらず…時間切れとなってしまった。
「実に非合理的な会だったな…明日の朝までに決めておけ。決まらなかった場合、
そう言い残して、職員室へと去っていく相澤先生。うん、公開座学は避けなくてはな…。
飯田side
「ヒントは無いものか…」
夕食後、僕は談話スペースに自前のノートパソコンを持ち込み、出し物のヒントを求めてインターネットでの検索を繰り返していた。
「落ち着いて考え直してみたんだが……先生の仰っていた他科のストレス。俺達は発散の一助となる企画を出すべきだと思うんだ」
「そうですわね。ヒーローを志す者が、ご迷惑をおかけしたままでは、いけませんもの」
半ば独り言のような呟きに同調してくれる八百万君。僕は我が意を得たり、と言わんばかりに考えを口にしていく。
「そうなると正直…ランチラッシュの味を知る雄英生には、味で満足させられる物を提供するのは、難しいと思うんだ」
「吸阪の料理や砂藤のスイーツでも厳しいか… 」
「相手はプロ。俺達はいくら腕を自慢したってアマチュア。話にならないのは当然だ」
吸阪君の言葉に黙り込むのは、先程の話し合いで食事系の出し物を提案していた面々。そして―
「だが、飯田の意見ももっともだ。俺達が楽しいだけでは、彼らに申し訳がない」
障子君の一言で、議論が再び動き出す。
「それじゃあ、体験系…該当するものとなりますと…メイド喫茶か、ふれあい動物園…あとはビックリハウスでしょうか?」
「動物園は、衛生上難しそうじゃね?」
「うーん発散…メイド喫茶で発散出来る?」
「コントとかは駄目かな?」
「素人芸程ストレス与えるもんはねーよ!」
だが、なかなか意見はまとまらない。クッ、どうすれば良いんだ!?
「皆で踊ると楽しいよ…」
「ダンス、良いんじゃねぇか?」
事態が動いたのは、轟君のそんな一言だった。
「ちょっといいか」
轟君は俺のノートパソコンで何かを検索し―
「なんかあっただろ。何て言うのか知らねぇけど…バカ騒ぎするやつ……あぁ、こういうやつだ」
一つの動画に辿り着いた。それは何かのライブ映像で…バンドが演奏する音楽をBGMに大勢の観客が踊っているもので…
「「「「「轟から出る発想じゃねぇ!!」」」」」
その場の誰もが異口同音に同じ感想を抱いていた。もちろん、僕も同感だ!
「轟、パーティーピーポーになったのか?」
「違ぇ」
「飯田の意見はもっともだと思うし、その為には皆で楽しめる場所を提供するのが、適してんじゃねえか?」
「祭りに歌や踊りは欠かせねぇもんだし…だけど、盆踊りや神楽って訳にはいかないから、前に偶然テレビで見たこんなのはどうか…って思っただけだ」
「なるほど…轟君の意見にも一理ある」
「今一度言うが、素人芸程ストレスなもんは―」
「私教えられるよ!!」
瀬呂君の懸念を打ち消すように手を挙げたのは…芦戸君!
「そうか! 奇っ怪な動きだった
「待て待て素人共! ダンスとはリズム! すなわち“音”だ!
「音楽といえばぁ~」
続けて放たれた峰田君、葉隠君の声に、その場の全員の視線が動く。その先にいたのは…
「え、何?」
そう、耳郎君だ!
「耳郎ちゃんの楽器で生演奏!!」
「ちょ、ちょっと待ってよ」
「何でぇ!?」
「耳郎ちゃん、演奏も教えるのもすっごく上手だし。音楽してる時が、とっても楽しそうだよ!」
「………」
葉隠君の言葉に俯き気味のまま黙り込む耳郎君。やがて―
「芦戸とかさ、皆はさ」
「ちゃんとヒーロー活動に根ざした趣味じゃんね?」
「ウチのは、本当只の趣味だし…正直、表立って自慢できるモンじゃないつーか…」
ポツリポツリと自分の思いを呟いていく。うむ、本人が乗り気でないものを無理にやらせるのは…
「いやいやいや、自慢して良いんじゃね?」
その時、瀬呂君が声を上げるとその場で耳郎君をビシッ! と指さし―
「さっき言えなかったけどさ。あんなに楽器弾けるなんて、滅茶苦茶カッケーじゃん」
と宣言。それに続くように耳郎君へ近づいていく口田君。
「耳郎さん、人を笑顔に出来るかもしれない技だよ。十分ヒーロー活動に根ざしてると思うよ」
口田君も出来る限りの声量で、耳郎君に気持ちを打ち明ける。
「………」
「お2人の主張も良くわかりますわ」
そこへ、これ以上は良くないと判断した八百万君が間に入るが…
「でもこれから先は、耳郎さん本人の意思で―」
「ここまで言われて…やらないのも…ロックじゃないよね…」
それを半ば遮るように、耳郎君が決心してくれた!
「よし! それでは、A組の出し物は…生演奏とダンスでパリピ空間の提供だ!!」
皆が歓声を上げる中、僕は高らかに宣言する。やる事が決まれば、あとは一直線だ!!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。