出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2 作:SS_TAKERU
お楽しみ頂ければ、幸いです。
雷鳥side
さて、文化祭の出し物も無事に決定し、俺達はそれぞれの部屋へと戻っていった訳だが…
「失敗したなぁ…」
俺は自室に入ると同時に思い出された前世の記憶に、頭を抱えていた。
「もっと早く思い出していれば…いや、今はそれを愚痴っている場合じゃないな。しかし……今のままじゃ、
飯田の『他科のストレス発散の一助となる企画』という考えも、八百万の『ヒーローを志す者が、迷惑をかけたままではいけない』という考えも、決して間違いではない。
むしろ
だが、
「原作では
改めて考えてみると
「ん?」
そんな事を考えていると、誰かがドアをノックしてきた。ノックに応じてドアを開けると、そこには―
「悪い、吸阪。少し…いいか?」
難しい顔をした心操が立っていた。
心操side
「悪い、吸阪。少し…いいか?」
「あぁ、とにかく入りな」
吸阪の許可を得て入室した俺は―
「何か飲むか? 緑茶、紅茶、ミルク、ココアとあるが」
「…じゃあ、ココア」
「アイス? ホット?」
「ホット。砂糖控えめで頼む」
「寝る前だからな。了解だ」
そんな会話を交わしながら、折り畳みタイプの椅子へ腰を下ろす。
「ほら、ホットココアの砂糖控えめだ」
「ありがとう」
出来立てのココアを受け取り、一口飲んだところで、俺は自分の考えを口にした。
「さっきは言い出すタイミングが掴めなかったんだが…文化祭の出し物、今のままじゃ良い結果にはならないと思う」
「…心操もそう思っていたか」
「じゃあ、吸阪も…か?」
「あぁ、なんとなく…だがな。ストレスを与えている側と見られている俺達が、楽しんでください。なんて言いながら何をやっても、素直には受け取ってもらえないだろう…くらいには考えていた」
「元普通科として、吸阪の思っている通りになると思う…だけど皆、純粋な善意で動いているだろう? だから、どうすればいいか…」
「それで俺の所へ来たわけか。良い判断だ」
なんだかんだ言って、1-Aでものの見方が一番捻くれているのは俺だからな。そう言って笑う吸阪と話し合い、明日の昼休みか夕食後に行動を起こすよう計画する。
どんな結果になるかはわからないが…やるだけやってみるさ。
「A組の出し物は、バンド演奏とダンスホールを融合したような空間…か」
「他科へ何か貢献出来ないかと考えての、コレだそうだ」
「そいつはまぁ、偉い発想だ」
「……俺は正直…どうかと思うがな」
昼休み。ブラドの声にそう答えながら、俺は出し物が決定したと報告してきた飯田、八百万の顔を思い出す。
2人とも純粋に、迷惑をかけている他科へ少しでも楽しんでほしい。それだけを考えている様子だった。
そう考える事は決して間違いじゃない。場合によっては推奨すらされるだろう…だが……
「今回は正解とも言えないんだが、な…」
そう呟きながら、俺はトイレの為に職員室を後にする。そのまま廊下を歩いていると―
「ねぇ、聞いた?」
「ヒーロー科A組、ライブやるんだって」
「あぁ、
「いい気なもんだよね。寮制になったのも、文化祭の規模が縮小されたのも、
「俺達を振り回しておいて、上から目線で施しかよ…ありがたい話だ」
普通科の生徒達が、物陰でそんな会話をしているのが視界に入った。
「お、おい!」
「場所変えようぜ!」
俺と目が合った途端、蜘蛛の子を散らすようにその場から走り去っていったが…まったく、聞かれて困るような内容なら、場所をもう少し選べ…。
俺は溜息をつきながら、教え子達に介入すべきか考えたが…まぁ、大丈夫だろう。あいつらだってガキじゃない。
雷鳥side
「文化祭はちょうど1ヶ月後! 時間もないし、今日色々決めてしまいたい!」
夕食後の共同スペースに響き渡る飯田の声。色々あって昼休みは話し合いが出来なかったからな。この時間で一気に進めるつもりなんだろう。
「「………」」
俺と心操は無言のまま視線を交わし―
「少し、良いだろうか?」
「出し物の件で、気になる事があってな」
昨晩、2人で話し合った内容を皆へと伝えていった。
「そうか…たしかに、配慮が足りなかったかもしれない…」
「良かれと思って行動していても、上から目線と受け取られてしまう…その可能性を考えるべきでした」
伝え終わった途端、ガックリと肩を落とす飯田と八百万。うん。2人は特に善意全開だったからな。こうなるのも無理はない。
「それじゃあ、どうすれば良いんだ? 出し物の内容変えるか?」
「もう相澤先生に伝えちゃったよ。今更変更なんて出来るのかな?」
「下手すりゃ公開座学…だな」
他の皆も大なり小なり動揺しているようだが…皆、
「出し物を変える必要はないさ。『生演奏とダンスでパリピ空間の提供』そのままでいけば良い」
「しかし吸阪君。それでは普通科や―」
「楽しませよう。なんて考えなきゃいいんだよ。俺達が楽しめばいい」
「自分が楽しんでいないのに、人を楽しませる事なんて出来やしない。俺達が全力で楽しんでいる姿を見せる。それが第一だ」
「全力で楽しんでいる姿は、見ている奴らも楽しくさせる。そういうもんだと、俺は思うが…皆はどうだ?」
俺の問いかけに、皆は暫し沈黙し…大きく頷いてくれた。うむ、これで良し。
「それでは! 自分達が楽しむ事を最優先課題としつつ、内容を詰めていこう!」
耳郎side
「それでは! 自分達が楽しむ事を最優先課題としつつ、内容を詰めていこう!」
「音楽に関しては不勉強なので、耳郎君! 進行をお願いしたい!」
飯田の声に続くように、ウチは立ち上がり―
「まずは楽曲だね。どんな曲にするかで、バンドの編成や習得の難易度も変わってくるし」
演奏する楽曲から決め始める。
「やっぱノれるやつっしょ!」
「じゃあなるべく皆が知ってる曲をやるべきじゃね!?」
「おどれるやつ~!!」
「ノれるやつで、皆が知ってて、踊れるやつ…『Symphonic』の楽曲なんかどうかな? 全部の条件に合致すると思うけど!」
「いいな! 『Symphonic』だったら…最新曲の『六花繚乱』とか?」
「『虹色のフリューゲル』が良いと思いまーす!」
「始まりの
葉隠の提案で、流れが『Symphonic』の楽曲に傾くけど…こうもアッサリ決まってしまうのは、何だか良くない気がする。
「ちょ、ちょっと待って! 『Symphonic』の楽曲は良いけど、女性ボーカルオンリーってこと!? 男子はボーカルやらないの?」
だから、男子にボーカルを募ってみると―
「ボーカルならオイラがやる! モテる!」
「ボーカルはそう、この僕☆」
「楽器はできねーけど、歌なら自身あんぜ!」
「俺も…やってみたいな」
峰田、青山、切島、吸阪が名乗りを上げた。
「それじゃあ、ボーカルテスト。皆の前で1曲歌ってもらって、一番上手い人を男子のボーカルにしよう」
早速、皆の前で歌ってもらったけど…
「切島は…なんかジャンルが違うよね…」
「峰田は、がなってるだけだし…」
「青山は…裏声…」
残念だけど、3人はあまり高く評価出来なかった。
「最後は吸阪…あれ? 吸阪は?」
「あぁ、部屋からギター取って来るって」
私の問いかけに、緑谷が答えた直後、吸阪が戻ってきた。その手に握られているのは…FENDERのストラトキャスター*1。それも10万円前後はするやつだ。
「吸阪、多少は心得なんて言ってたけど、結構ガチじゃん」
慣れた様子でギターとアンプを繋げる吸阪にそんな事を呟きながら、演奏の開始を待っていると―
「人前で歌うのは久しぶりなんでな。失敗したら笑ってくれ」
スマホから流れ出した音楽に合わせて、ギターを爪弾き…歌い始めた。
―――Sunrise 窓辺に立つ 君はオブジェ
―――触れたら 1000の涙に変わる
―――Sunset 氷の月 溶かすように
―――闇にライター翳した Lonely Venus
―――君がいるのは 悲しみの
―――誰も 救うことは出来ないけれど
―――震える Cherry そっとKissして 眠らせてあげる
―――夜を滑る 吐息はFairy Dance
―――愛しき Cherry 回る
―――君の夢を守れるなら…抱きとめよう
「すご…」
歌っているのは、10年位前に解散したヴィジュアル系バンドのヒット曲。難しい曲じゃないけど、だからこそ弾き手の技量がよくわかる。
吸阪の技量は少なく見積もっても中級者以上、歌唱力も十分だ。ただ…
「吸阪ちゃん…私、思った事を何でも言っちゃうの。だから気を悪くしないでね…吸阪ちゃんの歌、凄く上手だと思うけど…エロスを感じるわ」
そう、吸阪の歌声はかなりのセクシーボイス。もう1人別タイプのボーカルがいれば、歌声に奥行きが出ると思う。
「男子のボーカルは吸阪でいくとして…女子のボーカルも決めようか。ツインボーカルでやった方が、歌える曲目も増えるし」
そう考えて、女子のボーカルを募ってみたけど…
「へ? 女子のボーカルは耳郎ちゃんじゃないの?」
「私も耳郎ちゃんだと思うんだよ! 前に部屋で教えてくれた時、歌もすっごくカッコよかったんだから!」
麗日と葉隠の発言で、全員の視線が私に集中した。
「ちょっと…ハードル上げないでよ」
「いいからいいから」
葉隠に押されるように、マイクの前に立たされる。仕方ない…覚悟を決めよう。
「アカペラになるけど…」
私は深く息を吸い…歌い始める。
―――潔く カッコよく 生きていこう
―――たとえ2人離ればなれになっても take my revolution
―――光差す
―――もう恋は二度としないよって
―――そんな強い結束は カタチを変え 今じゃこんなにたくましい
―――私たちの life style everyday…every time
―――頬を寄せ合って うつる写真の笑顔に 少しの淋しさつめ込んで
―――潔く カッコよく 明日からは 誰もが振り向く女になる
―――たとえ2人離ればなれになっても 心はずっと一緒に
「耳が幸せー!!」
「ハスキーセクシーボイス!!」
「「「「「満場一致で決定だ!!」」」」」
歌い終わると同時に湧き上がる拍手と歓声。こうも正面から褒められると…何だか面映い。
「……じゃあ、それはそれで………つ、次は楽器! 楽器決めないと!」
強引に話の流れを楽器へと変え、ウチは皆を見回していく。
「ウチと、ギターとベースが弾ける吸阪、ギターが弾ける緑谷以外に、楽器経験者は?」
「私、幼少の頃から教養の一環で、ピアノを嗜んでおりましたが…何かお役に立ちますでしょうか?」
「わー! じゃあヤオモモはキーボードだ!」
「そうだね、シンセは…クラブミュージックに欠かせないポジなの。ヤオモモ助かるよ!」
「がんばりますわ!」
「ちなみに、吸阪。ギターの腕前は分かったけど、ベースの方は?」
「まぁ、ギターと同じくらい…だな。どちらが担当でもこなせるとは思う」
「そっか…緑谷、ギターはどのくらいの腕前?」
「そうだね…そこそこ弾けるけど、雷鳥兄ちゃんには負けるかな」
「出久の腕前は俺が保証しよう。俺に劣るといっても微々たるものだ」
緑谷と吸阪の言葉に、ウチは頭の中で素早く考えを纏め…宣言した。
「よし! じゃあベースは吸阪。ギターはウチと緑谷。キーボードはヤオモモで確定! 吸阪、ボーカルとの二刀流だけど…大丈夫?」
「耳郎もボーカルとの二刀流だろう? やってみせるさ」
「あとは…ドラムだね。バンドの骨子と言えるんだけど…ウチ、ギターメインでドラムは正直まだ練習中」
「初心者に教えながら、ウチも練習しなきゃだと、1ヶ月じゃ正直キツイ」
「だから、多少なりとも楽器の経験がある人に引き受けてほしいんだけど…」
ウチの問いかけに答えたのは―
「Fコードで躓き、ギターを一度手放した身だが…それでも良ければ」
常闇だった。うん、楽器経験者の常闇なら飲み込みもきっと早いだろう。
「他に立候補はいない? だったら、常闇にお願い―」
「俺に…やらせてくれ」
ウチの声を遮るように放たれた立候補の声。その声の主は…心操だった。
「心操…ごめん、楽器の経験は?」
「……音楽の授業で触ったくらいだ」
「おいおい、耳郎の話聞いてなかったのかよ…初心者が1ヶ月で何とか出来るもんじゃ……」
「無茶な事を、我儘を言っているのは百も承知だ。それでも、やらせてほしい」
そう言って頭を下げる心操。この熱意は本物だ…だけど、完全初心者を教えながらは…
「良いんじゃないか? 心操のストイックさはクラスの誰もが認めるところだ。1ヶ月でやってくれるさ」
「技術的な部分はともかく、理論的な部分は僕や雷鳥兄ちゃんでも教える事が出来ると思う。耳郎さん、ここは心操君のヤル気に賭けてみよう」
吸阪と緑谷からの援護射撃に、ウチの心は揺れ―
「フッ…瞳に宿る炎のなんと熱く眩しい事か……ここは俺が退くとしよう」
常闇の一言で、覚悟を決めた。
「わかった。かなりスパルタになると思うけど、食らいついてきてね」
「あぁ、望むところだ」
こうしてバンドメンバーは決定。その後も話し合いは続き……
「全役割! 決定だ!!」
クラス全員の役割が決定した!
「明日から忙しくなるぜ!」
ハイテンションのまま、皆それぞれの部屋へと帰っていく。明日から全力全開で練習開始だ!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
なお、クラス全員の役割分担は以下のようになっております。
‐バンドメンバー‐
吸阪雷鳥…Vo&Ba
耳郎響香…Vo&Gt
緑谷出久…Gt
八百万百…Key
心操人使…Dr
‐ダンスメンバー‐
青山優雅
飯田天哉
尾白猿夫
砂藤力道
障子目蔵
峰田実
芦戸三奈
蛙吹梅雨
麗日お茶子
葉隠透
‐演出メンバー‐
轟焦凍
常闇踏陰
瀬呂範太
切島鋭児郎
口田甲司