出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2   作:SS_TAKERU

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お楽しみいただければ幸いです。


第40話:文化祭当日‐その1‐

雷鳥side

 

「……4時か」

 

 いつもより1時間以上早く目が覚めた事に、俺は内心苦笑しながらベッドから抜け出し、朝の準備を済ませると―

 

「…せっかく早く起きたんだ。少し手の込んだ朝食でも作るとするか」

 

 レシピ帳片手に部屋を後にする。さて、和食でいくか洋食でいくか…それが問題だ。

 

 

ジェントル・クリミナルside

 

 時刻は午前5時。1週間かけて作った計画の通りに行動を開始しようとした私とラブラバは―

 

「SVCだ! (ヴィラン)ジェントル・クリミナルこと飛田弾柔郎! 過去3年間における合計62件の犯罪動画投稿による威力業務妨害及び57件の器物破損*1。過去6年における78件の強盗及び95件の傷害*2で、逮捕する!」 

 

 マンションの敷地を一歩出たところで、戦闘服(コスチューム)に身を包んだ3人組に取り囲まれた。これは…

 

「ハハッ、私が(ヴィラン)とは…誰かとお間違えではないのかね? 私は相棒(パートナー)と極上の紅茶を楽しむ為、早朝から開いている隠れ家的喫茶店へ出かけようとしているだけの一般人に過ぎないよ」

 

 SVC(警察官)を何とか誤魔化そうと、私は咄嗟に作り出した外出理由を口にする。だが―

 

「生憎とその相棒(パートナー)についても調べはついている。(ヴィラン)ラブラバこと相場愛美、君からも話を聞かせてもらおう」

 

 SVC(警察官)は、予想以上に私達の事を調べていた。こうなれば仕方がない。

 

「ハハハ…ところで、君達は()()()()()()()()()()()()()?」

「…? 何を言っている?」

「私は入れない派でね。紅茶の本場イギリスでも、レモンティーは邪道とされている」

「それっ!」

 

 以前ラブラバと話し合い決めておいた緊急時の暗号に従い、ラブラバがバッグに忍ばせていた煙球を投擲!

 

「ぐっ!」

「姑息な真似を!」

 

 噴き出した白煙でSVC(警察官)が怯んだ隙に、私はラブラバを抱き抱え、“個性”を利用してジャンプ!

 

「ラブラバ! 予定変更だ」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

「もちろんよ、ジェントル!」

 

 民家の屋根に飛び乗ると同時にラブラバを降ろし、撮影を開始するよう促す。

 

「でもでも! 戦うの!? ここで!? 果たして…得策なのかしら!?」

「やるしかないのだよ!」

 

 ラブラバの心配にそう答えた私は、一息に外套を脱ぎ捨て―

 

「諸君! これより始まる怪傑浪漫!! 目(くるめ)からず見届けよ。私は救世たる義賊の紳士、ジェントル・クリミナル!!」

「予定がズレた! ただいまいつもの窮地にて、手短に行こう! 今回は―」

「「雄英!! 入ってみた!!」」

 

 ポーズと共に名乗りを決め、ついでに動画のタイトルコールも行った。

 

「なんと俗っぽい!」

「そんな事させるかぁ!」

 

 当然、それを見たSVC(警察官)は3人のうち2人が跳びかかって来る訳だが―

 

「「なっ!?」」

 

 その突撃は私の手前で()()()()()()()ストップする。

 

「外套脱衣のついでに()()()()()()()()。リスナーなら知っているのだが…私の“個性”は『弾性(エラスティシティ)』」

「触れた物に()()()()()()()。たとえそれが空気だろうと!」

「いざ受けよ! ジェントル・クリミナル7つの必殺技その1! ジェントリーリバウンド!」

 

 叫びと共に吹っ飛んでいく2人のSVC(警察官)

 

「暴力的解決は好みじゃない。距離を取るだけに留めて…おい……」

 

 クールに決めたつもりが、予想以上の吹っ飛び方に言葉を失ってしまう。まさかこれほどとは…。

 

「エグイくらい暴力的よ…ジェントル……」

「私も驚きと混乱の最中さ。ラブラバ…」

「赤澤! 泊里! き、貴様ぁ! この期に及んでまだ罪を重ねるか!」

 

 思わず呆然となった私達とは反対に、怒りの声を上げるもう1人のSVC(警察官)

 

「いやいや、これはこちらとしても想定外…SVC(そちら)のパワーとスピードがそれだけ凄かったと言う事。申し訳ないが、これで失礼させていただく! 警察諸君! すまなかった!」

 

 彼に一言詫びの言葉を送り、私とラブラバは全速力で走りだす。

 

「逃がすと思うか! この悪党が! そもそも謝るくらいなら、悪事を行うな!」

 

 当然、彼も全速力で追いかけてくる為―

 

「そいつは出来ぬ相談! ジェントル・クリミナル7つの必殺技その2! ジェントリートランポリン!」

 

 地面に弾性を付与する事で、上空へと跳ね飛ばす!

 

「学生の頃は……私も行事に勤しんだものだ……君達警察にも使命感があるのだろうが、私のこの髭と魂に及びはしまい」

「この案件は、伝説への大いなる一歩。邪魔はしないでもらいたい!!」

 

 そう言い残し、私とラブラバも空中へと跳ね上がる。このまま一気に距離を稼ぐとしよう。

 

「ジェントル、私思い出したわ!! あいつらはSVC。警察の特殊部隊よ。あり得ない位装備が充実している…国家権力の走狗よ!」

「国家権力! なんとも恐ろしい存在だ! 彼らが根回しを済ませる前に案件を遂行させる!」

諸君(リスナー)! 『雄英入ってみた』はこれより、(タイム)(アタック)へ移行する!」

 

 ラブラバが私へと向けるカメラにキメ顔で宣言しつつ、2度目の大跳躍に向けて体制を整えようとしていると―

 

「ジェントル・クリミナル!」

 

 背後から聞こえてきたのは、私の名を呼ぶ大声。思わず振り返るとそこには…背中に大型装備を装着し、空を飛ぶSVC(警察官)の姿!

 

「ティルトローター式の飛行ユニット!? そんな物まで持っているの!?」

「SVCを、舐めるなぁ!!」

 

 SVC(警察官)は、叫びと共に私達へ大型の銃器、その銃口を向け…ま、待ちたまえ! 街中でそんな物を!?

 

「ぐぉぉっ!?」

 

 次の瞬間、私達へ向けて容赦無く連射される大量のゴム弾。私が咄嗟に庇った為、ラブラバは無傷だが、私は背中に何発ものゴム弾を受けてしまう。

 

「恐るべし、国家権力…しかし、止めるに如かず! 私は! めげっ! ない!!」

 

 猛烈な痛みに顔を歪ませながらも、私は“個性”を発動し、2度目の大跳躍を試みる。一気に距離を稼げる上に、SVC(警察官)を振り切る事も―

 

「っ!?」

 

 だが、跳躍の直前、私の右足に絡みつくワイヤー付きフック。思わず地面を見れば、そこには5人目のSVC(警察官)が!

 

「警察官の使命感、甘く見ないでもらいましょう!」

 

 声と同時にワイヤーが一気に巻き取られ、私は強制的に地面へ落されていく。いかん! これでは!

 

「ぬぉぉぉぉぉっ!!」

「ジェントル!!」

 

 

SVCside

 

 ワイヤー付きフックで地面に引きずり落としたジェントル・クリミナル。間髪入れずに奴の手首を極めながら、投げ倒し―

 

「午前5時13分、確保!」

 

 俯せにしたところで、片腕を逆に取り、相手の首の後ろを膝で抑えつけて、動きを封じる。

 

「う、動けん…」

「無駄な抵抗はやめて、大人しくしろ!」

 

 “個性”を発動されないよう、細心の注意を払いつつ、奴に手錠をかける。そこへ―

 

「放して! 放しなさいよ!」

「大人しくするんだ! これ以上抵抗すると、罪状に公務執行妨害罪が加わる事になる!」

「………」

 

 ラブラバを確保した樋川がゆっくりと着陸し、吹っ飛ばされていた赤澤、泊里、麻賀も合流した。

 

「あと2分ほどで車両が到着する。警察署に到着次第、取り調べ開始だ」

 

 樋川の声に頷きつつ、車両到着まで拘束を万全にしようと、気を入れ直す。

 

「ジェントル…」

 

 ラブラバが再び口を開いた。喋らないよう、氷川が注意しようとしたその時―

 

「愛してるわ」  

「ありがとう、ラブラバ」

 

 完璧に抑え込めていたジェントル・クリミナルが()()()に起き上がり始めた。

 

「何だ!? 急に力が…」

「悪いね、警察官諸君。力ずくで解決するのは好みじゃないから…」

 

 何とか抑え込もうとした俺を背筋の力だけで吹き飛ばし、手錠の鎖を易々と引き千切ったジェントル・クリミナルは―

 

「貴様!」

「抵抗をやめるんだ!」

 

 取り押さえようとした赤澤と泊里をパンチ一発、麻賀をキックの一撃でそれぞれ吹っ飛ばした。

 このパワー、増強系の“個性”か!? まさか、ラブラバ(彼女)の“個性”は!?

 

「こういうところは、いつもカットしているんだ」

「がはっ…」

 

 次の瞬間、俺の腹にめり込むジェントル・クリミナルの拳。同様に樋川も一撃で倒されてしまった。

 

「しばらく眠っていてくれたまえ」

 

 ラブラバの手錠を引き千切り、その場を後にするジェントル・クリミナル。俺達はそれを止められず―

 

「いかん…雄英高校に、緊急…連絡を……」  

 

 雄英高校に緊急連絡を送るのが、精一杯だった。

 

 

ジェントル・クリミナルside

 

「急がねば、急がねば…」

 

 誰かに目撃される可能性も厭わず、私は雄英高校への最短ルートを全速力で移動する。

 ラブラバの“個性”『愛』によって身体能力が強化される時間は、精々3分。文字通りの(タイム)(アタック)だ。

 

「建設現場を越えた。あとはこの山を登れば…」

 

 残り時間が1分弱となったところで、最後の関門へ辿り着いた。あとは一気にこの山を登れば―

 

「悪イガ、ココカラ先ハ通行止メダ」

「ッ!?」

 

 その時、私の行く手を阻むように現れる数十人の男達。これは…エクトプラズムの分身達か!

 

(ヴィラン)、ジェントル・クリミナル。馬鹿ナ真似ハココマデダ。潔ク投降シタマエ」

「我々トシテモ、手荒ナ真似ハシタクナイ」

「丁寧な投降勧告痛み入る。しかし! 今更止まる訳にはいかないのだよ!」

 

 私は咄嗟に空気に弾性を付与、大跳躍で一気に突破を試みるが―

 

「ぬぉっ!?」

 

 空気に弾性は付与されず、私は無様に転倒してしまう。

 

「残念だが、お前の“個性”は抹消済だ」

 

 そこへ現れるスーツ姿の男。何者かは知らんが、雄英高校の職員か!

 

「跳んで行けぬのであれば、正面突破あるのみ!」

 

 ここで諦める訳にはいかない。私は行く手を阻むエクトプラズムの分身達を蹴散らす為、動き出す。

 私を捕まえようと群がる分身達をちぎっては投げちぎっては投げ、ついに全ての分身を蹴散らす事が出来た。残り時間は15秒!

 

「まだだ! まだ終わらんよ!」

 

 一縷の望みをかけて、私は走り出す。15秒あれば、雄英高校の敷地に飛び込める筈だ!

 

「……ぬぁっ…」

 

 だが、最後の疾走は10mと進まないうちに止められてしまう。両足を貫いた2発の弾丸によって…

 

「俺も待機しておいて正解だったな」

 

 樹上にスナイプが待機していたとは…迂闊だった。崩れ落ちる私をスーツ姿の男が振るう捕縛布が縛り上げる。

 強化も時間切れ…無念だが、今回の案件は失敗…か。

 

 

イレイザーヘッド(相澤消太)side

 

「SVCに連絡した。3分以内に到着するそうだ」

「…そうか」

 

 文化祭への侵入を目論んだ(ヴィラン)ジェントル・クリミナル。スナイプの銃撃で両足を撃ち抜かれた奴を万が一にも逃がさぬよう、捕縛布でガチガチに縛り上げる。まったく、傍迷惑な奴だ。

 

「…いや、やめてよ。放して…!」

「ん?」

 

 エクトプラズムの分身、その1体に取り押さえられた小柄な女(ラブラバ)が、何とか逃れようともがきながら、口を開いた。

 

「ジェントルを放して! 放して! 嫌よ!」

「ジェントルが必死に考えた企画なの! 社会に警鐘を鳴らすんだ、危機意識の低い雄英高校(あんた達)へ問題定義をするんだ、卵達に成長を強く促すんだって、大好きなティーブレイクも忘れて準備してきたの!」

「放せ!そもそもこの時期に文化祭なんて、()()()なのよ! ヒーローになる為の学校なんでしょう! だったらヒーローになる為の勉強だけしていなさいよ!」

「私から希望を奪っておいて。何がヒーローよ! ジェントルが私の全てよ! ジェントルを奪わないでよ!」

「いい加減にしろ!!」

 

 その瞬間、俺は見苦しく泣き喚くラブラバの頬を平手で打っていた。

 

「何が不謹慎だ。何がヒーローになる為の勉強だけしていろだ。そんな…心の無い機械みたいなヒーローを育てる為に、雄英高校(ここ)はあるんじゃない!」

生徒達(あいつら)は人間だ! 楽しければ笑い、悲しければ泣く、腹が減れば飯を食い、仲間とバカ騒ぎだってする」

「少し前の俺だったら、合理性に欠けた連中としか考えなかっただろう。だが、その非合理こそが必要なんだ…」

「これが理解出来ず、尚も生徒達(あいつら)を侮辱するなら…その時は、一切の容赦無く、お前達を潰す! 覚悟しておけ!」

「ひっ…」

 

 俺の怒りを感じ取り、小さく悲鳴を上げて黙り込むラブラバ。まったく…柄にも無い事を言わせてくれる。

 数分後、SVCが到着し、ジェントル・クリミナルとラブラバを改めて拘束。警察署へと連行していった。

 

 

 こうして、文化祭当日早朝に起きた騒動は、生徒達に一切知られる事なく解決するのだった。

*1
威力業務妨害罪、器物破損罪の時効は3年

*2
強盗罪、傷害罪の時効は10年




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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