出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2 作:SS_TAKERU
SEASON2第4章 文化祭編最終話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。
雷鳥side
さて、文化祭も無事終了。出し物は大盛況だったし、
「さぁ、やりますか」
正式な文化祭の打ち上げは、日を改めて行う予定になっているが…少し
「それで吸阪ちゃん、今日は何を作るのかしら?」
「こんな物を作ります」
梅雨ちゃんからの問いかけに、俺は1枚のメモを差し出す事で答える。
「梅雨ちゃんなら、これを見ればすぐにわかると思うぜ」
「大根、蒟蒻、卵、牛スジ、がんもどき…なるほど、
「そう、今日の夕食は
俺の号令で、一斉に動き出す出久達。俺も出汁作りから始めるとしよう。
瀬呂side
夕食のおでん作り、俺は野菜の下拵え担当だ。
「まずは大根っと」
3cm程の輪切りにした大根は、皮を剥いてから面取りをし、十文字に隠し包丁を入れていく。
「切り終わったら、炊飯器に投入して水を加えてスイッチオン」
これで、大根の下拵えは完了。炊きあがった時には軟らかく煮えているってわけだ。
「次はジャガイモだな」
ジャガイモは水洗いした後、中心に包丁で深さ2mm程の切れ込みを一周入れていき…芽が出ていたら忘れずに取り除く。
「鍋は…これで良いな」
切れ込みを入れたジャガイモを鍋に入れ、ジャガイモが完全に浸かる迄水を注いでから火にかける。
詳しい原理は知らないけど、水から茹でた方がジャガイモが荷崩れしにくい。その分時間はかかるが…その間に他の野菜に取り掛かろう。
「あとの野菜は人参と玉ねぎ、それからトマトか」
人参は大根同様皮を剥いてから面取りをし、十文字に隠し包丁を入れていく。
玉ねぎは皮を剥いてから、大根や人参と同じように十文字に隠し包丁を入れていく。大根や人参より深めに入れるのがポイントだな。
準備されていた最後の玉ねぎに隠し包丁を入れたところで、セットしていたタイマーが鳴り出した。
「茹で上がったか」
ジャガイモに竹串を刺し、しっかり茹で上がった事を確認してから笊に上げて、30秒ほど流水に晒して粗熱を取り、皮を剥いていく。
「これでジャガイモの下拵えは完了だな」
しっかりと冷やす為、キッチンバットにジャガイモを並べて、最後の野菜トマトの下拵えに入る。と言ってもやる事は簡単だ。
「吸阪。トマトはそんなに長く煮込まないんだよな?」
「あぁ、食べる直前に5分程度弱火で煮込む予定だ」
「了解」
トマトの湯剥きを終えた俺は、麦茶を飲んで一息つく。まったく、おでんってのは下拵えに随分と手間のかかる料理だぜ。
梅雨side
今回のおでん作りで私が担当するのは4種類の巾着。定番の餅巾着に変わり種が3種類。
餅巾着は丸餅をそのまま入れれば良いし、3種類の変わり種巾着も、
「まずは…一番手間がかかる
中火で熱したフライパンに胡麻油を引き、牛肉の切り落としを炒めていく。
「牛肉にある程度火が通ったら…斜め薄切りにした長ネギを投入」
ネギがしんなりする迄炒めたところで、醬油、酒、味醂、砂糖を3:3:3:1の割合で混ぜた割り下を注いで、少しの間煮込んだら、ざく切りにした春菊を加えてすき焼き風巾着の中身が完成ね。
「次はキノコ巾着の具材…と言っても、これはそれほど手間はかからないわね」
石突を取ったキノコ類…しめじはバラバラに解し、えのきは3cm程度の長さにカット。しいたけは軸と傘に分けて、傘は薄切り、軸は手で割いておく。
最後に市販の茹でうどんを水で解して、丸餅を用意すれば…巾着の具材は準備完了ね。次は巾着の袋を作っていきましょう。
「巾着に使う油揚げは下茹でして、油を抜いて…」
油抜きした油揚げをまな板の上に置き、菜箸を強く押し当てながらゴロゴロと転がしていく。これで袋にする時に広げやすくなるわ。
油揚げの端を片方だけ切り落として袋の口になる部分を作ったら、破らないように優しく広げていく。
……4種類×人数分+
「梅雨ちゃん、手伝うよ」
そんな時、さりげなく力を貸してくれる吸阪ちゃん。
「ありがとう、吸阪ちゃん。だけど、吸阪ちゃんの担当は大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫、手羽先もベーコンも下拵え完了さ」
「流石だわ、吸阪ちゃん。じゃあ、巾着作りへの協力、お願いするわね」
「心得ました」
吸阪ちゃんのおかげで、予想よりも早く巾着作りが完了しそうだわ。だからこそ、慌てず慎重に作っていきましょう。
雷鳥side
「…こうして見ると、凄い量だな」
6人がかりで下拵えを行った大量の具を前に、思わず声が漏れる。
瀬呂担当の野菜*2。梅雨ちゃん担当の巾着4種*3。耳郎担当の卵、蒟蒻、ちくわぶ、がんもどき。麗日担当の練り物*4。出久担当の魚介*5とつくね。俺担当の手羽先とベーコン。そして全員で串に刺した牛スジ。
「全て合わせて23種類。ざっと50人分ってところだな…茶飯*6も炊くし、多分足りるだろう」
「そうね…もしもの時は冷蔵庫の中の常備菜を出しましょう」
俺の呟きにそう答えてくれた梅雨ちゃんに頷き、俺は煮込みに取り掛かる。まずは大根や蒟蒻、卵、牛スジといった物から。具材ごとに適した煮込み時間があるから、集中してやっていこう。
時間はあっという間に経過し、夕食の時間まであと10分ほどとなった。
寸胴で煮込まれ味が染みたおでんは、八百万に
茶飯もたっぷりと炊き上がり、常備菜もそれぞれ小鉢に盛り付けて準備は完了だ。
「うわぁ、良い匂いだね!」
「おでん屋さんみたいだよ!」
そうこうしていると、芦戸と葉隠を先頭に皆が1階へ降りてきた。相澤先生や
「こんばんはー! ねぇねぇ、今日はおでん屋さんなの? なんだか凄いね!」
「いやぁ、なんだか悪いね。僕達まで御馳走になって!」
「後輩から食事を御馳走になるなんて…
「事情がよくわからないけど…気楽に過ごせば良いんじゃないかしら?」
BIG3の3人とメリッサさんもやって来た。まぁ、壊理ちゃんのお願いで正式に招待したのは、サポート科の発表会で最優秀賞に選ばれたメリッサさんと、ミスコンで優勝した波動先輩の2人で、通方先輩と天喰先輩は正直
「それでは! いただきます!」
「「「「「いただきます!」」」」」
飯田の号令と共に始まる夕食。メリッサさん達も喜んでくれれば良いんだがな。
ミッドナイトside
「うん、相変わらず良い味だわ」
小鉢に盛られた3種類の常備菜*7を味わったところで、おでんを取りに行く。
常備菜を
「おでんを貰えるかしら?」
待機していた吸阪君に声をかけ、おでんを器に盛ってもらう。
「何にしますか?」
「そうね…まずは大根、蒟蒻、卵…あと、牛スジとはんぺんをいただくわ」
「わかりました。辛子は?」
「多めでお願い」
おでんが盛られた器を受け取り、席に戻った私は、早速大根を一口。
「あ、熱っ……うん、うんうん、良い味だわ」
きちんと面取りされた大根は煮崩れる事もなく、よく味が染みている。これはおでん屋のおでんにも負けていないわね。
「具材もだけど、この出汁も美味しいわ。ホッとする味わいね」
「ありがとうございます。昆布と鶏ガラの出汁をベースに、味付けは酒、醤油、味醂、砂糖、関西風の薄味に仕立ててます。そこに煮込んだ具材の旨味が溶け込んでこの味になってますね」
吸阪君の説明に、感心しつつも―
「やっぱり、相当の手間をかけないと、これだけの味にはならないわよね。きちんと出汁を取って料理…なんてなかなか…」
時間的にも、腕前的にも難しい事を思わず呟いてしまった。すると―
「何を仰るミッドナイト先生。鶏ガラはともかくとして、出汁取りに難しい事なんてないですよ」
平然とした顔でそう返してくる吸阪君。どういう事かと思っていると…
「おそらくミッドナイト先生は、出汁を取る時に、
「え!?」
とんでもない爆弾発言をしてくれたわ。
「麦茶ポットみたいな容器に昆布や干し椎茸、鰹節なんかを入れて、冷水を注ぐ。あとは冷蔵庫で6、7時間寝かせれば、出来上がりです」
「そ、そんな…水を注いで放っておくだけで、出汁が出来るなんて……」
「水出汁ってやり方なんです。煮出して作る出汁に比べると、香りや風味では一歩劣りますけど、クリアで上品な出汁が取れて、お吸い物やさっぱりした煮物に向いてますね。分量の目安としては冷水1リットルに対して、昆布や干し椎茸が20gと覚えておくと失敗しません」
「煮出して出汁を取りたい時も、スライスタイプの干し椎茸や鰹節を使えば、すぐに出汁が出来ます。それに……極論を言ってしまえば、顆粒タイプの出汁の素使ったって良いんです」
「えぇっ!?」
信じられないわ! あの吸阪君の口から
「………あの、俺ってどういう風に思われてたんでしょうか?」
「……料理にかんしてだと、拘りが強い完璧主義者?」
「正直、インスタントやレトルトを目の敵にしていると思っていた」
「なんてこったい…」
相澤君と一緒に正直なイメージを伝えると、吸阪君は一瞬顔を引きつらせたけど―
「と、とにかく! 大事な事は3食しっかりと食事を取る事です。そもそも出汁の素だって、メーカーの弛まぬ努力で日々良い物が出来ているんですから! 丁寧に出汁を取ったりなんだりは、
すぐに落ち着きを取り戻して、そう断言したわ。でも、水出汁…挑戦してみる価値はありそうね。
メリッサside
「メリッサおねえさん、おいしい?」
「えぇ、おでんは初めて食べたけど、具沢山でとても美味しいわ」
壊理ちゃんの問いかけにそう答え、私は
日本の西の方では、
「はふ、はふ…」
トマトのおでんをハフハフ言いながら食べている壊理ちゃんを微笑ましく思いながら、私はおかわりに立ち上がる。今度は…
轟side
夕食が終わり、風呂にも入り、部屋で明日の予習をしていると、突然電話がかかってきた。相手は…親父だ。
「もしもし」
『焦凍。遅くにすまんな。もう休んでいたか?』
「いや、明日の予習中だった。こんな時間にどうした?」
『うむ…実はな。今度の週末に3時間で良い。時間を作ってくれないか。
「……わかった。明日にでも相澤先生に話をして、外出の許可を貰う」
『すまんな。イレイザーヘッドには俺からも連絡をしておく』
その後、軽く世間話をして電話は終わった。
そんな事を考えながら、俺は予習を終わらせ、寝床についた。
この話し合いが、俺達家族に大きな波紋を齎す事を俺はこの時、まだ知らずにいた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回より、新たな驚異・脳無:ハイエンド編に突入します。