出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2   作:SS_TAKERU

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第47話:二大ヒーロー・福岡最大の決戦‐その1‐

エンデヴァーside

 

 ホークスからチームアップの依頼を受けた翌日。俺はサイドキック達から選抜した10人*1を引き連れて福岡へと出張。

 昼前にホークスと合流し、博多の街を歩いていた訳だが…

 

「エンデヴァーさん、好きな食べ物とかあります?」

「そこの水炊き、スゲー美味いんですよ、鶏の味がしっかり出てて。あ、昼に喰うには重いですかね? 腹減ってます?」

「焼き鳥もいいですよ! 『ヨリトミ』のレバーはクセになる」

 

 ホークス(この男)は、暢気にそんな事を口にしながらも“個性”を自在に操り、様々な事を悠々とやってのけていた。

 道路の向かい側にいた露出狂の無力化から、道路に飛び出した飼い犬の救助、更には歩道橋を歩く老婆の荷物を上まで運ぶなど、その“個性”の操作は繊細にして大胆。

 マイペースな言動や上昇志向の無さは、少々問題だが、実力はNo.2(ナンバーツー)に相応しいと言えるだろう。

 

「ホークスやん!」

「普通に歩いとうとか珍しか!」

「あ、どもー」

 

 そんな事を考えているうちに、ホークスは地元のファンから次々と声をかけられ、それらへにこやかに答え始めた。

 

「ホークス、2位おめでと!」

「ありがとー」

「見たぞ昨日の! 謙虚にいかんと敵増やすだけぞ!」

「敵て」

「ホークスホークス」

「イェーイ」

「あの! 息子が大ファンでサインを…」

「まーオシャレなバッグ! いいの書いて?」

「もちろん!」

「名前は?」

「亮典!」

「オッケー、亮典。いつもありがと」

 

 たちまち出来た人だかりに、暫く足止めされる事を考えていると…

 

「エンデヴァーだ…!」

「顔コワかー」

「貫禄というか…圧が強かね…」

 

 そんな声が聞こえてきた。そっと視線を動かしてみると、3人組の男子がこちらの様子を窺っている。

 

「おまえ、サイン貰ってこいって」

「いややし」

「好きって言っとったやん」

「好きやけど! 違うやろ!!」

 

 ふむ…事情は解らんが、サインを貰うのは照れ臭いようだな。それならば…

 

「わ!」

「来とう! こっち来とう」

「え!? え!? ウソ!? ウソ…ヤバイヤバイヤバイ、新コスかっけぇ!」

 

 俺はゆっくりと3人へと近づき―

 

「生憎と書く物を持っていない。握手でも構わんか?」

 

 そう言いながら、右手を差し出した。すると俺のファンらしき少年は、俺の差し出した右手を握ろうとしながらもギリギリで踏み止まり―

 

「………あ、握手は…よか。ただ…一つだけ、聞いてもよかね?」

 

 躊躇いつつも、そう尋ねてきた。俺は無言で頷き、その質問を待つ。

 

「昨日の放送で、言いよったよね。『夫として父親として、そしてヒーローとして、恥ずかしくない生き方をすると…』って」

「あぁ…間違いなく言った」

「その言葉、信じて良かとよね? オイはNo.1(ナンバーワン)ヒーロー、エンデヴァーのファンぞ! って、自信を持って言っても良かとよね?」

「あぁ、俺を見ていてくれ」

 

 どこか不安げな表情でそう問いかけてくる少年に、俺は精一杯の笑顔を作り、そう宣言した。だが…

 

「………違う」

「ん?」

 

 どこか空虚な表情となった少年に、俺の心に不安が過る。何か、俺は間違えたのか?

 

「エンデヴァーは、ファンに笑顔なんて見せん…! 媚びん姿勢がカッコイイったい…!」

「ガチ勢やったんか…」

「何か、悪い事をしてしまったようだな…すまん」

「謝らんちゃよか! エンデヴァーは…エンデヴァーは、そがん事はせんとたい!」

「変わってしもた! 変わってしもたよ、あーた!!」

 

 泣きながら走り去っていく少年。彼の友人達も俺に謝りながら、それを追いかけていく。

 

「……俺は、間違えた…のか?」

「あー…ボス、あまり気にする必要はないかと…」

 

 状況を上手く呑み込めず黙り込む俺を、困った顔で励ましてくるナックルコング。他の相棒(サイドキック)達も苦笑いをしながら、俺を見つめている。

 ファンの心理とは…わからんものだ。そう考えながら、ホークスの方へ戻ると―

 

「……『シンフォニック』も福岡に来ていたのか」

 

 ファンからのサインや写真撮影へ応じながら、ホークスと話す『シンフォニック』の6人の姿があった。

 聞けば、昨日まで行われていた国際会議の警護任務で福岡を訪れており、今日1日英気を養ってから東京へと戻るとの事。

 今回のビルボードチャートで、彼女達はNo.22(ナンバートゥエンティツー)にランクインしていた*2。順調にランキングを上げていて、結構な事だ。

 

 

 『シンフォニック』の6人と別れた俺達は、話し合いを兼ねた昼食会を行う為、ホークスの薦める焼き鳥屋が入っている高層ビルへと向かった。

 既に話が通っていたらしく、焼鳥屋へ入ると俺とホークスは一番奥の座敷席へ、相棒(サイドキック)達は一つ手前の大部屋へと案内され、3分と待たずに料理が運ばれてくる。

 

「どうです? 地上15階の景色を見ながら食べる焼き鳥。なかなか乙な物でしょ?」

「あぁ、なかなかの物だ」

 

 ホークスが薦めるだけあって、焼き鳥だけでなく、それ以外の料理のレベルもかなりの物。東京の高級店にも引けを取らないだろう。だが…

 

「いやぁ、実の事言うと、体育祭の後()()()()()()()()()()んスよ。俺」

No.2(ナンバーツー)の息子って肩書きがもう欲しいじゃないですか。注目度的に」

「でもまぁ、ツクヨミが来てくれた事も今となっては良かったですよ。雄英高校1年A組、どの子もまさに金の卵…いや、もう仮免取得したから、金の若鳥かな?」

 

 変な表現になりますね。等と言いながら、世間話に興じるホークスに少しずつ苛立ちが生じていく。

 

「いい加減にしろ。こんな話をしに九州くんだりまで来たんじゃない」

 

 半ば無理やり話を打ち切り、話題を変えていく。

 

「そろそろ本題を話せ」

「『噂』ですか?」

「改人脳無。連合が持つ悪趣味な操り人形。神野で格納されていた数十体をオール・フォー・ワンごと捕らえ、それ以降連合に動きはあれど、脳無の出現は確認されていない」

「その件に関しては、①あれで全部だった。②まだあるけど、オールフォさんしか場所知らない。のどちらかって見方みたいですね」

「『噂』というが、貴様、()()()()()()()()()()()()からには、何かしらの確証は得ているんだろうな?」

 

 やや鋭い視線を送りながら、ホークスに問いかけるが…

 

「得てないです。ガチ噂です」

「会計だ! 俺は帰る!!」

 

 返ってきた言葉に俺は失望した。単なる噂に踊らされるとは!

 

「待ってくださいよ。聞いてください。つーかね…()()()()()()()()()()()()()()()んですよ。知らないでしょ?」

「全国でそういう噂が立ってるんです。取り立てて記事にする程でもないけれど…」

「しかし、奥様方の井戸端会議で、或いは小中学生の下校の会話の中で…」

「………どういう事だ?」

 

 一転して真面目なトーンに変わったホークスの声に、俺は席に戻り、続きを促す。

 

「出張に出た時、地元の人から聞いたのが最初です。その時は警察とも協力して…混乱を避ける為に、コッソリ捜査したんですが、何も出ず…」

「で、ちょっと気になったんで()()()()()()()()()()()調()()()()()()んです」

「調査…!?」

「多少の違いはあれど、似たような噂話が()()()()()()()()()()()()()()()()。結果的には、どれも確度ゼロの『噂』でしかなかったんですけど」

「抽象的な見解になっちゃうんですけど、雄英高校、保須、神野を経て、改人という(ヴィラン)以上に不気味な存在を皆知ってるわけじゃないスか」

「どっかのアホウが、不安を煽る目的でホラ吹いて、それが今全国に伝播してるんじゃないかな」

 

 残った焼き鳥を奇麗に食べながら、淡々と己の考えを述べていくホークス。ふむ、仮説としては筋が通っているか…。

 

「さっき、俺が無力化した露出狂。何か叫んでいたでしょう? 覚えてます?」

「……たしか、『異能解放万歳』」

「あれも、この噂と同じですよ。今、大昔の犯罪者の自伝が再出版されて、けっこー売れてるんですよ。おそらく感化されちゃったんでしょうね」

「社会が不安な時ほど、そういうのが売れるってか、蔓延るって言うじゃないですか」

「…否定は出来んな。それで? 貴様は結局何がしたいんだ?」

 

 俺の問いかけに、ホークスはニカッ! と笑い―

 

No.1(ナンバーワン)のあなたに、頼れるリーダーになってほしい!」

 

 高らかにそう宣言した。

 

「立ち込める噂話を()()()()検証して、()()()()『安心してくれ!』と胸を張って伝えてほしい! 俺は特に何もしない!」

「昨日も同じような事言いましたけど、要はNo.1(ナンバーワン)のプロデュースですよねー」

「…貴様のスタンスは、一体どうなっている?」

「俺は楽したいんですよ。本当に。適当にダラダラパトロールして、今日も一日何もなかった! とくだを巻いて床に就く。これこそ最高の生活ってやつです!」

「ヒーローが、()()()()()()()()()にしたいんです」

 

 とんでもない事をあっけらかんと言ってのけるホークスに、俺は思わず感心してしまう。ヒーローが暇を持て余す世の中にしたいなど、俺は考えた事もない。

 もしかしたら、こういう考え方をするこの男に、将来No.1(ナンバーワン)の―

 

「ッ!」

 

 俺の第六感が、何かを察知したのはその時だ。咄嗟に視線を外へ送ると、遥か遠くの空中に()()()()()()()()が見え、しかもこちらへ近づいている!

 

「…エンデヴァーさん」

 

 俺の様子にホークスも何かを察し、いつでも動ける体勢を取るが―

 

「はーい、お会計ですね!」

 

 最悪のタイミングで、店員が入室してきた。さっきの俺の声か…俺とした事が、なんと迂闊な!

 

「下がって! お姉さん!」

 

 ホークスが叫びながら動いた直後、黒い影(脳無)は窓へと激突。ガラスを粉々に砕きながら―

 

「どレが一番強イ?」

 

 俺とホークスを睨みながら、そんなセリフを吐いてきた。

 

「きゃぁぁぁぁぁ!」

「ホークス! 避難誘導を!」

「了解! エンデヴァーさんは!?」

 

 悲鳴を上げる店員をホークスに任せ、俺は一歩前に出る。

 

「『噂』ではなかったか。なんとも間の良い奴だ…まぁいい」

「どのみち、そのつもりで来た!」

 

 俺目がけて振り下ろされる脳無の巨腕を紙一重でかわし―

 

「赫灼熱拳! ジェットバーン!!」

 

 右拳の一振りと共に炎の塊を発射! 脳無を外へと吹っ飛ばす!

 そのまま俺も外へ飛び出し、足から炎を吹き出す事で滞空。

 

「来い! No.1(おれ)を見せてやる!」

 

 戦闘態勢に入りながら、そう宣言した。さぁ、戦いの始まりだ。

*1
トップ7+それに次ぐ実力者3人

*2
前回はNo.28




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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