出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2 作:SS_TAKERU
お楽しみいただければ幸いです。
エンデヴァーside
ホークスからチームアップの依頼を受けた翌日。俺はサイドキック達から選抜した10人*1を引き連れて福岡へと出張。
昼前にホークスと合流し、博多の街を歩いていた訳だが…
「エンデヴァーさん、好きな食べ物とかあります?」
「そこの水炊き、スゲー美味いんですよ、鶏の味がしっかり出てて。あ、昼に喰うには重いですかね? 腹減ってます?」
「焼き鳥もいいですよ! 『ヨリトミ』のレバーはクセになる」
道路の向かい側にいた露出狂の無力化から、道路に飛び出した飼い犬の救助、更には歩道橋を歩く老婆の荷物を上まで運ぶなど、その“個性”の操作は繊細にして大胆。
マイペースな言動や上昇志向の無さは、少々問題だが、実力は
「ホークスやん!」
「普通に歩いとうとか珍しか!」
「あ、どもー」
そんな事を考えているうちに、ホークスは地元のファンから次々と声をかけられ、それらへにこやかに答え始めた。
「ホークス、2位おめでと!」
「ありがとー」
「見たぞ昨日の! 謙虚にいかんと敵増やすだけぞ!」
「敵て」
「ホークスホークス」
「イェーイ」
「あの! 息子が大ファンでサインを…」
「まーオシャレなバッグ! いいの書いて?」
「もちろん!」
「名前は?」
「亮典!」
「オッケー、亮典。いつもありがと」
たちまち出来た人だかりに、暫く足止めされる事を考えていると…
「エンデヴァーだ…!」
「顔コワかー」
「貫禄というか…圧が強かね…」
そんな声が聞こえてきた。そっと視線を動かしてみると、3人組の男子がこちらの様子を窺っている。
「おまえ、サイン貰ってこいって」
「いややし」
「好きって言っとったやん」
「好きやけど! 違うやろ!!」
ふむ…事情は解らんが、サインを貰うのは照れ臭いようだな。それならば…
「わ!」
「来とう! こっち来とう」
「え!? え!? ウソ!? ウソ…ヤバイヤバイヤバイ、新コスかっけぇ!」
俺はゆっくりと3人へと近づき―
「生憎と書く物を持っていない。握手でも構わんか?」
そう言いながら、右手を差し出した。すると俺のファンらしき少年は、俺の差し出した右手を握ろうとしながらもギリギリで踏み止まり―
「………あ、握手は…よか。ただ…一つだけ、聞いてもよかね?」
躊躇いつつも、そう尋ねてきた。俺は無言で頷き、その質問を待つ。
「昨日の放送で、言いよったよね。『夫として父親として、そしてヒーローとして、恥ずかしくない生き方をすると…』って」
「あぁ…間違いなく言った」
「その言葉、信じて良かとよね? オイは
「あぁ、俺を見ていてくれ」
どこか不安げな表情でそう問いかけてくる少年に、俺は精一杯の笑顔を作り、そう宣言した。だが…
「………違う」
「ん?」
どこか空虚な表情となった少年に、俺の心に不安が過る。何か、俺は間違えたのか?
「エンデヴァーは、ファンに笑顔なんて見せん…! 媚びん姿勢がカッコイイったい…!」
「ガチ勢やったんか…」
「何か、悪い事をしてしまったようだな…すまん」
「謝らんちゃよか! エンデヴァーは…エンデヴァーは、そがん事はせんとたい!」
「変わってしもた! 変わってしもたよ、あーた!!」
泣きながら走り去っていく少年。彼の友人達も俺に謝りながら、それを追いかけていく。
「……俺は、間違えた…のか?」
「あー…ボス、あまり気にする必要はないかと…」
状況を上手く呑み込めず黙り込む俺を、困った顔で励ましてくるナックルコング。他の
ファンの心理とは…わからんものだ。そう考えながら、ホークスの方へ戻ると―
「……『シンフォニック』も福岡に来ていたのか」
ファンからのサインや写真撮影へ応じながら、ホークスと話す『シンフォニック』の6人の姿があった。
聞けば、昨日まで行われていた国際会議の警護任務で福岡を訪れており、今日1日英気を養ってから東京へと戻るとの事。
今回のビルボードチャートで、彼女達は
『シンフォニック』の6人と別れた俺達は、話し合いを兼ねた昼食会を行う為、ホークスの薦める焼き鳥屋が入っている高層ビルへと向かった。
既に話が通っていたらしく、焼鳥屋へ入ると俺とホークスは一番奥の座敷席へ、
「どうです? 地上15階の景色を見ながら食べる焼き鳥。なかなか乙な物でしょ?」
「あぁ、なかなかの物だ」
ホークスが薦めるだけあって、焼き鳥だけでなく、それ以外の料理のレベルもかなりの物。東京の高級店にも引けを取らないだろう。だが…
「いやぁ、実の事言うと、体育祭の後
「
「でもまぁ、ツクヨミが来てくれた事も今となっては良かったですよ。雄英高校1年A組、どの子もまさに金の卵…いや、もう仮免取得したから、金の若鳥かな?」
変な表現になりますね。等と言いながら、世間話に興じるホークスに少しずつ苛立ちが生じていく。
「いい加減にしろ。こんな話をしに九州くんだりまで来たんじゃない」
半ば無理やり話を打ち切り、話題を変えていく。
「そろそろ本題を話せ」
「『噂』ですか?」
「改人脳無。連合が持つ悪趣味な操り人形。神野で格納されていた数十体をオール・フォー・ワンごと捕らえ、それ以降連合に動きはあれど、脳無の出現は確認されていない」
「その件に関しては、①あれで全部だった。②まだあるけど、オールフォさんしか場所知らない。のどちらかって見方みたいですね」
「『噂』というが、貴様、
やや鋭い視線を送りながら、ホークスに問いかけるが…
「得てないです。ガチ噂です」
「会計だ! 俺は帰る!!」
返ってきた言葉に俺は失望した。単なる噂に踊らされるとは!
「待ってくださいよ。聞いてください。つーかね…
「全国でそういう噂が立ってるんです。取り立てて記事にする程でもないけれど…」
「しかし、奥様方の井戸端会議で、或いは小中学生の下校の会話の中で…」
「………どういう事だ?」
一転して真面目なトーンに変わったホークスの声に、俺は席に戻り、続きを促す。
「出張に出た時、地元の人から聞いたのが最初です。その時は警察とも協力して…混乱を避ける為に、コッソリ捜査したんですが、何も出ず…」
「で、ちょっと気になったんで
「調査…!?」
「多少の違いはあれど、似たような噂話が
「抽象的な見解になっちゃうんですけど、雄英高校、保須、神野を経て、改人という
「どっかのアホウが、不安を煽る目的でホラ吹いて、それが今全国に伝播してるんじゃないかな」
残った焼き鳥を奇麗に食べながら、淡々と己の考えを述べていくホークス。ふむ、仮説としては筋が通っているか…。
「さっき、俺が無力化した露出狂。何か叫んでいたでしょう? 覚えてます?」
「……たしか、『異能解放万歳』」
「あれも、この噂と同じですよ。今、大昔の犯罪者の自伝が再出版されて、けっこー売れてるんですよ。おそらく感化されちゃったんでしょうね」
「社会が不安な時ほど、そういうのが売れるってか、蔓延るって言うじゃないですか」
「…否定は出来んな。それで? 貴様は結局何がしたいんだ?」
俺の問いかけに、ホークスはニカッ! と笑い―
「
高らかにそう宣言した。
「立ち込める噂話を
「昨日も同じような事言いましたけど、要は
「…貴様のスタンスは、一体どうなっている?」
「俺は楽したいんですよ。本当に。適当にダラダラパトロールして、今日も一日何もなかった! とくだを巻いて床に就く。これこそ最高の生活ってやつです!」
「ヒーローが、
とんでもない事をあっけらかんと言ってのけるホークスに、俺は思わず感心してしまう。ヒーローが暇を持て余す世の中にしたいなど、俺は考えた事もない。
もしかしたら、こういう考え方をするこの男に、将来
「ッ!」
俺の第六感が、何かを察知したのはその時だ。咄嗟に視線を外へ送ると、遥か遠くの空中に
「…エンデヴァーさん」
俺の様子にホークスも何かを察し、いつでも動ける体勢を取るが―
「はーい、お会計ですね!」
最悪のタイミングで、店員が入室してきた。さっきの俺の声か…俺とした事が、なんと迂闊な!
「下がって! お姉さん!」
ホークスが叫びながら動いた直後、
「どレが一番強イ?」
俺とホークスを睨みながら、そんなセリフを吐いてきた。
「きゃぁぁぁぁぁ!」
「ホークス! 避難誘導を!」
「了解! エンデヴァーさんは!?」
悲鳴を上げる店員をホークスに任せ、俺は一歩前に出る。
「『噂』ではなかったか。なんとも間の良い奴だ…まぁいい」
「どのみち、そのつもりで来た!」
俺目がけて振り下ろされる脳無の巨腕を紙一重でかわし―
「赫灼熱拳! ジェットバーン!!」
右拳の一振りと共に炎の塊を発射! 脳無を外へと吹っ飛ばす!
そのまま俺も外へ飛び出し、足から炎を吹き出す事で滞空。
「来い!
戦闘態勢に入りながら、そう宣言した。さぁ、戦いの始まりだ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。