出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。
少し短いですが、お楽しみいただければ幸いです。


第51話:ワン・フォー・オールの原点(オリジン)part2

出久side

 

「酷い言い草じゃないか」

「僕は()()()()()()()()()…! 寛容である事は、おまえの『正しさ』に含まれていないのか?」

「今世界が混乱の最中にある! “異能”は私利私欲に使うべきじゃない。あんたは自分を満たす事しか考えていない!」

 

 僕と歴代継承者の皆さんが見つめる中、繰り広げられる初代とオール・フォー・ワンのやり取り。そこに―

 

「そのまま返すよ。おいで」

 

 オール・フォー・ワンに呼ばれて青年と中年の男性が姿を現した。

 

「彼は(がく)部が変容した。牙が生え変わり続けるそうだ。内気だが、老いた両親の世話を欠かさない優しい男だよ」

「そんな彼だが、『怪物だ』『病気だ』と迫害を受け、両親からも隔離されてしまった」

「こちらの彼は“異能”を持たない。ある日の夕暮れ、仕事帰りに“異能”の集団に襲われたそうだ。頼みのスタンガンは無効化された上、触手状の毛髪に体の自由を奪われ、金銭も奪われたと」

「2人ともこの世界の犠牲者だ。2人を()()()()()()()()()()()()()()?」

「まさか…ダメだ! ()()()()()()ぞ!!」

 

 オール・フォー・ワンの言葉に何かを察した初代は、声と共に駆け寄ろうとするけど…

 

「ぅぐっ! ケホッ…」

 

 突然咳き込み、その場に崩れ落ちてしまう。

 

「頼むよ」

「早く」

 

 その間にオール・フォー・ワンは両手を2人の額に当て、片方から“個性”を抜き取り、もう片方にそれを移し変えた。

 

「あ、あぁ…」

「おぉ…」

 

 “個性”を失った青年は歓喜の涙を流し、“個性”を得た中年男性は力を得た事への歓喜に口を歪ませる。

 

「今後僕が困ったら、その時は助けてくれるかい?」

「もちろんだ!! あぁ、父さん母さん…! ありがとう、本当に…!」

「この恩は忘れない」

 

 オール・フォー・ワンにそう言い残し去っていく2人。その姿が完全に消えたところで、オール・フォー・ワンは初代へと向き直り―

 

「おまえの言う『世界』とはなんだ? 弟よ」

「おまえは何が見えている? 僕は『人』を見て『人』の為に()()()使()()()()()

 

 芝居がかった動きと共にそう問いかけてきた。

 

「詭弁だ…! あんたは今()()使()()()()()()()()()()()だろう?」

 

 その問いかけに、オール・フォー・ワンを睨みながらそう答える初代。だけど、オール・フォー・ワンは何ら動じる事無く―

 

「縋れるものが必要なんだ。おまえは僕を否定する事で、()()()()()()()()()()()()()よ」

「人の形を失ったこの世界。僕の力なら秩序を(もたら)せる。エゴを通そうとと必死なのは、どちらだろう?」

 

 余裕の表情でそう嘯いた。初代が動いたのその時だ。

 

「心の隙につけ入ることの何が秩序だ! そうやって弄び使い捨てた人の数。おまえは覚えちゃいないだろう!」

 

 必死に声を絞り出しながら、オール・フォー・ワンに掴みかかろうとする初代。だけど…

 

「がっ…」

 

 初代の死角から飛び出してきた仮面の男が、たやすく初代を抑えつけてしまう。

 

「おっと、気を付けてくれ。弟は体が弱いんだ」

「実は少し前から用心棒をつけているんだ。僕も有名になってきたんでね」

「彼を侮辱する事は許さない」

 

 用心棒に動きを封じられ、オール・フォー・ワンを睨む事しか出来ない初代。オール・フォー・ワンはそんな彼を憐れむような目で見つめ―

 

「あぁ…可哀想に。“異能”を持たずに生まれたばっかりに…力が無ければ、通せる道理も無い」

「それでも僕は、おまえを愛してるよ。哀れな弟…唯一の家族」

 

 呟くようにそう言い残した。直後、まるで映画の画面が切り替わるように、周囲の景色が変わり…今よりも昔の日本。そのどこかにある都市の様子が映し出される。

 “個性”…その当時は“異能”と呼ばれる力に目覚めた少数の人間が、力に目覚めていない多数の人間を虐げている。

 まるで無声映画の様に、音も無く繰り広げられる残酷な光景を見つめながら、初代が僕の隣に立ち、静かな声でこう呟いた。

 

「かつて、突如として『人間』という規格が崩れ去った」

「そんな混沌の時代にあって、逸早く人々をまとめ上げたのが…兄だ」

 

 初代の呟きの通りオール・フォー・ワンは、“異能”を悪用して人々を虐げる者から“異能”を奪い取り、同時に虐げられていた人々を扇動していく。

 

「力無き者に『選択』を、罪には容赦を、望むものを与えよう」

()()()()()()()()()()()

 

 瞬く間にその都市は、オール・フォー・ワンの支配下に置かれた。

 その直後、再び画面が切り替わり…オール・フォー・ワンが、ある建物の地下にある厳重に施錠された一室に入る光景が映し出される。

 

「あぁ…また食べなかったのか。かわいそうに、瘦せ細ってしまって」

 

 その部屋に監禁されていたのは初代。その姿は以前よりも更に瘦せ衰えてしまっている。

 

「僕は…あんたの思い通りにならない」

 

 咳き込みながらも声を絞り出し、オール・フォー・ワンを拒絶する初代。だが、そんな態度も想定済なのだろう。オール・フォー・ワンは薄く笑みを浮かべ―

 

「そろそろ諦めたらどうだい?」

 

 まるで言い聞かせるように、初代へ話しかける。

 

(いたずら)に力を振るう者たちが徒党を組んでいた。僕の手を拒み…秩序を否定する集団がいた。とても危険な存在だった」

()()()()()()()

「僕は何もしていなんだぜ? 僕を慕う多くの友人が、秩序(ぼく)を思い行動に移した」

「嬉しかった…! 思うだけで、皆が動いてくれる…夢の光景だ。あの日、お前と読んだコミックの世界だ」

「あんたは3巻までしか読んでいない…続きがある」

「魔王に支配された世界を、正義のヒーローがもがき苦しみながらも最後に救い出すんだ」

「兄さん知ってるか? 悪者はな…()()()()()()()()()()

 

 必死に絞り出した初代の声が響いた直後、オール・フォー・ワンは初代の顔を鷲掴みにして―

 

架空(ゆめ)は現実になった! 現実は定石通りにいかない」

「お前が僕に屈しない現実も、()()()()()()()()()()()

 

 そう宣告した。

 

「お前が大切だ」

「や、めろ…」

「瘦せ細ったおまえにも使いやすい“異能”を見つけたんだ。共に征こう」

 

 そして初代へ強制的に与えられる“異能”。以前、オールマイトから聞かされた『力をストックする』“個性”だ。

 ここで周囲が最初と同じ真っ暗な空間に変わり…

 

「残念だけど、今見せられるのはここまでだ。だけど、今の君は『ワン・フォー・オール』を60%近くまで扱える。この先もそう遠くない時期に見る事が出来るだろう」

 

 初代が僕の肩に手を置きながら、そう教えてくれた。

 

「はい! 頑張ります!!」

「頑張ってくれ…」

 

 僕の返事に初代、オールマイトの師匠(7代目・志村菜奈さん)ラフな格好の男性(『黒鞭』の本来の持ち主)は優しく微笑み、同時に体の末端部分から少しずつ消え始めた。

 

「最後に伝えておくよ。気づいていると思うけど、君の中で未だ眠っている歴代継承者。その内2人はもう殆ど覚醒している。何か()()()()()()()()、すぐに目覚めるだろう」

「それじゃあ、また新たな“個性”が?」

「あぁ、そしてその“個性”は、『浮遊』や『黒鞭』同様、ワン・フォー・オールに蓄積された力が上乗せされた事で、歴代継承者(かれら)が使っていた頃より大幅に強化されている。上手く使いこなしてくれ」

「はい!!」

 

 初代の声にそう答え、深々と頭を下げる。

 

「頑張ってくれ。9代目…緑谷出久」

 

 そして、その声を残し、歴代継承者の皆さんは姿を消していった。

 

 

「ッ!?」

 

 目を覚ますと、そこは(ハイツ・アライアンス)2階にある自分の部屋。時刻は午前4時30分。

 僕はベッドから跳ね起き、窓を開けて夜風を浴びながら、両手を何度も握って感覚を確かめると…

 

「今から寝直すのは…無理かな」

 

 外で軽く体を動かそうと、物音を立てないよう静かに部屋を出て下に向かうのだった。




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回より、合同戦闘訓練編編に突入します。
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