出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。
少し短いですが、お楽しみいただければ幸いです。


第53話:合同戦闘訓練第1試合‐その1‐

雷鳥side

 

「始まったか」

 

 ブラドキング先生の声と共に始まった第1試合。その光景をモニター越しに見ながら、俺は静かにそう呟いた。

 今回の合同戦闘訓練。事前の予想ではA組の圧倒的有利と言われている。実際、林間合宿時点でのA組(俺達)の戦闘力、その平均を100とするなら、B組の平均は精々60。

 仮免試験前に出久の分析ノートを入手したことで、かなりのレベルアップを果たしたようだが、実力を上げているのはこっちも同じ。であるならば…

 

A組(こっち)が100で、B組(向こう)が65…いや、75だな」

 

 万が一にも油断などしないよう、B組の戦力を多めに見積もりつつ、戦局を見守っていく。

 

「くじ運に恵まれたのは幸運だったな。梅雨ちゃん、八百万、轟、出久、そして俺。指揮官を務められるメンバーが上手くバラけた」

「さぁ、梅雨ちゃん。お手並み拝見だ」

 

 

梅雨(FROPPY)side

 

 試合開始と同時に、私がまずやった事は保護色の発動。そして高所へ移動して索敵よ。

 

「今のところ敵影は無し。障害物が多いから確実とは言えないけれど、別ルートで近づいている可能性も十分考えられるわね。一旦そっちに合流するわ」

『了解』

 

 仮免試験の時に、八百万ちゃんから貰った小型通信機*1で、皆と連絡を取りつつ、下へ降りる私は、この試合で自分が為すべき事を考える。

 私のポジションは指揮官。チームが1人も欠ける事無く、この戦いを切り抜けるには、相手の動きを読む事が何よりも肝心。

 だけど、一手先を読むだけでは()()()。吸阪ちゃんや緑谷ちゃんのように、相手の五手先、十手先を読むのが理想ね。

 

「五手先、十手先は無理かもしれないけれど、三手先くらいは読んでみせるわ。ケロケロ」

 

 

 皆と合流してある程度進んだところで―

 

「ッ!?」

「クルル…」

「感謝します」

 

 口田ちゃんの元へ飛んで来た数羽の鳩が、情報を持ってきてくれたわ。

 

「左側から塩崎さん!! ()()だって!」

「ツルで広範囲を探りながら、こっちに向かってる」

「女の子に寄ってたかんのは、気乗りしねェが…」

 

 接近している茨ちゃんに対し、迎撃態勢を取る切島ちゃん、口田ちゃん、心操ちゃん。さぁ、()()()()()()()ね。

 

 

宍田獣郎太(ジェボーダン)side

 

 塩崎氏の接近に対し、迎撃態勢を取る切島氏達の姿を見て、私は作戦の成就を確信しましたぞ。

 口田氏の索敵に捕捉されるのは()()()()()()! 広範囲に攻撃可能な“個性”を持つ塩崎氏を警戒するであろう事も!

 彼女を囮に、私は密かに這いより近づく! そして隙を突いての一撃必殺!

 

「最低でも2人は、仕留めさせていただきますぞ!」

 

 これ以上無い程の完璧なタイミングで跳びかかった私は―

 

「ガオンレイジ!」

 

 必殺の『ガオンレイジ』を発動! これで決まりですぞ!

 

「残念だけど、()うは問屋が卸さないわ」

「なっ…」

 

 次の瞬間、蛙吹氏を掴み、投げ飛ばす筈だった手は空しく空を切り、私は驚愕を抑える事が出来なかった。

 彼女達の注意は、塩崎氏に向いていた筈! 奇襲のタイミングは完璧だった筈! それなのに、どうして!?

 頭の中を幾つもの何故? が飛び交いますが、それの答えを得るよりも早く感じたのは、頭部への強い衝撃。

 

「ぐぅ…」

 

 それの正体が、蛙吹氏の舌による一撃であると察したのも束の間。追撃に入ったのは、硬化した切島氏と斧を構えた口田氏!

 

「ちぃっ!」

 

 私が背負っていた円場氏が咄嗟に“個性”を発動。空気を固めて壁を作りますが…

 

「ぶちかませ! 口田ァ!!」

 

 口田氏の振るう斧によって、空気の壁は容易く粉砕され―

 

烈怒頑斗裂屠(レッドガントレット)!!」

 

 間髪入れず、私の鳩尾へ叩き込まれるの切島氏の一撃!

 

「げぼぁっ!」

 

 鍛えようのない鳩尾を打ち抜かれ、私は胃液を撒き散らしながら吹っ飛んでいく。間一髪で、背負っていた円場氏を逃がせたのがせめてもの…

 

「ジェボーダン!」

「私は平気ですぞ! ご自分の無事を第一に!」

 

 今の声は!? 何故、()()()()()()()()()()()()のですか!?

 

 

心操side

 

「よし、まっすぐA組の陣地へ向かい、『激カワ据置プリズン』に入ってろ」

「………」

 

 虚ろな表情のまま俺の指示通りに歩き出した円場を横目で見送りつつ、俺は装着しているアイテム『ペルソナコード』の設定をニュートラルに戻しながら軽く息をつき―

 

「いやぁ、梅雨ちゃんが宍田(ジェボーダン)の接近に気が付いてなかったら、危ないところだったぜ!」

「あぁ、流石は蛙吹だ」

 

 切島の声に同意する。あの時、俺達は塩崎の接近に気を取られ、他への注意が疎かになっていた。蛙吹がいなかったら、どんな事になっていたか、考えたくもない。

 

「梅雨ちゃんと呼んで。心操ちゃん。それに大した事はしていないわ。吸阪ちゃんや緑谷ちゃんだったら、()()()()()()()()()()、それをイメージして行動していただけだから」

 

 そう言って謙遜する蛙吹だが…あの2人がどう動くかをイメージして行動出来るだけでも、十分大したもんだと思う。

 

「ぬぉぉぉぉぉっ!!」

 

 そこへ聞こえてくる叫び声。切島の一撃で吹っ飛ばされた宍田(ジェボーダン)が、瓦礫を押し退け、こっちへ再度突っ込んできたのだ。

 

「ダメージから考えて、塩崎氏達との合流は困難! ならば、せめて一太刀! 一矢報いるのみ!!」

 

 獣の咆哮を上げながら、一直線に向かって来る宍田(ジェボーダン)。口田が持っていた斧を銃に変形させ、圧縮空気弾を発射して迎撃するが、興奮状態の宍田(ジェボーダン)は、圧縮空気弾が命中しても怯みすらしない。

 

「来るかよ! だったら俺が!」

 

 宍田(ジェボーダン)を迎え撃とうと、再度全身を『硬化』させる切島。だけど―

 

「ここは()()()()()

 

 切島を制して前に飛び出したのは、蛙吹だった。

 

 

梅雨(FROPPY)side

 

「何のつもりですかな? 蛙吹氏ぃっ!」

 

 迎え撃つ為に飛び出した私を見て、声を上げる宍田ちゃん(ジェボーダン)

 

「失礼ながら、私と貴女ではパワーの差は歴然! 不要な怪我をする前に退かれる事をお薦めしますぞ!」

 

 純粋に私を案じての発言。ワイルドな見た目に反して、紳士的だわ。だけど―

 

「残念だけど、吸阪ちゃんの方が魅力的ね」

 

 女だからと甘く見たり、不要な心配をしない。紳士としての在り方が吸阪ちゃんとは決定的に違う。

 

「それに!」

 

 私は宍田ちゃん(ジェボーダン)の放った右の一撃を紙一重で掻い潜って肉薄。さっき切島ちゃん(烈怒頼雄斗)が打ち抜いた鳩尾へ、左右の拳を同時に叩き込んだわ!

 

「ごぼっ…」

「パワーの差は、テクニックとサポートアイテムでフォロー出来るわ」

 

 2度も鳩尾を打たれて悶絶し、後退(あとずさ)宍田ちゃん(ジェボーダン)。今が好機ね。 

 

()()()()()()我慢して頂戴!」

 

 私は再度宍田ちゃん(ジェボーダン)との距離を詰め、その体を駆け上がりながら、踏みつけるように両足で蹴りを連発していく。

 脛、膝、太腿、下腹部、鳩尾、両肩。十数発の蹴りを叩き込み、最後は顔面に両足蹴り!

 

FROPPY.()Combination.()Arts.()version4()

 

 顔面への両足蹴り。その反動を利用してのバク宙を決め、着地と同時にそう呟く。

 

「………」 

 

 だけど宍田ちゃん(ジェボーダン)は、それに答える事無く、転倒。白目を剥いて気絶したわ。

 

「これで2人を無力化。戦況は私達有利ね」

 

 私を呼びながら駆け寄って来る切島ちゃん(烈怒頼雄斗)達に手を上げて答えつつ、そう呟く。

 『激カワ据置プリズン』に投獄しないと、捕まえたという判定にはならないのだったわね。

 ここは二手に分かれるより、全員で自陣に戻った方が賢明ね。

 

 

雷鳥side

 

「流石は梅雨ちゃん。期待通りだ」

 

 梅雨ちゃんの指揮官としての働き、そして宍田(ジェボーダン)を難なくKOした強さに心の中で拍手を送っていると―

 

「嘘、だろ…宍田があんな、簡単に…」

「蛙吹って、あんなにパワーがあったのかよ…」

 

 B組からは驚きの声。

 

「あ、蛙吹の脚…エロスを感じるけど、あれはもう()()だ…」

 

 峰田からは恐怖の声が聞こえてきた。うん、峰田はこんな時くらい自重しろ。

 

「これで4対2。このまま油断せずに行ってくれよ」

 

 気絶した宍田(ジェボーダン)を『激カワ据置プリズン』に投獄する4人を見つめつつ、俺は静かに呟くのだった。

*1
メリッサ作。第11話:ヒーロー仮免許取得試験!‐その5‐参照




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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