出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2 作:SS_TAKERU
お楽しみ頂ければ、幸いです。
第62.5話:
A組とB組の合同戦闘訓練から数日が経ったある日の昼。冷奴と野菜ポタージュの昼食を済ませた私は、午後の授業に向けて準備をしていた訳だが―
「八木先生、お客さんですよ」
「失礼します」
その準備は、不意の来客によってストップすることとなった。
「やぁ、塚内君。アポ無しとは珍しいね」
「その点は申し訳ない。
「オールマイトさんや校長だけでなく、俺にもですか…トラブルでなけりゃ良いんだが…」
そうボヤきながら立ち上がった相澤君に苦笑しつつ、私と塚内君は校長室へと歩き出す。
だが、いつもなら必ず連絡を入れてくれる塚内君がアポ無しで訪ねてきた事と言い、私や校長だけでなく相澤君も巻き込んだ事と言い…
心の中でそう呟き、私は校長室へと足を踏み入れた。
結論を言うと、塚内君の話は幸いな事にトラブルの類ではなかった。だが―
「……わかった。吸阪少年と緑谷少年には、私から話をしておくよ」
ある意味ではトラブル以上に厄介な物だった。
雷鳥side
今日の授業も無事終了。俺達はいつものメンバーと今日の担当である八百万を加えた6人で、夕食のメニューについて話しながら教室を出ようとしたのだが―
「私が! ギリギリ滑り込みで来た!」
そこへオールマイトが、文字通り滑り込みでやって来た。何かあったのか?
「吸阪少年、緑谷少年。ちょっと話があるから、仮眠室まで来てくれないかな?」
「皆、悪いが夕食の下拵えを頼む。俺と出久も終わり次第、すぐに戻るから」
俺と出久は、夕食の下拵えを梅雨ちゃん達に任せ、オールマイトと共に仮眠室へと移動する。はてさて、どんな話を聞かされるのやら…。
出久side
「2人に手間をかけてしまって申し訳ないね。あまり大勢には聞かれたくない話だったんだ」
仮眠室に到着すると、オールマイトは僕と雷鳥兄ちゃんに座るよう促しながら、あの場で話をしなかった理由を話してくれた。
大勢には聞かれたくない話…か。
「
「あぁ、そういった話ではない…いや、少しは関係のある話かな」
雷鳥兄ちゃんの声にそう答えたオールマイトは、一瞬だけ黙り込み…
「実は…爆豪少年のご両親が、2人に会いたいと言っているそうだ」
覚悟を決めた表情で、本題を話してくれた。
「おじさんとおば…勝さんと光己さんが、僕達に会いたがって、いるんですか?」
「出久に会いたいと言うなら、話はまだわかりますが…俺にも、ですか?」
そのあまりに予想外な内容に、僕も雷鳥兄ちゃんも動揺を隠せない。
「うむ…正直な話、爆豪少年のご両親がどのような意図で2人に会いたがっているかは、私にもわからない。だから、会うかどうかの判断は、君達2人に一任するよ」
オールマイトからそう告げられた後、僕と雷鳥兄ちゃんは相談を重ね…勝さんと光己さんに会う事を決め…面会日時等の調整はオールマイトにお任せする事とした。
ちなみに、諸々の調整は思いの外スムーズに進んだらしく、面会は3日後の日曜日と決まった…と、オールマイトは日付が変わる前に僕と雷鳥兄ちゃんへ教えてくれた。
雷鳥side
さて、日曜日となり、爆豪の両親と面会する日がやって来た。俺と出久は相澤先生の運転する車に乗り込み、
ちなみに、
「着いたぞ」
そんな事を考えながら車に揺られる事1時間半。
「…なるほどね」
その施設を一目見た途端、俺はこの施設が軟禁の為に建てられた建物である事を改めて確信した。
たしかに、パッと見の環境は良い。小洒落た外見の建物は、小高い丘の上に建てられていて日当たり良好だし、見晴らしも良い。海が近くで、良い風も吹いている。
だが、建物の裏は
それから…かなり巧妙に隠されているが、あちこちに監視カメラや対人センサーが設置されているな。
更には、建物の建材も特殊な物が使われているようだ。所々ではあるが、俺のサーチで
「見た目は良いが、その実態は監獄…か」
そんな事を秘かに呟きながら、俺は出久と共に相澤先生の後ろについて、建物の中へと入っていく。鬼が出るか蛇が出るか…だな。
出久side
建物に足を踏み入れた僕達は、IDの確認や網膜、虹彩、声紋の認証といった厳重なチェックを受け―
「手荷物はこちらのX線検査機に、スマートフォンやタブレット等の電子機器、腕時計、アクセサリー、鍵等は、机の上のトレイの中に出してから奥に進み、ボディチェックを受けてください」
最後に手荷物検査とボディチェックを受けた。この厳重さ…正直、Iアイランドにも匹敵するレベルだ。
男女2人ずつのスタッフも格好こそ警備員というよりホテリエ*1に近いけど、
「間もなく、3番ゲートが開きます。ゲートを潜ったら、床の青い矢印に従い、通路を進んでください。
「あ、はい」
「あと、差し入れの類はこちらで預かり、異常が無い事を確認した上で、こちらから入所者へ渡します」
「おい、俺の教え子が危険物を持ち込むと思っているのか?」
女性スタッフのあんまりな物言いに、相澤先生が抗議してくれるけど―
「規則ですので、ご了承ください。それから、ここから奥へ進めるのはこちらの2名のみです。イレイザーヘッドはそちらでお待ちください」
女性スタッフは平然とした顔で、その抗議を切って捨てる。
「面会時間は30分。如何なる理由があろうとも延長は認めません」
そして、女性スタッフが僕達にそう告げた直後ゲートが開いた。僕と雷鳥兄ちゃんは相澤先生に頭を下げ、急いでゲートを潜る。
「
ゲートが閉まると同時に、雷鳥兄ちゃんがそんな風にボヤいていたけど……同感だ。
雷鳥side
床の青い矢印に従い、迷路のように入り組んだ通路歩くこと5分。ようやく爆豪の両親が入居している部屋の前まで来る事が出来た。
「出久、準備はいいか?」
「…うん」
静かに頷いた出久に頷き返し、俺はドアをノックする。
「……どうぞ」
「失礼します」
少しの間を置いて聞こえてきた声を確認して、俺はドアを開き…室内にいた2人の姿を見た途端、面会の希望を受けた事を心の中で後悔した。
「おじさん…おばさん……」
出久の声も震えている。それほどに2人の姿は
「突然、呼びつけるような真似をして済まなかったね、出久君。吸阪さんも申し訳ない」
「いえ、お気になさらず」
俺達が席に着くと、そう言って頭を下げてきた爆豪の父親…勝さんにそう答えながら、俺は無礼にならない程度に2人を観察する。
勝さんの方は、茶色だった髪の半分近くが白髪になり、顔には深い皺が刻まれている。体型も…かなり痩せたようだな。
そして光己さんの方は…勝さんの変わりようがまだマシと思えるくらいに、
頬は
金髪だった髪も残らず白髪になっている上、体も車椅子無しでは動けないほど衰えているようだ。
正直な話、何も知らない人間に勝さんは60代、光己さんは80代と伝えても信じてしまうだろう。
あの火事から7ヶ月弱。心労が祟ったという事だろうが…あまりに残酷というものだ。
「今日、2人を呼んだのは…2つ理由があってね」
そんな事を考えていると勝さんが再び口を開いた。2つの理由…か。
「1つは、出久君に謝罪する事だ。出久君、あの子が君に対して、長年行ってきた卑劣な行為の数々…そして、その事に親として気付く事が出来なかった事。心からお詫びします。申し訳なかった!」
「ごめんなさい…ごめんなさい、出久君…私、私達は…親としての役目を何も…!!」
「そ、そんな! おじさんもおばさんも頭を上げてください!」
目尻に涙を浮かべて頭を下げ続ける勝さんと、嗚咽を漏らす光己さんに、戸惑いながらも声を掛ける出久。
俺はそんな3人を見ながら、素早く考えを纏め…
「失礼ながら…若造が偉そうな事を言わせて頂きます」
自分の意見を述べる事にした。
「
「仮に、その事で責任を問う声があったとしても、今のお2人を見れば十分過ぎるほど罰を受けている…俺はそう思いますけどね」
「そうです! おじさんもおばさんもここに来てから、ずっと…
俺の声に続いて発せられた出久の問いに、静かに頷く勝さんと光己さん。
たしかに…あの警備の厳重さから言って、この部屋も
「罰を受けなくちゃいけないとしても、おじさんもおばさんも十分苦しんだんです。だから、これ以上…謝らないでください」
出久の言葉に声を殺して泣き続ける勝さんと光己さん。2人は一頻り泣き続け―
「見苦しいところを…見せてしまったね」
「いえ…」
再び顔を上げた時、どこか
「ここへ来てもらった理由は2つあると言ったよね。もう1つを…話すよ」
そして勝さんが口にしたもう1つの理由…それは懇願だった。その内容は…暫く俺と出久の心の中に秘めておいた方が良いだろう。
「こうなったのは…ある意味俺のせい……かもな」
面会終了後
「ケロ? 吸阪ちゃん、何が俺のせいなの?」
迂闊にも梅雨ちゃんに聞かれていた。
「いや、こっちの話」
咄嗟にそう言って誤魔化し、これ以上声に出さないよう気を付けながら、考えを纏めていく。
この世界では原作と違い、俺の介入によって爆豪が
むしろ、爆豪の行為が不自然なまでに擁護されている原さ…おっと、脱線したな。
爆豪が
だからこそ…勝さんと光己さんからの懇願は…何としても叶えなくてはな。
「…よし、完成っと」
大鍋一杯に完成した
最後までお読みいただき、ありがとうございました。