出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2 作:SS_TAKERU
お楽しみ頂ければ、幸いです。
切島side
「お土産…
「ピーナッツ…ベタすぎるな*1」
「甘い物にするかなぁ…饅頭とか」
お土産を何にするか、なかなか決まらない。考えながら歩いている内に、商店街の端まで来ちまった。引き返すか。
「おーい! 鋭児郎!」
俺を呼ぶ声が聞こえてきたのはその時だ。声の方に振り向いてみると―
「魚住先輩!」
「久しぶりだな! 鋭児郎!」
中学の2年先輩で、将来はミュージシャン志望と公言していた魚住先輩*2の姿があった。
「お久しぶりッス! そう言えば、先輩の
「おう! 爺ちゃんの代から続く魚屋だ!」
そう言って笑う魚住先輩。頭にタオルを巻き、ゴム長靴と防水エプロンを身に着けた魚屋スタイルが様になってるぜ!
「鋭児郎、ニュースで見たぜ。随分と派手に活躍してるじゃねえか!」
「いやぁ、俺なんてまだまだッス! 先輩の方はどうなんですか? 音楽」
「俺の方は…まぁボチボチだよ。当面は
聞けば先輩は、
「それで、鋭児郎は今日どうしたんだよ? 雄英高校って、たしか今全寮制だろ?」
「あぁ、今日は
俺は先輩に、クラスメートへのお土産を探している事を正直に話した。すると―
「土産か…甘い物なんかも良いが、こういうのは
先輩はそう言いながら、店の奥から1匹の魚を持ってきた。
「昨日房総沖で獲れたばかりのキハダマグロ! もちろん、冷凍ものじゃねえ!」
「1.4m、22kg! 3万でどうだ!」
先輩が両手で抱えるマグロに目を奪われる。マグロ、マグロか…
「なんてな。ちょっとした冗談だ―」
「買ったぁ!」
「…マジか? マジで買うのか? 1匹丸ごと?」
「買うっス! 1匹丸ごと! お金なら大丈夫っス! インターンの時に貰った給料があるんで!」
「よ、よしっ! だったら俺も男だ! 2万8000…いや、2万7000に割引だ!」
「良いんすか!」
「おうっ! 親父が居ぬ間の大サービスだ! 持ってけ!」
「あざぁーっす!!」
俺は支払いを即金で済ませ、マグロと氷をギチギチに詰めた発泡スチロールボックスを受け取ると―
「毎度あり!」
先輩の声を背中に受けながらボックスを肩に担ぎ、実家へと急ぐ。こいつは、良いお土産が出来たぜ!
「マグロといえば、赤身に中トロ、大トロ。皆で食い放題だ!」
雷鳥side
法事の為に実家へ戻っていた切島が、土産と言って持って帰ってきたのは1匹丸ごとのキハダマグロ。
「うわぁ…大きなおさかな」
「これはね。キハダマグロって言うのよ」
「キハダマグロ」
「この前、八百万ちゃんがプレゼントしてくれた魚の図鑑に詳しく載っているから、読んでみましょうね」
「うん!」
まだ夕食を作る前だったし、初めて見るマグロに壊理ちゃんも喜んでいる。そして献立を考える手間が省けたからラッキーとも言える。だが…
「参考までに確認。マグロ捌いた経験ある奴。手ぇ上げ」
唯一にして最大の問題は、
「切島も買った時に、その魚屋さんに捌いてもらえば良かったのに」
「すまねぇ、そこまで頭が回らなかったぜ…」
芦戸にツッコまれ、小さくなってる切島の姿に静かに息を吐く。こいつは仕方ないな。
「一応…捌き方は知識としてはあるし、マグロを捌いているところを撮影した動画を見た事は何度もある」
「やるだけやってみよう」
そうと決まれば善は急げ。まずは…道具だな。
「ここにある包丁じゃ、
「かしこまりました!」
本来なら専用の鮪包丁が欲しいところだが、使い慣れない包丁は怪我の恐れがあるからな。それなら、使い慣れた出刃包丁でやった方が、確実ってもんだ。
「それにこのサイズだと、まな板には乗らないな…よし、テーブルでやろう」
床にブルーシートを敷き、テーブルにも透明かつ厚手のビニールシートを掛けてから、マグロを乗せると―
「さて、うまくいったらお慰みだ」
八百万に創造してもらった大振りの出刃包丁を手に、俺はマグロへと向かっていく。
切島side
うまくいったらお慰みだ。なんて言っていた吸阪だけど、時には慎重に、時には大胆にマグロを捌いていき、20分くらいで終わらせちまった。
「まぁ、こんなもんだな。初めてにしては、まぁまぁってところか?」
そう言いながら麦茶を飲んで一息つく吸阪。緑谷や梅雨ちゃんは、捌かれたマグロでどんな料理を作るか話し合っているけど…あれ?
「なぁ、吸阪。中トロとか大トロはどこにあるんだ?」
捌かれたマグロのどの辺りが中トロで、どの辺りが大トロなのかがわからない俺は、吸阪に尋ねるけど…
「何言ってんだ? このサイズのマグロに、中トロも大トロもあるかよ」
「え?」
「そもそもの話。キハダマグロは腹身が薄いから、トロ自体出来にくいんだよ」
「そ、そうだったのか…」
中トロ、大トロの食い放題だと思っていただけに、吸阪から告げられた答えは予想外であり、ショックだった。
「だけどな。その分あっさりした味わいで、刺身やヅケで食っても美味いし、色々と調理の遣り甲斐がある魚なんだ」
「そーなのか」
だけど、吸阪の説明を聞いて改めて食欲が湧いてきた。どんな味なのか、楽しみだぜ!
「そういう訳で、切島。こいつを頼む」
その時、吸阪から渡されたのは…カレースプーン?
「そいつを使って、中骨についた身を片っ端から削ぎ取ってくれ。いわゆる中落ちだ」
「お、おう! 任せてくれ!」
俺は早速カレースプーンを使って、中骨についた身を片っ端から削ぎ取っていく。それにしても、マグロの中落ちが中骨についた身だなんて知らなかったぜ!
今日は休日出勤。少し前までは仕事が終わったら、即退勤。帰宅途中にあるスーパーやコンビニでお酒*3やツマミを買って家飲み!
というのがお約束だったけど…最近は違う。
「今日はまた…豪華な献立ね!」
今日はいつになく豪華な献立。話を聞けば、実家に帰省していた切島君がお土産としてマグロを1匹丸ごと買ってきたとか…流石の漢気ね! 切島君!
「それでは、いただきます!」
「「「「「いただきます!」」」」」
飯田君の声、そして皆の声が響いた後に始まる賑やかな夕食。今日のメニューは―
・マグロの山かけ*4
・マグロのガーリックバター照り焼き*5
・マグロカツ*6
・マグロのカルパッチョ風サラダ*7
・マグロの和風タルタル*8
・マグロの刺身二種盛り*9
・マグロの兜焼き*10
・ご飯
和洋折衷なマグロ尽くし7品。さて、どれから頂こうかしら。
「はい、お待たせしました」
その時、私の目の前に置かれたのは、味噌で煮込まれた何かと、ポン酢で和えられた何かが盛られた小鉢2つ。これは…
「下処理したマグロの
如何にも酒飲みが好みそうな珍味2品に、思わず喉が鳴る。
早速用意されたノンアルコールビールを片手に、胃袋のポン酢和えを一口。
「んー!」
コリコリした歯ざわりの胃袋とシャキシャキした歯触りの玉葱。それにポン酢の味わいが合わさって、酒の肴に最適ね!
そして、ここにビールを加えたら…
「くぁぁぁっ、たまらないわ!」
隣に座っている相澤君が、何か言いたげにしているけど…華麗に無視してきましょう。
葉隠side
「ふぅ…美味しかった」
吸阪君達が作ってくれたマグロ尽くしの夕食。どれもすっごく美味しくてお腹も心も大満足! なんだけど…
「みんな、もう少し入るか?」
吸阪君はまだ何か用意しているみたい。何かと思っていると、すごく良い…お出汁の香りが漂ってきた。でも、いつもの昆布や鰹の出汁とは違う香り。
「吸阪君、その鍋の中身は何なのかしら?」
そう思ったのは私だけじゃなかったみたい。ミッドナイト先生が、吸阪君に問いかけていた。
「湯霜にした後、軽く焦げ目がつく程度に炙ったマグロのアラを、長ネギ、生姜と共に煮込んで作った特製出汁です。コイツで今から〆の一品を作ります」
ミッドナイト先生の問いに答えた吸阪君は、そのまま〆の一品に取り掛かる。どうしよう、お腹はもう一杯の筈なのに、またお腹が空いてきたよ!
「茶碗に半分ほどご飯を盛り、その上に擦り胡麻、煮切った味醂、醤油を混ぜて作った胡麻醤油でヅケにしたマグロの中落ちを乗せ…最後に熱々のマグロ出汁をかければ…特製マグロ茶漬けの完成です」
完成の瞬間、誰かがゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。そして、その場の全員がマグロ茶漬けを食べると意思表明したのは、言うまでもないよね!
こうして切島君の買ってきたお土産のマグロは、文字通り骨まで美味しく頂いたのでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回より劇場版第2弾 ヒーローズ:ライジング編となります。