出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2   作:SS_TAKERU

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お楽しみいただければ幸いです。


第64話:那歩島(なぶとう)での郊外ヒーロー活動

?side

 

 本州のはるか南にある離島、那歩島(なぶとう)。冬でも半袖で過ごせる常夏のこの島には、季節外れの海水浴やマリンスポーツを楽しむ為、多くの観光客が訪れるのだが…

 

「ねぇねぇ!」

「俺らと一緒にあっそぼうよぉ!」

 

 観光客の中には邪な考えを抱く者も僅かながら存在する。

 チャラさ全開で水着姿の女性2人に声を変える2人組の男もその類だったが…

 

「結構です!」

「そんな事言わな―」

 

 ナンパを拒否する女性達に近づこうとした瞬間、飛んできた何かを踏んづけ転倒してしまった。

 

「何だこりゃ!」

「と、取れねぇ!」

 

 自分達の動きを封じている粘着力抜群な球体を取ろうと悪戦苦闘する男達の姿に、何事かと戸惑う女性達。

 

「お怪我は、ありませんか?」

 

 そこに聞こえてくる紳士的な声。そこには―

 

「お嬢さん」

 

 戦闘服(コスチューム)を身に纏った小柄な男性が、爽やかな笑みを浮かべていた。

 

「ありがとぉ!」

「助かりました!」

 

 しかし、小柄な事が災いしたのか、女性達はその男性に気づく事なく、その奥にいた…尻尾の生えた純朴そうな男性に駆け寄っていく。

 

「い、いえ、今のは俺ではなくて…」

「下ぁ! 視線下ぁ!」

 

 必死の叫びと共に己の存在をアピールする小柄な男性だったが…最後までその存在が気づかれる事はなかった。

 

 

「蛙吹! 岩の向こう70m! 子どもが溺れている!」

 

 ビーチでは監視台に座った男性が指示を下し―

 

「ケロッ!」

 

 どこか蛙を思わせる雰囲気の女性が海へと飛び込み、猛スピードで泳いで、現場へ急行。

 

「うぉぉぉぉぉっ!!」

 

 更に筋骨隆々の男性もボートへ飛び乗ると、猛烈な勢いでオールを動かして現場へ向かう。

 

「ママァ! ママァ!」

 

 幸い、波に流されて悲鳴を上げていた少年はすぐに救出されたが…

 

「だ、大丈夫かい?」

「ヒッ…う、うわぁぁぁぁぁん!」

「何故泣く!?」

「顔が…怖いのね」 

 

 別の意味で怖い思いをしてしまったようだ。

 

 

「遊泳禁止! 遊泳禁止! 岩場の向こうは遊泳禁止!」

 

 岩場の辺りで鳥のような頭をした男性から出ている黒い影のような存在が、周囲の人達にそう呼びかける中―

 

「よっと!」

「ここから先は危険だから、入らないでくださいね!」

 

 もう1人の男性が両肘の辺りから射出するテープのような物を複数組み合わせる事で『立入禁止』の文字を作り出し、注意事項を強調。

 

「すげぇぞ!」

「やるなぁ!」

 

 それはパフォーマンスとしても優れていたようで、周囲から歓声が沸き上がった。

 

 

「見世物じゃねえんだが…」

 

 ビーチに併設された数件の海の家。その近くで岩場でのやり取りを見つめながら静かに呟く男性。

 

「焦凍君! また、氷頼めるかな?」

「はい」

 

 焦凍と呼ばれた男性は、海の家の店主に頼まれ―

 

「うぉっ!」

 

 一瞬で氷塊を作り出した。

 

「どうぞ」

「大き過ぎっ!」

 

 だが、少しばかり大き過ぎたようである。

 

 

 その頃、ビーチを一望出来る高台では、幼い姉弟がビーチで起きている様々な出来事を観察していた。

 

「うわぁ…ヒーローがいっぱい」

 

 弟の方は目を輝かせながら、声を上げているが―

 

「ふーん…」

 

 姉の方はどこか不満気な様子で…

 

「お姉ちゃん?」

 

 弟は心配そうな声で呼びかけていた。

 

 

出久(グリュンフリート)side

 

 那歩島(なぶとう)に3つある宿泊施設の中で、一番の歴史を誇る旅館『いおぎ荘』。

 僕達、雄英高校ヒーロー科1年A組はここを拠点として丸ごと借り上げ、島での活動拠点にしていた。そもそも、何故僕達が―

 

「雄英ヒーロー事務所です!」

 

 僕の思考を打ち切るように電話が鳴り響き、それに応対した芦戸さん(ピンキー)の声が響く。

 

「はい! すぐに向かいます!」

「吸阪! 西地区の松田さん、バッテリーがまた上がったって!」

「昨日の今日でか…正直買い替えた方が良いと思うが…とにかく了解だ」

 

 芦戸さん(ピンキー)から電話の内容を聞いた雷鳥兄ちゃん(ライコウ)が、そう呟きながら立ち上がり―

 

「頑張れライコウ!」

「「「GOGO!」」」

「あぁ! 行ってくる!」

 

 僕達の声を受けながら、走り出す。

 

「ハァイ、こちら雄英ヒーロー事務所。何でもキラキラに解決しちゃうよ♪」

「迷い犬見つかった?」

『今見つけた。大丈夫、元気だよ』

「お疲れ様! 次はインコ探しだって!」

 

 青山君(Can't stop twinkling.)が電話の応対をする間にも、葉隠さん(インビジブルガール)が、迷い犬を見つけた口田君(アニマ)に新たな依頼を伝え―

 

『弟が! 迷子になって、何処にもいないの!』

「大丈夫、落ち着いて」

 

 麗日さん(ウラビティ)は弟が迷子になったと訴える女の子を、電話越しに優しく慰めながら、名前や詳しい情報を聞き出している。

 

「心配ありませんわ。はい!」

 

 八百万さん(クリエティ)が受けた電話は―

 

「飯田さん! 佐藤のお婆ちゃんがギックリ腰に」

「わかった! 直ちに急行する!!」

 

 飯田君(インゲニウム)へ直に伝えられ、飯田君(インゲニウム)はすぐさま飛び出していった。

 

「商店街で迷子! 手の空いているヒーローは一緒に!」

 

 そして情報を聞き出した麗日さん(ウラビティ)も立ち上がり―

 

「迷子探しなら、ウチの出番だね」

「麗日さん、僕も行くよ」

 

 耳郎さん(イヤホン=ジャック)と僕が名乗りを上げる。

 

 

 外に出た僕達は、戦闘服(コスチューム)のベルト部分にカラビナ*1を装着。ロープを通して 

それぞれを離れないよう繋げると―

 

「フルカウル、25%!」

「はい、響香ちゃん」

「ありがと、麗日」

 

 僕はフルカウルを25%で発動し、麗日さんは自分と耳郎さんを自身の“個性”『無重力(ゼログラビティ)』を使って浮き上がらせる。

 

「ヒーロー事務所!」

「1年A組!」

「「「出動!!」」」

 

 声を合わせた直後、僕は地面を蹴ると同時に『浮遊』を発動して高度50m程に浮き上がる。空中から迷子探しだ! 

 

 

雷鳥(ライコウ)side

 

 さて、西地区の松田さん宅を訪れた俺は、畑に停められたトラクターのバッテリーにコードを繋ぎ、充電を行いながら、この島に来た理由を思い出していた。 

 雄英高校ヒーロー科1年A組(俺達)20人が何故、本州から遠く離れたこの那歩島(なぶとう)に来ているのか?

 プロヒーローの仮免許を取得したとは言え、まだ学生である俺達が何故、この島でヒーロー活動をしているのか?

 全てはヒーロー公安委員会の差し金によるもので、話は2週間前に遡る。

 

 

「ヒーロー活動推奨プロジェクト。お前らの勤務地は、はるか南にある那歩島(なぶとう)だ」

「駐在していたプロヒーローが高齢の為引退。後任が来るまでの間、お前らが代理でヒーロー活動を行う」

 

 ヒーロー公安委員会肝煎りの『ヒーロー科生徒によるプロヒーロー不在地区での実務的ヒーロー活動推奨プロジェクト』。

 何ともお役所らしい長々とした名称のプロジェクトについて説明し、俺達の赴任地を開示する相澤先生。

 

「「「「「ものすごくヒーローっぽいの来たぁぁぁっ!!」」」」」

 

 直後、大歓声を上げるクラスメート達。ふむ…先日の合同戦闘訓練で、()()()()()()()()()()()()()から詳しい事はわからんが…この如何にもなイベント感。

 まさか…前世の俺が死ぬ少し前に製作が発表された劇場版か?

 

「話を最後まで聞け!」

 

 そんな事を考えている間に、興奮するクラスメート達を相澤先生が黙らせ、説明が再開される。

 

「このプロジェクトは、規定により俺達教師やプロヒーローのバックアップは一切無い。当然、何かあった場合責任は全てお前らが負う事になる」

「その事を肝に銘じ、ヒーローとしてあるべき行動をしろ。いいな?」

「「「「「はい!!」」」」」

 

 

 こうして俺達は期間限定とはいえ、那歩島(なぶとう)を守るヒーローとなったわけだ。

 とは言っても、今のところ島は平和そのもの。事件らしい事件といえば、俺達が島に来る前に起きた崖崩れで塞がった道路をクラス総出で開通させたくらいで、あとは迷子の捜索にビーチの監視。原付の修理や荷物の積み下ろし、ついでにバッテリーの充電と半ば何でも屋状態だ。

 まぁ、島の人々の生活を守るのもまたヒーローの仕事。忙しくものんびりとした時間を過ごせるのは、良いもんだ。

 

 

出久(グリュンフリート)side

 

 高台にある公園の辺りを飛んでいると―

 

「お姉ちゃーん、どこ? どこにいるの?」

 

 誰かを探している様子の男の子を発見した。きっとあの子が!

 

活真(かつま)君?」

「え?」

 

 男の子を驚かさないよう声をかけながら、少し離れた場所に着地。

 

島乃活真(しまのかつま)君だよね?」

「ヒーロー…」

 

 男の子と目線を合わせるように片膝を突き、手を差し伸べる。

 

「お姉さんと逸れたんだよね? さぁ、僕と一緒に―」

「遅い! 遅すぎる!」

 

 その時、僕の声を遮るように姿を現す女の子。この子は一体?

 

「あなた名前は!」

「僕はグリュンフリート。あの、君は?」

「活真のお姉ちゃんの真幌(まほろ)

「えっ、じゃあ、弟さんを見つけてたんだね。良かった」

「ちっとも良くない! 迷子探しに12分もかかるなんてどういう事!?」

 

 怒った様子で僕にスマートフォンを突き付ける真幌ちゃん。ストップウォッチが起動したその画面は12分22秒と記録されている。

 

「あの雄英ヒーロー科のクセにダメダメじゃない! 前にいたお爺ちゃんヒーローなら10分かからずに見つけてたわよ!」

「そうなんだ。ごめんなさい、まだまだ未熟者だから嫌な思いさせちゃったね」

 

 真幌ちゃんの口調、そしてストップウォッチで僕が活真君を見つけるまでの時間を計っていた事から、この子が何を考えているか薄々察するけど、敢えて口には出さず、真摯に頭を下げる。 

 

「フ、フン! 仕方ないわね! まだ高校生だし!」

「今後はしっかりヒーロー活動してよね!」

「はい、気を付けます」

「行くわよ、活真」

「え、あ、うん…」

 

 真幌ちゃんに促され、あとを追うように歩き出す活真君。だけど―

 

「あの…ありがとう」

 

 僕の横を通る前に、小さな声でお礼を言ってくれた。

 

「もう! お礼なんか言わなくてもいいの!」

 

 それが気に障ったのか、活真君の手を取って、引っ張るように連れていく真幌ちゃん。

 

「緑谷君、どういうこと?」

「何があったの? 謝ったりして」

 

 そこへ駆けつけてきた麗日さん(ウラビティ)耳郎さん(イヤホン=ジャック)は何が何やらな様子だったけど…

 

「まぁ、色々とね」

 

 何事も無かったし、これはこれでOKだ。

 

 

活真side

 

 公園からの帰り道、僕とお姉ちゃんはアイスを買って、歩きながら食べていたけど…

 

「なによ! あんな簡単に頭なんか下げて!」

 

 お姉ちゃんはなんだかご機嫌斜めだ。

 

「あんなに早く見つけてたし、私の考えなんかお見通しの筈なのに、何にも言わずに謝って…」

「きっとあれね! 実力はあってもその他の面でダメダメな人なのね!」

 

 お気に入りのソーダ味のアイスも食べないまま、あのお兄ちゃん…グリュンフリートの文句を言ってるお姉ちゃん。

 

「すぐに来てくれたよ…あのお兄ちゃんはヒーローだよ」

「フン! 今に私がダメダメヒーローの化けの皮を剥いでやるんだから!」

 

 そう言うとお姉ちゃんは怒った顔でアイスを思いっきり齧って…

 

「くぅぅぅ…」

 

 頭が痛くなってた。お姉ちゃん、大丈夫?

 

 

八木俊典(オールマイト)side

 

「A組、ちゃんとヒーロー活動やっているだろうか…」

 

 昼休み、雪のちらつく外を見ながらそんな事を呟いていると―

 

那歩島(なぶとう)の人口は1000人。ここ30年の事件は些細なものばかり。まぁ、問題は無いでしょう」

 

 パソコンを操作していた相澤君が、私の方へ向き直り声をかけてきた。

 

「それにヒーローってのは、貴方の様に大災害に単身赴いたり、凶悪な(ヴィラン)と戦う事ばかりじゃありません」

「守るものとの関わりは、あいつらにとって貴重な経験になる筈です」

 

 そんな相澤君の言葉に、私も大いに考えさせられる。そうだ…守るものとの関わりは、彼らをきっと大きく成長させるだろう。

 

 

雷鳥(ライコウ)side

 

 さて、夕方になって一日中鳴り響いた電話もようやく一段落。

 

「あぁ、疲れた…」

「労働基準法、PlusUltraしてるし…」

「委員長、細かい仕事受けすぎじゃねえ?」

 

 疲労困憊な砂藤、瀬呂、峰田がそんな声を上げるが―

 

「事件に細かいも大きいも無いだろう!」

「ヒーロー活動をしているとはいえ、私達はまだ学生。誠実にこなし、島の皆様からの信頼を得なければ!」

 

 飯田と八百万にそう返されてしまう。

 

「お邪魔するよ」

 

 事務所のドアが開いたのはその時だ。

 

「村長さん!」

 

 飯田の声に続くように事務所へ入ってきたのは、村長さんを筆頭に島の皆さん。総勢十数人。

 

「さっきは婆ちゃんを病院まで運んでくれてありがとうね」

「バイクの修理、助かったわ」

「ウチのバッテリーも!」

「「ビーチの安全ありがとう!」」

「捕れたての魚やでぇ!」

 

 皆口々に俺達へのお礼を言いながら、大皿やお重に盛られたお惣菜や刺し盛、飲み物などを事務所へ運び込み―

 

「お礼と言う訳じゃないけど、良かったら食べとくれ!」

 

 あっという間に食事の用意が完了した。

 

「「「「「いっただっきまぁぁぁすっ!!」」」」」

「君達! 少しは遠慮したまえ!」

 

 皆が狂喜乱舞し、飯田が慌ててそれを注意したのは言うまでもない。

 

「すみません、わざわざ」

「いやいや、あんたらが来てくれて、本当に助かっとるよ」

「これからもよろしくお願いね」

 

 クラスを代表して、お礼を言った飯田と八百万が感激に打ち震え…

 

「はい!」

「精一杯! 務めさせていただきます!」

 

 声高にそう宣言したところで、食事が始まった。

 南国の食材を使った料理の数々…実に興味深い!

*1
固定具の一種。開閉出来る部品がついた金属製リングの事




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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