出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2 作:SS_TAKERU
お楽しみいただければ幸いです。
出久side
「「「「「ごちそうさまでした!!」」」」」
島の皆さんが用意してくれた夕食は、A組全員で見事完食。
「はぁ、美味しかった」
お腹も心も大満足な僕が余韻に浸っていると―
「人の優しさが身に沁みるな」
隣に座っていた障子君がしみじみとそう呟いた。
「ヒーローをやってて良かったと思える瞬間よね」
「また明日も頑張ろうって気になるよ」
「ホントやね!」
梅雨ちゃん、耳郎さん、麗日さんも同意の声を上げる。皆それぞれにまったりとした時間を過ごし…
「よっし、それじゃあ俺達風呂入って寝るから!」
「宿直組、あとはよろしくな!」
約20分後。立ち上がった切島君と瀬呂君の声を皮切りに、皆が動き始めた。
ちなみに、今日の宿直はアミダクジで決まった尾白君、障子君、心操君、葉隠さんの4人だ。
「よし、じゃあ僕もそろそろ」
僕も立ち上がり、部屋へ…は行かずに、外へ出る。毎日の日課である鍛錬を済ませないと!
星空の下、僕は『いおぎ荘』の中庭を使って、毎日の日課である基礎鍛錬を繰り返していた。
「1365! 1366!」
正しいモーションを意識した状態で、突きや蹴りの練習を繰り返す。こうやって体に覚え込ませておけば、実戦で意識する事なく正しい―
「頑張ってるな。出久」
その時聞こえてきた声に振り向くと、そこにはペットボトルを2本持った雷鳥兄ちゃんの姿。
「ほら」
「ありがと」
雷鳥兄ちゃんが投げ渡してくれたペットボトルを受け取り、中身のミネラルウォーターに口をつける。常夏の気候と鍛錬で火照った体が冷えていくのが心地良い。
「明日も朝から忙しいぞ。あまり無理はするなよ?」
「うん、わかってるよ」
2人でそんな事を話していると―
「あの…」
背後から小さな声が聞こえてきた。何事かと振り向くと…そこには1人の男の子が立っていた。
「君は…昼間の、活真君?」
「ヴィ…
「なんだって!?」
「少年、詳しく話してくれ!」
まさか、こんな平和な島に
ホークスside
「先週から継続的に発生しているヒーロー暴行事件」
「被害者は全員意識不明。しかも“個性”を消失…」
画面に表示された日本地図へ、次々と追加される×印と襲撃されたヒーローの情報を見ながら、俺は会長に便乗する形で側近の説明を聞いていた。
「ホークス…
「えぇ、少なくともあの時、若頭の治崎廻と共に輸送されていた分に関しては間違いなく。治崎本人への尋問でもその事は確認済みでは?」
「
質問に対する俺の返答が気に食わないのか、声に怒りが混じり始めた側近。会長はそんな彼を手を僅かに動かす事で黙らせ―
「ホークス、彼らが別ルートで“個性”消失弾のデータを入手し、生産に成功したという可能性は?」
静かな声でそう尋ねてきた。
「無いとは言い切れませんが、今のところそう言った情報は入手してません」
「なら調べろ! 何の為に奴らの内定を続けて―」
「“個性”を奪われた。とは考えられませんか?」
「何?」
己の大声を遮る俺の声に、側近は露骨に反応し、会長も僅かに眉を動かした。俺は構わずに己の意見を続けていく。
「被害者はヒーローですから、失った“個性”は当然使えるものばかりです」
「もし容疑者が、あのオール・フォー・ワンと同じ…『“個性”を奪う“個性”』を持っているとしたら…」
「そんな事が…」
「どちらにせよ、死柄木絡みです。両方の線で追ってみますよ」
そう言って俺は部屋を後にする。これ以上、留まっていたらどんな無理難題を押し付けられるかわからない。やるべき事だけやるとしよう。
死柄木side
「結局積み荷は何処に行ったんでしょう?」
当面のアジトとして使っている山荘。のリビングで、食塩無添加のトマトジュースを飲みながら、不意にトガがそんな事を言い出した。
「ヒーロー側は回収してないんですよねぇ?」
「あぁ、そいつは確定情報だ」
「結局さぁ、積み荷の中身は何だったわけ?」
トガの声にそれぞれ酒を飲んでいた荼毘、コンプレスも口を開く。こいつは黙っている訳にはいかない…か。
「ドクター曰く、
とは言っても、今俺が話せるのはこの程度の事。
「なんだそりゃ…」
「回収だけさせて、あとはだんまりかぁ!?」
「ますます気になりますね」
却ってスピナーやトゥワイスも声を上げ、マグネやマスタードも疑問の表情を浮かべる結果になったが…
「とにかく忘れろ。良いな」
「了解!
俺はそう言い残し、トゥワイスの声を背中に浴びながら風に当たる為、外へ出る。
-死柄木弔。今、お前さん達と奴らがぶつかるのは得策ではない-
-どちらが勝つにせよ、損害は計り知れんじゃろう。今は不干渉を貫くんじゃ…-
ドクターが俺だけに告げたメッセージを思い出しながら、俺は冬山の冷気を全身に浴びていく。動くにしても、タイミングを見計らないと…な。
ナインside
「ぐっ、あぁ…」
同志の1人であるキメラの体当たりで横転した軽トラックから投げ出され、道路に転がる男へ、俺はゆっくりと近づいていく。
「ようやく…見つけた」
「な、何を…」
襲われる理由に見当がつかず、全身を襲う痛みで這って逃げる事も出来なくなっている男だが、俺の金色に輝く瞳には全てわかっている。
「安心しろ。殺しはしない。だが………“個性”を貰う」
「うぁっ…」
俺は男の頭を鷲掴みにすると―
「あ、あぁ…」
男から“個性”を奪っていく。男から私へ“個性”が移っていく度合いに応じ、上空には分厚い黒雲が広がっていく。
「はぁ…」
そして“個性”の全てを映し終えた直後、俺は静かに左腕を天に翳し…振り下ろした。直後、幾筋もの雷が周囲へ落ち…何棟ものビルを破壊。
再度左手を天に翳せば、再び幾筋もの雷が落ち、周囲を破壊。火の海へと変えていく。
「遂に手に入れたか!」
「これで、実現する!」
「私達の望む……新世界が!」
辺り一面が廃墟となった中、同氏達が歓喜の声を上げる。そう、これで実現する。俺達の望む新せ―
「ぐぅっ!」
次の瞬間、まるで異変を告げるかのように全身の細胞が異常をきたした。立っている事も覚束無くなり、その場に膝を突く。
「ナイン!」
同志の1人スライスが駆け寄る中、俺は自らに起きた異常に混乱していた。
「な、何故だ…何故…」
直後、脳裏に浮かぶ以上の理由。
「B型が…不足している」
「なっ…なんと!?」
「チッ! ここまで来て振り出しかよ! クソが!」
マミーは驚きの声を上げ、キメラは怒りに震える中―
「いえ! まだ策はあるわ!」
スライスだけは冷静な思考を続けていた。
-お父さん。お仕事頑張って-
-こっちのことは心配しなくてもいいよ-
男の持っていたスマートフォンに記録されていた動画を見て、俺は悟る。
「そうだった…」
「“個性”は…遺伝する」
活真君から
流石に
「少年!
「あ、あの城跡の中…」
「よし、
「うん!」
「こいつはまた何とも…」
「凄いのが…いたね」
ピンクの鬣が生えた蟷螂とでも形容出来そうな異形の
その体長は…ざっと5m。かなりの大物だ。だけど…何かがおかしい。
「………
その違和感は
「全方位…エレクトロファイヤー!」
右拳を地面へ叩きつけ、四方八方に電流を走らせた。
「きゃぁっ!」
直後、20m程先にある茂みから悲鳴と共に女の子が飛び出してきて、同時に巨大
あれは…活真君のお姉ちゃんの、真幌ちゃん!?
「いったぁ…何よ、ちょっとは驚きなさいよ!」
状況が分かっていないのか、不満の声を上げる真幌ちゃんだけど…
「思いっきり手加減したからな。見た目は派手だが、ちょっと強めの静電気程度の痛みしか与えてない」
「え…?」
「幻の
「あ、あぁぁ…」
目の前に立っている相手が誰なのか認識した途端、大慌てで後退りしていく。
「ど、どうして幻だって…」
「そりゃわかるさ。俺のサーチに何も引っかからなかったし、何より足の何本かが
「あ、しまった…」
「幻を映し出す場所をもう少し吟味すべきだったね。さぁ、幻の
「………」
「ヒーローを騙して、面白がる。あまり褒められた行為じゃないし…何より立派な
「え…」
「ヒーローに対する偽計業務妨害罪*1。って言ってね。まぁ、簡単に言えば…牢屋に入るか罰金払うかって事」
「………」
「あ、あの…お姉ちゃんを、し、叱らないで…」
沈黙を続ける真幌ちゃんを見兼ねたのか、
「叱るかどうかは、理由を話してくれないと決められないな」
「もしも何かしらの事情があってやったんなら、その事情次第では叱らない。もちろん注意はするけどね」
「でも、もしも面白半分でやったんなら、その時は叱る。本気で叱る。君達の行いが後々大変な事になるかも知れないからね」
「大変な…こと?」
活真君の言葉に真剣な顔で頷く
「狼少年ってお話、知ってるかな?」
「…知らない」
「大雑把に言うと、噓をついて何度も大人達を騙した少年が、本当に助けが必要な時に助けを求めても、信用されずに酷い目にあったってお話」
「そんな…」
「君達のやった事は、もしかしたらそういう結果に繋がるかもしれない。
「う、うん…」
僕と
「それじゃあ、なんでこんな事をしたのか話してく―」
「オーイ!
その時、聞こえてきたのは
姿が見えてきた皆に手を振ろうと、2人から目を逸らした瞬間―
「活真、行くよ!」
「えっ…」
真幌ちゃんが活真君の手を取って走り出した。しまった!
「2人とも! 待って!」
「
慌てて2人を追いかけようとした僕を止める
「2人も自分達のやった事の意味はわかってるさ。大方皆が駆けつけるのを見て、怖くなったんだろう。気持ちはわかる」
「う、うん」
「まぁ、その気があるなら明日にでも謝りに来るだろ」
しばらく待ってやろうぜ。と言って笑う
とりあえずは…皆に上手く説明しないといけないな。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。