出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2   作:SS_TAKERU

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お楽しみいただければ幸いです。



第65話:(ヴィラン)出現?

出久side

 

「「「「「ごちそうさまでした!!」」」」」

 

 島の皆さんが用意してくれた夕食は、A組全員で見事完食。

 

「はぁ、美味しかった」

 

 お腹も心も大満足な僕が余韻に浸っていると―

 

「人の優しさが身に沁みるな」

 

 隣に座っていた障子君がしみじみとそう呟いた。

 

「ヒーローをやってて良かったと思える瞬間よね」

「また明日も頑張ろうって気になるよ」

「ホントやね!」

 

 梅雨ちゃん、耳郎さん、麗日さんも同意の声を上げる。皆それぞれにまったりとした時間を過ごし…

 

「よっし、それじゃあ俺達風呂入って寝るから!」

「宿直組、あとはよろしくな!」

 

 約20分後。立ち上がった切島君と瀬呂君の声を皮切りに、皆が動き始めた。

 ちなみに、今日の宿直はアミダクジで決まった尾白君、障子君、心操君、葉隠さんの4人だ。

 

「よし、じゃあ僕もそろそろ」

 

 僕も立ち上がり、部屋へ…は行かずに、外へ出る。毎日の日課である鍛錬を済ませないと!

 

 

 星空の下、僕は『いおぎ荘』の中庭を使って、毎日の日課である基礎鍛錬を繰り返していた。

 

「1365! 1366!」

 

 正しいモーションを意識した状態で、突きや蹴りの練習を繰り返す。こうやって体に覚え込ませておけば、実戦で意識する事なく正しい―

 

「頑張ってるな。出久」

 

 その時聞こえてきた声に振り向くと、そこにはペットボトルを2本持った雷鳥兄ちゃんの姿。

 

「ほら」

「ありがと」

 

 雷鳥兄ちゃんが投げ渡してくれたペットボトルを受け取り、中身のミネラルウォーターに口をつける。常夏の気候と鍛錬で火照った体が冷えていくのが心地良い。

 

「明日も朝から忙しいぞ。あまり無理はするなよ?」

「うん、わかってるよ」

 

 2人でそんな事を話していると―

 

「あの…」

 

 背後から小さな声が聞こえてきた。何事かと振り向くと…そこには1人の男の子が立っていた。

 

「君は…昼間の、活真君?」

「ヴィ…(ヴィラン)が…出たんだ!」

「なんだって!?」

「少年、詳しく話してくれ!」

 

 (ヴィラン)が出た。活真君の言葉に、僕も雷鳥兄ちゃんも一気に思考を戦闘モードへ切り替える。

 まさか、こんな平和な島に(ヴィラン)が出るなんて!

 

 

ホークスside

 

「先週から継続的に発生しているヒーロー暴行事件」

「被害者は全員意識不明。しかも“個性”を消失…」

 

 画面に表示された日本地図へ、次々と追加される×印と襲撃されたヒーローの情報を見ながら、俺は会長に便乗する形で側近の説明を聞いていた。

 

「ホークス…(ヴィラン)連合、死柄木達は指定(ヴィラン)団体死穢八齋會(しえはっさいかい)が開発した“個性”消失弾。それの完成品とデータの全てをこの世から消し去った。間違いないな?」

「えぇ、少なくともあの時、若頭の治崎廻と共に輸送されていた分に関しては間違いなく。治崎本人への尋問でもその事は確認済みでは?」

()()()を考慮しているから聞いているんだ!」

 

 質問に対する俺の返答が気に食わないのか、声に怒りが混じり始めた側近。会長はそんな彼を手を僅かに動かす事で黙らせ―

 

「ホークス、彼らが別ルートで“個性”消失弾のデータを入手し、生産に成功したという可能性は?」

 

 静かな声でそう尋ねてきた。

 

「無いとは言い切れませんが、今のところそう言った情報は入手してません」

「なら調べろ! 何の為に奴らの内定を続けて―」

「“個性”を奪われた。とは考えられませんか?」

「何?」

 

 己の大声を遮る俺の声に、側近は露骨に反応し、会長も僅かに眉を動かした。俺は構わずに己の意見を続けていく。

 

「被害者はヒーローですから、失った“個性”は当然使えるものばかりです」

「もし容疑者が、あのオール・フォー・ワンと同じ…『“個性”を奪う“個性”』を持っているとしたら…」

「そんな事が…」

「どちらにせよ、死柄木絡みです。両方の線で追ってみますよ」

 

 そう言って俺は部屋を後にする。これ以上、留まっていたらどんな無理難題を押し付けられるかわからない。やるべき事だけやるとしよう。

 

 

死柄木side

 

「結局積み荷は何処に行ったんでしょう?」

 

 当面のアジトとして使っている山荘。のリビングで、食塩無添加のトマトジュースを飲みながら、不意にトガがそんな事を言い出した。

 

「ヒーロー側は回収してないんですよねぇ?」

「あぁ、そいつは確定情報だ」

「結局さぁ、積み荷の中身は何だったわけ?」

 

 トガの声にそれぞれ酒を飲んでいた荼毘、コンプレスも口を開く。こいつは黙っている訳にはいかない…か。

 

「ドクター曰く、()()()()()()()()そうだ」

 

 とは言っても、今俺が話せるのはこの程度の事。

 

「なんだそりゃ…」

「回収だけさせて、あとはだんまりかぁ!?」

「ますます気になりますね」

 

 却ってスピナーやトゥワイスも声を上げ、マグネやマスタードも疑問の表情を浮かべる結果になったが…

 

「とにかく忘れろ。良いな」

「了解! ()なこった!」

 

 俺はそう言い残し、トゥワイスの声を背中に浴びながら風に当たる為、外へ出る。

 

 -死柄木弔。今、お前さん達と奴らがぶつかるのは得策ではない-

 -どちらが勝つにせよ、損害は計り知れんじゃろう。今は不干渉を貫くんじゃ…-

 

 ドクターが俺だけに告げたメッセージを思い出しながら、俺は冬山の冷気を全身に浴びていく。動くにしても、タイミングを見計らないと…な。

 

 

ナインside

 

「ぐっ、あぁ…」

 

 同志の1人であるキメラの体当たりで横転した軽トラックから投げ出され、道路に転がる男へ、俺はゆっくりと近づいていく。

 

「ようやく…見つけた」

「な、何を…」

 

 襲われる理由に見当がつかず、全身を襲う痛みで這って逃げる事も出来なくなっている男だが、俺の金色に輝く瞳には全てわかっている。

 

「安心しろ。殺しはしない。だが………“個性”を貰う」

「うぁっ…」

 

 俺は男の頭を鷲掴みにすると―

 

「あ、あぁ…」

 

 男から“個性”を奪っていく。男から私へ“個性”が移っていく度合いに応じ、上空には分厚い黒雲が広がっていく。

 

「はぁ…」

 

 そして“個性”の全てを映し終えた直後、俺は静かに左腕を天に翳し…振り下ろした。直後、幾筋もの雷が周囲へ落ち…何棟ものビルを破壊。

 再度左手を天に翳せば、再び幾筋もの雷が落ち、周囲を破壊。火の海へと変えていく。

 

「遂に手に入れたか!」

「これで、実現する!」

「私達の望む……新世界が!」

 

 辺り一面が廃墟となった中、同氏達が歓喜の声を上げる。そう、これで実現する。俺達の望む新せ―

 

「ぐぅっ!」

 

 次の瞬間、まるで異変を告げるかのように全身の細胞が異常をきたした。立っている事も覚束無くなり、その場に膝を突く。

 

「ナイン!」

 

 同志の1人スライスが駆け寄る中、俺は自らに起きた異常に混乱していた。

 

「な、何故だ…何故…」

 

 直後、脳裏に浮かぶ以上の理由。

 

「B型が…不足している」

「なっ…なんと!?」

「チッ! ここまで来て振り出しかよ! クソが!」

 

 マミーは驚きの声を上げ、キメラは怒りに震える中―

 

「いえ! まだ策はあるわ!」

 

 スライスだけは冷静な思考を続けていた。

 

 -お父さん。お仕事頑張って-

 -こっちのことは心配しなくてもいいよ-

 

 男の持っていたスマートフォンに記録されていた動画を見て、俺は悟る。

 

「そうだった…」

「“個性”は…遺伝する」

 

 

出久(グリュンフリート)side

 

 活真君から(ヴィラン)出現との話を聞いた僕と雷鳥兄ちゃん(ライコウ)は、宿直担当の尾白君達に事情を話し、先行する為『いおぎ荘』を飛び出した。

 流石に戦闘服(コスチューム)へ着替える時間はなかったけど、フルガントレットとフルレガースは装備したし、雷鳥兄ちゃん(ライコウ)もケラウノスを装備している。戦闘になっても、それほどの問題は無いだろう。

 

「少年! (ヴィラン)を最後に見たのは、どの辺りだい?」

「あ、あの城跡の中…」

「よし、出久(グリュンフリート)、突っ込むぞ!」

「うん!」

 

 雷鳥兄ちゃん(ライコウ)の声に答え、城跡へと最高速で突っ込む。するとそこには…

 

「こいつはまた何とも…」

「凄いのが…いたね」

 

 ピンクの鬣が生えた蟷螂とでも形容出来そうな異形の(ヴィラン)がいた。

 その体長は…ざっと5m。かなりの大物だ。だけど…何かがおかしい。

 

「………出久(グリュンフリート)。少年を連れて下がってろ」

 

 その違和感は雷鳥兄ちゃん(ライコウ)も感じていたのだろう。僕に活真君を任せ、ケラウノスを地面に突き刺すと―

 

「全方位…エレクトロファイヤー!」

 

 右拳を地面へ叩きつけ、四方八方に電流を走らせた。

 

「きゃぁっ!」

 

 直後、20m程先にある茂みから悲鳴と共に女の子が飛び出してきて、同時に巨大(ヴィラン)は消えてしまった。

 あれは…活真君のお姉ちゃんの、真幌ちゃん!?

 

「いったぁ…何よ、ちょっとは驚きなさいよ!」

 

 状況が分かっていないのか、不満の声を上げる真幌ちゃんだけど…

 

「思いっきり手加減したからな。見た目は派手だが、ちょっと強めの静電気程度の痛みしか与えてない」

「え…?」

「幻の(ヴィラン)なんか出していたのは、君だね?」

「あ、あぁぁ…」

 

 目の前に立っている相手が誰なのか認識した途端、大慌てで後退りしていく。

 

「ど、どうして幻だって…」

「そりゃわかるさ。俺のサーチに何も引っかからなかったし、何より足の何本かが()()()()()()()

「あ、しまった…」

「幻を映し出す場所をもう少し吟味すべきだったね。さぁ、幻の(ヴィラン)で何をしたかったのか。正直に話してもらおうか?」

「………」

 

 雷鳥兄ちゃん(ライコウ)の言葉に黙り込む真幌ちゃん。

 

「ヒーローを騙して、面白がる。あまり褒められた行為じゃないし…何より立派な()()()()なんだよね」

「え…」

「ヒーローに対する偽計業務妨害罪*1。って言ってね。まぁ、簡単に言えば…牢屋に入るか罰金払うかって事」

「………」

「あ、あの…お姉ちゃんを、し、叱らないで…」

 

 沈黙を続ける真幌ちゃんを見兼ねたのか、雷鳥兄ちゃん(ライコウ)に声をかける活真君。すると―

 

「叱るかどうかは、理由を話してくれないと決められないな」

 

 雷鳥兄ちゃん(ライコウ)は、活真君と目線を合わせて優しく声をかけた。

 

「もしも何かしらの事情があってやったんなら、その事情次第では叱らない。もちろん注意はするけどね」 

「でも、もしも面白半分でやったんなら、その時は叱る。本気で叱る。君達の行いが後々大変な事になるかも知れないからね」

「大変な…こと?」

 

 活真君の言葉に真剣な顔で頷く雷鳥兄ちゃん(ライコウ)。僕も、活真君の近くに膝を突いて話に加わる。

 

「狼少年ってお話、知ってるかな?」

「…知らない」

「大雑把に言うと、噓をついて何度も大人達を騙した少年が、本当に助けが必要な時に助けを求めても、信用されずに酷い目にあったってお話」

「そんな…」

「君達のやった事は、もしかしたらそういう結果に繋がるかもしれない。(ヴィラン)が出たって噓をついて、本当に(ヴィラン)が出た時に信用されなかったら、どれだけ大変な事になるか…わかるよな?」

「う、うん…」

 

 僕と雷鳥兄ちゃん(ライコウ)の話に頷く活真君。真幌ちゃんも声こそ出さないけど、顔を青くしている。

 

「それじゃあ、なんでこんな事をしたのか話してく―」

「オーイ! 吸阪(ライコウ)緑谷(グリュンフリート)!」

 

 その時、聞こえてきたのは切島君(烈怒頼雄斗)の声。皆来てくれたんだ。

 姿が見えてきた皆に手を振ろうと、2人から目を逸らした瞬間―

 

「活真、行くよ!」

「えっ…」

 

 真幌ちゃんが活真君の手を取って走り出した。しまった!

 

「2人とも! 待って!」

出久(グリュンフリート)、ストップだ」

 

 慌てて2人を追いかけようとした僕を止める雷鳥兄ちゃん(ライコウ)

 

「2人も自分達のやった事の意味はわかってるさ。大方皆が駆けつけるのを見て、怖くなったんだろう。気持ちはわかる」

「う、うん」

「まぁ、その気があるなら明日にでも謝りに来るだろ」

 

 しばらく待ってやろうぜ。と言って笑う雷鳥兄ちゃん(ライコウ)に僕も不器用な笑みを返す。

 とりあえずは…皆に上手く説明しないといけないな。

*1
虚偽の風説を流布し,または偽計を用いて人の業務を妨害する罪。刑法233条




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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