出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season2   作:SS_TAKERU

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お楽しみいただければ幸いです。


第66話:(ヴィラン)が来た!

真幌side

 

「な、何なのよ…昼間のグリュンフリートって奴と言い、さっきのライコウって奴と言い…」

 

 活真と一緒にサトウキビ畑の中でしゃがみ込みながら、私は負け惜しみ染みた言葉を止められずにいた。

 私の“個性”を使った偽(ヴィラン)騒ぎ。あの2人に言われて…違う。本当はやっちゃいけない事だって、内心思ってた。だけど…

 

「2人してあんな風に…あれじゃあ、思いっきり怒られた方がずっとマシよ…」

 

 頭ごなしに怒るんじゃなく、静かな口調であんな風に言い聞かせられたら…反論も出来ない。反省するしか…ないじゃない。

 

「お姉ちゃん…あの2人、ちゃんと助けに来てくれたよ」

 

 隣に座る活真の声も、地味に耳が痛い。あぁ、どうしてこうなるのよ!

 

「活真…正直に言うね」

 

 こうなったら仕方ない。正面から伝えよう。

 

「私は、活真がヒーローになるの…反対だな。危険だし」

「………」

「それに私、ヒーローよりもっと格好良い人知ってるもん!」

「誰?」

「お父さん! 私と活真の事をいつも考えて守ってくれてる」

「活真には、そんな格好良い人になってほしいな」

 

 私の言葉に黙り込む活真。気持ちは正直に伝えた…ちゃんと伝わってるよね?

 

 

ホークスside

 

「人がヒーロー公安委員会()に呼ばれている間に、随分と派手にやってくれて…」

 

 半ば廃墟と化し、警察と消防でごった返す地方都市の繁華街へ、そう呟きながら降り立った俺は、周囲の被害を確認するように周囲を見回しながら、考えを巡らせる。

 これだけの被害を出しながら、死者が出なかったのは不幸中の幸いと言って良いが…

 

「被害者の中に、また“個性”喪失者が…ただ、今回の被害者はヒーローではなく、一般人…」

「しかも、身元の分かる物が全て奪われている…」

「犯人は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「何故、隠す必要が?」

 

 答えの出ない問題を解かされているような気分に、内心ゲンナリしながらも、俺は情報を求めて動き始めるのだった。

 

 

出久(グリュンフリート)side

 

「はい! 雄英ヒーロー事務所です!」

「旅行バッグの紛失ですね! わかりました、すぐに向かいます!」

 

 芦戸さん(ピンキー)の元気な声が事務所に響き渡る。今日も始業開始と共に電話が鳴り続き、僕達はフル回転だ。

 

「商店街で、観光客の荷物が無くなって―」

「私、行く行くーっ!」

青山君(Can't stop twinkling.)。ご一緒しよー!」

「Oui!」

 

 商店街へ葉隠さん(インビジブルガール)青山君(Can't stop twinkling.)が出動し―

 

「まーた忘れ物かよ。その位自分で」

「依頼者の声、すっごく可愛かったなぁ~」

「なっ!? うっひょぉ! 困ってる人はほっとけねぇぜ!」

 

 芦戸さん(ピンキー)に上手く煽られた峰田君(グレープジュース)も飛び出して行った。ホント、ブレないなぁ…

 

「障子さんから、ビーチに応援が欲しいとの事ですわ!」

「なら、俺が行くよ!」

 

 八百万さん(クリエティ)の声に尾白君(テイルマン)が名乗りを上げ―

 

「俺も定時パトロールに」

 

 常闇君(ツクヨミ)も定時パトロールへ出発する。

 

「それじゃあ、僕も新島さん()の畑の手伝いに行ってくるね!」

 

 僕も前日に予約の入っていた畑仕事に出発だ!

 

 

「行ってきまーす!」

 

 声と共に元気良く事務所を飛び出した直後―

 

「あっ…」

 

 曲がり角の辺りでこちらの様子を伺い、慌てて顔を引っ込める男の子の姿が見えた。

 見覚えのある姿に、僕はゆっくりと曲がり角へ向かい―

 

「活真…君?」

 

 静かに声をかけてみた。するとその場に蹲っていた活真君は、慌てて立ち上がり…こちらへぎこちなく振り返る。

 

「どうかしたの?」

「あ、あの…き、昨日は…ごめんなさい」

「偉いねぇ! ちゃんと謝りに来てくれたんだ!」

 

 勇気を振り絞って謝りに来てくれた。その事が嬉しくて、僕は活真君に目線を合わせながら、つい頭を撫でてしまう。

 

「大丈夫だよ! 全然怒ってないから!」

「もう1人のヒーローにも、ごめんなさいって言ってくれる?」

「うん、言っておくよ!」

 

 笑顔でそう言うと、活真君も漸く安心したのだろう。僅かに笑みを見せてくれた。今なら…話してくれるかな。

 

「でも、活真君。昨日はどうしてあんな事をしたの? その理由だけは話してくれるかな?」

「うん……」

 

 僕の問いかけに、再び顔を曇らせる活真君。だけど…

 

「お姉ちゃん……ヒーロー嫌いなんだ」

「昨日も…『(ヴィラン)が出たって言ったら、ヒーローは怖がって助けに来ない』って言うから…だから、僕…」

 

 ゆっくりと理由を話してくれた。そんな活真君に僕は笑顔を見せ―

 

「信じてくれたんだ」

 

 自分の気持ちを伝えていく。

 

「僕らが助けに行くって、信じてくれたんだよね。だから呼びに来てくれた」

「……うん」

 

 再び笑顔を見せてくれる活真君。僕が()()に気が付いたのはその時だ。

 

「そのバッジ! 忍者ヒーロー・エッジショットのでしょ?」

「うん!」

「活真君も、ヒーロー目指してるの?」

「あ…僕の“個性”、ヒーロー向きじゃないし…それに、お姉ちゃんも危険だって…」

 

 -あの雄英ヒーロー科のクセにダメダメじゃない! 前にいたお爺ちゃんヒーローなら10分かからずに見つけてたわよ!-

 

 活真君の言葉を聞いた途端、僕の脳裏に浮かぶ真幌ちゃんの言葉。

 そうか…あの時の様子からして、ただヒーローに悪い印象を抱いているだけじゃない。とは思っていたけど…真幌ちゃんは活真君の事を心配していたんだ。

 そうであるならば、僕がやるべき事は…1つ。

 

「ねえ、活真君。活真君は、どんなヒーローになりたいの?」

 

 活真君の横に座りながら、そう問いかけると―

 

「悪い(ヴィラン)をやっつける、強いヒーロー」

 

 活真君は照れながら、そう答えてくれた。

 

「そうなんだ。僕は、困っている人を助けるヒーローになりたいんだ」

「困ってる人を助ける…?」

「うん。活真君の()()()()()()()()()()()()()()。僕の()()()()()()()()()()()()()()()。順序は違うけど、目指しているものは同じ。()()()()()()()なんだと思う」

「だから、お互いに頑張ろう!」

「…うん!」

 

 立ち上がった僕の差し伸べた手をしっかりと握る活真君。

 

「あ、でも、家族にはなるべく心配をかけない感じで」

「うん!」

 

 僕に手を振りながら走っていく活真君を見送っていると―

 

「活真ちゃん、本当にヒーローが好きなんだね」

 

 畑で採れた野菜をおすそ分けに来た鈴村さんが、僕にそう声をかけてきた。

 

「優しくしてあげてね」

「え?」

「あの子ん()ね。母親を早くに亡くして…父親は年中出稼ぎ。姉の真幌ちゃんと2人きりで暮らしてるんだよ」

「もちろん、私ら近所の者も面倒を見てるよ。けど、あの年で親がいないってのは寂しいだろうから…」

 

 心底心配そうな様子で、僕に真幌ちゃんと活真君の事情を話してくれた鈴村さん。そうか、そういう事情もあったのか…。

 

 

活真side

 

 お兄ちゃん、グリュンフリートと別れた僕は、大急ぎで高台の公園に走った。そして―

 

「お姉ちゃーん!」

 

 僕を探しているお姉ちゃんへ、大きな声を出しながら近づいていく。

 

「どこ行ってたの活真」

「お兄ちゃん、グリュンフリートのとこ」

「え…」

「昨日の事、謝ってきた」

「……どうして?」

 

 信じられない。そんな顔をしているお姉ちゃんに、僕は一度深呼吸をして―

 

「僕、お父さん好きだよ」

 

 自分の気持ちを正直に話していく。

 

「お父さんのような格好良い人になりたい…でも、でも!」

 

 そして一番肝心な事を伝えようとしたその時!

 

「きゃぁっ!」

 

 凄く大きな音が周りに響いた。

 

「な、何?」

 

 僕を抱きしめながら、周りを見回すお姉ちゃん。すると―

 

「うそ…」

 

 1日1回この島と本島を往復しているフェリーが、防波堤を壊しながら漁港に突っ込んで行くのが見えた。

 

 

ナインside

 

「キメラ、マミー。邪魔をされたくない。陽動を頼む」

 

 防波堤を破壊しながら、漁港へ突っ込んだ事で転覆したフェリー。その壁面に立った俺は、周りに控える同志達に指示を下す。

 

「やり方は?」

「好きにして良い」

「承知!」

「スライス…」

「わかってるわ」

 

 スライスの返事を聞くと同時に、俺達は行動を開始した。船から飛び降り、陽動担当のキメラとマミーがそれぞれの目的地へ向かい始めたと同時に―

 

「フッ…」

 

 “個性”を発動したスライスが、漁港に泊められていた漁船を手当たり次第に破壊。島からの脱出方法を確実に潰していく。

 

「さぁ、目標達成といこう」

 

 

出久(グリュンフリート)side

 

「畑仕事終わりました!」

 

 畑仕事を終えた僕が事務所へ戻ると―

 

「お帰り! 緑谷君!」

「お疲れ様!」

 

 入口の辺りで飯田君(インゲニウム)麗日さん(ウラビティ)が、村長さんと話の真っ最中だった。

 村長さんとも挨拶を交わし、事務所に入ると―

 

「すまない、よく聞き取れなかった。もう一度落ち着いて話してくれ」

 

 電話応対中の心操君が、受話器越しの相手にそう伝えていた。何か…あったのかな?

 

『だから! (ヴィラン)が漁港に出たの!』

「なんだって!?」

「心操君! 電話代わって!」

 

 電話の声が真幌ちゃんである事に気づいた僕は、心操君から受話器を受け取ると―

 

「もしもし! グリュンフリートだけど!」

『漁港にヴィラ―』

 

 詳細を聞き出そうとしたけど、電話は突然切れてしまった…。

 

「漁港って言ってたよね?」

「あ、あぁ…」

 

 心操君と短く言葉を交わした直後、僕は大急ぎで事務所を飛び出す。杞憂なら良いけど…とにかく漁港に!

 

 

峰田(グレープジュース)side

 

「「本当にありがとうございます!」」

「良かったね! マー君!」

「そうだね。ミーたん」

 

 オイラの目の前で見せつけてくれるのは、鞄を紛失したと電話してきた()()()()

 オイラとしたことが、まんまと騙されちまった…芦戸(ピンキー)めぇ…

 

「んっ!? なんだ?」

 

 その時聞こえたのは大きな音。まるで爆発みたいな…爆発!?

 

 

「ヒーロー! ヴィ、(ヴィラン)だ!」

 

 様子を探ろうと青山(Can't stop twinkling.)葉隠(インビジブルガール)と一緒に外に出てみると…赤い人型の何かを操る“個性”で建物を破壊している(ヴィラン)の姿。

 

「マジで(ヴィラン)じゃねえか!」

「唐突すぎるね!」

「な、何とかしなくちゃ!」

青山(Can't stop twinkling.)! ヘソビームだ!」

「ネビルレーザーだから♪」

 

 オイラの声にそう返しながら、“個性”を発動する青山(Can't stop twinkling.)。強力なレーザーで、空中に浮かんでいる赤い人型が次々撃墜されていくけど…

 

「ほほぉ…こんな辺境にヒーローが3人も!」

 

 姿を現した(ヴィラン)はそれに怯む事無く“個性”を発動。奴の両腕から放たれた赤い包帯みたいな物が、周囲の車や自販機に巻き付いたかと思うと、あっという間に赤い人型や獣型に変化していく。

 

「数が増えちゃったね♪」

「見りゃわかるよ!」

 

 とぼけた事を言う青山(Can't stop twinkling.)にツッコミながら、オイラは右腕に多目的発射器(ランチャー)を装着。

 

「出番だよ! Serviteurs(しもべ達)♪」

 

 青山(Can't stop twinkling.)も両肩の発射筒からリフレクトフローターを発射。滞空させると―

 

Pluie de lumière(光の雨)!」

 

 自身のレーザーを拡散反射。無数にいる人型や獣型を頭上から制圧していく。

 

「このやろぉ!」

 

 オイラも自前のもぎもぎや多目的発射器(ランチャー)から発射するネットで、手当たり次第に動けなくしていくけど…少しばかり多勢に無勢ってやつだぜ!

 

葉隠(インビジブルガール)! 事務所に連絡! オイラ達だけじゃ、手が足りねぇ!」

「電話繋がらない! 旗が立ってないよ!」

「なんだとぉ!?」

 

 このタイミングで電話が繋がらない!? まるで(ヴィラン)の襲来に合わせたみたいじゃ…まさか!

 

()()()()()、想像しちまった…」

「この数…僕達だけじゃ、足止めがやっとかも…」 

 

 オイラの脳裏を過る最悪の展開。戦況も決して有利とは言えねえ…何とか、事務所にこの事を伝えねえと…そうだ!

 

葉隠(インビジブルガール)! 伝令! シンミアに伝令させろ!」

「あ! そっか!」

 

 オイラの叫びにそう答えた葉隠(インビジブルガール)は、腰に提げていたディスクを手に取り―

 

「おはよう! シンミア!」

 

 ロボット猿のシンミアを起動。大急ぎで伝令の内容を録音すると、事務所へと向かわせた。

 

「最高速で向かってるから、そんなに時間はかからない筈だよ!」

「それじゃあ、救援が来るまで持ち堪えるぞ!」

 

 半ば自分へ言い聞かせるように叫ぶ。ここにはオイラ達しかいないんだ…やってやるぜ!




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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