仮面伝説の終わり   作:津上幻夢

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第10話 戦の行方

俺の選択は、本当に正しいのか…

 

 

 

一美を見捨てて世界を救おうとした事。

 

 

 

一美を生き返らせる為に財団についた事。

 

 

 

今こうして、もう1人の自分を殺そうとする事。

 

 

 

「俺は…俺は間違っていない!」

 

力を込めた左拳が龍騎サバイブに変身したもう1人の俺の右胸へ打ち付けた。

 

彼はその攻撃では揺らがない。左腕に持っている刃の生えた召喚機ドラグバイザーツヴァイを俺の右肩に振り下ろす。

 

炎を纏った重い斬撃は、初めて俺にまともなダメージを与えた。

 

[シュートベント]

 

バックルからドラゴンが炎を吐いている絵が描かれているシュートベントのカードをバイザーに装填した。

 

すると、どこからともなく現れた炎の大龍、ドラグランザーが姿を表した。

 

その龍は、口を開け、彼が銃の引き金を引くのと同時に炎の弾を吐き出した。

 

装甲をも貫通する炎に、俺の身体は燃える感覚に陥った。

 

 

気がつけば、俺の身体は地面に倒れていた。痛みで身体が動かない。

 

「決着はついたな…」

 

もう1人の俺は、そう呟いたその時、俺の体が宙に浮いた。

 

「ネガウォーズ、今は撤退だ。」

 

その声は、明日登呂だ。負けて死にそうな俺を回収しにきたのだろう。アークバルカンの姿をしていた彼は、俺を自分の方へ引き寄せると、そのまま濃霧と共に消えていった…

 

 

 

 

 

 

「…」

 

龍騎サバイブから元の姿に戻った康介は、先程までもう1人の自分が倒れていた方を見た。

 

 

「康介、一旦本部へ戻ろう。」

 

彼は半ば強引に道永に連れられてジョーカー本部へ戻った。

 

 

そこには、彼の退院を歓迎する社員達の姿があった。

 

 

 

 

 

 

その日の夜、もう1人の康介は海沿いにある彼らのアジトの屋上から水平線を眺めていた。

 

満月と上弦の中間くらいの月が水面に反射して小さな光を放っていた。

 

「山田康介、次はないからな。」

 

先程明日登呂に強く言われた事が何度も彼の頭に響いた。

 

「何やってるんだろうな…俺は。」

 

 

 

『康介、ありがとう。』

 

明日登呂の声に混じって、女の声が聞こえた。

 

それは、彼にとっての清宮一美が死ぬ間際、炎に包まれる前に放った言葉だった。どちらも仮面越しだったが、彼にとっては本当の顔を互いに見合って言った様に今も記憶に残っていた。

 

「俺は、一美に何もしてやれなかった…ありがとうなんて言われる筋合いはない。」

 

 

 

 

 

 

「なんだよ?改まって退院祝いなんて?」

 

同時刻、月明かりに照らされている社長室に康介と道永はいた。

 

「今のままでは、ただの重りにしかならないが、ウォーズの強化アイテムだ。」

 

道永は、輪っかに掛けられた5つほどの金縁のキーを手渡した。

 

「ウォーズマスターキーリングだ。今までのウォーズ達の戦闘データを解析、強化した物だ。まぁベルトがないから変身出来ないんだけどね。」

 

「そうか、ありがとう。」

 

康介は、そのキーを左ポケットにしまった。

 

「道永、この数週間迷惑かけたな。色々仕事押し付けちまったし。」

 

「気にしてない。俺の弟になる男の為ならなんでもするさ。」

 

「それ聞いた時からずっと言ってるだろ?一美と結婚するつもりはないって。」

 

「…そろそろ、自分に素直になってもいいんじゃないのか?」

 

康介は、冗談が返ってくるとばかり思っていた。そのため道永の返答に困った。

 

「本当は、一美の事が好きなんじゃないのか?だけど、戦いに近づけたくないから敢えて…」

 

「…そうだな。」

 

康介は曖昧な返事をした。そして、飲み物を買ってくるといい部屋を出た。

 

 

 

自販機のある休憩スペースに立ち寄った康介は、自販機の光を浴びている人影がある事に気がついた。

 

髪の長い女だ。最初は誰か分からなかったが、数メートル手前で顔が見えた事でそれが誰か分かった。アメリカ支部から帰還したジョーカーのエース、黒羽風香だった。

 

「久しぶりだな。俺がいない間に色々と世話になった。」

 

康介の声に、彼女は少々驚いた。

しかし、すぐ顔を元の表情に戻した。暗い表情に。

 

「いえ、当然の事をしたまでで。」

 

「そうか。だとしても礼を言わないとな。」

 

「社長」

 

普段なら康介さんと呼ぶ彼女は、突然社長と他人の様な呼び方をした。

 

「私をあまり買い被らないでください。もう、貴方の知っている私はいない、それだけは承知してください。」

 

そう言うと彼女は一礼すると部屋を後にした。

 

「…本当に風香なのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう1人の俺、今日で決着だ。」

 

 

 

ライダー達は、早朝から鳴り響くアラートに叩き起こされた。

 

場所は廃坑が近くにある小さな郊外の都市だった。

 

その都市では、朝早くから会社や学校へ向かおうとする人達がいた。その人達を見境なくホッパー達は捕らえていく。抵抗もできない彼らは、ただホッパーの動きに身を委ねるしか無かった…

 

 

廃坑でライダー達を待ち構えるもう1人の山田康介、そこへこの世界の山田康介がマシンウォーマスターと呼ばれるバイクに跨って現れた。

 

「来たな、今日こそ決着を。」

 

「そうだな、お前を止めて見せる!」

 

[仮面ノ絶望…仮面ライダーネガ・ウォーズ…]

 

[龍騎サバイブ!]

 

ネガウォーズと龍騎サバイブ、別の道を歩んできた2人の康介の刃が今、火花を散らす。

 

ホッパーの大群を刃で次々と振り払う龍騎、昇龍の様にネガウォーズへと迫る。

 

ネガウォーズは剣を振り下ろす。その剣をバイザーで受け止めた龍騎は次の攻撃へ変えていく。

 

炎を纏った右拳でネガウォーズを叩く。

 

しかし、彼は昨日の様に倒れなかった。むしろ、その炎を剣に吸収、龍騎サバイブの装甲に傷をつけた。

 

「俺はもう負けない…一美の為に!」

 

「そんな事、絶対にさせない!」

 

空中に吹き飛んだ龍騎サバイブは、バックルから龍騎のマークが描かれたカードを装填した。

 

[ファイナルベント]

 

すると、ドラグランザーが龍騎の落下地点に合わせて現れた。バランスよく着地した彼は、ドラグランザーの背中に乗った。

 

すると、ドラグランザーが変形を始めた。尾が折り畳まれ、2つの車輪が姿を表した。

 

バイク形態になった龍と共に龍騎はネガウォーズ目掛け走り抜けた。

 

ウィーリー走行し火球を吐いた周りには、焼け死ぬホッパーの姿があった。その炎はネガウォーズに着実に近づいたその時、ドラグランザーはコントロールを失い、突如塵の様に消えた。

 

その行動を読めなかった龍騎サバイブはそのまま地面に転がり込んだ。

 

そして、龍騎サバイブの変身も解け、彼の身体から龍騎サバイブウォッチが転がった。

 

「何故力が…」

 

康介がウォッチを見ると、過剰に力を出し過ぎたのか、深紅のウォッチは、灰色のブランクウォッチになっていた…

 

「肝心な所で…」

 

康介は、地面を叩いた。

 

その様子を見たネガウォーズが、最後の一撃を放とうと銃を構えた。

 

「…終わりだ。」

 

[再施錠…][ネガブレイク!]

 

赤黒い球は、康介に激突した。

 

凄まじい爆炎が、彼を包み込んだ。

 

 

「やったのか…」

 

「おめでとう康介君。」

 

後ろからアークバルカンに変身した明日登呂が声を掛けた。

 

「これで契約通りこの世界の俺を消した。早く一美に合わせてくれ。」

 

「そうだな、契約はしっかり守らないとな。」

 

しかし、明日登呂はその言葉とは裏腹に銃を構えた。

 

「なんのつもりだ!」

 

「確かに合わせると言った。だが、会う場所は地獄さ。」

 

「俺を…俺を騙したのか!」

 

「騙してなんかないさ…これで会えるんだからな…」

 

 

 

「そんな物…意味なんてないわ!」

 

その時、一美の声が確かに響いた。

 

しかし、2人が辺りを見回してもその姿が見えない。

 

その時、黒い煙の中に影が2つあるのが見えた。それが晴れ渡ると、肌に黒い煤が付いた山田康介と、大盾の戦士アイギスエレクスに変身した清宮一美の姿があった。

 

一美は変身を解いた。

 

「そうか…この世界の彼女か…」

 

「もし、私が貴方の知っている私なら、地獄で会う事は望まない。蘇ることも…」

 

「勝手な事を言うな!」

 

ネガウォーズが銃口を向けた。

 

「勝手な事なんかじゃない。だって同じ私なんだから…」

 

その言葉に彼は銃口を下げた。

 

「ネガウォーズ、あの女も殺せ。そうすれば本当に合わせてやる。」

 

アークバルカンはネガウォーズを再び仲間へ引き込もうと言う。しかし、その言葉は康介には届かない。

 

「…この計画は破棄だ。」

 

そう彼は呟くと、この世界の2人の元へ向かった。

 

「…ふざけた真似を…!」

 

アークバルカンは銃の引き金を引き、ネガウォーズの背中を撃ち抜いた。

 

その攻撃に彼は2人の手前で倒れた。

 

「おい、しっかりしろ!」

 

「…これを…俺の代わりに…」

 

薄れる意識の中もう1人の康介は、サバイブバックルを康介に渡した。

 

「まだ意識はある、一美、すぐに救護班の元へ。」

 

「分かった。」

 

一美にもう1人の自分を任せると、サバイブバックルを自らの腰に巻きつけた。

 

「貴様ら…よくも!」

 

怒りに燃えるアークバルカンを康介は静かに睨みつけた。

 

「それはこっちの台詞だ。散々もう1人の俺を弄んで、俺を殺そうとしたんだからな。」

 

康介は、ウォーズマスターキーリングから金と緑のキーを取り出した。ウォーズマスターキーだ。

 

「お前の運命は、俺の手の上だ。変身!」

 

[Master WAR-Z key!][open!][Masked leader!KAMEN RIDER WAR-Z master!!]

 

今までは灰色に青緑のアーマーが装着されていたが、今回のウォーズは違った。彼の身体は銀色に輝いた。そして、青と緑の鎧が身体の各部に取り付けられる。手足の先端には、格闘性能を格上げする桃色の装備がなされ、頭部は、アンテナが上向きに変わった。

 

新たなウォーズ、ウォーズマスターがここに誕生する。

 

 

「新しいウォーズだと…」

 

アークバルカンは、その光景を眺めていた。

 

「一瞬で終わらせる。」

 

[Re open!][WAR-Z・THE・END!]

 

銀と緑のエネルギーを纏ったキックは、一瞬にしてアークバルカンの喉元に迫る。

 

1秒程の攻撃で、大ダメージを負ったアークバルカンは地面に倒れた。

 

「仕留め損なったか…」

 

ウォーズマスターはアークバルカンに近づく。しかし、アークバルカンはすぐさま立ち上がった。

 

「覚えておけ…山田康介!!」

 

捨て台詞を吐きながらふらつく足でその場を後にした。

 

「あの様子じゃ、しばらく無理だろうな。」

 

 

 

 

 

それから数日、もう1人の山田康介は、一命を取り留めた。

 

俺が入院していた病院とたまたま一緒だったが為に医師達はまた入院して来たのかと呆れていた。別人なんだけどな。

 

あの時、一美がなぜ来ていたのか、それはどうやら道永が裏で手を引いていたらしい。ウォーズマスターで逆転を狙う為に彼女のバックルが欲しかったからだ。まぁ結局もう1人の俺からもらった事で解決したがな。

 

次の回もウォーズマスターが大活躍…と言いたい所だが、次回は少し前の話をするそうだ。残念だが、俺が入院していた時のジョーカーを知るのには丁度いいな…

 

 

 

 

 

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