また1人倒れた。ケビンという名の男だ。私が日本から来たばかりで不安な時、得意なジョークで悩みを吹き飛ばしてくれた彼…
この戦場で沢山の隊員が死んだ。みんな顔見知りだ。
その様子をじっと見ている男が居る。
その男は右手に持っている何かを使い狼の姿をした怪物に変化した。
その時だった。あの狼男だ…殺せ…敵を取れ…そんな声が聞こえた様な気がした。それは徐々に脳の中で大きくなり、いつのまにか身体を動かしていた。
これは仮面伝説の終わりを記す物語。仮面ライダーフューチャ、町田春輝と仮面ライダー蘭舞、逢坂有希はいつか来るとされている世界の終わりに向けて戦っていた…
今からの章はネガウォーズが現れ、ローディとウォーズが出撃した直後の話である。
第11話 復讐の野
「日本…久しぶりね。」
彼女は、久々の日本に懐かしさを感じていた。2年ぶりにこの地に降り立ち、迎えに来ていた
「黒羽、よく戻ってきてくれた。」
「お久しぶりです。雪菜さん。」
黒く長い髪の彼女は、礼服のように黒いスーツを着て、劔橋の前に立っていた。
彼女の名は、黒羽風香。五年前、二代目フォースに選ばれ、数々の人間に対する敵を討ち倒してきた戦闘のエキスパート。劔橋雪菜も彼女と肩を並べて戦ってきており、その実力はよく知っている。
「とりあえず、社用車で本部まで送ろう。」
「お気遣い感謝します。」
どこか他人行儀な彼女を劔橋は一瞬不思議に思ったが、それを頭から掻き消し、外に止めてあった艶のある黒色の社用車に乗り込んだ。
その頃、町田春輝と逢坂有希は互いに剣道の防具に身を包み、組み合っていた。
それぞれ竹刀をふり、敵から一本取ろうとひたすら攻撃をする。
そして、激闘の末、町田が逢坂の面を叩いた事で、決着がついた。
2人は面を取ると、ガブガブと水を飲んだ。
「やっぱり逢坂さんはすごいですね。」
「そんな事はない。剣に置いては貴方の方が上だ。」
「でも、分野が違ってもここまで立ち回れるんですから謙遜しないでください。」
2人は共に戦っていくうちに徐々に中を深めていた…というより、町田の根気強い精神に彼女が折れかけているという状態だ。
逢坂は、最近何か特別な気持ちが心の中で起き始めていた。
本当は1人が好きなのに、誰かと一緒に居たいという気持ちが湧き上がってきていた。
だが、それでも一歩踏み出す事が怖かった。あの時の様に、なって欲しくなかったから。
「どうしたんですか?」
町田は止まったままの彼女に声をかけた。
「いや、なんでもない。」
2人が本部に戻ると、丁度燕堂大誓が食堂に向かって歩いていた。時刻は既に12時を過ぎていた。
「よお2人とも。これから飯食べに行くんだけど着いてくるか?」
「是非。」
町田はそう答えた。逢坂は遠慮気味だったが、町田に無理やり引っ張られる形で一緒に向かうことになった。
「そういえば、今日アメリカから黒羽さんが帰還するらしい。だから俺はてっきり2人はその出迎えに行ったもんだと思ってたよ。」
「その話本当ですか?」
町田はやや興奮気味に聞いた。それもそうだ。彼にとって彼女は憧れの的。弱きを助け、悪を斬り裂く。その姿は彼の手本そのもの。
そんな彼女は、2年前から新たに新設されるアメリカ支部に特別指導長兼戦士としてアメリカに渡った。
そしてその彼女は今日、それもついさっき帰還したのだ。
「ああ、劔橋さんが言っていたから確実にな。」
劔橋と燕堂は劔橋がアーサーになった頃からの付き合いだ。彼は常に彼女に付き従ってきた。そんな彼女がアーサーを降りた時のポストとして魚津と上川という男がいた。しかし、魚津は4年前身内の不幸で会社を去り、上川は3年前戦場で不意を突かれ戦死してしまった。その為、彼がその次の候補として上がり、実際彼女が降りたタイミングで彼が二代目アーサーとなり剣を振っている。
彼らは食堂で昼食を受け取ると、席に座った。町田と燕堂が横並びに、町田と向かい合う様に逢坂は座っている。
「私も混ぜてもらおうか。」
3人が食べ始めようとした時、真田昌巳がトレーいっぱいに沢山の料理を載せて現れた。
「お、相変わらず大盛りだね。確かに身長伸ばさないとね。」
燕堂の冗談を真田は無視して逢坂の隣に座った。そして、向かいに座る燕堂の左足を思いっきり踏みつけた。
その思いもよらぬ反撃に彼は悶絶している。
彼女は火縄としては3代目に当たる。1代目の金剛寺朔弥は、4年前のオルトロスECとの戦いの後退職、行方が分からなくなっている。その後を継いだ2代目は赤石という男だ。しかし、1年半前訓練中の思わぬ事故で死亡してしまった。その後を継ぐ者として彼女に白羽の矢が立ったのだ。彼女は今までの適合者の中でも特に火縄と適合しており、戦果を次々と上げていった。
彼らが食事を共にしようとしたその時だった。社員達のアラートが一斉に鳴り響いた。
その同時刻、ウォーズとローディはネガウォーズと対峙、激闘の末ウォーズが敗北し意識不明となった。
その報告は、すぐさま本部に届いた。
それと同時に、敵の襲来を示すアラートが鳴り響いた。
場所は、黒羽風香が降り立った成田空港から車で数十分ほどの大きな駅で起きていた。
フューチャ達はすぐさま自らのマシンで現場へ急行した。
その知らせは、車で移動中の劔橋達の元にも届いた。
劔橋は車を止め、本部と連絡を取った。ここから近いという情報を仕入れると、黒羽の方を見て合図を送った。
黒羽もその意図を悟ると、すぐ様ベルトを取り出した。
「現場までは私が運転する。」
「…」
劔橋はそう彼女に言ったが、黒羽は答える気配がない。スイッチが入ったのかと思いその時はスルーした。
フューチャ達が到着した時、現場は既に片付いていた。
瓦礫が無造作に散らばっており、そこにはホッパーの体液が染み付く様にあった。
その様子に一瞬吐き気を及ぼしたが、奥に人影がある事に気づき、その気持ちを抑えた。
その人影は、紛れもなく黒羽が変身したフォースだった。
その右手には、ホッパーのもぎ取られた左腕があった。
「こいつでもない…」
フォースはそう口にした。
その場にいた誰もが状況を読めなかった。
「どこだ…あの男はどこだ!!」
彼らの前に再び現れた彼女は、もはや別人に等しかった…