目の前に広がる炎…息をしていない父親…そして、父親を見殺しにした男…
僕は今、その復讐を果たす為にここにいる…その為に…
これは仮面伝説の終わりを記す物語。仮面ライダーフューチャ、町田春輝と仮面ライダー蘭舞、逢坂有希はいつか来るとされている世界の終わりに向けて戦っていた…
この章では償いの戦士の過去について描く…そして始まる最後の戦い。
第16話 憧れ、そして憎しみ
「ヨーク、この世界で一番不必要なものはなんだと思う?」
暗い部屋のデスクに座っている男はヨークに聞く。
ヨークは、またいつもの話かと思い口にした。
「仮面ライダー…ですか?」
「そうさ…元々仮面ライダーが実在しない世界だった。出してしまったゴミはしっかりと片付ける。それが私の流儀…」
デスクチェアにもたれかかっていた男は、体を前に出した。
「いよいよ完成したアレの動作実験をしたい。だが、その前に宣戦布告をしなければね…。街に変異DCを放ちなさい。中身は誰でもいい。」
「Yes,sir…全ては
ヨークは頭を下げた。
「社長、来月の株主総会の資料です。」
俺1人だった社長室にやってきたのは、副社長の日比野という人物だ。小心者であるが、芯は強い。常に整えられたスーツ姿を現した彼は、俺に資料を手渡した。
「ありがとう、目を通しておく。」
俺は、その資料を机の上に置きたかった。しかし、開いたままのノートパソコンが邪魔だった。俺はそれを左に置いた。
「それは…」
日比野が小さく口を開く。どうやら中身が見られたようだ。
「ああ、四年前のことを見てたんだ。」
「前副社長の件ですか?」
「それもそうだが…」
四年前…というよりもオルトロスEC事件の後からの事だった。
ジョーカーに関わる人間が次々と惨殺、或いは行方不明となる事件が起きた。副社長だけでなく、戦闘部隊隊員、重役など様々な人物が合計5人。結果その事件は手がかりが少なく、未解決事件として処理され、6人目以降の事件も起きなかった。
「一体…誰が犯人なんですかね。」
「さぁな。嫌な事件だよ。」俺はそう言ってこの話を終わらせた。
だが、俺には目星がある程度ついていた。恐らく、ジョーカー及び仮面ライダーに対して敵意を持つ者。もしそうなら、また事件が起きてもおかしくはない。そう思うのは警戒しすぎなのか…俺はA4用紙の資料を開いたその時、雨を告げる雷の音が空に響き渡った。
「かなり酷い雨だ…」
5月の下旬、平年より早い梅雨入りをしたこの年はいつも以上に雨の降り方も異常だった。町田春輝は、雷の鳴り響く外を眺めている。気がつけば19時を回っている。そろそろ帰ろう、そう思い立ち上がった。
豪雨が打ちつける外に出た彼は、同じように会社を後にする黒い傘の人がいた。しかし、その傘は右へ左へふらついている。その様子が危険だと感じた彼はその人物の元に駆け寄った。
「大丈夫ですか?」
傘の中を覗き込むと、最初に会った時のように顔色の悪い逢坂有希だった。
「町田か…私は大丈夫だが?」彼女は、苦し紛れにそう言い放ったが、彼は折れない。
「僕には、そんな風に見えませんよ。家まで送りますよ。」
町田は彼女の傘を一緒に持ち、身体を支えるように立った。
「…勝手にしろ。」
彼女は前とは違い、拒絶せず受け入れた。
雨の中、2人は眩しい光に包まれている街を歩いていた。その様子は知らない人から見れば仲のいい恋人の様だった。
「どこか具合でも悪いんですか?」町田は聞く。
「…雨の日は、どうも気分が悪くなる…嫌なことを思い出す。」逢坂の回答を彼はそれ以上深掘りしなかった。
逢坂にとって雨は自身の心を抉るものだ。思い出したくない過去を思い出させる…
彼らは、逢坂の住むジョーカー運営のマンションに到着した。そこの3階の一番奥の部屋、そこが彼女の住む部屋だ。
彼女は、町田を中へと招き入れ、部屋の奥からタオルを渡した。
「ここが逢坂さんの住んでいる部屋…」
「綺麗な部屋じゃないが…」
招き入れられた町田は、部屋の中へと進んでいく。綺麗な部屋じゃない、と言った割にはこの部屋に置かれているもの全てがびっしりと並んでおり、赤い花柄のカーペットもしっかりと手入れされており新品のようだった。
「全然綺麗じゃないですか。」そう思ったことを彼は口にした。
「そう言ってくれると嬉しい。」彼女は軽く微笑んで見せた。
町田は、その顔に見入っていた。いつもは見せない彼女の顔、ずっと見ていたい…そう思った。
彼女は、テレビをつけた。
『ただいま、大雨の影響により山手線を中心とした各路線で運休、及び遅延が起きています。』男性ニュースキャスターの声と共に、帰宅できずにタクシー乗り場に並ぶサラリーマン達が映し出されている。
「電車、止まっているみたいですね…帰れないな…」町田は、おもむろにスマホを取り出した。
「なら泊まっていくか?」彼女はそう何気なく聞いた。
「いや…でも流石に女性の部屋に泊まるというのは…」彼は遠慮気味に言う。
「私をここまで送ってくれた礼もある。私はそういう類は気にしないし。」
「僕が気にするんです!!」と町田は叫びたかったが、それを心の中に押し込めた。
この豪雨の中、外に出るのは危険だ。それに電車は遅延運休で乗れない。それなら彼女の部屋に泊まった方がいいと判断した。
「明日休日ですし、お言葉に甘えて止めさせて貰います…」
「気がつけば、もう夜か…」
仕事を終わらせた山田康介は、外を見た。大雨は、止む気配もなく降り続いている。
「今日はここに泊まりか…」
荷物を金庫に入れ、仮眠室へと向かおうとしたその時、ドアをノックする音が聞こえた。入ってきたのは劔橋雪菜だった。
「どうした?急ぎの用か?」
「はい、先程この近くの公園に不審な動きをする人型の生物が目撃されました。」
「それは怪物か?」そう聞くと、分かりません、と返ってきた。
「なら、他の隊員にでも任せた方がいいんじゃないのか?」
「それが、他のライダーは全員帰宅しており、本来なら呼び出すのも可能ですが、この雨だと…他の隊員も少数です。」
しばらく康介は考えると、ウォーズキーを後ろのポケットから取り出した。
「分かった、俺が行こう。」その言葉を聞いた劔橋は、すぐさまオペレーター室へと向かった。康介も、社長室を後にし、バイクに乗り込むと豪雨の中に飛び込んだ。
『雨は今夜遅くにかけてより多く降ります。十分に警戒してください。』
そう女性キャスターが白く綺麗なスタジオで言っている様子を町田はテレビ越しに観ていた。
逢坂は風呂に入っており、彼は彼女が風呂から出てくるのを待っていた。
「明日は休みとはいえ、この雨だと帰れるかな…」
その時、背後の扉が開く音がした。そして、肌が地面にペタペタとあたる音も聞こえた。
「お風呂、どうぞ。」
「ありがとう。」彼はそう言って後ろを振りながら立ち上がる。
彼女は、淡い赤色の半袖とゆったりとしたズボンを着て、タオルで髪を拭いていた。
彼は、ふと違和感に気づいた。彼女の肌は白く美しい…左の二の腕を除いて。
普段は見えないそこは、黒く濁っているようだ。
「…気になるか?」
彼がじっと見つめていたことに彼女も気がついた。
「…」彼はどう答えるべきか分からなかった。
「これは、親につけられたものだ。」
親…その言葉を聞いた彼は目を見開いた。そんなことがあるのか、と言いたかった。
「……気分を悪くしたな。着替えておく。」そう言うと自室の方へ向かおうとした。
「いえ、そんなことないです…ただ…。」
「…ただ?」
「…本当にそんな親がいるんだな…と。」
町田はそう言うと逃げるように風呂場へ駆け込んだ。
「嫌われた…な。」
そう彼女は悲しげに呟いた。
私は、ずっと姉と比べながら生きてきた。
最初は「お姉ちゃんの方が上手だね」とか「お姉ちゃんは偉いね」みたいな普通な会話だった。今思えばその頃からあったのだろう。
本格的に自分が嫌われていると思ったのは小学校高学年くらいからだ。その頃から親は揃いも揃って「お姉ちゃんできるのになんでお前はできないんだ」そう毎日言われてきた。その頃から叩かれることもあった。最初は頬を叩かれるくらいだったが、それが気づけば朝食、夕食抜きや行動の監視、服で隠れて見えないところを脱がして叩かれた。
そんな中でもお姉ちゃんは私の怪我を見てくれたり、自分のご飯をこっそり残して私にくれたりした。いつも笑顔で私と話し相手になってくれて…そんなお姉ちゃんは大好きだった…だけど、同時に妬まし存在だった。
お姉ちゃんは何でもかんでもできた。私と違って。私も、お姉ちゃんみたいになんでもできて幸せな暮らしをしたいと何度も何度も願った。
だからこそ、お姉ちゃんが自殺しようとした時、私は止めようとしたのと同時にこのまま見なかったことにしようとも考えた。このままお姉ちゃんが居なくなってくれれば私が愛されるようになる…幸せになれるって。
だからこそ、私はあの時手を離した。これで解放されると…
でも、現実はそううまくはいかないものだ。私はお姉ちゃんの死後、部屋に遺書がある事に気がついた。
それを開いて読んでみる事にした。最初は親について。要約すると先に旅立ってしまってごめんなさい。これからも幸せに有希と暮らしてくださいという内容だ。その次が私にとって衝撃的だった。そこには『私はクラスでいじめにあっていました。』と言う目を疑う言葉があった。どうやら、文武両道で優秀であったが為に蔑まれ、中学に上がると同時に本格的にいじめを受けるようになった。私は当然その事を知らなかった。
それを見た親は怒りに震えた。それは勿論いじめた相手に対してだ。だが、それと同時に一生懸命に育てた姉が死に役立たずの妹が生きているんだと私にも怒りの矛先を向けていた。
この生活は更にエスカレート、遂には殆ど監禁の様な状態に陥った。
中学3年生になった頃、私は遂に家を出た。お金も、通信手段も持たず、今日の様な雨の中へと走り出した…
「ここが現場か…」
雨の中本部近くの公園に翠と青の戦士ウォーズマスターは来ていた。そこには、ゴミ箱を漁ったり、ベンチに乗ったりして探っている獣の様な怪物がいた。顔は焼け爛れた人の様に歯茎が剥き出しになり赤い筋肉が露出している様な仮面を被っていた。
「一瞬で終わらせる。」
ウォーズマスターはそう言うとマスターキーリングからクリアレッドのキーを取り出し、スタイルチェンジキーと同様の扱いでバックルに装填した。
[Back draft key!]
バックドラフトと呼ばれるキーを装填した事でウォーズハルバードには炎が蛇のように巻き付き光っていた。
その状態でウォーズはキーを回した。
[Re open!][WAR-Z・THE・GRENADE!]
周りの雨を蒸発させるほどの高熱を帯びた紅蓮の炎は一瞬にして怪物を貫き、撃破した。
「終わりか…」
その時、炎の中から黒い影が現れた。
「……?、!」一瞬、何が起きているのか分からなかった。その倒れてきたのは紛れもなく『人間』だった。
その時、彼には5年前の記憶と目の前の記憶が重なった。
炎の中の人、息をしていない冷たい身体…そして、その人物の息子が自分に向けた憎しみの目線。彼が見て見ぬふりをした事実を思い出させるように…それは現れた。
彼は記憶を一旦振り切る時その身体に近寄り、生存しているか確認する。
微かに脈と息がある事を確認すると、安堵し直ぐ様消防への連絡を無線越しに指令した。
「これは…彼の力が必要だな。」
そう言うと携帯電話を取り出し、1人の人物に電話をかけた。
「忙しい時に呼び出して悪いな。」電話越しから山田康介の声が響いた。
電話を聞いている人物は男だった。ホテルの窓越しに雨が降る街を見ていた。
「丁度近くに来ているんで、明日には行けると思います。」
そう言うと、塾屋ゴンは電話を切った。
「誰からの電話?」ベッドの上で寝転んでいる平方言葉が聞く。
「…社長からだ。」