仮面伝説の終わり   作:津上幻夢

19 / 42
第18話 覚悟のロード

「それにしたって、今回の敵ヤバいらしいな。」トルーパーの1人が武器を修理しながら隣の仲間に話しかけた。

 

「そうだよな…あの社長と風香さんの2強を返り討ちにし、ゴンさんまでも戦闘不能に陥る…俺達勝てるのかな…」

 

その声を逢坂はなんとなく聞いていた。

 

「でも、俺たちはあくまで仮面ライダーの補佐だ。早々死にはしないと思うけどな。」

 

 

 

2人が病院に運び込まれた時、社内では大混乱が起きていた。康介と黒羽の2人はその後意識を回復させるが、到底戦闘できる様子ではない。塾屋は左腕を粉砕骨折ししばらく戦線には立てない。

 

そういえば、彼女はある噂を聞いたことがあった。塾屋ゴン、ワードは既に人間ではないと言うことだそう現に仲間から5年間で全く老けた様子もなく戦闘で受けた深い切り傷も数日で完治したと言う話もある。真偽は定かではないが。

 

 

 

 

 

重役が不在の中、ジョーカーの指揮は経験豊富な劔橋が取っていた。その彼女の部屋にはいくつかの資料が置かれていた。それらは全てドゥムズディに対抗する手段として考えられているものだ。

そのいくつかの素案の中から一つの書類に目を通す。そこには、フューチャ、そして蘭舞らしき戦士の設計図があった。

 

「やはりこれしかないな。」そう彼女は呟いた。

 

その素案の殆どは新規に戦士を作るものばかりだ。しかし、また一から作るとなると時間も労力もかかる。それならば既存の戦士に強化を組み込む方式は理に適っている。そして、現時点で強化の無い2人に白羽の矢が立った。

 

その素案を会議に通し、全会一致により可決、すぐ様開発へと取り掛かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれから体調はどうだ?」

 

劔橋は仕事を早々と終わらせ黒羽が入院している病院に来ていた。

 

「はい、心のホープによる治療もあって康介さんも今週中には退院できる様です。」黒羽は痛みも感じさせない笑顔で答える。

 

「そうか…」

 

「雪菜さん…最近よく想像してしまうんです。フォースがもし私じゃなくなったらどうなるのだろうって。」彼女は俯きながら話す。

 

「…まあ、あり得なくはない話だな。」

 

「…でも、私が居なくなってもジョーカーなら大丈夫ですよね?」

 

「あまりしたくない想像だがな…私は、今のフォースはお前しか居ないと思っている。だから必ず死にそうになっても戻ってきてほしい。もし死にそうになっても、またあの時のように連れ戻してやる。」劔橋は珍しく普段は言わない強気な言葉を発した。それを聞いた黒羽は劔橋を見た。

 

「…その時はよろしくお願いしますね。」その言葉に手間のかかる後輩だと彼女は返した。

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても、あなたが入院しているところしか最近見てない気がするのだけど?」

 

その頃、康介の病室には一美が見舞いに来ていた。

 

「確かにな、俺が入院したりアイツ(もう1人の俺)が入院したり…俺はもうすぐ死ぬのか?」

 

「不吉なこと言わないの。」一美は康介の口を手のひらで塞いだ。

 

「それに…康介が死んだら…、」一美は続けて話そうとしたが、言葉を詰まらせた。

 

なんらよ(なんだよ)…?」口を塞がれたままの康介が聞く。

 

「…沢山の人に迷惑がかかるでしょ。一会社の社長なんだし。」本来言いたかった言葉を少し変え彼女は話した。

 

「それから、次大ボスが出てきたら私も参加させて貰うわよ。」

 

しょーらんいふなよ(冗談言うなよ)!」康介はそう驚きながら怒った。

 

「戦力は多い方がいいでしょ?それに、兄さんとの約束があるから…」

 

兄との約束、随分前に交わした話だ。最初はその時だけと思っていた。だが、それはこれから一緒付き纏う事だと彼女はいつの間にか考えていた。だが、それは嫌な話ではなかった。

 

その時、部屋の扉をノックする音が響いた。その音に一美はびっくりし手を離した。

 

「どうぞ。」康介はようやく開けられた口で入るよう促した。

 

入ってきたのは、逢坂有希だった。

 

「どうも…」逢坂は初対面の一美に頭を軽く下げた。

 

「彼女は?」一美は康介に聞く。

 

「彼女は逢坂有希、前にも話したけど父さん関係で俺とは…知り合いだ。そして、仮面ライダーの1人でもある。」康介の説明が終わると、一美は逢坂に手を伸ばした。

 

「私は清宮一美、よろしくね。」

 

「初めまして…」逢坂はその手を伸ばし握手をした。

 

「じゃあ、私はこれで。」一美は、病室を後にした。

 

 

「それにしても、有希1人で来るなんて珍しいな。何かあったのか?」

 

何かあったのか…そう聞かれた時、彼女は話そうか迷っていた。

 

「…『私』ってなんなんでしょうか」

 

俯いたまま彼女は話しはじめた。不安な雰囲気を漂わせた声に康介はそういう事かと耳を傾け訊き始めた。

 

「私は、許されない罪を犯した。姉に対しての嫉妬、そしてあの時姉の手を離した事…責められて当然なのに…あの人(白夜総三)も、貴方も責めない。生きている価値すら無い私に対して…」

 

話し終えた彼女の声は震えていた。普段は悲観的な事は言わない彼女が、心の奥底の重荷を初めて口にした。それを受け止めた康介は、口を開いた。

 

「俺も、似たようなものさ。大分昔の話だが、刃物で人を傷つけた事がある。勿論故意では無い…と思う。もしかしたら、本当にそうしたかったのかもしれない。そして、そんな事をした俺は君が思っている様に責められ、居場所が無くなった。」

 

ずっと不自由なく暮らしていそうに感じていた康介の発言に逢坂は疑ったが、それよりも話の先が気になり訊き続けた。

 

「俺は、自身が犯した罪がどれだけ重いか実感し、そんな事二度としたく無いと願ったが、現実はそう甘く無い…俺はそんな世の中が嫌いだ。罪を犯したとしても、反省し更正していればやり直すチャンスを与えても良いと思う。だから君を蘭舞に選んだんだ。やり直してもらいたいから。」

 

逢坂は、潤んでいる瞳を康介に向けた。

 

「俺は、有希の中にある正しい心を信じている。そしてそれが、有希にとっての『自分』じゃ無いのか?」

 

そう問いかけられた時、彼女は悩んだ。どう答えれば良いのか、自分の中にある正しい心…

 

「…私にも、あるんでしょうか…そんな正しい心が?」

 

「無ければ、蘭舞はとっくに君の手元から消えているさ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の正しい心…」

 

バイクに乗りジョーカーへ帰る途中、正しい心が頭の中を渦巻きの様に周っていた。

 

 

気がつけば、ジョーカーに到着していた。

 

ガレージにバイクを止め、降りたところで誰が後ろから来ているのを感じた。町田春輝だ。

 

「どこか出掛けていたんですか?」彼は聞く。

 

「パトロールのついでに社長の見舞いに行っていた。」実際は、康介に会う事の方が目的だったが、敢えてはぐらかした。

 

「そうですか…」彼は少し残念そうに話したが、思い出したと話題を変えた。

 

「そういえば、これを劔橋さんから預かってきました。蘭舞の強化用メット、マスターロードメットだそうです。因みに、自分も強化を貰ったんです。ブレイドロードメットと言うんです。」

 

「そうか、わざわざありがとう。迷惑かけてすまないな。」マスターロードメットを手に取りながら言った。

 

「迷惑だなんて、僕は思っていませんよ。人は誰かに迷惑をかけなきゃ生きていけないって、父さんが言ってました。だから…」

 

その言葉の後は、サイレンによってかき消された。

 

[先程、北東京スーパースタジアム付近に仮面ライダーヨーク及び特殊怪人の出現を確認しました。隊員は出動して下さい。]

 

特殊怪人(ここ最近出現する怪物を合成した魔物はそう呼ばれている)が出現したという事は、人命がより危険に晒されているという事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こうしてランペイジすれば仮面ライダー達は現れる。手加減はno problem。」ヨークはいつもの英語を混ぜた話し方で特殊怪人に言う。

 

今回の特殊怪人は改造ホッパーの様だったが、バッタの他にもクワガタ虫の要素も取り入れていた。

 

一体の怪人が、腰を抜かし倒れている1人の男に近づいた。怯えている彼に左腕のクワガタ虫の顎の様な刃を押し付けようとしていた。

 

が、それは右からバイクで突撃した蘭舞によって防がれた。

 

更にその後ろでは、既に剣を怪物に斬りつけているフューチャの姿もあった。

 

蘭舞は男を逃すと、先程体当たりした怪物に目を移した。

 

突撃された衝撃で機械部分が破損しバッタとクワガタムシのDCの様になっている。

 

両腕の刃を振り下ろす攻撃を避けると、左腕で殴り倒した。

 

そして、槍を取り出して弱点の腹部を貫いた。

 

一瞬悲鳴の様な声を上げた怪物は、霧の様に姿を消した。が、素体にされた人が出てこない事に彼女は驚いた。

 

「今回のは、改造ホッパーを素体にしたものさ、倒しても人間は出てこない。」ヨークはそう丁寧に解説した。

 

 

 

その後爆発音が鳴り響いた。そこにはコンクリートの柱を次々と破壊する怪物と柱の近くでうずくまり泣いている少女が見えた。

 

危ないと気づいた時には体が動いていた。蘭舞は少女に覆い被さり、落下してくる瓦礫から身を守った。

 

「逢坂さん!」フューチャがそう彼女の名を呼ぶと、瓦礫の中から翔を守り切った蘭舞と無傷の少女が現れた。

 

「ここは危ないからあっちに逃げてて。」少女に屈んで蘭舞はヨークのいる方向とは逆方向に指を差した。少女は頷くと、探しに来ていた母親らしき人物に引き取られた。

 

蘭舞は立ち上がると、ヨークを見た。その手にはマスターロードメットが握られている。

 

「この手は償う為のものじゃ無い…正義の腕だ。ようやく、気がつけた。」

 

「何をぶつぶつと言っているんだい?」ヨークは彼女の決意の言葉を独り言と片付けようとした。

 

「…もう二度と、死なせはしない!」ベルトからロードメットを外し、新たにマスターロードメットを装着した。

 

[無双覇槍!奮う時に嵐参上!マスター・ロード!]

 

上半身を覆っていた真紅の鎧は、新たに銀色の機械的な鎧によって覆われる。その中心部は感知センサーとしての役割を持つグリーンの装飾が施される。背中には膝程までに真紅のマントが広がっており、正に人々を導く君主の様。頭部の形状には変化がないが、複眼が胸部と同じようなグリーンとなり、視覚機能がより強化された。これが蘭舞、マスターロードだ。

 

「悪には罰を与える。」

 

蘭舞の目の前には、まだ生きている怪物が3体現れた。彼らは姿が変わろうが変わらないと言うかのような勢いで迫った。ほんの数秒で生き絶えるとも知らずに。

 

一番最初に迫る怪物には、槍を上から下へと振り下ろす勢いで瞬殺、その次に迫る怪物には今度は振り上げで空高くへと飛ばす。空へと飛ばされている間に迫る3体目には腹部へ槍を突いた。突かれた部分からは大量の黒い液体が吹き出す。徐々に力が抜けフラフラになっている怪物を横目に、蘭舞は右脚に力を溜めた。

 

そして、空から墜落してきた怪物に向かってカウンターキックで撃退。

 

「そんな戦力を持っていたのか…」ヨークはその様子を見て少々楽しんでいた。

 

「僕も、負けていられない!」蘭舞の戦う姿を見たフューチャもブレイドロードメットをベルトに装着した。

 

[無尽剣神!斬り裂いて見参!ブレイド・ロード!]

 

上半身の青い鎧には、防御性能を上げる橙と青の陣羽織のような装甲が身につけられる。左腕には多少の攻撃を防げる小盾が装備される。下半身は、新たに青と脚力を上げる特殊な構造をした橙のラインが入った装甲が身につけられ、それを覆うように前と右脚に前掛けが提げられている。蘭舞同様頭部は形状こそ変わらないが、複眼が橙に染められた。フューチャ、ブレイドロードもここに誕生する。

 

 

「生命の輝きは、僕達が守る!」

 

フューチャの目の前に一体の怪物が迫る。怪物は右腕の刃を彼に振り下ろした…筈だった。しかし、フューチャの姿はどこにもない。

 

怪物が背後を取られた事に気がついた時には、フューチャが剣で上から下へと斬り裂いていた。

真っ二つに割れた怪物の先には、そちらもまた強いと感じ心が昂っていたヨークが見えた。

 

 

「実に面白そうだ。だが、これ以上引き伸ばせないみたいだ。作戦はゲームオーバーらしい、また会おう。」

 

2人はヨークを制止しようと迫るが、それよりも早く彼はその場を消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしますか?master。」ヨークは、椅子に座るレガシーに聞く。

 

「迷うこともないさ。彼らも潰す。それだけだ。この相沢・レガシー・勇に不可能はないさ。」彼は自信満々に答えてみせた。その様子をヨークは、つまらないと感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「康介、あの建物の正体が分かった。」深夜、道永はパソコンの前で康介に電話をしていた。

 

「聞いて驚くなよ…あそこは、10年前まで財団ユートピアの研究施設だった。今は新たな人物があそこを使っている…その人物がユートピアと関連が深いかもしれん。」

 

「分かった、その人物について調べてくれ。」電話越しに康介は伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。