そうボイスメッセージが届いたのは2029年の1月。それから1年、その正体すら分からないまま時が進んだ。
世界滅亡という事実すら知らない一般市民達はのうのうと生活していた。その一般市民達が明かりを灯す夜景を眺める1人の仮面ライダーがいた。黒の触覚に、左胸の特徴的なラインを持つその姿は、哀愁を感じさせた。
「一年を切ったか…」
そう呟き、夜の明かりに消えていった。
かつて、仲間と共に運命に立ち向かった仮面の戦士がいた。
かつて、人の協力によって勝利を手にした仮面の戦士がいた。
かつて、儚く脆い平和を望み戦い抜いた仮面の戦士がいた。
彼らの人生という名の道は、途切れようとしている。
伝説が終わろうとしている。
それと時を同じく、新たな伝説が生まれようとしている。
仮面伝説が…
第1話 未来の救世主
「呼び出しってなんだろうな…」
長く続く廊下を歩いている茶髪でパステルカラーの服を着た男、町田春輝。彼は上司に呼び出され、会議室に向かっている。
彼は、このジョーカーに憧れを持って入社して2年。その男の肩に未来の救世主というものがのしかかっている事はまだ誰も知らない…
「失礼します!」
「どうぞ。」
彼がドアをノックすると、中から声が聞こえた。その声をしっかりと確認し、扉を開けた。
「来たか…町田。」
そこには、二人の人物がいた。一人は、優しい顔をした男であり、彼の上司に当たる清野心。もう一人はその身体にスーツを纏い、すらっと立っている女、戦闘部門の頂点に立つ劔橋雪菜がいた。
「どうも…」
いつもより重苦しい雰囲気に押しつぶされないよう中に入った。
「町田、今日来てもらったのは他でもない。」
劔橋が話し始めた。その目には真剣な眼差しがある。
「これを君に渡す為だ。」
そう言うと彼女は、小さいトランクケースを町田に差し出した。
「なんですか?これは?」
「開けなさい。」
劔橋は中身を言わない。町田は恐る恐るケースを開けた。
そこには、片手で持てるくらいの青色の装置と、青の仮面を切り取ったようなパーツがあった。
「これは…?」
町田は、劔橋の顔を見た。
「それはフューチャドライバーと、フューチャロードメット。それらを君に託す。これで戦ってくれ。」
「…えっ?」
劔橋は、「話は以上だ」というと、すぐさま部屋を後にした。
「清野さん!これは?」
その場に立ったままの清野に聞く。
「要するに、君は念願叶って仮面ライダーになった、というわけだ。」
「えっ…えええ!!」
夜、食堂にて…
町田は1人ドライバーを眺めて座っていた。
「僕が、仮面ライダー…」
本来なら、仮面ライダーになる為には数々の試験を受けなければならない、それを無しで上がれるなんて…
その時、誰かが食堂に入ってくる音がした。
彼は咄嗟にベルトを懐にしまった。
その影は町田を通り過ぎ、自動販売機の前に立った。長い黒髪が目立つ女…彼には見覚えがあった。
2年前、彼と同じ時期に現社長の指示で入隊した女。名前は、逢阪有希…
彼女は、自販機の前に立つと、お金を入れ水を選択した。
ガシャンと落ちてきた水を手に取り、その場を後にした。
「あっ…逢阪有希さん!」
町田は、それを止めた。
彼女はゆっくりと振り向いた。
「私に何か?」
冷たい声が彼女から聞こえた。
この時、町田は、はっとなった。話す話題を全く考えていない。
とりあえず、適当に挨拶して見ることにした。
「その…はじめましてだね。」
町田は手を差し出した。しかし…
「…私に近づかない方がいい。後、逢阪でいい。」
そう言い残し、彼女は部屋を後にした。
「逢阪さん…ん?」
彼はふと自販機のお釣りのところに光るものがある事に気づいた。
「あの男…なんで私に…」
逢阪有希は早歩きで暗い廊下を進んでいた。
彼女にはこの廊下が途方もなく続く夜道のように感じた。
あの時と同じ、逃げる事しか出来ない私を飲み込むような…
「うっ…」
その時、彼女の視界が一瞬歪んだ。いつものあれだ…あの時の事を思い出すと頭が痛くなってくる…
地面に屈み、左手で頭を抱えた。
「逢阪さん?大丈夫ですか。」
その時、彼女の後を追ってきた町田が身体を触った。
「触るな!」
彼女はその手を左腕で振り払った。その目は見開かれ、明らかに苦しんでいた。
「近づくなと言ったばかりだろ…馬鹿か。」
そう啖呵を切り、その場をふらつきながら後にした。
「あの!さっきお釣り忘れましたよね!」
町田の手には90円分の釣り銭が握られていた。先程取り忘れた彼女のものだ。
「お前にやる!」
彼女はそう言い残し、足早に去った。
町田はそう言った彼女を見ることしか出来なかった。
「報告書です。」
一人の男がデスクに座る男に書類を渡した。
「Mr.明日登呂、君に渡したいものがある。」
黒い肌の男は、デスクの引き出しから、謎の機械を取り出し、明日登呂と呼ばれた人物に渡した。
「ヨークさん!これは。」
そこにあったのは、『アークドライバー』。悪意の力を持つそのベルトが彼の目の前に現れた。その上には、見たことのないキーが載せられていた。
「君へのプレゼントだ。役員会議で、君の功績を評価してもらったよ。上司としても嬉しいね。」
「ありがとうございます…この御恩、必ず返します。」
立っていた男は、深く頭を下げた。
「それともう一つ、君に新たな案件がある。簡潔に言うと、ライダーの抹殺。」
「ライダー…誰ですか?」
「この世界の…全てのライダー、だ。」
深夜、仮眠室にて
「はあっ…」
『私に近づかない方がいい…』『近づくなと言ったばかりだろ…』この言葉が町田の思考を邪魔する。
逢阪有希とどう接すればいいのか…
「近づかないなんてできない。人は、1人では生きられないから…」
彼の脳裏にはあの時の映像が映し出された。
1人の戦士が、強敵と戦う姿。その強敵に苦戦している戦士の為に他の仲間が駆けつけ戦う姿ーフォースが土田との最終決戦。結果はフォースの勝利。この時の映像が彼にとっては、憧れそのものだった。皆の為に戦うその姿を目指しこの5年を過ごした。
「黒羽風香さん…僕はいつか貴女のような人になってみせます!」
そう決意を拳に握りしめたその時、自身のスマホからアラートが鳴り響いた。敵が現れたシグナルだ。
「早速か、よし!行くぞ!」
場所を確認すると、ベルトを持ちすぐさま部屋を出た。
町田が到着したと同時に、怪物は目の前にいる男を殺そうとしていた。その怪物は、頭に特徴的な触覚を持っている『ホッパー』と呼ばれている。集団で動くのが特徴だ。
「やめろ!」
町田は男と怪物を引き剥がす為に怪物にタックルした。
「逃げて!」
町田は男に叫ぶと、すぐさまベルトを装着した。
[未来創世フューチャドライバー!]
青帯のベルトが巻かれ、中心の銀色のパーツが光輝く。
そして、ロードメットを持った左手を勢いよく前に突き出す!
「変身!」
その一言と共にベルト上部からメットを装填!ロードメットが光り輝く。
[未来の力!今ここに!仮面ライダーフューチャ!]
愉快な歌と共に彼の身体が青く染まる。肩、胸、顔に装甲が合体、青で縁取りされた銀のバイザーから赤色の目が浮かび上がる。ベルトの中心部が金色になる。夜の闇に浮かぶ青い戦士、未来の名を持つ仮面ライダーフューチャの完成だ。
[未来剣銃ダイレクトアームズ]
ベルトから剣が精製され、それがフューチャの手に収まる。
「よし、行くぞ!」
剣を手にし、走り出した。
彼の変身に合わせて、待ってましたと言わんばかりに大量のホッパーが陰から現れた。その数、50。
雪崩のようにフューチャに襲いかかる。
その時、フューチャの目が輝く。
「計算開始。」
フューチャのバイザーにはホッパーの攻撃パターン、癖、弱点が一斉に流れ込み、状況に合わせた計算結果を導き出す。
「未来を読めた!!」
その間、僅か2秒。
先人を切って現れた2体のホッパー、フューチャは、剣を使い、右から攻めてきた方を突き刺す。更に、左から攻めてきた方には左脚の蹴りを見舞う。
ホッパーは怯む事なく続けて攻め込み。
フューチャは剣を突き刺したホッパーから引き抜き、持ち前のスピードで走りながら次々と切り裂く。フューチャが通ったところにいたホッパーは全員胴体と下半身を引き裂かれ、爆散。
フューチャの攻撃により数が半数以下となる。
「このまま一気に…」
フューチャは剣を手から離し、データ化し収納すると、必殺技を発動させようとした。
その時、背後から新たにホッパーが現れた。
それらは、フューチャを掴んだ。そして、蹴り飛ばす。
ホッパーは次から次へと現れ、フューチャに攻撃をする。
すでにフューチャの身体は、痛みに苦しんでいた。
「ここで終わりかよ…!」
そう思った。
「一人で焦るな」
フューチャが目を開けると、そこには白銀の戦士…仮面ライダーに変身した清野の声だ。
「清野さん!」
白銀の戦士は、フューチャの周りにいたホッパーを全員浄化した。
「一気に終わらせる。」
白銀の戦士は、金色のパーツが装着されているハートアーロの弦を弾いた。
[ホープ・リメイク!]
チャージ完了を示す音声と共に、弦を解き放ち、光の矢が連続発射、残りのホッパー全てを射抜き、爆散させた。
次回、第2話 償いの戦士
一月中旬投稿!