「で、あんたが俺に何を提供してくれるんだ?」
ヨークは電話越しに誰かと話していた。男の声である事は分かるが、それ以外は全く。
「君の理想の実現の為に臣下を用意しよう。それから、最新のライダーシステムを。」
「現時点で解放された人数は15名、救出された人の中には何処かに監禁されていたと証言する人もいる。恐らく100人近くの人物が監禁できる施設に彼らの根城もある筈だ。それについて調べてくれ。」
劔橋は、情報収集を専門とする課に要件を伝えたところだった。
「劔橋さん、関西支部から黒夜さんが来られました。」
携帯電話の着信に出た彼女は、そう伝えられると応接室に案内してくれた指示して自身も応接室に向かった。
「お久しぶりです、劔橋さん。」劔橋が応接室に着いた時には既に道永の姿もあった。2人は軽く挨拶すると、すぐ様本題に入った。
「黒夜さん、重要な用件とは何ですか?」劔橋はあくまで重要な用件としか聞かされていなかったようだ。
「前にドゥムズディが現れた場所の付近にあった建造物についてです。とりあえずこれを見てください。」そう言うと、道永は机いっぱいに設計図のようなものを並べた。そこには、同じような四角い枠が何個も並んでおり、何かの建物の設計図である事が容易に分かった。
「これはあの建物の内部を示した図です。その地下3階のところを見てもらいたいのです。」
道永が指を差した地下3階を彼女は見た。そこには、ただ四角い空間があるだけだった。
「…何もない、と言う事は何か実験に使われていたんですか?」そう劔橋は言った。
「確かに、そこだけ見ればそう考えると思う。だが、実験用の施設なら地下2階に2階分の高さである。そして、これだけ広大な面積があるのなら100人程度なら監禁も可能ではないでしょうか?」
道永のその考えに、劔橋の直感はここが根城であると決めつけていた。
「分かりました。ここの調査を検討してみます。」そう言って2人のミーティングは終わった。
その後ジョーカーは調査を開始。所有者は相沢勇と呼ばれる人物で、来歴を調べれば10年前まで財団ユートピアに所属していた人物である事が分かった。建物については、現在空き家状態である事が分かった。しかし、近隣住民からは時々人の悲鳴が聞こえるという噂話が流れていた。また、1、2ヶ月前には時々大型トレーラーが進入していたという目撃証言があり、隠れ家として使われている事は間違いなかった。それらの情報はほんの1週間で収集した。
「これらが、昨日までの調査で分かった事だ。」
劔橋は、会議室のプロジェクターに映し出された資料をポインターで指しながら話した。会議室には、町田をはじめとしたライダー変身者が入院中の3人を除いていた。
「そこで私達はここへ出向き掃討作戦を行う。」
そう言うと、手前のパソコンを操作し画面を変えた。そこには、達成条件について示されていた。
「第一目標が民間人の救出、第二目標がドゥムズディの撃破、そして第三目標として幹部を捕縛する。以上の3つだ。」
劔橋はそう言うと、画面を変えた。そこには簡略的に記された建物の図だった。建物を横から見たその図は地上3階地下3階の6階建である事を示していた。
「まず、内部の戦力を外へと誘き寄せる。これをアーサー、火縄、ホープ、及び各特殊部隊と氷華、紅蓮で行ってもらう。ドゥムズディは、今までの出現から見て戦闘に参加できるまで一定時間必要であると考えられるが、ヨークが現れる可能性がある。今回はあくまで時間稼ぎである為無理に戦闘しないでもらいたい。5名が囮を演じている間にフューチャ、蘭舞及び各特殊部隊とエレクス、ローディは正門から侵入、エレクス、ローディとフューチャ蘭舞が連れている特殊部隊は地下3階にいると思われる民間人の救出、フューチャと蘭舞はドゥムズディの保管場所の特定をしてもらいたい。だが、闇雲に探してくれと言うわけではない。ある程度の目星として地下2階の実験場が考えられている。特にそこを重点的に調べて欲しい。最後に、この戦いはいつも以上に危険が伴う。重傷を負った場合、作戦を放棄してすぐに撤退してくれ。これは隊員限らず君達ライダーもそうだ。それをよろしく頼む。決行は明日9時だ。当日は雨の予報が出ている為気をつけてくれ。」
劔橋は、作戦をざっと彼らに説明した。それらをライダー達は理解し、自身がどうするべきなのか、隊員にどう指示を出せば良いかを頭の中で考えていた。
「清宮さん。」
作戦会議終了後、劔橋と道永は一美に話しかけた。
「何でしょう?」
「貴女はライダーの力を持っているとはいえ、一般人です。危険が伴えば、すぐに撤退して下さい。私達も、一般人を戦闘に参加させるのは避けたいので。」
「気持ちは感謝します。でも、私は下がる気はありません。」そう一美は劔橋の言葉を飲み込まなかった。
「一美、俺としてもこれ以上危ない目に合わせたくない…」道永は妹に対してそう付け足した。
「…でも、康介はそうやって危険な目に遭ってでもこれまで戦ってきた。半身である私が本気で戦わない訳には行かないのよ。だからごめんね。」
そう言われた2人は、反論出来なかった。
少し間をおいた後、劔橋が口を開いた。
「分かりました。健闘を祈ります。」
そう言うと、劔橋はその場を後にした。
「俺は、一美が撤退しないと言っても認めないからな。お前は、俺にとって唯一の家族なのだから…それだけは分かっていて欲しい。」道永は誰もいない会議室で一美に自身の想いを告げた。
「うん、心配してくれてありがとう。兄さん。」その想いに、一美は素直に応えた。
「で、俺に渡したいものとは?」
康介の病室には、ベッドの上で寝ている康介と共にそれを見ている康介…もう1人の自分がいた。
「…これで、みんなのことを頼む。」そう言って手渡したのは、ノヴァバックルだった。
「これで…俺に戦えと。」もう1人の康介はそう聞く。
「ああ、ドゥムズディが現れた時、少しでも対応できるようにな。」
康介は、もう1人の自分の目を見た。
「やってくれるよな…」
「自分だからってこき使ってると、そのうち痛い目を見るぞ。」
そう言うと、もう1人の康介はそれを懐にしまった。
翌日、時計の針が9時を示そうとしている頃、隊員達は変身を終え配置についていた。
「いよいよだ。」フューチャは、心を引き締めていた。
「号令は私の指示のもと行う。もうすぐ開始時間となる…総員配置についているよな。」
それぞれ完了したことを応えた頃には、9時まで後10秒となっていた。
「カウントダウンを行う。」
「3。」
劔橋がカウントを始める、それぞれ武器を手にした。
「2。」
フューチャは、息を呑んだ。
「1。」
顔を上げ、正門を捉えた。
「総員、作戦開始だ。」劔橋の声と共に囮部隊であるアーサー達が一斉に動き出す。既に包囲されていることを知っているのか、敵もホッパーと改造ホッパーを解き放った。怪物らの後ろには、ヨークが変身した状態で歩いていた。
「掃討作戦とは面白いことを考える。あの人は今頃用意をしている頃だ。全勢力を
ヨークは、そう言うと続々とホッパー達を誘き寄せる。それは最早100体どころでは済まない、総勢300体以上だ。
「潜入部隊、今なら正面玄関が手薄だ。侵入しろ。」
「了解しました。行くぞ。」劔橋からの指示を受け、フューチャ達は即座に正面玄関から内部へと潜入した。
「よし、アイツらは行ったか。」アーサーは、手前のホッパーを斬りつけながらフューチャ達が潜入するのを見届けた。
「なるほど…これは囮と言うわけか…面白い。あの人がどう判断するか楽しみだ。」ヨークもその様子を見ていたが、深追いは敢えてしなかった。
潜入に成功したフューチャらは地図に従ってコンクリートの螺旋階段を降りていく。途中、数体のホッパーと出くわしたが、それらの殲滅には殆ど時間は掛からなかった。
階段を降り続けること2分で地下2階へと到着した。
「ここから部隊をよろしくお願いします。」フューチャと蘭舞はそれぞれ自身の部隊をローディ、エレクスに引き渡した。
「ああ、頼んだぞ。」ローディ達はそれらを引き受けると、更に下…地下3階を目指した。
フューチャ達はそれを見届けると、実験場の中へと入っていった。
実験場手前にある解析用の部屋には、様々な機械が置かれており、それら全てつい先日まで使われていたかのように綺麗だった。
「やはりここが根城だったのか?」蘭舞が呟く。
「とりあえず、奥へ行ってみましょう。」フューチャはそう実験場へと進んだ。
「ここが地下3階か」ローディ達は地下3階についた。
階段の途切れた先には既に扉があり、アルミ製の扉にはパスワードを打ち込む装置もあった。
「これは…パスワードが必要なのか。」ローディは呟く。
「うーん、ゲームならこういう時敵が持っていたり、何処かに落ちてたりするものなんだけどね…」エレクスはそう呟く。
ローディは、開いているわけないだろうとドアノブに手をかけた。すると、ドアノブは下へと下がった。
「開いていたのか…?」ローディは恐る恐る扉を開けた。
その先には真っ暗な部屋と、特殊なカプセルに保存されている人の姿が大量にあった。
「これは!」ローディは近づき、1番手前にあるそれを開けた。
カプセルに何か仕込みがされている訳でもなく、中に入っていた女性も無事だった。
「とりあえず、カプセルに入っている人を救出し数を数えろ。」そう隊員達に指示を出した。
「兄さん、何か事が上手く運び過ぎている気がしない?」エレクスはそう聞いた。
「確かにな。だが、この人達を救出さえできればなんでもない。」そうローディも答えた。
その頃、実験場に侵入していたフューチャ達は実験場の真ん中にドゥムズディが棒立ちの状態で保管されている様子を目撃した。
「これが…ドゥムズディ。」フューチャは、その覇気に一瞬身震いした。
「…破壊するぞ。」蘭舞はそう言うと槍を構えた。
その時、暗黒に包まれていた実験場に光が灯された。そして、地下一階のテラス席の様な場所から1人の男が見下ろしているのが分かった。レガシーだ。
「よく来た仮面ライダーの諸君。」
「お前がここの首領か!」フューチャが聞く。
「そうだな、楽園の主たる存在だ。だが、その楽園は10年前白夜総三とその息子らの手によって消された。その復讐を果たすべく、今ここに私はいる。その前に、実験に使う予定だった人々は開放したのか?」
突然の捕らえられた民間人達の話になり2人は驚いた。
「部屋の鍵も、カプセルの鍵も私が解錠しておいた。もう必要ないからな。本来ドゥムズディの素体には人かホッパーどちらかを取ろうとしていた。そして、人を集めたが思うように結果は出ず、結果ホッパーを選んだ。これより前に開放した人は皆ドゥムズディの失敗作だ。いち早く陽の光を浴びれたのだからいいだろう。」
「そんなもの、良いわけないだろ!捕らえられていた人達はその分だけ陽の光を浴びれなかった。それが少し早く開放されただけでも変わらない!お前達はここで倒させてもらう。逢坂さん、行こう!」
「ああ!」2人はそう言うとブレイドロードメットとマスターロードメットを装着し、それぞれブレイドロードとマスターロードへと変身した。
「さあ、始めようか。」レガシーの声と共にドゥムズディは動きを始めた。
「かかってこい!」
今、彼らの最後…になる筈だった戦いは始まった。