第21話 戦士は未来へと進む
その男は、濡れた服のまま洞窟を走っていた。
息を切らし、限界まで。
「ここまで来れば…仮面ライダー達も追っては来ない…筈だ!」
レガシーは、洞窟の壁にもたれ掛かり座った。
その時、一歩一歩歩いてくる足音が響き渡った。それは徐々に彼に近づいた。彼の心臓の鼓動は早まり、恐怖で手が震えた。
その足音は、彼の前に姿を見せた。ヨークだった。しかし、黒いスーツを身につけており、左手にはライターを、腰には瓶があった。
「なんだ…お前か…早速ユートピアを再建する。」
「先程、財団Xは
「なんだと…」
「財団Xは我々を見捨てたのです。」ヨークはレガシーをゴミを見るような目で見つめた。
「お前は…ヨークはそれでも私に付いてくるよな…」
「そう、都合の良い話があると思うな。私は元々この世界で生まれ育った。それを破壊しようとした人間に誰が着いていく。」ヨークはそう言い放ち彼を蹴り倒した。そして瓶の蓋を開け、レガシーに振りかけた。
「何をかけた!」レガシーはそう聞くが、臭いによってガソリンであることがすぐにわかった。そしてライターに火が溜まった時、彼の恐怖は最高潮となり、奇声のような悲鳴を上げた。
「この世界を手にかけようとしたこと、死んで詫びてもらう。まぁ火葬してやるんだからありがたく思え。」ヨークはライターを着火したままレガシーの身体に落とした。
その火は洞窟を明るく照らすように燃えていった。
最終決戦からおよそ一ヶ月。戦いが終わった後も社長の仕事は減ることはなかった。その日も防衛大臣との会談や事後処理や資料作りに追われていた。
「はぁ…まだ終わらない…」康介は、徐に時計を見た。指していた時刻は5時30分、それを見た彼はしまったと頭を抱えた。
その日は一美とデートの予定があった。戦いが終わってから婚約したい意志を伝える為に何度も誘うが、皆自身の仕事によって断らざるを得なかった。
「流石に今日も無理って言うのはな…」そう思い携帯電話を取り出した。
その時、一つの連絡先に目が止まった。そして、何かを思い付いたのかその連絡先に電話をかけた。
「もしもし、今どこにいる?」
『どこにって、家だが?』
「今すぐ一美との待ち合わせ場所に向かってくれないか?」
『何故だ?』
「今日も仕事で遅れそうなんだ。俺が行くまでの繋ぎとして…」
『断る。大体、行けないのなら正直に話したらどうだ。』
「流石に何度も断っていたら…」
『…分かった。行ってやるが、その代わり正直に話させてもらう。』
電話に出た人物…もう1人の山田康介は電話を切ると出立の準備を急いだ。
「で、本人は来ないと…」待ち合わせ場所で待っていた一美は、黒のワンピースで白に金色の装飾がされた高級そうな鞄を持って待ち合わせていた。明らかに気合を入れてきた彼女にこんな事を伝えるのは残念だったが、正直に話した。彼女は一瞬悲しそうな顔をしたが、すぐに顔を上げた。
「でも、それを同一人物がいるからってそれを使って誤魔化そうだなんて酷いわね…あんな奴のことなんか忘れてデート早く行こ!」手を握った彼女を彼は止めた。
「待った、俺でもいいのか?」一美は、その質問に逆に問いかけた。
「私にとっては、貴方もアイツも山田康介。だから同じように接したかったんだけど…嫌だった?」
「俺は…一美の思った通りに接してくれればいい。」
「なら、早く行こう!」彼女は彼の手を引いて今日行く高級レストランに足を運んだ。
彼にとっては不思議な時間だった。彼にとっての一美は高校生時代で終わっている。だからこそ今目の前に自分と同年代で大人びている彼女を見ていると夢の中にいるような感覚だった。彼女が匂わせる花の香水も何故か自然と気持ちのいいものへと変わっていった。
一時とはいえ、昔の自分を思い出せた気がした。
8時前、臨海公園に2人は足を伸ばしていた。夏の夜風が蒸し暑さを和らげ気持ちよくしていた。
「今日はどうだった?」一美が聞く。
「そうだな…簡単に話すなら、楽しかった。」康介がそう答える。
「よかった。」彼女はそう言うと笑顔になった。大人になっても笑顔だけは変わらないんだな、そう彼は心の中で感じた。
しかし、その雰囲気に水を差すように思い出したくない人物が現れた。
「これはこれはジョーカーの社長さんではありませんか…」
黒いスーツに身を包んだ黒人風の男は2人に近づいた。康介は、それが誰であるかはよく知っていた。
「ヨーク…そういえばお前は生きているんだったな…」
「ん?この姿を知っていると言うことはネガの方でしたか。」ヨークは、ベルトを装着していた。
「何故ここにいる?」
「挨拶…と言うよりも警告に来ました。まだ戦いは終わっていないと…」ヨークはそう言うと二つのガシャットを構えた。
康介の後ろにいた一美もすかさずバックルを取り出そうとした。
「一美、まだ前の怪我が治っていないだろ。ここは俺に任せてくれ。」
「でも、貴方は変身できない筈じゃ…」一美がそう返した時、康介の腰には新たなドライバーがあった。
[バトルドライバー!]
それは戦いが終わった後の話だった。
「これはお前に返しておく。」もう1人の康介はノヴァバックルを本来の持ち主である康介に返した。
「ああ…逆に俺も渡したいものがある」ノヴァバックルを受け取った彼は、新たにトランクケースを取り出した。中には、明るいレッドのドライバーと真紅のキーが入っていた。
「今渡すのもあれだが、もし元の世界に帰れた時の為に渡しておく。これはバトルドライバーとバトルキーだ。」
「何故そんなものを…」
「お前には、あの世界に帰って、運命を変えて欲しいんだ。絶望の未来しかなくても、一つの光を求めて。」
そう言って託されたものを、まさかここで使うことになるとは思わなかった。
「変身」力を込めてその言葉を発するとドライバーに真紅のキーを装填した。ドライバーの中心部が青く発光し、その体を変化させる。黒い体に血管のように赤い線が走った。真紅のヘッドパーツにはネガウォーズの時には黒かった瞳が赤く光り、ネガウォーズの時にはなかった生気が取り戻されたように見えた。
[Battle to ending!With the crimson light!]
「俺の名は…仮面ライダーバトル…いや、仮面ライダーバトルドだ!」彼は、自身の新たな姿に「戦い」の過去形を意味する言葉を名付けた。
「バトルド…洒落た名前ですね。」ヨークもガシャットを装填し変身した。
両爪を振りかぶるヨークに対してバトルドは右足蹴りで弾き飛ばす。
そして右拳に力を込めると龍が昇るような勢いで殴り倒した。
「俺は後悔も、懺悔もし続けるだろう。だが、俺の運命は俺の為に使わせてもらう!」バトルドはベルトのキーを回転させた。
[Full charge luminous!]
バトルドはジャンプすると赤く発光する左足をヨークに向かって突き出した。そのキックはヨークの鎧に激突。
弾き飛ばされたヨークは強制的に変身を解かれた。彼の周りには負荷で粉々に壊れたナイトオブサファリガシャットの基盤や外装が落ちていた。
「私はどうやら君を舐めていたようだね…また会おう…」
ヨークはそう言うとウォーズクロニクルを起動してゲームエリアの中へと去っていった。
「捕まえれなかったか…」
「おーい!大丈夫か!」その時、バトルドと一美の後ろから、本来の康介が姿を見せた。
「大遅刻ね。夜ご飯は食べたわよ。」一美が怒り気味に言う。
「ごめん…」康介は手を合わせて謝った。
「…上手くやれよ。」バトルドは空気を読むと物陰に隠れ聞き耳を立てた。
「…仕事は終わったの?」一美が聞く。
「ああ、一応は。明日は有給が取れそうだ。」康介はそう話した後、懐から何かを出した。
「その…俺は、一美とこれからも生きていきたい。そして、最期まで2人であの時のように笑顔で一緒に居たい。俺の一生で一度のわがままを聞いてくれるか?」そう言って出したのは、指輪だった。銀色に煌めくそれは、一美にとって「ようやくか、」と感じさせるものだった。
「じゃ、今日から私は社長夫人になるってことかー。」一美はそう言った。
「と言うことは…」
「、、はい、喜んで」
「…俺の代わりにお前達は幸せになってくれよ。」バトルドは2人の姿を影から見守っていた…
「俺は
「寝てるし、聞いても答えてくれないか…。」
「俺は最期の戦いに行く。待っていてくれとは言わない…ただ…」