仮面伝説の終わり   作:津上幻夢

24 / 42
第23話 言霊の後日談

俺たちは、久々に陽の光を浴びた。外国人風の男に連れられ、海の上の離れ小島のように崖側にポツンと建っているプレハブの建物に入れられた。

 

人数は10人だろうか。男女それぞれ5人ずつ。見た目の共通点は殆どない。強いて言うなら皆二十代前後の容姿であった。

 

「僕達、これからどうなってしまうのでしょうか…」

 

隣の俺より年下そうな青年が話しかけた。

 

「分からん…だが、大人しくしていれば何もしないって言っていたからな…ここで待つしかない。」

 

外国人風の男が出てから2時間くらい経ったのだろうか、未だに変化は起きない。1人の女性は、パニック寸前だった。

 

「もう…嫌……」

 

その時だった。突然、脳内に何か叩きつけられた様な感覚がした。それは俺だけではない、ここにいる全員だ。

 

そして、眼下にはプレハブの部屋ではなく、荒れ果てた大地が映し出された。白黒で具体的な事は分からないが、俺はその大地を走っていた。そして、1人の鎧を纏った人物に近づくと、腕が勝手に動き持っていた槍を振り下ろした。

 

「俺が殺した…?」

 

ふと、強烈な視線を感じ振り返ると、そこには若い男と先程とは明らかに違う鎧を身に纏った9人の戦士がいた。彼らが持っていた武器はバラバラだった。そしてそれらの武器が赤く光っている事だけは何故かわかった。剣、三叉の槍、薙刀、斧、鎚、弓、そして俺の持つ槍…残りの3人は武器でなく装備していた盾、杖、宝珠が同じように赤く輝いていた。

 

「今は時期が来るまで元の生活を堪能しろ。そして、時が来たら…お前達は解放される。20年の呪いから…」

 

その声が聞こえた直後、俺達は現実へと引き戻された。そして、それを待っていたかのように扉が開けられた。

 

「これは…皆さん、大丈夫ですか。」

 

それは俺がさっきまで見ていた何かに映っていた人物そっくりだった。

 

そして、先程の発言も合わせてこう導き出した。これは、「俺の未来」であると。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9月の初め頃、2人乗りのバイクが森の中を走っていた。

 

運転している男は、女の心の昂ぶりを心臓を通じて感じていた。

 

「もうすぐだ。」

男…塾屋ゴンは女…平方言葉とともにある場所に向かっていた。

 

道路はその先で急カーブとなっていた。そこの少し広くなっているところにバイクを止めると、そこから見える景色を感じた。森の中から見える街は、探検の先で見つけた異界の地の様に感じられた。

 

「懐かしいな…卒業式の後にも来たんだよね…ここ。」

 

そもそもここがどこであるのか。

 

ここに2人が初めて訪れたのは小学生の頃だ。夏の暑い日だった、2人は初めて2人っきりでバスに乗って出掛けていた。行き先は街から近くの山頂だ。そこでお昼ご飯を食べて帰ると言う単純な旅だったが、当時の2人にとっては大いなる冒険の様に感じていた。その時バスで見た景色を忘れられなかった2人は、卒業式の後、バイクに乗ってここへやって来たのだ。

 

「その時のことは…」ゴンは表情を曇らせた。あの日、彼は彼女を喜ばせると同時に、別れを告げる為に来ていた。今まで共に歩んできたが、もういい歳だから…と。だが、結局その後起きた出来事はむしろ2人がこれからも共に生きていく為のきっかけとなってしまった。

 

空があの日の様に赤く染まり、街が地獄と化した……その日のことは、追々話そう。だからこそ彼にとっては因縁のある場所だった。

 

「…ごめんね。本当は、風香さんと2人になれる筈だったのに、私のせいで。」

 

「…いいんだ。言葉も、俺にとって大切な人だ。だからこれからも…」

 

「あのさ、バイク旅、ここで終わりにしよ。もう、私は怖くないから。それに、もしまたあの時みたいになったとしても、ゴンなら…みんななら助けてくれるって分かったから。ゴンだけが抱える必要はないんだよ。」

 

ゴンはその言葉を聞いた時、肩から大きな荷物が降りた様な感覚がした。ようやく、終わると。

 

「そっか…よかった。」2人はそのまま街を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人は、バイクで山から降りて街に出た。その日はこの後勝治達と小さな同窓会に参加する為にカフェへと向かった。

 

カフェに着くと、勝治と万葉神楽は既に到着して待っていた。

 

「2人とも、遅かったな。」勝治は2人を席に招いた。

 

「久しぶりね、2人とも。」神楽は口を開き、高校生の時より大人びた声を出した。

 

「神楽、久しぶり。」言葉が答えた。

 

テーブル席に彼らはそれぞれ神楽と言葉、勝治とゴンで向かい合う様に座った。そして、各々が飲みたい物を頼んだ。

 

「そういえば、2人は結婚してたんだよね。どう?」ゴンは、早速2人に話題を振った。

 

「最初は、勝治が帰ってこない日もあったけど、今はなんなら家の手伝いまでしてくれるから助かるわね。」

 

「そうだな、最近は毎日神楽の顔を見れて幸せだな。」

 

2人は、今年に入って遂に契りを結んだ。今はここで仲良く暮らしている。

 

「2人はどうなのよ。特に言葉は体調は大丈夫?」神楽が聞く。

 

「うん、もう大丈夫そうだから、これからはそれぞれで暮らしていこうと思ってるんだ…ってもさっき決めたばかりだけどね。」言葉はゴンを見ながらそう言った。

 

「そっか…そのまま付き合うと思ってたんだけどな」勝治が言う。

 

「ダメだよ、ゴンにはもっと前から心に決めてた人が居るんだから…それの邪魔なんてしたら…」

 

「誰だよ、それ?」勝治は、身体を前のめりにして聞いた。

 

「えっ、勝治知らないの?」神楽は驚いた。彼女だけでなくここにいる全員が。

 

「話して…なかったっけ?」ゴンが聞く。

 

「…覚えてない…」勝治が答える。

 

「風香さんだって。」ゴンは恥ずかしそうに言った。

 

「えっ、あのフォースの?」勝治は更に驚いた。

 

 

勝治は色々と聞いて来たが、全て前に話したことがあったから後日話すとだけ言った。

 

 

そのまま他愛もない話をした後、4人は解散した。言葉はとりあえず家族に会いに行くと言って自身の家に帰った。

 

「俺は…どうしようかな。」ゴンも自身の家に帰ろうと思った。だが、そういえば今は引っ越していたことを思い出し断念した。今は父が勤めている四国に母も住んでいた。

 

「流石に香川まで今日行くのはな…」

 

「塾屋ゴンさんですよね?」

 

その時、彼は突然話しかけられた。声だけで識別すると、若い男と感じた。

 

その声に振り返った時、彼の目にはよく見覚えのある人物がいることに気がついた。

 

「なんで…君がここに?」

 

「そうか、彼とそっくりだから見間違えましたか。僕は彼とは別人ですよ。」

 

 

 

 

 

 

今思えば、言葉と別れた事は正解だった。彼女にこんな茨の道を歩んで貰いたくなかった。

 

例え、どんな罵詈雑言を浴びせられてもいい…僕は、僕の信じる正義の為に戦っているんだ。それは組織一つで変えられるものではないと…

 

そうだよな、ワード。僕はいつまでもあなたの味方であり続ける。だからあなたも僕の味方であり続けてほしい。あなたの意志は、僕の意志なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。