ネメシスの初陣から一夜明けた今日、ジョーカーでは緊急のミーティングが行われていた。
「ネメシスの姿は、かつて私達がドゥムズディ対策として考えた計画の一つ、ネオライダーシステムと酷似しています。現在、どこからデータが漏れたか検証中です。」
1人の男が、ネメシスについて簡単な説明を終え、自分の席に座った。
「ネメシスは、財団ユートピアとも繋がりがある。ドゥムズディ以上の脅威となる可能性がある。」康介が言った。
「ネメシス、そして革命組織アルカディアの目的はなんだ。」
総三時代から居座っている中年の男が声を上げた。
「それについては、調査を進めている。」
「今調査というのは遅いんじゃないのか!大体、君が社長になってから対応が全体的に甘くなっている。そんな男が社長だなんていい…」
「悪いがここはアルカディアへの緊急対策会議の場だ。俺の文句は後で聞いてやるから黙ってろ。」無関係な話を始める老人を康介は言葉でねじ伏せた。
「今は、国民に最大限の警戒を促し、防衛省をはじめとした関係組織と連携をとる。その方針で進める。」康介は強く役員に呼びかけた。
ジョーカーのミーティングルームには、修理が完了したベルトを受け取りに向かった燕堂を除くジョーカーの仮面ライダー達が会議の結果を待つ為待機していた。
町田は、窓際を眺めながら昨日の言葉を浮かべていた。
『招待しに来たんだ。春輝を、革命組織アルカディアに…』
自分の兄と名乗った男、多摩路秋夜。彼が嘘を言っているようには感じなかった。それに、もし兄であるのならば、今生きている唯一の肉親という事になる。そんな彼と敵対するなんて…
「大丈夫か?」ぼーっとしている彼に、清野心は声をかけた。
「はい…」町田は、屋上へ行こうと立ち上がったその時、社長である康介が入ってきた。
「待たせた。会議の結果、我々ジョーカーは革命組織アルカディアに対して交戦する事を先程決断した。彼らの本拠地を発見次第、壊滅させる。」
彼から発せられた言葉に、それが最善であるとほぼ全員が納得した。1人を除いて。
「待ってください、まず何が目的か話し合って決めるというのはできないんですか?」異議を唱えたのは町田だった。
「そうできればしたい。だが、危害を加える可能性がある以上、戦わざるおえない。」
「だとしても、相手が話し合いに応じれば、それで解決への糸口になるのでは?」町田は食い下がる。
「…相手は、劔橋を始めとしたジョーカーの社員、そして鮫島や魚津と言ったジョーカー関係者と繋がりがある人間も狙われている。それを止めなければ、さらに被害が出る。それを分かってくれ。」康介は、食い下がる彼に言葉を強める。
「相手のことも分からないのに壊滅させるというのがそもそもおかしい!相手が何をするか分からないのに攻撃をするのはおかしい、間違ってる!」
「ならこのまま人が死んでいくのを何もせず見捨てるというのか?ふざけるな!理想だけ述べるのも大概にしろ!」康介は、町田に強く言い聞かせた。しかし、それが逆に町田の心の炎に油を注いでしまった。
「何が死んでいくのを見捨てるだ?アトランティスの事件で母さんを奪った父親の子供…、2年前の火災で父さんも見殺しにしたお前が言える台詞じゃないだろ!ふざけるな!」町田は今まで溜め込んでいた康介への怒りを露わにした。
「なんだと…」康介は、今までにない形相で町田を睨みつけた。その様子に、他の清野を始めとした周りの人間も止めに入る。
「僕はお前達を許さない!今度は兄さんまで奪おうとするのか!いい加減にしろ!」
その時、町田の前に逢坂が立った。そして、彼の左頬を叩いた。
「いい加減にするのはどっちよ。
逢坂は、自身を救ってくれた総三を侮辱した町田に怒りを露わにした。
「…アンタも、やっぱそっちの人間かよ!」逆上した町田は、扉に向かって歩き始めた。
「もうここにはいられない。」そう言い残して。
「…すいません、少し休んできます。」逢坂も、頭を冷やす為に部屋を後にした。
「…見殺し…か。」
「社長、2年前に何があったんですか?」熱りが冷めたあたりで真田は口を開いた。
「…2年前の丁度この時期、ある町工場で火災が起きただろ?」康介は、話を始めた。
「それ、覚えてます。確か工場長だけ亡くなったって言う…まさか?」清野は、何かを察したような目で見た。
「ああ、その工場長が町田春輝の父親だ。」
その頃、関西支部の黒夜道永はパソコンを操作していた。
そして、しばらくすると画面が変わりそれを見た彼は椅子に深く腰掛けた。
「この前の情報漏洩はここからだったのか。まさかネメシスのデータもここから漏れてたのか?」
道永は、携帯を取り出し康介に掛けた。
「もしもし俺だ。今いいか?」
『ああ、構わない』疲れ気味の康介の声に道永は驚いた。
「大丈夫か?」
『いや、ちょっとな…でなんだ?例の件か?』
「そうだ。場所を特定した。場所は愛知県枇杷洲市…」
道永は細かい住所を話していった。
『…俺が住んでいたところの近くか…』
「それだけならまだ良かったよな。社員名簿にあるんだよ、一件。」道永は書き留めていたメモを見た。
『なんだと?誰だ。』
「〇〇〇〇…恐らくそいつが漏洩に加担した。言い換えれば『裏切り者』だ。」
電話越しで康介が動揺しているのを感じた。
「俺も信じられないさ。まだ、分からないことが沢山ある、また何か分かったら伝える。」そう言って電話を切ろうとした。
『今の話は、口外無用で頼む。混乱が必ず起きる。』康介は、そう念押しした。
「分かってる、じゃ、また。」
電話を切った道永は大きくため息をついた。
「アンタが犯人だなんて、正直信じられないね。」メモを見ながら彼はそう言った。まるで本人がそこにいるかのように。
[まもなく…終点、東京、東京です。]
黒羽風香は、東京に着くところだった。昨日魚津との件を解決し、今朝名古屋を出たのぞみ号で帰ってきた。昨日のジョーカー襲撃は、連絡を受けて知っていた。朝のニュースでも、見出しを飾っており、相当大きな事件だったのだろう。
新幹線に乗っていた人のほとんどは新横浜で降りていった。東京や品川で降りる人影は殆どなく、また降りる者も敵を恐れて怯えていた。
レンガ出てきている丸の内側の出口から出た彼女は、ジョーカーに向かおうとタクシー乗り場へ行こうとしたその時、正面から数十人程の人物が迫っているのが見えた。
周りにいる大柄の男達は、皆黒い軍服の様なものを着ていた。それに対して、先導している女は、今流行りのピンクメインの服装をしていた。
彼女達は、黒羽を見つけると、その目の前で立ち止まった。
「アンタが黒羽風香?噂通り可愛くないね。」突然の罵倒に、黒羽は何が何だが分からなかった。
「なんだ、お前達?」警戒心を見せた。
「これ見てくれれば分かるかな?」彼女がそう言って見せたのは、ピンク色のロードメットだった。
「私、面倒事嫌いだからさ、早く倒れてね。」そう言うと、彼女はベルトを巻いた。
「変身!」[ピンク・アックス!ロゴス!]
彼女は前に見たアルゴスと同様ピンクと金の鎧に包まれた。ロゴスと呼ばれるその戦士は、赤黒く光る斧を手にした。
後ろの男達も、ジョーカーのトルーパーに似た戦士に姿を変えた。
「変身!」黒羽も、フォースⅢフェニックスフォームへと変身した。
銃を構え、敵に火を放つ。
ロゴスは、配下に攻撃を指示、自分は遠くでその様子を見る事にした。
フォースは、遠方から迫る敵を確実に弾丸で倒す。1発も外さない正確な狙撃は、一気に敵の数を減らす事になる。
しかし、それを持ってしても優勢にはならない。敵の数が多く、そして強い。ホッパーであればまだ倒せるが、自分とほぼ同レベルが複数体いるのは勝つ方が難しい。
その時だった。
「風香さん!」そう声をかけたのは、アーサーのベルトを受け取ったばかりの燕堂だった。
「俺も行きます。」ベルトを巻き、剣を振り上げた。
「変身!」アーサー・ザ・ナイトに変身した燕堂は、封剣エクスカリバーを構え走り出した。
そして、フォースに群がる敵を薙ぎ倒していく。
「だいぶ動けるようになったな。」フォースがあまりの動きに驚く。前までは歩く事で精一杯な鎧を身につけて走る姿は、まさに動く要塞だ。
「俺、劔橋さんに認められる戦士になりたい。だからこそ、強さの限界を超えたい。そうでもしないと、劔橋さんを超えられないから。」
燕堂は、フォースの隣に立った。
「そうか…なら私も、立ち止まってるわけには行かないな。『3分』で終わらせるぞ。」フォースはフェニックスフォームからユニコーンフォームに変身、大剣エクスカリバーを構えた。
敵は、フォース達に剣を振り下ろす。しかし、強固な鎧を手にした2人に敵うはずがなかった。
2人が剣を振り下ろすと、敵は次々倒れていく。
「何あれ、みんな倒されてるじゃん。」ロゴスは、渋々武器を取ると、2人に向かって走り出した。
「これで決める!」
[EXTREME crush!][Impact strike!]
フォースとアーサーの斬撃が、ロゴスの目の前にいた最後の配下を撃破した。
「次はお前の番だ。」アーサーは言う。
「もう、みんな死んじゃ意味ないじゃん。今日は解散!」ロゴスは、その場を後にした。
アルカディアの拠点に、何人かの人物がいた。その中央には、多摩路秋夜の姿があった。
「昨日は惜しかったな、青樹。」秋夜がそう彼に言った。エリスに変身した男、
「…申し訳ございません。」
「青樹、気にしなくていい。フォースなら誰だって勝てない…今はな。だが、もうすぐそれも終わりだ。」秋夜の言葉をその場にいた他の人物も聞いていた。アルゴス…
他にも、男が3人、女が2人…計11人がその場にいた。
「ネメシス様、町田春輝です。」そう言って入ってきたのはヨークだった。その後ろには、町田春輝の姿もあった。
「おお、と言うことは、仲間になってくれるのか?」
「…貴方と詳しく話がしたい。」
町田は落ち着いた口調で話す。
「分かった。皆、外してくれ。」そう言うと、他の人物達は皆部屋を後にした。
「…まず、貴方は本当に自分の兄なの?」
「そうだ。俺は、春輝とは双子の兄だ。しかし、アトランティスの件で、俺は家族と離れ離れになった。」はっきりと質問に答えた。
「父さんはこのこと知ってたの?」
「いや、あの人が連れ出したのはお前だけだ。俺が生きてるなんて、思ってもなかった…と思う。」先程とは違い最後を濁した。
「…アルカディアは、何が目的でこんな事を?」町田は更に聞く。
「我々の目的、それはこの腐敗しきった世界を正す事。アトランティスの事件で、政府や、責任者であった白夜総三は何も責任を負わなかった。それだけじゃない、今の政治は、日本の為にもならない、ゴミ同然だ。そのゴミを捨てるのが我々アルカディアだ。」強く秋夜は答えた。
「まさに、革命を起こし理想郷を創る、という事なんだね。」町田は彼を見てそう言った。
「…いい事を言ってくれるじゃないか。」
ヨークは、多摩路のいる部屋の前に見張りとして立っていた。その時、1人の男がやってきた。
「ん?お前か。悪いが、我が主人は接客中だ。面会なら後にしてくれ。」
「…そうですか。別に作戦の確認をしたかっただけです。また今度にします。」
男は、その場を後にした。
「…我が主人は、あの男の事を本気で信頼しているのだろうか?まだ裏切りが確定していない…目を離すわけには行かない。」
ヨークは、自身の考えを呟いた。
逢坂有希は、自宅の一室で悩んでいた。
どうすればいいのか。確かに、町田の言う話し合いも捨ててはならない判断だと思う。だけど、自分にとって家族のような人達を侮辱された。それを許したいだなんて思いたくない…
しばらく考えた結果、彼女は答えを出した。
ネメシスが現れて2週間以上が経過した。12月の三週目の終わりであるその日は、雨が朝から降っていた。康介と一美は、アルカディアの登場以降静かな朝を過ごす事が多くなっていた。
「…アルカディアは、それ以降どうなの?」普段はあまり仕事の話をしない一美が聞いた。
「拠点は特定できない。関連人物の発見も出来ず、オマケに町田は行方不明に。正直手詰まりさ。」
康介は、ため息をついた。
「…そっか。何かあったら、私もバックル片手に手伝うから。」一美は自信満々に言う。
「…正直、今回ばかりは無理だな。これはジョーカーの問題だ。いくら変身できても、加えることはできない。」険しい顔で彼は返した。
「そう言わないでさ…」一美は立ち上がり、康介の後ろに立った。そして、彼の食べ終えた食器を取ろうと手を伸ばした。
「私も、康介ともう一度一緒に戦いたいよ…」一美は、彼の右肩に顎を乗せた。
甘えたいのかと康介は感じた。最近、仕事ばかりに目を向けて、構ってやれなかったな…そう思い、ある事を提案した。
「この戦いが終わったら、どこか遠くへ行かないか?2人だけで…」
しかし、一美は返事をしない。
康介は、彼女の名前を言おうとしたその時、彼女は人形のように床に倒れた。
力の抜けたその倒れ方は、ただ事ではないと即座に感じた康介は、椅子から飛び起き、倒れた彼女のそばに座った。
「おい、一美!」
彼女が再び目を開くことはなかった…
革命組織アルカディアの元に行った町田春輝。彼は、このままジョーカーを敵として戦うのか。そして、それを良しとしない
次回 第29話 裏切り者の言葉