「次は僕の番ですね。」
町田はアルカディアについて口を開いた。
「アルカディアは、今の世の中の秩序を全て覆そうとしています。日本の政治、そしてジョーカーを。名前の通り革命を起こし、理想郷にする。それは確実です。でも、その方法は、余りに残酷で、受け入れ難いことです。」
彼の脳裏には、1週間前の戦いを思い浮かべていた。
康介は、彼の報告をしっかりと聞いていた。
「彼らは、その反抗意志の意味を兼ねてジョーカーのライダーのデータを盗み、ネメシスを始めとしたライダーを作りました。配下の戦士達は、ウォーズとワードを除くライダーに対応しています。」
「…ウォーズは、ヨークがそれに該当し、ワードはそもそも人工物ではないから作れなかった。という事か?」康介は聞く。
「そこまでは分かりませんでした。とにかく、アルカディアはこのまま放っておけば、危険です。なので…」
町田は言葉を詰まらせた。壊滅させる、それは兄を殺すと言っているようなものだ。
「彼らの暴挙を潰せばいいんだな、そして、武器を捨てた上で話し合う、ということか?」
意外な返しに、町田は驚いた。あれだけ壊滅を支持していた男からそのような言葉を聞くなんて…
「僕は、そうしたいです。」
「分かった。」
その時、扉が勢いよく開けられた。入ってきたのは逢坂有希だった。彼女は、町田がいることに驚いたが、社長にすぐ緊急の報告をした。
「先程、関西支部が襲撃されたと連絡がありました。」
「なんだと!道永は!」康介は、旧友が生きているか聞く。
「道永さん含め施設内にいた殆どの人物は皆証拠隠滅の建物火災で…」
康介は、がくりと肩を落とした。
「そうか…」
「そして、アルカディアは犯行声明を出しました。そして、現在大軍を引き連れジョーカーに向かっているとの事です。」
「何!今どこだ!」康介はあまりの事実に椅子から飛び上がった。
「現在JR田町駅付近を約200人で侵攻中、このままでは私達のいる霞ヶ関には50分後には到達します。」
「分かった。すぐに迎撃する。総員戦闘準備するよう報告しろ。」
3人が部屋を出ようとしたその時、康介の電話が鳴った。彼がそれを取ると、初老の男の声が聞こえた。それが今一美が入院している病院の主治医だとすぐに分かった。
「先程、一美さんが息を引きとりました…」
彼から告げられた残酷な事実は、漏れ出た声で町田と逢坂も聞いていた。
「分かりました…今は向かえないので、そちらで後の事はよろしくお願いします。」その残酷さゆえに冷静さを保っている康介はそう言った。
「…分かりました。本当にそれでよろしいのですね。」主治医は念押しした。
「はい、よろしくお願いします。」
「…どうなっても、知りませんよ。」主治医はそう言うと電話を切った。
康介もまた、携帯を持っていた腕を下に下ろした。
「「社長…」」2人は彼を慰めようとした。
「…こうなる事は分かってたんだ。今はネメシス対策の方が先だ。」そう言うと康介は部屋を後にした。
ミーティングルームにはいつもの4人のほか、片名勝治と国山刹那の姿もあった。しかし、塾屋ゴンの姿がない事を疑問に思った。
「ゴンはどうした?」
「それが、連絡がつかなくて…」勝治がそう言う。
「わかった。」
康介は、作戦について話を始めた。
「まず、霞ヶ関に入る前にアルカディアを抑える。火縄とダイヤ部隊による防衛線を張る。そして、アーサー、蘭舞とそれら部隊、そしてウォーズが支援し抑える。
残ったフューチャ、フォース、ホープ、紅蓮、氷華は本部を防衛。アルカディアが防衛線を突破したら即座に用意しろ。皆、この戦いで死ぬかもしれない。だが、俺達がやられれば日本が滅亡する。それを頭の片隅に入れておいてくれ。」
康介の言葉を一言一句逃さず聞いた彼らはすぐに戦闘準備にかかる。
ダイヤ部隊は、本部から少し離れた場所に防衛線を貼り始める。わずが数分でそれを仕上げ、各隊員スナイパーライフルを構える。
それを真田が変身する火縄は見ていた。
「昌巳、準備はどうだ?」燕堂が変身しているアーサーが近くに寄ってきた。
「万全だ。もうすぐアルカディアが現れる。援護を頼む。」
「社長、この戦い、勝てる見込みはあるんですか?」逢坂が変身する蘭舞マスターロードが聞く。
「…分からない、だが勝たなきゃいけないんだ。俺達は。」康介が変身するウォーズは目前に迫るアルカディアを見て言った。
「火縄、もうすぐ近づく。掃射の用意を。タイミングは任せる。」
『了解。』そしてしばらくしたのち、ダイヤ部隊員の銃から次々と弾丸が放たれる。
その攻撃で、アルカディア兵も次々と倒れていく。しかし、敵は進軍を止める気配はない。
「何かおかしい…」そう感じた直後だった。
「敵襲!!」そう声を上げたのはダイヤ部隊員の1人だった。その方向を向くとロゴスとアーテー、そして数十人の敵兵がすぐ側にいた。
「作戦セイコー!」
「俺としては、卑怯な手は取りたくなかったがな。」
「なっ…やられた。総員、退避!」火縄はダイヤ部隊を退避させようとする、しかし、時すでに遅し、隊員の中でも死者が出始めた。
「昌巳、こうなったらやるぞ!」アーサーがそう言うとアーテーに向かって走り出した。
「…こちら火縄、横からの奇襲で掃射不可、迎撃します。」
『分かった。』火縄は無線を入れると銃を取り出しロゴスに弾丸を放った。
「…横から奇襲か…通りで数が少ない訳だ。」
「数が少ない?」ウォーズの突拍子な発言に蘭舞は驚いた。
「将の数が少ない、隊列にいるのはネメシス除き5人。後6人どこかにいる。」
「まさか本部に?」
「いや、この近辺にいる。俺は本陣と戦う。その隙に探し出してくれ。」ウォーズはノヴァバックルを構えた。
「分かりました。」蘭舞は部隊を引き連れ進軍路の方へ向かった。
ウォーズ・ノヴァに変身した彼は、アルカディアの本陣に姿を見せた。
「ここは、俺達が必ず食い止める。」
ネメシスのそばにいるのは、ヨーク、エリス、レーテー、ディスノミア、アルゴス。そして先程火縄の元に現れたのがロゴスとアーテー。残るはホルコスと未確認の戦士5名。
「あの男、一人でどうにかなると考えているのだろうか。」
ネメシスは、一人戦線に出るウォーズに対してそう言った。
「なら、それに答えてやらないとな。」そう言うと兵をウォーズに向けた。
兵は一斉にウォーズへと駆け寄った。しかし、それらは一瞬にして弾かれた。彼が持つ大剣ノヴァ・セイバーによって。
「…ネメシス、かかってこい。」
「…ウォーズ、決着をつけよう。」ネメシスは、両刃剣を構えた。
そして、互いに攻撃を始めた。ネメシスは、大剣で動きの鈍っているウォーズの懐へ剣を潜り込ませる。ウォーズはそれを膝蹴りで弾いた。
そして、大剣をネメシスに向かって振り下ろす。しかし、その攻撃は寸前で避けられ、剣は地面に突き刺さった。攻撃出来まいとネメシスは剣を振り下ろす。しかし、ウォーズはこれを通常形態時に使っていたサバイブソードガンで塞いだ。
一方、蘭舞は、別で動いていたホルコスと、未確認の将と戦闘していた。
「ゲラス、援護を!」
「はいよ。」ゲラスと呼ばれた将は、空中でホバリングしているホバーバイクに乗っていた。そして、そこから弓で迎撃してくる。その矢を避ける事に必死になれば、今度はホルコスの薙刀が迫る。
追い詰められた蘭舞は、道路の真ん中に出る。そこでは既にウォーズとネメシスが交戦しており、その後ろでは、火縄とアーサーが交戦していた。
更に、残りの将も現れ、ジョーカーは完全に不利な状況に陥っていた。
四人のライダーは互いに背中合わせになっている程に。兵はほとんど死んでいる。
「ぐっ、球が切れた。」火縄はそう言った。そして、銃を収納し拳を握りしめた。
「大丈夫かよ。」アーサーが聞く。
「とにかく、この状況を打開しないとっ!」その時、ウォーズが突然苦しみ始めた。
「社長?社長!」まさかの事態に3人は混乱する。
「どうやら、そっちは終わりみたいだな。」ネメシスは剣をウォーズに振り下ろした。その斬撃エネルギーが迫る。
それは、ウォーズに激突する直前、蘭舞が盾となる事で届く事はない。
彼女の体から火花が散り、ウォーズの隣に倒れた。
彼女のマスクは右目側がかけ、血が流れている右目が見えていた。
「…終わりにしよう。」
そう言うと、ネメシスは天に向かって剣を向けた。それに共鳴するようにヨークを除く他の将も赤黒い武器を掲げた。
[ネメシスエンディング!]
巨大な柱となった剣を、四人の戦士に振り下ろした。
「…通信が途切れた?」それらの行く末を無線で聞いていたフォースはそう呟いた。彼女達の後ろでは、巨大な炎の柱が数十秒ほど上がっていた。
ジョーカー本部は、しばらくの間何もないかのように静かになった。
なす術なく全滅した…その事実は受け入れ難いものだった。
「…これより、クローバー部隊、ハート部隊、フューチャ部隊、その他隊員でアルカディアを迎撃する。総員配置につけ。」
フォースも立ち上がり、戦闘配置場所に向かおうとした。
「本当に勝てるんですか?」そう声をかけたのはフューチャブレイドロードだった。
「…強敵だろう。だが、負けで終わりにしたくはない。」そう言うとフォースⅢ’に変身、その場を後にした。
ネメシス達は、ジョーカーの目前に迫っていた。
「戦闘開始!」フォースの声と共に戦士達は雄叫びと共に一斉にアルカディア兵の大群に迫る。
「ここでジョーカーの戦士を倒し、世界を変える。」ネメシスは、攻撃を指示した。
アルカディア兵も次々と攻め寄せる。それぞれの波が、渦潮のように混ざり合い、どちらか強い方が弱い方を倒す。
その波はアルカディアの方がやはり強かった。
ホープはレーテー、アーテー、そして炎を操る将を相手にしていた。弓から矢を放ちレーテーと炎の将に攻撃する。そして、近距離に迫るアーテーにはブレードで迎撃する。戦闘に余り向いていないホープの力を全て出し敵に対応する。
紅蓮はロゴスとホルコスを相手にしていた。ロゴスは自分と似たような斧を振り下ろす。それを回避して攻撃に転じようとする。しかし、そこはホルコスの薙刀が迫り、結果回避する事になる。
氷華はアルゴスと、巨大なハンマーを操る将を相手していた。ハンマーの地を砕く攻撃を避け、氷の氷柱を放つ。その氷柱は全てアルゴスが薙ぎ払う。
フューチャはエリスとディスノミアに苦戦していた。どちらも長物武器を用いるため、剣では到底不利な状況に陥っていた。咄嗟に銃に変えるなどしているが、それでも効果は余り見られなかった。
フォースはヨークとゲラスを相手に戦っていた。ヨークがフォースに近づき爪を振り下ろす。その後にゲラスは援護で矢を放つ。その連携攻撃にフォースは手も足も出なかった。
その様子をネメシスは見つめていた。
「そろそろだろうか?」ネメシスはふと空を見上げた。すると、雲をかき分け、何かがこちらに飛んでくるのが見えた。それは、仮面ライダー達の近くに降り立った。緑の翼を生やした戦士、ワード跳速の形だ。ワードは核を変え矛盾の形に変身しこちらを見た。
「ゴン、助けに来てくれたの!」フォースは、救援と思い喜んだ。しかし、次の瞬間彼の矛はフォースに振り下ろされた。
「…なんで、今はそんな事やってる暇は…」
「冗談じゃない。これが本当だ。」ワードは、そう言うとネメシスの横に立った。
「大阪からひとっ飛びお疲れ様。彼がアルカディア最後の将、ワードだ。」
フューチャは、そんな話聞いていないと言わんばかりに驚いた。
「なんで…なんでゴン?」フォースが聞く。
「僕には、僕の信念がある。その為だ。」ワードは、ネメシスの前に立った。そして、光芒の形に変身した。
「どうだい、仲間に裏切られた気分は。それも彼は本心だ。君達ジョーカーに見切りをつけこっちに来たんだ。」ネメシスはフォース達を煽るように言った。
「ぐっ…」フォースは拳を強く握りしめた。
光芒の形に変身したワードは、フォースを蹴る。
そして、他のライダー達にも次々と攻撃を仕掛ける。
「ゴン、どうしちまったんだよ!」紅蓮はワードに呼びかけた。
「…俺はどうもしていない。」ワードは、かつての仲間にも拳を振り下ろした。
仲間の裏切りも相まって、ジョーカーは完全に不利な状況に陥っていた。
「どうするんですか?」フューチャがフォースに聞く。
フォースの頭の中には、二つ選択肢があった。このまま戦うか、撤退するか。撤退すれば、立て直して再戦する事もできる、だが、それは賭けのような物だ。
「…さあ、君たちも、さっきの奴らのように始末してやろう。」
「…撤退する。私が必殺技をぶつける。その隙に全員撤退しろ。本部ではなく、西に。」フォースは苦渋の決断を下した。
フューチャを始めとした戦士は、意外な指示に迷った。しかし、それが最善と判断し、頷いた。
[ネメシスエンディング!]
光の柱はフォース達に振り下ろされる。
フォースは、ライダーバスターのソードモードで必殺技を発動させた。その衝撃で周りは眩い光に包まれた。その隙にライダー達は一斉に西へ撤退した。
フォースも粉々になった武器を捨てその場を去った。
光が収まった頃、ネメシス達は、彼らが逃げた事はすぐに分かった。
「追いますか?」ホルコスが聞く。
「いや、このまま侵攻する。国会を始めとする日本の重要機関を占拠、そして勝利を宣言する。」
2030年12月31日、革命組織アルカディアは官邸を始めとした日本の重要機関を占拠、そして勝利を宣言した。これはジョーカーが負け、日本が陥落したことを意味する。
海外の国々はこれを受けてアルカディアと交戦の意思を次々と表明。しかし、その国々は次々とアルカディアの反逆を受け、殆どの大国が壊滅した。
アルカディアはこうして5年もの間国境を問わず領地を広げ世界へ広がった。誰もが、世界の滅亡を感じた。そして、ジョーカーの人間は12月31日に終わると予言したのはネメシスであったとようやく気づいた。
このまま、アルカディアが世界の実権を握ると誰もが諦め、落胆した。