仮面伝説の終わり   作:津上幻夢

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第32話 未来の旅立ち

ライダー3人が村を離れてから数時間後、太陽が南の頂上に来た頃、集落の長は黒羽風香を呼んで話をしていた。

 

彼の後ろには、10人程度の若い男女の姿があった。

 

「彼らをあなた達の部下として雇っていただけないでしょうか?」

 

「何故ですか?」黒羽は突然のことに聞き返した。

 

「今のあなた達では人手不足だと聞いています。それならば、少しでも手助けになれればと思いまして…」その声に後ろの若者達も頷いた。

 

黒羽は少し考えると口を開いた。

 

「分かりました。彼らは私達が引き取ります。」彼女のその声に若者達が喜びを見せた。

 

「風香さん、少しいいですか?」そこへ町田春輝がやってきた。

 

「どうした?」

 

「先程、偵察部隊から報告がありました。僕達がここにいることに気がついた帝国軍が殲滅に乗り出すそうです。それも明日朝。」町田は、偵察部隊の報告をしっかりと話した。

 

「なんだと、その数は?」

 

「100から150、その中にはロゴスもいるそうです。」

 

ロゴス、東京から帰ってきたばかりの彼女を襲った相手だ。撤退まで追い込んだ相手だが、その時とは状況が違う。

 

「…分かった。今すぐ心達を集めて。村長、村人の避難を。」町田と長はそれぞれ頷くと行動に移した。

 

 

 

 

 

 

「なるほど、だから俺達を呼んだって訳か…」片名勝治は、何度も行き来していたが、疲れた様子を見せなかった。

 

5人のライダーに50も満たない兵力で100人以上の軍勢を抑えるのは殆ど無理に近かった。

 

「…この数じゃ、勝てるかどうか分からないな。」清野心は不安そうに呟いた。それに黒羽はこう言った。

 

「でも、今度はもう逃げるわけにはいかないんだ。」今度は、それは5年前の戦いのことだろう。それが敵に実権を握らせると言う最悪の事態を招いてしまった。

彼女は、その責任を感じているのだろう。

 

「無理をしてでもここだけは絶対に守る。」そう固く決意された瞳を見た彼らも同じだった。

 

「だが、いくらなんでも今回の戦いは困難を極めるぞ。どうする?」国山刹那が聞く。

 

「そうだな…例えば、味方全員で相手を囲むとかどうですか?」町田はそう皆に聞いた。

 

「それをやるにしても数が少なすぎる。無理だ。」黒羽はそう言った直後だった。火の近くに立っていた片名が突然「熱い」と声を上げた。

 

身につけていた鎧の一部に火が出ていた。彼は燃える部分を叩いてなんとか消して見せた。

「危なかった…炎のライダーが炎に殺されるところだった。」安堵の様子を見せた彼に対して、黒羽はそれを見て何か閃いたようだった。

 

「私に一ついい考えがある。勝治、君が今回の作戦の肝だ。」

 

「俺が?」彼はそう聞き返したが、作戦の内容を聞き大きく頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

『和子、くれぐれも気をつけて。健闘を祈っている。』

 

「ありがとうございます。」桃山和子は出撃前、ネメシスと通信していた。

 

「ロゴス様、出発の準備が整いました。」1人の兵がそう言った。その声に彼女は振り返った。

 

「了解、じゃあ行くわよ帝国軍。旧国に縛られた哀れな兵士たちを成仏させるわよ。」彼女は、部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

旧国の集落に隠れて生活していたジョーカーの戦士達。しかし、その動きは既に帝国軍の知るところとなっていた。

彼らの存在を嗅ぎつけた帝国軍の尖兵は将軍ロゴスの号令下、彼らを殲滅すべく進軍を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝、静かな大阪の旧国集落には帝国軍が迫っていた。軍勢がここに迫る様子をジョーカーの戦士達は見ていた。

 

「こちらフォース、帝国軍が近づいている。防衛線だけは突破されるな。」防衛線、村の中心部に南北に張られていた。その後ろには逃げた人々の姿があった。

 

「私達が敵を引きつける。紅蓮、フューチャ。そちらは任せた。」

 

『了解』2人はそれぞれそう告げた。

 

黒羽、清野、国山の3人は集落の中心部、町田、片名は少し北で待機していた。兵の殆どは中央に配置され、北には僅かだった。

 

 

 

 

「じゃあみんな、中心部から攻めた奴らを落としちゃって!」

 

配置についた帝国軍にロゴスはそう指示を伝えた。それに合わせて100人近い帝国兵が進撃を始めた。

 

「こちらフォース、帝国兵が動き出した、北に向かっていない。今だ。」

 

黒羽は北の彼らに進軍を促した。

 

 

「さて、行くぞ。」巨大な斧を担いだ片名と剣を手にした町田、少数の兵は相手に気づかれないよう進軍を始めた。

 

 

「私達も行くぞ。」進軍を見届けた黒羽達は、迫る帝国兵達を見据えた。

 

 

帝国兵とジョーカーの戦士の戦いは均衡していた。普通、誰もがジョーカーには勝ち目がないと思うだろう。ライダーシステム、及びそれに準ずるシステム、そしてそれを使う戦士が有能なのか、数に油断して殆ど無策に突撃する帝国軍及び帝国将が無能なのか、はたまたその両方か。

 

ジョーカー側の兵力が減っていない訳ではない。しかし、それと同じ数だけ帝国兵も減っている。一撃一撃確実に倒していく。

 

 

別動隊で動く片名達も、帝国兵と何度か遭遇するが、全て返り討ちにし目標地点に到達した。そこは少し小高い場所となっており、丁度100人前後の帝国兵がここに押しかけている様子がよく見える。

 

紅蓮に変身した片名は、武器を構えた。

 

「こちら紅蓮。火攻めの準備が完了した。そちらの合図でいつでもできる。」

 

火攻め、それがジョーカーが選んだ方法だった。

 

 

 

「火攻め?」黒羽からその言葉が出た時、彼らは目を疑った。

 

「そもそも普通の火は帝国兵どころか、我々にも通用しない…」清野が言うが、黒羽は何かあるのか4人の目を見て笑った。

 

「普通の火じゃないわ。紅蓮が扱う特殊な炎よ。」

 

 

 

紅蓮が扱う炎は、普通の火とは少し違う。彼の持つ烈火核の炎は鎧を貫通する。つまり、鎧を身につけていても効果があると言うことだ。しかし、逆を言えばこちら側にも効果があるということ、まさに諸刃の剣だ。

 

 

 

 

「了解した。」黒羽は無線を切ると、帝国軍の奥に立っているロゴスに向かって大声で叫んだ。

 

「これだけの兵を率いておいて、私達を倒す事ができないなんて、帝国将は無能ばかりなのか!」彼女は一晩考えた煽りを今ここで披露した。

 

これに相手は予想通りの反応をした。

 

「あの女言わせておけば…アイツの口を黙らせるわよ!」ロゴスは、そう言うと全勢力を黒羽達に向かわせ、ロゴス自身も進軍した。

 

 

「今だ!やれ!」黒羽は周りのジョーカー戦士達と共に元いた場所へと避難しながら紅蓮に指示を出した。

 

 

 

[マウントファイア!]

 

紅蓮が起こした炎は、あらかじめ撒かれていた可燃性の液体に燃え移ると、周りの建物もろとも帝国兵に炎をもたらした。

 

「熱い!熱いよ!!!!」

 

「誰か助けてくれ!!」次々と帝国兵は悲鳴をあげ始めた。

 

「何が起きてるの!」ロゴスは突然の事態に混乱していた。自身も炎に包まれ、周りの判断ができる様子ではなかった。その間にも帝国兵は一気に数を減らしていく。

 

「敵の狙いにも気付かず、よく帝国将なんて名乗れたな。」ロゴスの目の前に現れたのはフォースだった。

 

「お前もこの炎に焼かれているはず、ならば道連れに!」

 

ロゴスは、斧を彼女に振り下ろそうとした。しかし、ダメージの蓄積がある彼女は、フォースの雷を纏った渾身の一撃キックに吹き飛ばされ、倒れた。

 

「…お前…後悔するわよ…」ロゴスは死ぬ間際彼女に苦し紛れに言った。

 

「…もう後悔はたくさんした。」そう言ってフォースはクローバークロッサーを突き刺した。

 

「こちらフォース、帝国将を倒した。消火してくれ。」

 

そう言った直後、大量の雨と雪が炎を徐々に消していった。

 

 

 

 

「成功みたいだな。」

 

「はい。」片名と町田は勝利を密やかに喜んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「見てくれ、新たに軍旗を新調した。」戦いを終えた黒羽は戦士達に新たなトレードマークを見せた。そこには、ジョーカーを意味する『J』の文字に加えて『F』のマークがあった。

 

「これは、未来を意味するフューチャーと、軍の大将である風香さんが変身するフォースを意味しています。」そう町田が言った。

 

「そして、我々は今ここに立ち上がる、フューチャージョーカーとして。」

 

「それはつまり…」長の目に歓喜が溢れていた。

 

「今までお世話になりました。ようやく決断できました。」この軍旗が作られた事、それはつまり再始動を意味する。

 

彼らは、アルカディアを打倒すべく今ここで立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




フューチャージョーカー(略FJ軍)として立ち上がった町田春輝達。そんな彼らを殲滅すべくネメシスは、ヨークとホルコスを向かわせる。
一方、進軍を進めるFJ軍の元にある人物から救援を求める書簡が届いた。

次回、第33話 ウォーズ救援戦
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