第35話 雨の中の攻撃戦
東京…というよりも帝都と言った方が正しいこの地に立つ宮城。
多摩路秋夜は異様に焦っていた。名古屋でジョーカーを制止する作戦が失敗、更に従者のヨークを失い危機感を感じていた。
今朝、浜松に防衛線を張ることを決め、既に浜松にいる嵐山青樹と伊達紅輝が準備にかかっていた。
「錦…ジョーカーは今どこにいる。」
彼は丁度やって来た佐渡錦に声をかける。
「…今日先程名古屋を出たとありました。一日後には浜松に着く可能性もあります。」
「なら青樹達に伝えてくれ。準備を急いでくれ。」
「了解しました。」多摩路の命令を受けた彼は部屋を後にした。
「横浜要塞にも兵を入れた方がいいな。」多摩路は引き続き作戦を考える。
今ここで終わるわけにはいかないと…
「多摩路さん、少しいいですか?」
そう声をかけたのは、塾屋ゴンだった。
「どうした。ゴン。」
「…貴方は、いつになったら僕の理想を遂げさせてくれるんですか?」
彼が口にしたその言葉、それは2人が初めて会った時のことだった。
『僕は君と…そして君の中にいたワードの『戦いのない平和な世界』という理想を現実にしたい…』
という言葉だ。しかし、それは未だ果たされない。人々は帝国と旧国に別れ争う、到底平和とは言えなかった。
「僕は仲間を裏切ってまでここに来た。それなのに、いつになったらその理想は現実になるんだ…」その言葉に多摩路は怒りを露わにした。
「それを望むのは、未だに仮面ライダーに盲信し続ける旧国の奴らだ。俺のせいにするな!」
「…誰も仮面ライダーがいらないだなんて一言も言ってない、今までの貴方はただ自分の理想を押し付けているだけだ!」ゴンはありのままの事実を言った。
「黙れ!忘れたのか?俺はお前をすぐ殺せる事を…」ゴンはその一言で怒りを押し込めた…押し込めなければならない…と。
そして、彼のいる部屋を後にした…
FJ軍は浜松へ進軍を続けていた。その途中、休憩の為にとある集落に立ち止まった。
そこはかつて安城と呼ばれていた場所で、賑わいもあったが、今は荒廃し見る影もなかった。
「次は浜松か…だが、その先はどうする?」燕堂大誓が黒羽風香に聞いた。
「浜松の防衛線を突破した後は、このまま東京に向かう。その間には、難所がある。横浜に建てられた要塞都市だ。元々あった街に巨大な壁を作り外部から東京への侵入を防ぐために作られている。」彼女は横浜要塞について話をした。
「その見た目や横浜に建てられたことから『灰色の浜』なんて呼び名がありますよね。」清野心が付け足した。
「そこを突破できればいよいよ東京に入れる。中心部に立つ宮城、そこにネメシスはいるだろう。」黒羽は目標を言った。
「だが、そこにたどり着く為には浜松を突破する必要がある。敵は防御を固める時間がある。それにもうすぐ雨が降りそうだ。」真田昌巳は徐々に曇っていく灰色の空を見上げて言った。
その頃、町田春輝は逢坂有希との再会を喜んでいた。
「それにしても、生きていて本当によかったよ。」彼は笑顔で言った。
「そうね。連絡もつかなかったから死んだと思っていた。」彼女もまた喜びを隠しきれていなかった。町田は、暖かい飲み物を彼女に差し出した。
「……この右眼も見えたら、喜びはもっとあっただろうに。」逢坂は、そう呟いた。
「変…かしら?」彼女は町田に聞いた。
「そんな事ないです…なんて昔だったら答えていかかも知れない。」
「昔?」その発言に彼女は疑問を持った。
「正直、両眼のある逢坂さんに慣れてるから片眼だけなのが違和感を感じて…」
「…正直に言ってくれてありがとう。でも、眼帯を取ったらもっと酷い…」逢坂は、彼から目線を逸らした。
「何も、無理して取る必要はないよ。」町田は彼女を見て言った。
「…そう。」とだけ言って彼女は口を閉じた。時々飲み物を口にする為に開けるが、言葉が出る事はない。
町田もまた、話さなければならない事を話そうとタイミングを伺っていた。しかし、中々話せない。
…言わなきゃ…
「あのさ…もう5年も前のことだけど…ごめんなさい。」
町田の突然の謝罪に彼女は目を見開いた。頭を下げた彼は彼女の顔を見るのが怖くなった。
「…その、言いたい放題言った挙句、裏切って…あの時も止めなかった事…僕があの時そんな事しなければ…」
逢坂は、どういう事か理解した。そして、自分の思いを口にした。
「もう、5年も経ったから気にしてなかった…でも、謝ってくれてありがとう。」彼女は、彼の頭を上げさせた。
「…これからは、一緒に戦おう。」
そう言った直後だった。
「あの、貴方達はジョーカーですか?」声をかけたのは1人の女性だった。2人は面識はなかったが誰であるかすぐに分かった。だが、確認の為に聞いた。
「もしかして、平方言葉さん?」
彼女は、紛れもなく平方言葉であった。
2人は、彼女を黒羽の元へ連れて行った。その顔を見た時、2人は互いに驚いた。まさかこんなところで会うなんて…そう感じたのだろう。
「噂を聞きつけてやってきました。」平方は丁寧に言う。
「そうですか…」
「それで…私も仲間に入れてもらえないでしょうか?戦う事はできませんが、身の回りの世話ならできます。どうかお願いします。」
必死にお願いする彼女を見て黒羽は一つ聞いた。
「何故…私達と?」
「…ゴンが、敵になってるんですよね?」周りにいた6人全員が驚いた。その話を誰から聞いたのか…
「…なんで敵になったか知りたいんです。お願いします!」
「…わかりました。そのかわり、無茶はしないでください。」黒羽は、彼女が必死だからとその願いを受け入れた。
と言うよりも、自分も彼女と同じだからだ。ゴンが敵になった事が同じように信じられない、何故裏切ったのか知りたい、そう願っているからだ。
「よし、休憩は終わりだ。これより出立する。目標は浜松防衛関所。」
新たに平方を仲間に入れたFJ軍は、浜松に向けて進軍を始めた。
名古屋を突破したFJ軍、その彼等に待ち受けていた新たな難所は浜松にあった。
ネメシスは浜松防衛関所に軍を固め防御の態勢をとっていた。帝国の勇将エリスと関所の守り手ディスノミアが雨天の中、FJ軍を迎撃する…
「雨が降り始めたか…」エリスに変身している嵐山は、隣に立つディスノミア…伊達に話しかけた。
「レーテーが連れてくる援軍は間に合うだろうか…」ネメシスから援軍が送られることが分かったのは名古屋が突破されてからすぐだ。レーテーが70人程引き連れてくると言う話だった。
「そうですね。この雨は当分止みそうにありませんし、多少は遅れると思います。でも、時間差で来る事で逆に相手を混乱させることもできる。」ディスノミアは答える。
「…いよいよ敵がやってくる。俺は配置につきます。生きてまた会いましょう。」ディスノミアはそう言うとバイクでエリスのいる場所から南に走った。
浜松はここ5年で大きく姿を変えた都市の一つだった。東海道からの敵襲を未然に防ぐべく建物を破壊、荒れた地となったそこに関所を立て防衛拠点の一つとなっている。
「いよいよついたか…」紅蓮は荒れ果てた大地を見た。
「しかし雨か…進軍に大きく影響を受けそうだ。」氷華が続けて言う。
「…皆、準備はいいか?」フォースが他の戦士達に声をかける。最初は50人程度だったが、今では100人を超えてる。
その100人超えの兵が彼女の問いに答える。
「FJ軍…出撃!」
彼女の合図で一斉に兵が動き始めた。
その様子は、相手も気づいていた。
「せっかく貰えた仇討ちの機会だ…差し違えても、必ず!」ディスノミアは、そう呟いた。
仇討ち…それは名古屋で倒された妹の事を言っているのだろう。彼は三叉の槍を構えた。
「我々はここで奴らを止めなければならない。全力で迎え撃て!」エリスは周りの兵に促す。
FJ軍は作戦の通り動いた。蘭舞は現在ある最高戦略であり、大将のエリスを狙う。アーサー、火縄、ホープがエリスの南に待機しているディスノミアを狙う。
そして、残りのフューチャ、フォース、紅蓮、氷華で残った兵を倒し彼等を前に送り出す。
しかし、雨天で足元が緩み、うまく進軍ができない。その間にも帝国兵が次々と押し寄せる。
しかし、足元が緩んで本調子で戦えないのは相手も同じ、FJ軍は敵を少しずつ着実に倒し前へと進む…その時だった。
「6時の方向!新たに敵兵が現れました!」1人の兵が声を上げた。
フォースはその方向へ振り返った。
「潜んでいたのか…いや、あの量は!援軍か!」
彼女の言う通りその兵は敵の援軍だった。
その真ん中に立つのはレーテーだった。
「みんな、遅くなってごめんなさい。帝都からの援軍を引き連れてきたわ。」
「ありがとう、敵をこのまま援軍と共に挟み討ちにする!」エリスは帝国兵に指示を出した。
「まずいな…援軍も対応しなければ…」
「それなら、僕に任せてください。」フォースが考え込む中、フューチャが名乗りを上げた。
「…大丈夫なんだろうな。」彼女は聞く。
「はい。」そう答えた彼を見て、フォースは紅蓮と共に援軍を迎撃しろと指示をした。
「妹をやったのは誰だ。」ディスノミアは既に目前まで迫っているアーサー達に聞いた。
「なら、今まで無抵抗な市民達をやったのは誰だよ。」アーサーは正論で返した。
「…どうやらお前達との会話は無意味のようだな。」ディスノミアはバイクから降りると槍を構えた。そしてアーサーに迫った。
アーサーはザナイトに変身して受ける。何者も受け付けないその壁のような鎧は、ディスノミアの三叉の槍に傷をつけられ、痛みを伴った。
「鎧に効く、珍しい相手だな。」
「悪いが、戦闘中の無駄話は嫌いなんでね!」ディスノミアは槍を投擲する。
しかし、それを横から放たれた矢で撃ち落とされた。ホープだ。リカバーに変身していた彼はアーサーの傷を回復する。
「無理はしないでくれよ。」
「わかってるって。」
再びディスノミアは、槍を構えた。
「萌葱…仇は必ず取る!」
ディスノミアは槍と共に勢いをつけて2人に飛びかかった。
しかし、それを火球が防ぐ。火縄だ。炎不死鳥に既に変身していた。
「決めるぞ。」3人は、それぞれ弓、剣、銃を構えた。
ディスノミアはフラフラになりながらも立ち上がった。
「ここで、倒れる訳には…!」
神速の矢リカバーハード、豪火のエクスプロージョンダイレクトがまず放たれる。それを食らった彼は地面に倒れる。
「おらっ!!」最後にインパクトストライクがディスノミアの身体を斬り裂く。
「萌…葱!」
ディスノミアは、彼等の攻撃を受け爆散した。
その頃、フューチャ達は敵の援軍と交戦していた。
「町田!先行け!」紅蓮がそう叫ぶ。彼は斧で敵を次々と叩き伏せていく。任せて大丈夫だろうと感じた彼は頷いた。
そして、レーテーの元にたどり着く。
「あらあら?5年前の貴方が相手かしら…」
フューチャにとってレーテーと戦うのは初めてではなかった。前にジョーカーに攻めてきた時、その時相手したのもレーテーだった。その時彼は敗北した。だが、二度も屈しない。
「今の僕は昔とは違う…お前を倒す!」
フューチャは、ドライバーを外すと、新たに黄金色に輝くヴァンガードライバーを装着した。
「…真・変身!」
彼はヴァンガードメットをベルトに装填した。
[Ten riders power!Be rider one!FUTUR VANGUARD!]
金色のローブを纏い、フューチャは新たな形態に変身する。腕や足にはオレンジと青の装飾がされ、頭部からは金色のアンテナが伸びる。銀色の仮面に真紅の瞳が現れる。神将の名に相応しいフューチャの新たな形態、ヴァンガード、ここに降臨。
フューチャヴァンガードはレイピアのような武器、フューチャリスティングを構えた。
レーテーは、白銀に輝く魔法を放つ。
フューチャはそれを剣で切り裂いた。そしてレーテーと一気に距離を詰める。レーテーの弱点とも言える近接攻撃に彼は持ち込もうとしていた。
そして剣を突き出す。しかし、その攻撃はレーテーの目の前で弾かれる。
「バリアか!」
「甘いわね〜。」レーテーは炎魔法を放つ。それにフューチャは燃えている…そう思った。
しかし、フューチャの左腕に装備された物がそれを防いだ。
金色に輝く盾だ。その中心部にはエレクスのクレストが描かれていた。エレクスアイギスと呼ばれるその盾で攻撃を防いだのだ。
そして右腕には、青緑の剣を装備する。刃にはウォーズのクレストが刻まれている。ウォーブレードと呼ばれるその剣でレーテーに攻撃を仕掛ける。
しかし、これもまた弾かれる。
「何度やっても無駄よ。」レーテーは再び魔法を放つ。
「今だ!」レーテーが魔法を放った瞬間、フューチャは剣を突き刺した。魔法を放つ瞬間にだけ開くのを利用して攻撃を仕掛けたのだ。その攻撃でレーテーを守っていた宝珠が破壊、バリアが消滅した。
フューチャは両腕の武器をしまい、今度は右脚に装甲を呼び出す。
ライトニングフォースと呼ばれる装置を起動させた。
[FUTUR lightning drop!]
その機会音声と共にフューチャは飛ぶ、そして雷撃を纏った右脚でレーテーを貫いた。
レーテーは悲鳴を上げながら爆発した。
フューチャは、それを見届けた。
蘭舞とエリスは既に戦闘していた。しかし、ディスノミアが討たれ、援軍も阻止された今、勝ち目はなかった。
しかし、エリスに引く気はなかった。ネメシスの為…敗れる訳にはいかないと…
『エリス…ここは引け…』その時、ネメシスから指令が入った。それはつまり敗北を意味する。
「しかし…俺はまだ戦える…」
『…これで負けではない。彼等には立派な舞台を用意する…横浜要塞という舞台でな…』ネメシスのその言葉で、エリスは渋々引くことにした。
蘭舞はそれを追いかけようとはしなかった。彼がいなくなったところで、帝国側の敗北という文字に変わりはないからだ。
いよいよ帝都が近いFJ軍、その彼女らに最大の難所横浜要塞が迫る。そして、フォースはついにワードと決戦する事となる…。そんな中、想像だにしない新たな援軍が現れる。
次回、第36話 再臨す神屠竜