第38話 帝都総力戦
「帰ってきたな、東京。」町田春輝は、独り言を呟いた。
FJ軍は、
高速道路の高架橋は崩れ、巨大な塔は根本から折れている。東京の中心部には、異質に聳え立つ中世ヨーロッパ風の宮城がある。そこにネメシスはいた。
「ここに居たのか、春輝。」彼を探していた黒羽風香が現れた。彼女は、いつもの優しそうな顔、と言うよりも深刻な顔をしていた。それに彼は即座に反応し、聞く。
「何かあったんですか?」
「…ははっ。バレたか。」目が笑っていない。
「実はさ、この軍から離れようと思って。」
意外な告白に、目を丸くした。あの黒羽風香が軍を去るなんて、誰も考え付かないだろう。
「…もうフォースには変身できない。仮に直せても…変身したくない。」
変身したくない…そう彼女は確かに言った。フォースのベルトは横浜要塞の戦いでワードを倒した際の余剰エネルギーで崩壊し、到底直せる状態ではなかった。
「…それは、どうしてですか?」
「…最近、また脳内に『死んだ者』の声がするようになった。私を恨み、復讐するよう願う声が…もう嫌なんだ!」
彼女は声を荒げた。
「もう、何にも縛られたくない…死に、戦いに縛られるのは嫌なんだ…」膝を地面につき、そう言う。彼女の目には、涙が溢れていた。
そんな姿を、彼は見ていられなかった。
彼は、どうにかしなければと思考を巡らせた。だが、それよりも口が先に動いた。
「…後の事は、僕に任せてください。風香さんは、誰よりも頑張ってきました。それを、僕が受け継ぎます。」
何故そんな言葉が出たか…それは自分が『ジョーカーを率いる者』だったからだろう。
白夜総三、山田康介、そして父親が望んだ未来を、自分の手で達成したいと…そう願ったから。
「…僕に、任せてもらえませんか?」
彼女は、その問いに「分かった」と返した。
「ごめん…こんな時に」黒羽は謝罪しようとする。
「…僕にとって風香さんは永遠の憧れです。だから、越えたいんです。」
彼は、それを止め、決意を口にした。
「分かった。私を越えてくれ…私や、康介さんや、ゴンが出来なかった未来を…創ってくれ。」
彼女はその言葉を最期にジョーカーを離れた。
宮城の一室に、嵐山青樹はいた。
彼は、先日の戦いから帰ってきたばかりで休息をとっていた。
その彼の部屋の扉を叩く音が聞こえる。
「俺だ、錦だ。」
嵐山は、佐渡錦の来訪に驚いた。彼が扉を開けると、親しみの笑みを浮かべた彼がいた。
「悪いな、休んでる時に。ネメシス様から言伝を預かっていてな。」
「…立ち話もあれだ。中に入れ。」嵐山は彼を招き入れた。
2人は部屋にある椅子に向かい合うように腰掛けた。
「それで、言伝とは?」
「近々、ジョーカーがこちらへ攻めてくる。」
「まさか、また俺に出撃を?」嵐山は浜松、横浜と連戦続きだ。流石にキツい。
「いや、帝都戦は控えでいいと。帝都戦は俺と、海外に派遣されていたアルゴス、北の方を防衛していたポノスが将として戦う。」
「…能登悠銀と紫摩凌か…あまり面識はないな。」
「確かに、あんたはネメシス様にやけに大事にされているからな。」
嵐山はどういう意味だと言わんばかりの顔をした。
「…その顔、やっぱり知らなかったか。まあ俺も詳しくは知らないけどな。」
そう言って佐渡は話を終わらせた。
「とにかく、こうして俺とお前がゆっくり話していられるのも、案外最期かもな。」
「縁起の悪いことを言わないでくれよ。」嵐山は口元だけ笑った。
「…はは、俺は簡単には死なないさ。それじゃ、またな。」佐渡はそう言い残すと部屋を後にした。
嵐山は、彼が部屋を後にすると、険しい顔になった。
「このままでいいのだろうか?」
フォースが離脱したFJ軍は、遂に帝都へ到達する。
襲来したFJ軍を迎え撃つべく、皇帝ネメシスは勇将であるゲラス、ポノス、アルゴスに出陣を命令。
市街にて両軍が激突する。
黒羽風香にかわり、FJ軍の大将となった町田は皆を集め戦闘前最後の軍議を始めた。
「市街には、将が3人配置されている。街の中心部にアルゴス、西部にゲラス、そして宮城前のポノスの3人がいる。それらを軍を二分して対処する。西部に蘭舞とホープの部隊。中央、宮城前を残りのフューチャ、火縄、紅蓮、氷華の部隊で侵攻する。」
「…春輝、大将としての初陣がまさか帝都侵攻だなんてな。」片名勝治が言う。
「…僕はできる限りのことをします。皆さん、僕をよろしくお願いします。」それは自分に命を預けさせてくれと頼む意味だった。それに兵達は答えた。
その答えは、彼に程よい緊張感を持たせた。
「全員配置についてください。皆さんの健闘を祈ります。」
「春輝…」出撃前、逢坂有希は彼に声をかけた。
「…生きて、東京を取り戻すぞ。」
「…分かってる。有希…さんも。」
「ああ…必ず。」2人はそう会話すると、それぞれの持ち場に向かった。
「ジョーカーが進軍を開始しました。」
ポノスは、今回の戦いの大将と言ってもいい。彼はこの5年で各地の制圧を推し進め、帝国の領土の半分は彼の手柄だ。
「砲台の準備を進めてください。この帝都に入り込んだネズミを1匹たりとも逃してはならない。」
FJ軍は、進軍を既に始めていた。
西部は兵の数が中心部よりも少なく、蘭舞、ホープの連合部隊で一瞬にして撃破していく。
「不気味なほど、侵攻がスムーズだな。」
「はい…」
蘭舞はふと、何かの気配を感じた。視線を感じる。足を止め、勢いよく振り返る。
しかし、そこには何も居なかった。
「どうした?」ホープが聞く。
「何か気配を感じたんです。」彼女は答える。間違いなく、何かいたと。
「…気のせい、じゃないのか?」
「…私、少しここに残っています。先に進んでください。」
「…分かった。必ず追い付けよ。」蘭舞にここを任せホープと部隊は先に進む。
「立ち塞がる者は、みんな私がぶっ倒す!」その頃、中心部にたどり着いたフューチャ達はアルゴスと交戦を始めた。
「アルゴスは僕に任せて、先に進んでください!」
「分かった。ここは任せたぞ!」紅蓮はそう言うと氷華、火縄と共に宮城へと進む。
ここで少し補足をしておこう。
前回、核が力を失ったのに何故紅蓮と氷華は変身できているのか。それは人の手で作られたドライバー『マウントドライバー』と、人の手で作られた人工核『紅鎌』、『守神』を使い変身しているからである。
「さあ、どこからでもかかって来な!」アルゴスは強気な声でフューチャを挑発する。
「なら、望み通りにしてやる。」そう言うと、彼は右手、左腕、右足に武器を召喚する。
右手に持っている紅蓮の力を宿した斧ファイアアックス、左腕には腕と一体化したアーサーの力を持つ剣エクスアーサー、右脚には剣と銃が一体化した氷華の力を使える靴ブリザードブロッサム。
「はあっ!」フューチャが右腕の斧をアルゴスに振り下ろす。アルゴスは剣でそれを弾き飛ばす。
フューチャはそれを見越して左腕の剣で彼女を斬り裂く。
「へっ、やるな。」アルゴスは、斬られた右脇腹を一瞬押さえる。
「まだまだ!」フューチャは走って駆け寄ると、右脚を伸ばし刃で切り裂く。そして再び斧を振り下ろしアルゴスを吹き飛ばす。
アルゴスはその攻撃に地面に倒れる。
「これで終わりにする。」アルゴスは左腕の装備を変えた。紫色の、盾と刃を一つにしたような武器、ワードブラッシング。
[FUTUR blessing strike!]
フューチャは右脚を上げ氷の弾丸を2発放つ。それらが立ち上がったアルゴスの両足を凍結させる。
身動きの取れないアルゴスに、フューチャはエネルギーを纏った刃と斧を振り下ろす。
アルゴスは、フューチャの斬撃で爆散した。
「この辺りは制圧できたか…皆に追いつこう。」そう言うとフューチャは、全ての装備を解除して走り出す。
その頃、ポノスのいる宮城前には既に火縄達が到達していた。
「ようやく来ましたか。」
「東京を…返してもらう。」火縄・火炎将軍に変身した彼女は、銃を構える。
「私達の猛攻を、抑えることがあなた達にできますかな?」密かに笑うかのような声でポノスは配下を呼び寄せた。
「雑魚は俺達に任せて、真田さんはポノスを。」紅蓮と氷華は兵を引きつけて移動する。
一対一となった2人は互いに睨み合う。
ポノスは、赤黒く輝く杖を構えた。そして、その杖を振りかざすと炎を火縄に向け放つ。
火縄はそれらを全て撃ち落とし、ポノスを睨みつける。
「貴女に炎は効きませんか…」
その頃、ホープも西部の宮城近くに迫っていた。
「この辺りに…ゲラスがいるはず。」
その時だった。無数の矢が彼らに降り注ぐ。
咄嗟の攻撃に兵の何人かが撃ち抜かれ倒れる。
「どこから攻撃が!」兵は突然の攻撃に狼狽える。
その時、大きな影がホープ達の上空を過ぎ去る。ホープはそれが何か分かり兵に促す。
「今の攻撃は空からだ!警戒しろ!」
「ご名答、流石ジョーカーの戦士だ。」
そこへ現れたのは、ホルコスが乗っていたホバーバイクに似たマシンに乗っているゲラスだった。彼は右手に赤黒い弓を持ち、空中に浮遊していた。
「流石に空から一方的に攻撃というのも卑怯だ。」そう言うと、彼はバイクから飛び降り地面に降り立つ。
「僕達を舐めているのか?」
「そう捉えてもらってもいいさ。俺は地上でも強いからな。」そう言うと彼は弓を弾き矢を放った。
ホープはそれを回避すると、自身の弓を弾き矢を放つ。
ゲラスはそれを回避して弓を構える。
そうやって互いに撃ち合うのがしばらく続く。
ホープは頃合いを見計らうと、弓をブレードに変え一気に近づく。それに反応した彼は懐から剣を取り出す。そして二つの刃が擦れ合う。
「やるね…流石俺の元になったホープだ。」
「つまり君は僕の偽物か…なおさら倒さなければな。」
「だけど、俺がお前を倒せば俺が唯一無二になる…面白いね!」2人は刃を離すと、それぞれ斬撃を放つ。ホープとゲラスの胸部がそれぞれの攻撃で切り裂かれる。
強い痛みを感じながらも、ホープはブレードを弓に変え、ゲラスの腹部を撃ち抜く。
それが勝利への決め手となった。
ゲラスは勢いでそのまま後ろに後退する。
ホープは飛び上がると、両足を突き出した。白銀のエネルギーを纏ったキックでゲラスを貫いた。
「…楽しかったぜ…また、」
ゲラスはホープのキックで爆散した。
ポノスと火縄の戦闘も徐々に終わりが見えていた。
ポノスは雷の魔法を放つ。火縄はそれを封剣エクスカリバーで抑える。
火縄は、背面のキャノンから火球を連続して放つ。
ポノスは氷壁を召喚して火球を防ぐ。
両者どちらとも退かない攻防戦に、2人は必殺技で一気に終わらせようと試みる。
ポノスは、杖を構えた。そして魔法陣と共に炎を構える。
それに対して火縄は手に持つ銃と背面のキャノンにエネルギーをチャージする。
2人は、ほぼ同時に炎を放つ。それらが激突しあう。
均衡し、互いに譲ることない炎の攻撃に、2人は力を強める。
「ぐっ…ここまでか…!」
力の衰えが先に見えたのは火縄だった。
「勝ったな…」ポノスがそう呟いた直後だった。
火縄の背後に人影が見えた。
「真田さん!」それはアルゴスとの戦闘を終えたフューチャだった。彼の右腕には火縄の力が込められている銃バーニングシューターが握られている。
「…遅いぞ。」
フューチャはバーニングシューターから火柱のような攻撃を放つ。
それによって形勢逆転する。ポノスはいきなりの事に、対応できず、勢いが止まる。
「…想定外…ここまで、ですか。」
ポノスはそのまま押し切られ、フューチャと火縄の攻撃に焼き尽くされた。
「ポノスを倒せたか…」フューチャがそう呟いた。
「こっちも終わったぞ。」紅蓮と氷華も敵を片付け2人と合流したその時だった。
とてつもない爆発音と天に届くかのような火柱が上がった。それは、西部の、それも南側で起きていた。
「何が…ホープと蘭舞は?」
「僕はここに…」その時、遅れてゲラスを倒したホープが氷華の疑問に答える…
「…清野さん、有希は!」フューチャはどこにも姿が見えない彼女の事が心配になった。
「…まさか!」
そのまさかは現実となった。
爆心地となったであろう場所には、背中を斬られ大怪我を負った逢坂有希が発見された。
治療が早かったため命に別状はないが、重要戦略がまた1人かけた事は非常に大きかった。
だが、それと同時に謎もあった。誰がこのような事をしたかだ。今の帝国にそれを行えそうな者は誰1人としいない。
誰かまだいると彼らは薄々と感じた。
帝都が制圧された直後、嵐山は多摩路に呼び出された。
「…最悪の事態に陥ったようだ。」多摩路は、嵐山に言う。
「…勝てる見込みはあるんですか?」嵐山は聞く。
「そうだな。勝てなくはない…私の最終兵器と、父さんの力を借りれば、な。」
そう言って現れたのは、初老の男…彼こそが多摩路の義父だった。
「…初めまして…!」嵐山にとって初めまして…ではなかったようだ。
「初めてか…そんな事はないだろう。青樹君。湯山玄武…私を覚えていないのか?」
嵐山は、ここで全てが繋がった気がした。何故俺だけ優遇されるのか、何故闇に葬られたはずのアルファサバイブバックルが存在しているのか。
帝都を制圧したFJ軍はついに宮城へと侵攻する。その彼らの前に立ちはだかるのは、変わり果てたエータスとネメシス……だった。そして、最後の仮面ライダーが彼らと再び出会う。
次回、第39話 帝都宮城の戦い