夜道を走る一台の乗用車があった。車内にいるのは男一人、そのの男が大音量でアイドルグループの曲をひたすら流している。
車は徐々にスピードを上げ、法定速度を優に変えている。しかし、運転手はそんな事気にもしていない。それよりも、早く帰りたいと言う思いでいっぱいだった。
その時だ。ヘッドライトに人型のものが写った。咄嗟にブレーキをかけた。タイヤが地面を擦る音が夜の闇に響く。しかし、車体はその人型のものを跳ね飛ばした。
男は、恐る恐る車を降りた。彼の顔はすっかりと青ざめ、怯えている。
ゆっくりと、跳ね飛ばしたものに近づく。
そして、安否確認の為に声を掛けようとしたその時、その人型のものは、男の手を引き、喰らった。
男は声を上げる間も無く、それに喰われた。
翌朝、町田がジョーカーに着いて早々、出撃の支度を迫られた。
「清野さん、もしかしてまたどこかに怪物が現れたんですか?」
町田は、ちょうど前から現れた清野に聞く。
「昨晩、男の変死体が見つかったそうだ。どうやら、体の一部を何かに喰われた跡があった。怪物の仕業の可能性が大いにあるため、護衛に就けとの事、出撃と言っても戦闘は無いかもしれないが一応準備しておけ。」
清野は、町田に簡潔に事を伝え、指示した。
町田は返事をすると、ベルトとロードメットを手にし、輸送用の車両に乗った。
車内には清野と町田、数名の武装した隊員、そして逢坂の姿があった。
清野は、車両が基地を発車すると、作戦の指示を始めた。
「今回は、あくまで事後処理班の護衛だ。戦闘することよりも、守る事を重点的にしろ。もし、怪物が現れた場合は…町田、そして逢坂の2人で対処、僕含めた残りは護衛対処の防衛に徹しろ。」
町田は、何故同じように仮面ライダーに変身できる清野ではなく逢坂なのかと思った。
運転席から到着を伝える声が聞こえた。
清野は、車両の扉を開け、一番最初に降りた。
現場は薄らと雪が積もっていた。
先に着いていた事後処理の担当者が清野に駆け寄ってきた。
清野は、状況を確認すると、隊員に指示を出した。
「車内で言った通り行動しろ。」
そう言うと、隊員達は護衛に回った。町田も向かおうとしたその時、逢坂が口を開いた。
「隊長、これ見てもらえませんか?」
「なんだ?」
逢坂が指差した所には血痕があった。人のものだ。それが森の中に点々と続いている。
「…この先に居るかもしれない…逢坂、町田。2人で確認に向かってくれ。」
「分かりました。」
「はい。」
清野の指示で逢坂と町田は、森の中に入った。
森の中は、とにかく歩きづらい。町田は、高校の活動で山の中を歩いた事を少し思い出して、慎重に歩いていた。一方、逢坂は血痕を見逃さまいと下を向いて歩いている。彼にとってそれは今にも足を滑らせそうで危険だと思った。
「逢坂さん、慎重に歩かないと足滑らせますよ。」
彼女は振り返った。
「そんな事しない…」
そう言ってまた前へ進もうとした、その時だ。
「わっ!」
彼女は足を滑らせ、転びそうになった。
「逢坂さん!」
町田は逢坂の手を掴み、滑り落ちるのを防いだ。
「だから言ったじゃないですか…」
彼はそう言った。だが、彼女は黙ったまま目を逸らした。
再び2人は歩き始めた。が、町田はすぐに足を止めた。
「逢坂さん、後ろに居ますよね?」
逢坂は町田の前にいる。側から見れば何言っているんだ?と思うだろう。
「ああ、後ろだけじゃない。囲まれている。」
気がつけば、木々の周りからホッパー達が顔を覗かせている。
「罠にかかった…」
逢坂はそう呟き、ベルトを装着した。
町田は一瞬驚いた。色違いとはいえ、同じベルトをつけている。だが、これで一つ謎が解けた。ライダーに選ばれたのは2人、もう1人が彼女なのだと。
彼もベルトをつけた。
それぞれロードメットを用意、ベルトに装着した。
「「変身!!」」
[未来の力[荒ぶる華!今ここに!!仮面ライダーフューチャ!]蘭舞!]
青と赤の戦士達は、ホッパーに向け銃と弓を構えた。
一方、清野達も異変に気がついていた。
「総員!銃を構えろ!」
清野も、弓を構えた。
しばらく静寂が続いた。
清野はタイミングを見極め、隊員達に射撃を促す。
一斉に乾いた音が鳴り響く。生き残ったホッパー達は、一斉に隊員達に飛びつく。
1人の隊員にホッパーがしがみついた。このままではやられる…だが、ホッパーの動きはすぐに止まり、崩れ落ちた。
清野が弓矢でホッパーを倒したのだ。
次から次へと迫り来るホッパー、隊員達は攻撃に備える為、ロードメットを取り出した。
「「「変身」」」
[トランス…トルーパー!]
左腕にそれを取り付け、隊員達は仮面ライダーとは違う新たな姿へと変身した。黒の装甲に覆われ、右肩には白のアーマーに識別コードが書かれている。トランストルーパーと呼ばれるものだ。彼らは、ダガー、ライフル、チェーンソーなどを構え、ホッパーを迎撃する。
清野もライダーベルトとライダーブレスを装着、更に弓に金色の新たなパーツを装着した。
[recover!]
「変身!」
清野は弓をベルトにスキャン、白銀の鎧が現れ、装着される。
[rider HOPE!recover mode!]
白銀の鎧はホープを新たな姿へと変化させる。背中からは大きな白いマントが垂れ下がり、聖戦士の名に相応しい姿に変わった。あの時、フューチャを救ったのもこの姿だ。
仮面ライダーホープ、リカバーモード。それが彼の新たな姿だ。
[laser blade!]
ホープは神弓リカバーアーロの金色のパーツを上に向けた。すると、シルバーのレーザーが放たれ刃になった。
その刃は、ホッパー達を次々と焼き斬り、消滅させる。
「はあっ!」
ホッパー達はホープらの攻撃により劣勢となっている。このままでは全滅…だが、そう思うのはまだ早かったようだ。
一つの素早い影がライフルを構えたトランストルーパーに近づいた。
その影はトルーパーの右腕に噛みつき、食いちぎろうとした。
「うわっ!」
その声に気づいたチェーンソーを持ったトルーパーは、彼と影を引き剥がしたやいなや、その姿を見て驚く。
ホッパーの原型はあったが、左半身が機械的な見た目になっている。左腕には強靭な鉤爪が付いている。
「なんだよ…こいつ!」
トルーパーは、危険を察知、怪我をしているトルーパーを庇いながらゆっくりと迫る。
新たなホッパーは一瞬にして距離を詰め、チェーンソーを切断した。
更にトルーパーの腕を引き裂こうと迫る。
が、それよりも早くホープが刃で攻撃を防ぐ。
「下がれ、こいつは僕が相手する!」
ホープは神弓をベルトにスキャンした。
[check!recover hard!]
ホープは、何千度の高熱を放つ刃を押し当てる。そして一瞬にして腹を切り裂く。
ホッパーは、上半身と下半身が別れると同時に爆散した。
他のホッパーも、退散を始めた。
「追うな、今のうちに避難しろ。」
追おうとするトルーパーをホープは止めた。そして、先程噛まれたトルーパーの右腕に手を翳し、何か光るものを送った。
するとその腕はみるみると回復した。
「ありがとうございます。」
「ああ、僕はあの2人を見てくる。戻ったらいつでも動けるようにしておけ。」
そう言って森の中に入った。
撤退の指示を無線で聞いていた2人は、退散しようと戻ろうとする。
町田はその時、森の先に何かあるのが見えた。
「何やってる、戻るぞ!」
逢坂にそう促され町田も戻る。
途中でホープと合流して3人は車両へと戻り事後処理班と共に現場を去った…
次回、第4話 英雄王の名を持つ者
2月中旬ごろ公開!