「…勝てる見込みはあるんですか?」嵐山は聞く。
「そうだな。勝てなくはない…私の最終兵器と、父さんの力を借りれば、な。」
「…初めまして…!」
「初めてか…そんな事はないだろう。青樹君。湯山玄武…私を覚えていないのか?」
「…湯山…先生?」嵐山は、湯山玄武とは初見ではなかった。
少し昔、彼が教師1年目の頃、湯山はその時の上司だった。
「…まさか、こうして出会うなんてな。」
嵐山にとって教師になりたての頃は憧れの存在であった…しかし、全てを知っている今、彼を前に恐怖を感じた。かつて世界を滅ぼそうと暗躍し、サバイブバックルなどを量産し生徒達を戦わせた。その事実を…
「…しばらく2人で話すといい。俺は迎撃の為に軍に指揮する。」
多摩路はそう言うとその場を後にした。
「…何故…生きているんですか?」
嵐山は率直に問いかける。
「…残された財団の技術でな。アルファサバイブバックルも同じだ。」
「…ネメシス様とは、どう言う関係で…?」
「…彼はアトランティスの事件の時、瀕死だった赤子の1人だった。私は、その彼にライダーとしての器があると感じた。そこで、彼を引き取り組織全体で育てる事にした。それが実り、こうして忌まわしき仮面ライダー達に復讐する戦士となった。」
嵐山はこの時、異様な圧力を感じた。いったい…これは何なのか?
とにかく逃げたかった。コイツは、ネメシスや他の奴らとは違う大きな感情で動いている…それが何か分からない、分かりたくもない気がする。
そして今、初めてここに来た事を後悔した。
彼は湯山とも別れ自室に帰った。
「そもそも…何で俺はこうしてるんだ?」
そう疑問に思った。何で
彼がここにいる理由、それは「ジョーカーが湯山を殺した」と思っていたからだ。その復讐のため…そう思っていた。ここに入ってから、ある文献を読んだことがある。ヨークが持ち込んだ財団ユートピアの資料だ。それに目を通すと、そこには生徒を実験台にして最強の戦士を作り出すと言う計画とその責任者となっていた湯山玄武の名だった。そこで初めて、あの男がどれだけ残酷であり、最低最悪な存在だったかを思い知らされた…そんな気がした。
「…もう、後戻りはできないか。」
彼は、バックルを手に取ると、部屋を後にした。
「市街地の制圧、完了しました。」FJ軍の小隊長が、町田春輝の元に市街の制圧を完了させた知らせを持ってきた。
「ありがとう、この後軍議を始める。みんなを集めてくれ。」
「了解しました。」町田の指令に彼は実行すべくその場を後にした。
町田は、暗い顔をし俯いた。それも当然だ。
「…僕がもっと警戒していれば、こんな事に…」そう言ったのは清野心だ。
清野は、自身が目を離した事で起きたこの事件に負い目を感じていた。
「…清野さんのせいでは…」町田がそう言った直後だった。
先程とは違う小隊長が部屋にやって来た。
「貴方様にお会いしたいという方が来ています。」
「分かった、通してくれ。」町田は突然の来客に驚いた。しかし、彼はのちに更に2度驚く事になる。
「…まさか、生きていたとは思わなかった。町田。」
小隊長と入れ替わりで入って来たのは紛れもなく、死んだ筈の山田康介だった。
「康介さん?生きていたんですか!」町田はまさかの再会に驚く。
「…俺は別世界の…バトルドの方だ。」そう言って見せたのは、バトルドライバーだ。
「…そっちの康介さんでしたか…どちらにしろ、生きていたんですね!」町田は、バトルドの方である事に驚きつつ再会を喜んだ。
「…ああ。帝都を制圧したと聞きつけてな。」
「それにしても、この5年どうしていたんですか?」そう聞いたのは清野だった。
「…この5年、俺はここに潜み反撃の機会を狙っていた。実際、もう少しお前達の到着が遅ければ独断で潜入していた。」康介はそう言うと机の上に地図のような紙を広げた。
「これは、この5年で集めた宮城の内部図だ。」
「すごい…こんな物まで。」
「宮城攻略は俺も手伝おう。それでいいか?」康介は、手を差し出す。
「はい、お願いします。」町田も手を差し出して握手をした。
市街にて帝国軍を粉砕したFJ軍は、ネメシスの拠る宮城へと攻めかかる。しかし、たどり着いた彼らを待ち受けていたのはネメシスではなく……
「遂に、ここまで来ましたね。」
町田は、帝都宮城を見上げて言う。市街を制圧して数時間、ライダー達は最後の戦いであると感じていた。
「愛する家族が待ってるんだ、絶対に勝って帰る。」片名が決意を言葉に出す。
「それに、僕達がここで負けたら、二度とかつての平和はやって来ない。勝つしか道はない。」清野も続けて言う。
「長かったこの戦いも、ようやく終わらせれるんだな。」真田は、この悲惨な戦いを終わらせれる事に喜びを感じていた。
「私達の戦いも、無駄ではなかったと感じさせてくれる。」国山も、ここまでの道のりを思い出し、それの終わりが来るのを感じている。
「俺は、お前達を全力で手助けする。未来を創るのはお前達なんだからな」もう1人の康介は、未来へ希望を託すような言い方をする。
「…社長や風香さん、ゴンさん、この戦いで散っていった仲間、そして…有希の為にも、絶対に生きて帰って勝とう!」町田は最後にそう付け加え、他の戦士達はそれに頷いた。
彼らの正面には、既に帝国軍が目前に迫っていた。
「今行くよ…
全員は、それぞれ変身し、迫る敵兵に対して身構える。
「遂に来たか。」宮城の中心部にある大きな部屋、騎士の間でエータスは待ち構えていた。
先程、宮城の門が突破されたと報告が入った。
「…ネメシス様の…為に…か。」そう呟いた。今までそうやって戦っていた自分を嘲笑うかのように。
「俺は、俺が目指したい世界の為に戦う。」
そう言って槍を握りしめる。
「FJ軍はこのまま玉座のある部屋まで一気に流れ込む。全力で進め!」フューチャは全軍に指示を出す。
宮城内に侵入したFJ軍は、玉座の間へと進む。
バトルドが持ってきた宮城の構造図には北側の中心部に玉座の間がある。その間に騎士の間と正面玄関がある。FJ軍は、玄関へと突入して、そこにいた兵の殆どを対処した。
この部屋から騎士の間には2つ、そして騎士の間から玉座の間までは1つしか通路がない。それに騎士の間は階段があり、そこから援軍が来る可能性もあり、どう考えても攻め込むには不利な場所だった。しかし、帝国軍を倒すなら今しかない、そうフューチャ達は信じて進む。
彼らが騎士の間に進軍すると、そこには大量の兵とそれを従えるエータスの姿があった。
「全て引き潰す。」エータスは槍を構えるとこちらに向かって走り出した。
「行くぞ、町田。」バトルドはフューチャに促す。
「はい!」そう言うと剣を構えた。
後ろにいる火縄、紅蓮、ホープ、氷華もそれぞれ武器を構える。
エータスはフューチャに槍を振り下ろす。それに合わせて他の帝国兵もライダーやFJ軍兵に攻撃を仕掛ける。
フューチャは、エータスに剣を突く。そして、切り裂く。エータスはその攻撃を諸共せず、すぐに体勢を立て直す。
フューチャは、左腕に新たな武器を召喚する。
ホープの力を宿したボウガン、クロスホープの引き金を引きエータスに向ける。
エータスはその攻撃に一瞬隙を見せてしまう。
その間にもフューチャは右腕にウォーブレードを召喚する。左腕のクロスホープを収納し、代わりにフューチャリスティングを持つ。
[FUTUR fighting slash!]
翠色のエネルギーをまとった剣をエータス、そして周りの帝国兵に浴びせる。
それによってエータスは倒れ、帝国兵は一気に数を減らす。
「後処理は僕達に任せて、先に玉座へ。」ホープは、フューチャとバトルドに言う。
彼の後ろでは、残りの3人もそれぞれ攻撃し、帝国兵を倒す。
「分かりました。」フューチャとバトルドは4人を横目に走り出す。
「こっちだ。」バトルドは、先程帝国兵の1人から奪い取った鍵を取り出し、玉座に繋がる扉の前に立った。
「開けるぞ。」バトルドは鍵を解除してフューチャと共に玉座へと入っていく。
「僕達も敵を処理して急ごう。」ホープは3人に促した直後だった。
死んだ筈のエータスの身体が起き上がった。
「何が起きてやがる…」紅蓮はその不気味さに、理解が追いつかない。
その時、エータスの身体が変化を始める。エータスの身体はベルトに飲まれるように変化していく。それは徐々に大きくなり、1匹の巨大な黒き獣へと変化する。
「そんな、エータスの身体が…」氷華は言葉を失う。
「ベルトに飲まれた…?」火縄も目の前の出来事が現実のことだとは思えなかった。
「グォォァ!!!!」
エータスが変化した怪物、フォテュードは騎士の間で暴走を始めた。
「…とにかく、コイツを止めるぞ!」紅蓮はそう言って斧を構えた。
しかし、その紅蓮をフォテュードは左腕で吹き飛ばす。
「グォォァ!!!!」
彼は力の限り叫ぶ。
「ネメシス…いや、兄さん。今日ここで決着をつけよう。」
玉座の間に入ったフューチャは、少し高い場所にある玉座を見上げ、そこにいる人影に言う。
「よくここまできた…仮面ライダーよ。」
しかし、その声は多摩路秋夜ではなかった。
「何!」バトルド…康介にとってその声は聞いただけで嫌悪を感じさせる、巨悪と全く同じ声だった。
玉座を立ち上がり、その人物は彼らを見下した。
そこに居たのは、湯山玄武だった。
「玄武!何故ここにいる!」バトルドは声を荒げる。
「…ネメシスの代わりさ。奴には生き残って貰わねばならないからな、逃亡してもらっている。これも全て我が大望の為にな…」湯山はそう言う。
「まるで、ネメシスを利用しているみたいな言い方だな。」
「確かにな、仮面ライダーが滅亡寸前、まさに私が望んだ通りのシナリオ。さあ始めよう。今頃、君たちが置いてきた仲間もエータス最強の力で死にかけているだろう。そして選ばれたお前達は、私の手で骨の髄まで消し炭にしてやろう!」
そう言うと、湯山の身体が空に浮く。そして、その身体は徐々に変化していく。
茶色く濁った全身の鎧に身を包み、バッタの化物のようになる。背中には円を描くように翼が現れる。
かつてウォーズを苦しめた最強の敵、エンペラーホッパーが今、降臨する。
「…町田、コイツは俺に任せろ。」バトルドはそう言った。
「でも、こんなのを一人で…」
「そんな事はどうでもいい。コイツが企んでいる事、それだけは絶対に阻止しなければならない。それに、ここでネメシスを逃せば勝ち目はない。」
その言葉の答えを出すのには、時間がかかった。
「…分かりました、ここはお願いします。」
そう言うと、フューチャは右脚に装備を召喚する。それに合わせてバイクも召喚される。
ローディの力を宿したバイク、ライドローダーにフューチャは乗る。
そして、玉座の間にあるステンドグラスをぶち破り外へと飛び出す。
それを見届けたバトルドは、エンペラーホッパーに目を向ける。
「さて、因縁の対決と行こうか。」
「…実に楽しみだ。清宮一美が死んだ事で腑抜けになった貴様が、どれだけ成長したか。」
『これには、隠された機能がある。それは、蘭舞のベルトと共鳴した時に起こる。』
私の目の前には、死んだ筈の山田康介の姿があった。
彼の手には、フューチャが使っているヴァンガードライバーがあった。
そういえば、そんなことが…あった、な…
次に目を開いた時、そこには白い天井が見えた。
そういえば、私は死にかけていたのか。
あの時見つけた物は二つあった。一つは私を半殺しにしたエンペラーホッパー、もう一つは、土埃にまみれたレッドブルーマーだ。
恐らく、そこは元々ジョーカーの車庫だったのだろう。フューチャが乗っていたブルーモンスターの欠片のような物もあった。
「みんなに…追いつかないと…」私は、蘭舞のベルトを手にした。そして、レッドブルーマーを見つけた場所に戻り、それに乗る。
どうやら動くようだ。流石、最新技術で作られたバイクだ。
バイクのナビ部分には、何かが北に向かっているのが見えた。
「…一体誰が…とにかく、私も行かなければ!」
蘭舞スペリオルロードに変身した私は、バイクのスロットを回し走り出す。
「おい、こんな化物、どうするんだよ!」紅蓮は、フォテュードに殴られながら言う。
騎士の間で暴走するフォテュードに、4人は苦戦していた。
火縄は、剣を手にしてフォテュードに斬りかかる。
「グォォァ!!!!」
これもまた弾かれる。
「…純粋な力、それしかコイツからは感じない!」火縄は、倒れた身体を起こしながら言う。
「力か…ならこっちも力で勝負だ…」紅蓮は斧で体を支える。
「それだけじゃ無意味だ。攻撃する間がない…」氷華が言う。
「…だったら、僕が奴の攻撃を引きつける、その隙に攻撃を。」そう言ったのはホープだった。
「…そんな危険な真似、させるかよ。」紅蓮がホープの顔を見て言う。
「…部下を危険な目に合わせてる奴に、そんな事言わないでくださいよ。それに、そうするしか、勝つ道はない!」彼は、弓をブレードに変え、フォテュードに向かって走り出す。
「…しょうがない、やってやる!」紅蓮達は、武器を構える。
「はあっ!!」ホープは、フォテュードが振り下ろす右腕を避けると、そのまま奴の腕に乗り顔に向かって走り出す。
フォテュードは、ホープに釘付けになっていた。
「今だ!」ホープはそう叫んだ。しかし、それと同時にホープの身体は左腕で弾き飛ばされる。
ホープは地面に埋まるほどの力で叩きつけられた。
「いくぞ!」火縄の声に合わせて、3人は一斉に必殺技を発動させる。
[Frame direct burst!]
まず火縄が巨大な火柱をキャノンから発射、フォテュードの動きを止める。
[マウントサイス!][マウントガーディアン!]
「あらっ!」「はあっ!」そこへ炎の竜巻となった紅蓮と氷の竜巻となった氷華が、激突する。
二つの竜巻がフォテュードの身体を抉る。しかし、フォテュードはまだ倒れない。このままでは2人が負ける。
「ぐっ…こんなところで、倒れて居られるか!」
そこへ、ホープが立ち上がり、ブレードを構える。
[check!recover hard!]
ホープは、光の刃をフォテュードに押し付ける。
「グオッ…グァァ!!!!」その攻撃で、フォテュードは一瞬怯む。
しばらく力が均衡しあう。そして、4人のの攻撃は遂にフォテュードを打ち破る。
フォテュードは、攻撃が貫かれると同時に、爆発する。
最期の雄叫びが部屋に響き渡る。
全力を出し切った4人は変身が解ける。
「ぐっ…俺たち4人でこんだけ苦戦したんだ…今頃アイツらはもっとやばいだろ…助けにいくぞ。」片名は足を引きずりながら進もうとする。しかし、壁に横たわる清野の姿が見えた。
「どうしたんですか?」真田が彼に聞く。
「…ごめん、さっきので力出しすぎて…動けない。必ず追いつくから、先に行ってくれ…」清野は右手で腹部を抑えていた。
「…わかりました。必ず来てください。」国山が言う。そして、3人は、フューチャ達が向かった玉座の間へと向かう。
それを清野は見守ると、目を閉じた。
「僕は…
抑えている腹部からは、血が滲み出ていた。先程の攻撃で、致命傷を負っていた。
「…そんな訳、ないか…部下を危険な目に、合わせて…約束も、守れない…」
清野は、その目を二度と開く事はなかった。
次回、最終回 仮面伝説の終わり
仮面伝説シリーズをここまで読んでくれた方へ、最大限の感謝を込めて…