そして、彼らを束ねるジョーカーのCEO、ウォーズこと山田康介に最大の危機が迫る…
第7話 白夜総三を継ぐ者
暗闇に覆われた空が、少しずつ光を取り戻し始めた。
星の光は徐々に薄れ、太陽が水平線の向こう側から顔を出した。
その光を浴びながら、海浜公園をジョギングをする人影が見えた。逢坂有希だ。
彼女は、この公園で朝早くにジョギングをするのが好きだ。身体を優しく包み込むような潮風、気分を落ち着かせる磯の香り、自身を明るく照らす朝日。それらは、彼女にとって安らかで優しいものである。
彼女は、黒に赤いラインが入ったジャージを纏い、長い黒髪を後ろで縛っていた。
朝日がだいぶ登った頃、彼女は近くのベンチに座り、スポーツドリンクを片手に海を眺めながら休憩を始めた。
溜め息を吐き、普段誰にも見せないような爽やかな顔をしていた彼女に、この雰囲気に似合わない下衆な表情と気味の悪い装飾を身につけた3人の男達が近づいていた。
酒の匂いを漂わせていたため、彼女はその気配にすぐ気がついた。
「なぁ姉ちゃん、俺たちと遊ばないか?」
真ん中にいたガリガリで顔が逆三角形のような形をした男が聞く。
彼女は、「いいえ、結構です。」と断った。だが、彼らはその言葉程度で諦めることはない。
声をかけた男の隣にいた黒く日焼けした男が、彼女の座っているベンチの隣に座り、肩を触った。
「やめろ。」
そう冷たく振り払った。
だが、その行為が彼らの怒りを買ってしまった。
「なんだとテメェ…女の癖してふざけんなよ!」
日焼け男が、彼女をベンチから振り落とす。
彼女は唐突の攻撃で地面に倒れる。
その彼女に三人目の太った男が馬乗りになろうと近づいた。
彼女は立ち上がろうと足を動かすが、逆三角形男に捕まれていた。
「さぁ、今日は楽しませてもらうぜ…」
そう太った男が手を伸ばした。
「その辺でやめておけ。」
その時、後ろから別の男がその行為を辞めさせる声を上げた。
その男は、逢坂が知っている男だった。
「お前、何様だ。」
足を持っていた男が、その男に意識が逸れていた。
その隙を逢坂は見逃さなかった。
掴まれていた足を振り解き、立ち上がった。
そして、下衆どもを蹴り上げた。
その蹴りで目が覚めたのか、彼らは弱々しい足で逃げ出した。
逢坂はそれを追おうとしたが、男が止めた。
「…貴方がここに来るなんて珍しいですね。」
「たまたまだよ。有希。」
その男…山田康介は言った。
「…ありがとうございます。」
彼女は、目線は合わせなかったが、礼を述べた。
「別に俺は何もしてないよ。ただ、逃げ出せる隙を作ってあげただけだ。」
「確かに、貴方が変身前の状態でやり合ったら間違いなく返り討ちになりますからね。」
「今、サラッと酷いこと言ったな…まぁ事実だから否定しないけど。」
2人は、ある共通点があった。
それは、白夜総三を継ぐ者であること。
逢坂有希は、ある時まで白夜総三とは無縁であった。
彼女は、ある理由で虐待を受けていた。家を抜け出しボロボロで雨の中おぼつかない足を動かし歩いていたとき、彼女を気にかけたのが白夜総三だった。彼は彼女に病院を受診させ、受け入れ先のない彼女を家族のように迎え入れ、自分の子供のように短い間だったが、愛した。
彼女は、そんな彼のことを尊敬していた。自分に生きる価値をくれた事、生きる場所を与えてくれた事。だからこそ彼が遺した会社の戦士としここに立っている。
それが彼女が戦う理由の一つ。もう一つは…
「有希、町田とはどうだ?」
「町田…」
「まさか忘れてないよな。」
「それはないです。」
康介は、ふとコンビを組んでいる町田について聞いた。
「…まぁ、その感じから察するにあんまり関わってないみたいだな。コンビなんだから悩みくらい聞いてやれよ。」
「私に…そんなこと。」
有希は、下を向いた。こんな自分に、悩みを打ち明けるなんて…それも悩みなんて無さそうな彼が…そんな訳ないと言おうとした。
その時、2人の携帯からアラートが鳴り響く。2人は、目を合わせると、すぐさま現場へと向かう。
現場はここから程近い飲食店街だ。数体のホッパーは、手当たり次第に人を掴み上げ、何かを見定めるかのように睨みつける。掴み上げられた人間は、恐怖のあまり身体が動かない。
「またこいつらか…」
現場へと到着した2人は既にベルトを装着していた。康介はそう呟くと、ウォーズキーを構えた。
「「変身!!」」
[open!][Masked warrior!KAMEN RIDER WAR-Z!]
[荒ぶる華!今ここに!仮面ライダー蘭舞!]
ウォーズ、白夜総三の意思を受け継ぎ仮面ライダーへと変身した男。グリーンのボディが朝の太陽に照らされ光り輝く。
彼は武器の銃を構え、正確に一体のホッパーを貫いた。
急所を撃たれたホッパーは、バタンと地面に倒れた。
その音で、他のホッパー達もウォーズを見る。
しかし、そのホッパー達も後を追うように次から次へとドミノのように倒れていく。彼らの懐には槍を突き刺す蘭舞の姿があった。
「だいぶ手慣れてきたようだな。」
ホッパーの体液が付いた槍を振り払う蘭舞にウォーズは声をかける。
「訓練のお陰です。」
「そうか。」
すると、彼らの足元に、弾丸が放たれる。それらは火花をあげ、彼らの意識を向けさせた。
そこには改造体ホッパーともう1人、ウォーズにとっては長年の因縁の相手がいた。
「改造体…そしてあれは…」
「ネガウォーズ…」
錆びた鉄のような色合いのウォーズがそこにはいた。
「お前、今度は誰だ!」
その質問にネガウォーズは答えない。
「なら、その鎧を焼き払って顔を拝むまでだ!」
ウォーズは武器を剣に変え、ネガウォーズに迫る。
蘭舞も、再び槍を構えて改造体ホッパーに突き刺す。
右腕の生物的な腕を右肩まで串刺しにし、引き抜く。右腕の痛みに耐えられないホッパーは、悲鳴を上げる。しかし、そのホッパーに更に蘭舞の必殺キックが激突、悲鳴は炎の中へと消えていった。
ネガウォーズは、ウォーズと互角か、それ以上だった。
ウォーズが次出す剣先を見極め、それに対応するように剣を出す。まるで未来を見透すかのようなその攻撃に、ウォーズは完全に手も足も出ない状態だった。
「お前、何故俺の攻撃が読める?」
ウォーズは不意に聞く。
「…『俺』だからだ。」
ネガウォーズは、そう返すと剣をウォーズに向けた。
ウォーズもそれを防ぐべく剣を構える。
が、それよりも早く剣先がウォーズの喉元を貫いた。
ネガウォーズは、剣を振り払うと、「偽物か」と呟いた。
喉を切られたはずのウォーズは、ネガウォーズの後ろで、ふらふらになりながらも立っていた。
その後ろには更に蘭舞や遅れてやってきたフューチャとホープ達が立っている。
男は、ベルトから赤黒いキーを引き抜き、変身を解いた。
黒のフード付きの上着を被っている男は、こちらを向き、顔を見せつけるかのようにフードを取った。
そこには、彼にとって1番見覚えのある顔だった。
「そんな…まさか。」
蘭舞もその顔に驚き、硬直していた。
「俺…だと?」
俺…ウォーズの目の前にいた男は、紛れもなく山田康介だった。