「終末のサインを感じたお客様は、駅係員までお知らせください。事実であれば適切なお声掛けを致します。そうでなければ適切な手当てを致します。」
私は駅のホームで電車を待っていた。どういう訳か、自分が次に来た電車に飛び込み轢かれて死ぬような気がしていた。どう言う訳か、その思考が私の頭の中から離れなかった。私は自殺志願者なんかじゃない。この世での生を謳歌している。それでも、飛び込むんじゃないか、飛び込むんじゃないか。その思考が消えてくれない。誰に突き落とされるでもなく、自分でその1歩を踏み出して、電車に轢かれて死ぬ。自分で、自分の足を制御して、自分の意思で死ぬ。そんな事は嫌なのに、走り出し飛び込んで轢かれる自分が脳内にチラついて仕方がない。朦朧として、ホームに倒れ込んだ。
「これは終末ではありません。ご安心ください。次の電車が来れば、きっと気分も良くなるでしょう。」
そうして私はホームに寝込んでいた。係員に看られながら。しかし私は気が気でなかった。電車が来たら、係員どもを振り切って飛び込むんじゃないか。飛び込んでしまうんじゃないか。死にたくなんてないのに。係員の言葉は嘘で、本当は終末なのではないか。係員は飛び出す私を止めたりなどしないのではないか。
電車なんて数分に1回は来るハズだ。それなのに、電車を待ち続けて数十分は経過している。ただ私が混濁し時の流れが曖昧になっていただけで、1分も経ってないのであろうことは、何となく分かっていた。それでも、死に怯えながら過ごす数十分は酷いものだった。私は私の体がひしゃげる様子を幾度となく幻視し、その度にえもいわれぬ感覚を味わった。
夢だ。電車が来ないまま、いつの間にか覚めていた。目覚ましが鳴る2時間前だった。あの時電車が来て、そして飛び出していたら、本当は終末だったのではないか。とてもゾッとする。そんな事を寝惚けた頭で考えていた。
私はまた眠ろうとしたが、どうも目が冴えて終ぞ二度寝は叶わなかった。満足に眠れなかったこともあり、体には幾許かの気怠さを感じてしまう。
覚醒した頭で考える。終末とは何なのだろうか。終末というと、私よりもっと大きなものの最期であるように感じる。
私が死ぬことによる夢の世界の終焉が、終末なのだろうか。頭をひねりにひねったが、満足のいく答えは出なかった。
夢なんて整合性のないものだろう。夢の話を掘り下げても仕方がないか。そう思うことにする。