気が付くと、地元の小さなスーパーのゲームコーナーに居た。目の前にはカップルが居て、お世辞にも上手いとは言えなかったが、その音楽ゲームを楽しんでいた。プレイしていたのは全国チェーンの大型スーパーのテーマソングだった。耳にタコが出来るほど聴いたものだった。
食品コーナーへ向かい、1つのカップラーメンを買って出ていった。途中で鬼気迫った顔の店員がこちらに向かって来て怯えたが、自分のことを素通りしていった。さっきのカップルの所へ向かったようだ。
そうして今度は実家へと歩いて帰っている。道端には幾つもの英語の穴埋め問題。マンゴー。英訳するとbright。太陽の光を受け取り、その明るさを名前にまで取り込んでしまった。この問題だけは覚えていた。
家に着く。父のパソコンでリモートデスクトップ接続をした。何をしたのかは覚えていない。
今度は地元の大型ショッピング施設に向かった。中核店舗を中心に幾つかの専門店が並んでいるショッピングモールだ。行きつけのゲームセンターで遊ぼうと考えていたが、余りに人が多く辟易として向かいのもう1つのゲームセンターへ向かった。
美少女が画面の中で踊っているゲームが目に付くが、それをスルーして奥に向かう。
奥にはステージがあった。どうやらステージ上でプロジェクターを使ったゲームをしているらしい。妹とその友達がプレイしていて、父はその様子をカップうどんを食べながら見ていた。天井付近からステージに向かって映し出されたプロジェクターの光は薄く、何をやっているのか見づらかった。モニターがプロジェクターの近くにあり同じ内容が映されていたようだが、こちらも遠すぎて見えなかった。
プレイの様子をぼんやりと見ていると、プレイしないかと誘われた。ルールは始まれば分かるそうだ。チーム1と2に分かれており、チームによってステージ開始時の立ち位置が決まっていたようだが、私はチーム外の人間だったのでその間に立った。
ステージに立つとゲームが始まったが、音が小さく映像も薄いので何も分からない。そうしてしばらく戸惑っていると、突然映像がはっきりと映し出され、音もしっかりと聞こえるようになり、劇が始まった。これはアドベンチャーゲームなのだろうか?
主な登場人物は2人。幼馴染の男の子と女の子だ。男の子は貧乏神と呼ばれていた。ある時彼らの同級生達が、「この男の子に精神的な負荷を掛ければ、本物の神に昇華されるんじゃないか」と言って男の子を虐める計画を立てたらしい。その計画を知った女の子はその身代わりになった。そうして生まれた不完全な神は不死性だけを得たのだろうか、女の子は生き返ってはすぐ死ぬ事を繰り返したらしい。人外になってしまった事を示すかのように、その女の子の舌は妖しく紫に光っていた。
どこからともなく、声が聞こえてくる。
「何者_さん、何者_さん、何者_さん、……」
初め私はその名前を認識出来ず、ゲームの登場人物なのだろうと思っていた。何度もその声が聞こえ、それが私の名前だと認識した瞬間、ゲームが終わっていた。
ゲームは終わったのでステージを降りた。私の友人が2人そこで待っていて、その片方が携帯端末を通じてこのゲームの人物相関図を渡してくれた。
近づいて来た誰かが私に言う。
「明晰夢を見ている人は、夢だと分かっているからちょっと怖いことにも首を突っ込むことが出来るでしょう。ではそれが現実だったと途中で判明したらどうですか?
ええ、それは怖いことでしょう。私はその観点からホラーを研究しています。」
そして目が覚めた。
私の地元という現実を元にしたような夢だったせいで、明らかに現実と異なる点が目に付いた。
あの音楽ゲームには大型スーパーのテーマソングなんて収録されていない。実家への帰り道に英語の問題なんて落ちてない。マンゴーは英語でmangoだ。行きつけのゲームセンターは人で溢れる事なんてない。まして向かいにもう1つゲームセンターがある事もない。あのゲームでは美少女が画面の中で踊ることも無かったハズだ。
かなり色々な所を転々としたが、この夢の主題は何なのだろう。
幼馴染の話だろうか。私には虐めの経験はないので、私の実体験に基づいた話ではないのは確かだ。女の子はあの後どうなったのだろうか。
最後に誰かが話してきたことだろうか。あの話は私にとってだいぶ堪えるものだった。今も頭の片隅にこびりついている。
案外リモートデスクトップ接続の事かもしれない。大事な事ほど忘れているのは世の常だ。
夢なんて意味のないものだろう。夢の話を掘り下げても仕方がないか。そう思うことにする。