蟲使いと呪い   作:ハーコー

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面接

俺は、暗闇の中に1人で立っていた。

 

「ここは……どこだ……?おい!誰か居ないのか!!」

 

俺は必死に叫んだ。喉が痛くなっても、俺は叫び続けた。

 

しばらくすると、遥か遠くの方に僅かだが光が見えた。

 

「あそこから出れる……!」

 

俺は光を目指して走り出した。目を凝らすと、人影が見えた。

 

「……ッ!おい!待ってくれ!!」

 

暗闇の中を、僅かな光を頼りに走り続ける。

 

「おい!待てって!!」

 

息を弾ませながら走る。いくら呼びかけても、人影がはこちらを見ず、ただ進むだけ。振り返ることは一度もなかった。

 

「ハァ…ハァ……!待て!聞こえてないのか!!」

 

俺は走り、人影は歩いているのにも関わらず、その距離は何故か離れていく。

 

「待……て!待て……って……ッ」

 

ひたすら走っているので息が切れて来た。それでも諦めずに走り続けると、もう少しで手が届きそうになる。

 

「やっと追いついたぞ……!」

 

手を伸ばし、肩を掴もうとすると、突然何かが物凄い力で俺の首を掴んだ。

 

「カ…ハッ……!?」

 

首を掴まれ息が出来なくなり、バランスを崩すと、次々と俺の体を掴み始めた。手足といわず腰といわず背中といわず肩といわず頭といわず、あらゆる場所を掴まれ、地面に倒れる。

 

「……ッ、なん、だ……!?」

 

力を振り絞り、なんとか後ろを振り返る。

そこにいたのは、身体の皮膚が剥がれ、筋肉が剥き出しになり、目がくり抜かれたさながらゾンビの様なモノたちだった。ざっと数えただけでも20人近くはいる。

 

『いやだぁぁぁぁ』

 

『助けてぇぇぇぇ』

 

『誰かぁぁぁぁ』

 

『死にたくないぃぃぃぃ』

 

『ふざけるなぁぁぁぁ』

 

『やめてくれぇぇぇぇ』

 

『地獄に堕ちろぉぉぉぉ』

 

『呪ってやるぅぅぅぅ』

 

俺の体を掴んでいるモノたちは怨念に支配された様に、そういった呪詛を吐きながら俺の身体にまとわりついてくる。そして手で俺を掴み、爪を立てて引っ掻いたり、肉を抉ったり、力を込めて骨をあらぬ方向に折る。

 

「ぐ…あ…ぁぁ…!…っぐぅ、ッ……!」

 

激痛が体中を刺すように襲う。俺は必死に抵抗し、まとわりつくモノたちを振りほどく。だが、次から次へと湧いてくるモノたちに、次第に身動きが取れなくなっていく。

 

そこで俺は気がついた。

この異形のモノたちが吐く呪詛に覚えがあることに。

そして、彼らの顔に、見覚えがあることに。

 

よく耳を澄まし、よく顔を見る。

そして確信する。

彼らは全て、儀式で死んでいった親族達だった。

 

『死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネェェェェ!!!!!!』

 

『死ね』と呟きながら、親族達は俺を引きずり、闇へ飲み込もうとする。耳には、骨が折れる音、肉が引き千切れる音といった生々しい音が届き、全身に想像を絶する程の凄まじい激痛が走る。次第に、肉体が少しづつ無くなっていくのが分かった。

 

俺は必死に手を前に伸ばし、人影の足を掴んだ。

 

「助……け……」

 

人影が振り向く。

 

人影は、俺の兄だった。

 

「兄……さん……?」

 

「助けて、ねぇ……その声を聞かずに俺たちを見殺しにしたのはどこのどいつだよ」

 

そう言うと共に、兄さんの体が俺を掴んでいる親族達と同じ様に変わっていく。

 

「セイゼイ苦シメ、人殺シ」

 

そう言って、口を開ける。

巨大な口が迫ってくる。

俺はどうすることもできずに、頭を、喰われた。

 

─────────────────────────

 

ピピピピピピピピピピピピ!!!!!!

 

「………ッ!」

 

けたたましいアラーム音で目を覚まし、飛び起きる。

自分の部屋のベッドの上だ。

 

「……また、あの時の」

 

鮮明に脳裏に焼き付いた情景を思い浮かべ1人呟くと、スマホで時間を確認する。

 

「今は……6時…待ち合わせの時間まであと1時間か」

 

全然間に合うな。と思った瞬間、

 

「……ッ!」

 

吐き気が込み上げてくる。急いでトイレに向かい、

 

「お"う"え"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"」

 

と吐瀉物をぶちまける。

 

「ハァ…ハァ…」

 

吐瀉物を流し、リビングに着くと、リモコンを手に取りテレビを付ける。

朝のニュースを聞きながら朝食を作る。

まぁ、朝食と言っても、トースト2枚とコーンポタージュなんだけど。

 

「ごちそうさまでした」

 

朝食を食べ終えた俺は洗面所へ向かう。

歯を磨き、顔を洗う。2階へ戻り着替える。

諸々の支度を整え、時刻は6時50分。

 

「いってきます」

 

誰もいない家の中に向かってそう言い、俺は家を出た。

 

─────────────────────────

 

待ち合わせの場所に到着する。

 

「流石にまだ来てないよな」

 

時刻は7時。あの人はもうそろそろ来るだろう。

 

数分後。車が俺の前で止まる。

 

「ごめん、待った?」

 

車から出てきたのは、白髪で目隠しをし、身長190cmを超えるであろうやや日本人離れした男。目立つ。

 

「いや、別に。さ、早く行きましょうか」

 

男は笑みを浮かべ、

 

「やる気マンマンじゃん、棗」

 

と言った。この人は五条悟。最強と呼ばれ、呪術師と呼ばれる者達の頂点に立つ人。そして、俺の名前は露魅 棗(つゆみ なつめ)。15歳。これからとある学校に入学する。

 

「別に、そんなんじゃありませんよ。早く呪術を学びたいだけです」

 

「それがやる気マンマンって言うんだよ。さて、行こうか────“呪術高専”へ」

 

呪術高専とは、日本に僅か二校しか存在しない四年制の呪術教育機関の一つで、東京都の郊外に位置する学校のことだ。正式名称は『東京都立呪術高等専門学校』。私立の宗教系学校を装っているが、実際は都立で、公費で運営されているらしい。多くの呪術師が卒業後もここを拠点に活動しており、教育だけでなく任務の斡旋・サポートも行っている呪術界の要とも言うべき存在だ。そして、五条さんはそこの教師である。

 

会話を交わした後、俺と五条さんは車に乗る。

 

「伊地知、行っていいよ」

 

「分かりました。では、行きますよ」

 

眼鏡をかけた痩躯のサラリーマン風で、神経質そうな顔つきをしているこの人は伊地知潔高さん。こう言っては何だが、老け顔だ。しかし、意外にも実年齢は20代半ばで、五条さんより若い。

 

「あ、そうそう。着いたら先ず学長と面談ね。因みに面談に落ちると入学取り消しだから、頑張ってね」

 

「え?」

 

ちょっと待って欲しい……入学、取り消し?

 

つまり。面接に落ちれば、露魅家への復讐が出来なくなる。それだけではない。今まで自分なりに磨いて技術や、それにかけた時間、労力、努力の全てがまた無駄になる。

 

「そんなの、聞いてませんけど」

 

「ごめん、言ってなかった」

 

殴りたい。それでも教師かこの人。

 

「ほらほら、呪力漏れてるよ。落ち着いて」

 

五条さんに本気で殺意が沸いた。伊地知さんが震えていて可哀想だった。

 

 

「お、着いた着いた。荷物は車の中でいいよ、こっからは僕が1人で案内するから」

 

着いた場所は学校というか……なんか、山の中に無理矢理神社を詰め込んだという感じだった。

 

聞いていた通りの宗教中心なのかと関心したが、五条さん曰くハリボテらしい。

 

「こっからは歩いて向かうからね」

 

玉砂利の敷地を進み石畳みを歩くと神社の様な所に辿り着いた。

 

「学長はこの中にいるよ。五条悟でーす!新入生連れてきました!」

 

ノックもなく堂々と入る五条さん。ノックぐらいしたらいいと思うんだけど。中に入ると、まさに本堂と言った場所で幾つもの蝋燭に照らされた空間が広がっていた。

 

そして、奥には刈上げ頭で顎髭を蓄え、サングラスを掛けた、パッと見は……何と言うか、ヤから始まる名前の職業の人のような強面の男性がいた。そして何よりも目を引いたのは、制作中と思われる縫いぐるみ。恐らく手作りだろう。

 

……ギャップって、こんなことを言うのか。デザインはともかくとして、完成度が高い。やっぱり、呪術師は変人しか居ないらしい。

 

「遅いぞ。10分の遅刻だ」

 

「だってさ」

 

「お前に言っているんだ、悟」

 

イケボだな。ダンディな声。

そんなことを考えていると、声を掛けられる。

 

「さて、君が露魅棗君だな。俺はこの都立呪術高専の学長、夜蛾正道だ。早速聞こう、君は何故呪術師を目指す?」

 

態度が変わった。サングラス越しに此方を見ながら、シリアスなトーン問い掛けてくる。

どうやら、もう面接は始まっているらしい。

 

「高みでふんぞり返ってる奴らを引きずりおろす」

 

1歩前に出て、本心を少し隠して目的を言ってみる。

 

「嘘であって嘘ではないな。ふむ、もっと正確に言ってみろ」

 

バレてるな。仕方ない、言うか。

 

「高みの見物を決め込んでる露魅家の奴らに復讐する。

そして玉座から引きずり下ろして、露魅家を変える。これが本音です」

 

「…復讐とは幼稚だな。だが、そういう確固たる信念があるのは気に入った。君を歓迎しよう。ようこそ、呪術高専へ。悟、露魅君に寮を案内してやれ。」

 

あれ、これだけなのか。もっと厳しいと思ってた。

まぁとにかく、これで復讐への第一歩ってワケだ。

 

「合格おめでとう棗!じゃ、次は寮に案内するから。荷物は後で伊地知に届けさせるよ」

 

………伊地知さん、苦労人だな。

というか、ココ本当に大丈夫なのか?自分で言うのもまぁ何だけど……結構危険思想だと思うんだけど。

 

「面接って、アレだけで大丈夫なんですか?人手不足って言うのは噂通りらしいですね。というか、あの回答で合格って…深刻な人手不足ですね」

 

「うん、本当に人手不足。ま、僕の推薦だから落ちること無いんだけどね。それに、もし君が呪詛師になっても僕がいるからね。道を外れるつもりなら精々気をつけた方がいいよ」

 

呪詛師って……。流石にそこまでは腐ってないんだけどな。

というか。

 

「随分、自信があるみたいですね」

 

「あるよ?だって僕、最強だから。あ、なんなら、寮に案内する前に君の術式の把握も兼ねて少し遊んであげようか?大丈夫、手加減はするから」

 

…別にそういうの求めてないんですけど……最強とかそういう称号に興味ないし……

あ、でもこれがキッカケで強くなれるかもだし。

 

けど。

さっきの面接の件も含めて色々とイライラしてるし。

本気で殺意湧いてたし。

 

この人に一発入れられれば、さぞスッキリするだろうな。

 

「じゃあ、宜しくお願いします」




色々と詰め込みすぎたと思う。
反省。
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