俺達は伊地知さんの車に乗って廃墟に来た。
廃墟……寂れたビルだ。呪いがウジャウジャ居そうな所だな。
「此処に肝試しに来た高校生5人が行方不明になってる。すぐそこに墓地もあるから確実に呪霊の仕業。なので、君達に呪霊を祓って貰います!じゃ、伊地知、帳下ろして」
「分かりました。『闇より出でて闇より黒く その穢れを禊き祓え』」
五条さんの説明の後、帳が下ろされ夜になっていく。
「よし、行こう」
俺達は廃墟の中に入っていった。
取り敢えず中を見渡す。二手に別れるか。
「二手に別れようと思うんだけど、どう?」
「賛成」
「しゃけ」
「いいと思うぞ」
全員納得したのでペアに別れ、呪霊を探し始めた。
俺・狗巻ペアは1、2階、真希・パンダペアは3、4階を探す事になった。
少し進むと、呪霊が現れた。
俺が呪蟲を出そうとすると、後ろから
「『潰れろ』」
という声が聞こえた直後、呪霊が潰れた。
狗巻の方を見ると、右手でグッドマークを作ってた。
これが呪言……凄いな。
ドゴォン!ドゴォン!
感心していると、2階の天井を壊して呪霊が出てくる。ダイナミック。
数は10体程。いや多くね?
どうするべきか迷っていると、
「『動くな』」
と狗巻が発した。そして呪霊共の動きが止まる。それを逃さず、
「緑蟷螂、斬っていいぞ」
緑蟷螂が呪霊を斬る。今の、なかなかのコンビネーションだよな。
そんなことは置いといて。
「生存者を探そう」
「しゃけ」
1階を散策していると、左腕と下半身が無くなっている男の遺体と、人間だったであろう肉塊を見つけた。呪霊に殺されたのだろう。
「……ッ」
黙って手を合わせる。
そのまま2階に行き、1階と同じ様に捜索した。が、遺体は見つからなかった。
「狗巻、どうする?」
と聞くと、
「高菜」
と言って上を指差した。
真希達のところに行けって事だな。
「了解」
そう言って3階に向かおうとした瞬間、何かが後ろに落ちてきた。
振り向くと、真希とパンダだった。
「なっ……!?」
驚いたのも束の間、上から人型の呪霊が降って来た。
「なっ……!」
待て。こんなのがいるとか聞いてない。恐らく一級ぐらいはある。
「『ぶっとべ』」
狗巻がそう言った。が、呪言が効いていない。ゴフッ、と狗巻が吐血する。
恐らく呪言を使い過ぎたのだろう。呪霊が狗巻を殴り飛ばす。続け様にこちらを殴ろうとしてきたので
「藍鍬形!」
事前に作っておいた藍鍬形を呼び、ガードする。
恐らく一級。ということは祓える可能性はゼロじゃない。大いにある。
が、問題は残りの呪力の量……呪蟲のコントロールがゴミなおかげで残りの呪力が少ない。しかも緑蟷螂を出しっぱなしにしてた。この残り少ない呪力でどう祓う?
……考えててもどうにもならないな。取り敢えずは足掻けるだけ足掻く。
「行くぞ」
緑蟷螂、藍鍬形両方を操りながら呪力を纏わせた拳を振るう。
全く効いてないが、攻撃し続ければいつかは効く。
殴り、斬り、挟み、殴り……を繰り返した。流石に疲労してきたのか、攻撃の手が少し弱まる。
「が…はっ……!」
その隙を突かれ、反撃を食らう。上に殴り飛ばされ、天井を突き破って4階に転がる。
「ぐ……っ!」
立ち上がろうとしたが、いつの間にか背後にいた呪霊に足を掴まれ、為す術なく振り回され、壁に向かって投げ飛ばされる。
「…っ……!」
ボロボロになりながらも尚呪蟲を作ろうとする。
虫切れかつ呪力が練れない。視界もぼやけてきた。
こんな所で死ねるか。俺はまだ、アイツらへの復讐をして……
「…ッフッフッフッ……アッハッハッハッハッ!アッハハハハッ!!」
“復讐をしていない”?そんな理由で?こんな所で死ねるかと思ったのか。
馬鹿か。ロクに呪蟲を操れず、「攻撃し続ければいつかは効く筈」と無駄な攻撃をし、ただでさえ少ない呪力をすり減らした。
そんな馬鹿が“復讐”?阿呆らしいにも程がある。
「やめだ」
両手を上げ、降参のポーズをとる。
「今持ってるモン全て吐き出せ」
「具体的なモンは後回し」
「呪力を練ったそばから押し出せ」
「先の事なんて考えるな」
「今は ただ」
「“作る”事だけを考えろ」
そう呟くと、
「来い」
と言うと、緑蟷螂が現れる。
ハハッ、やりゃ出来んじゃねぇか俺。わざわざ虫を媒体にする必要なんざねぇんだ。呪力から作れば良いんだよ。そんな簡単な事、何で今まで思いつかなかったんだ。
「斬れ」
と言った瞬間、呪霊の腕がポトリと落ちる。
呪霊が腕に気を取られている内に殴る。吹っ飛ぶ隙も与えず殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。
ただひたすらに殴る。
「アハハハハハハハハ!!!」
笑いながら殴る。
そして、
「オラァァッ!!」
呪霊が外まで吹っ飛ぶ。
殴った瞬間、空間が歪み、呪力が黒く光った。
「黒閃」を出した。
黒閃とは、打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した際に生じる空間の歪み。
威力は平均で通常の2.5乗。
狙って出せる術師は存在しない。
動きが遅く見える。
何でもできる様な全能感。
もう一度、キメられる。
「もういっちょォ!!」
外に吹っ飛ばされた呪霊にもう一度黒閃を叩き込む。
もう一度やれる。
「トドメだァッ!」
呪霊の顔面に叩き込んだ。
「黒閃をキメたんだね、棗」
下で待機していた五条さんが話しかけてくる。
「…五条、さん。上に、真希、達が……」
俺はそのまま気を失った。
棗は呪力で呪蟲を作れるようになり、黒閃も出しました。
強くない?(自分で書いたんだろ)