目を覚ますと、木製の天井が飛び込んで来た。
なんかエ〇ァにこんなんあったよな。『見知らぬ、天井』じゃん。
いや、そんなこと考えてる場合じゃ無いな。とりあえず起きよう。
「…!」
体が少し痛む。あれ、俺こんなダメージ少なかったか?まぁ起き上がれたからいいけどさ。
パッと見、医務室って感じだな。おそらく高専の医務室だろうな。そんなことを考えていると、扉が開く。
「おっ。目、覚ましたんだね」
入って来たのは五条さんと、長い髪に濃い隈、右目の近くに泣きぼくろを持つ気怠げな雰囲気の女性だった。確か、家入さんだったっけな。
それはともかく、真希達は無事なのだろうか。
「五条さん、真希達は?」
「大丈夫だよ、問題はない」
良かった。あ、あと言う事があったな。
「呪力で蟲を創れる様になりました。あと、黒閃も。そのおかげで呪力の核心に近付いたというか……」
「そこまで出来たなら上出来だよ。やっぱ棗は僕と同じ位強くなれるよ」
褒められた。別に嬉しくはない。
だけど五条さんの言う通りだ。現時点での俺の課題2つ……『呪力をコントロールし、虫の動きの無駄を無くす』、『使う呪力の量を調節し、呪力切れを起こさない様にする』の両方を黒閃を発動した事でものの見事に達成できた。
しかし、先程から疑問に思っている事がある。
「ところで、体が軽いんですけど。反転術式って他人に使えましたっけ?」
そう。俺は任務で重傷を負った筈だ。しかし実際には重傷のじの字もない。反転術式だとは思うが、せいぜい自分の傷を癒すのが精一杯の筈だ。もしかすると、家入さんか?
「それは私がやった」
俺の問いに家入さんが答える。
「えっと…家入さん、でしたっけ」
「家入硝子よ。よろしく」
「硝子は呪術高専東京校所属の医師で、反転術式による傷の治療が出来る数少ない人物なんだよ。硝子は学生時代から使いこなせてて、他人の傷も癒せるんだ」
にわかには信じ難いが、どうやら予測通り反転術式を他人に使えるらしい。凄いな家入さん。
「……で、五条さん。何の用があってここに来たんですか?」
「あ、そうそう棗。渡したい物があるんだ」
そう言って手渡されたのは、黒い鞘に収まった1本の刀だった。
「これは……」
「それは特級呪具『
「でも、何で俺に?」
「ほら、この前手合わせしたじゃん?その時思ったんだけど、棗って接近戦に弱いっぽかったから、助けになればと思って」
接近戦に弱い…か。確かにそうだな。いくら蟲がいるとはいえ、破壊されれば距離を詰められる。そうなればもう詰みだ。
しかし、思わぬサプライズだな。ただの呪具ではなく特級呪具ときた。
「術式効果は?」
「よくぞ聞いてくれました!斬喰の術式効果は『斬ったモノの呪力を吸い、斬れ味を上昇させる』というものなんだ」
流石は特級呪具。術式効果も強力だな。1度使って試したいな。まぁ、そう上手く行く訳はないだろうけど。
「あ、1回試してみる?」
……上手く行ったわ。タイミング良すぎだろ。
まさか見越してた……なんて事はないか。
「…あの、俺一応は病み上がりなんですけど」
「大丈夫大丈夫!今回のはイージーだから」
嘘臭い。まぁ、試す分には丁度良いかもな。
「で、俺は何処に行けば?」
「町外れの廃校だよ。呪霊がうろついてるらしい」
町外れか。うろついてるって言っても三、四級あたりだろう。
そう思いながら制服を着る。
「分かってると思うけど、くれぐれも無茶はしない様に」
「分かってます」
無茶をするな、と念を押す家入さんに返答してから医務室を後にした。
廃校前。予想通り伊地知さんが送ってくれた。
「ありがとうございます。すぐ終わるのでここで待ってて下さい」
帳まで降ろしてくれた伊地知さんに礼を言って、俺は廃校に入った。
入るなり呪霊に襲われる。すかさず斬喰で呪霊を斬る────
が、全く斬れない。
…何だコレ。鈍か?五条さん、癖のある呪具持ってきたなぁ……
呪霊は全く聞いていないという様子で襲いかかってくる。そりゃそうだよな、と思いながらもう一度斬る。
──ん?
少しだけ、斬れ味が増した気がした。
気のせいかと思いもう一度斬ると、やはり先程より斬れ味が増していた。
「そういうことか…」
五条さんは『斬ったモノの呪力を吸い、斬れ味を上昇させる』とだけ言っていたが…何も初めから斬れるとは言っていなかった。
つまり、『初めは鈍だが、斬れば斬る程呪力を吸い斬れ味を上昇させる』という事だ。
「しかし、五条さんもこんなじゃじゃ馬、一体どこで見つけたんだか……」
一振りして呪霊を祓う。
よし、いいウォーミングアップになったな。
「やるか」
1人呟き、廃校内を駆ける。
──十数分後。俺は廃校内の呪霊を全て祓い終え、高専に戻っていた。
「おかえり棗。どうだった?」
五条さんがニコニコと笑みを浮かべてどうだったかを聞いてくる。
人の気も知らないで……!
「コレ、とんでもないじゃじゃ馬じゃないですか。最初は斬れないとか、聞いてないですよ」
「あれ、言ってなかったっけ?」
わざとらしい笑みを浮かべる五条さん。
正直、物凄く殴りたい。無限で防がれるけど。
「まぁでも、これで接近戦が多少は楽になりますね」
呪具という思わぬギフトのおかげで、接近戦にも対応できる様になったからな。そこだけは五条さんに感謝だ。
次回から乙骨先輩出そうかなって思案中。
しかし0巻持ってないからセリフが分からん。適当でいいのだろうか……
オリジナル呪具
『斬喰』
見た目は普通の日本刀。
術式効果は呪力を持ったものを斬るとその呪力を吸収し、斬れ味に変えるというもの。
なので八十八橋の特級呪霊が撃ったようなビームっぽいのでも斬れば斬れ味が上がる。