ほとんどノリで書きました。
気を引き締め、緑蟷螂を顕現させながら山に一歩入った瞬間。
「ッ!!!」
膨大な呪力を頭上に感知し、上を見上げる。
そこには、弾丸の雨があった。
「
即座に緑蟷螂を消し、人より一回り大きい蜘蛛を顕現させる。紫蜘蛛は粘着力が非常に高い糸を出せる蟲。こういう時に便利だ。
紫蜘蛛が糸で弾丸を絡め取り、難を逃れた所で一息つく。
「これはキツそうだな」
はっきり言って厄介。術式は、呪力で弾丸を作り出すといったものだろう。
ふと上を向くと、既に百を越えるであろう弾丸が雨の様に降り続けており、紫蜘蛛が片っ端から必死で絡め取っている。
完全に殺しにかかってるな。どうやら向こうは呪術師だということに気付いてるらしい。
チラリと後ろを見ると、五条さんはいつも通りの余裕そうな態度で木に寄りかかっている。
五条さんの周りには弾丸が降り注いでいない事から、どうやら範囲はこの山限定らしい。
本物ではないと分かっているが、試しに斬喰で斬ってみる。しかし、斬った瞬間に霧散していく。
「やっぱ呪力で作ってるのか。だったら……」
紫蜘蛛を消し、素早く木の後ろに隠れる。
「来い、
人間より一回り程大きな蠍を顕現させる。赤蠍は硬い皮膚に加え、素早く移動することが可能な蟲。
少し聞こえは悪いが、赤蠍を盾にし、弾丸を斬って斬喰の斬れ味を上げながら、そのまま呪霊を叩く。
「悪いけど、少し耐えてくれ」
赤蠍が俺の意思を汲み、斬喰を振れる程度に尻尾で俺を包む。
「行くぞ」
と声を掛けると、勢い良く駆け出して山頂を目指し始めた。
残穢の濃さから、呪霊は山頂に居るということは分かっている。
弾丸は尽く斬喰に斬られている。
斬れ味が上昇した斬喰で周囲の弾丸を斬り山頂へ進むと、黒い物体が現れた。
呪霊はアレか。
山頂にいたのは黒い毛皮で覆われた巨大な熊だった。
四足で歩行している姿に最初は野生の熊かと思ったが、右腕の猟銃を見て呪霊だと理解する。
『ニン、ゲン!!コロス、コロス、ウツ、コロス!!!』
支離滅裂だが、言葉にはなっている。右腕に猟銃があるのはやはり猟師への恐れだろうか。
呪力量、姿、術式、知性。どれをとっても到底二級とは思えない。
赤蠍の顕現を解除し、今までの勢いのまま熊に突っ込み、斬喰を振り下ろす。が、躱される。
見かけによらず素早いのか、背後に回り込まれ、右腕の猟銃から弾丸が放たれる。
「っ!」
斬喰で弾くが、その衝撃で斬喰が吹っ飛ぶ。
さっきまでの弾丸とは大違いだ。込める呪力の量によって威力が変わるのか、と考えていると、熊の拳が眼前に迫ってきていた。
「!」
ギリギリで避ける。
「接近戦も得意ですよってか。面白い、来いよ!!!」
『ヒト、コロス!』
俺の拳と熊の拳とが激突する。僅かに俺の方が押し勝ち、熊が少しだけ仰け反る。
その隙を見逃さず、頭を掴み膝蹴りを食らわせる。すかさず踵落としを脳天へ叩き込む。
瞬間、黒閃を発動したあの時の映像が一瞬だけよぎる。
が、しかし。その映像は、殴られた痛みによりかき消された。
左ストレート。辛うじて左腕でガードしたが、骨が折れる音がした。
痛みに顔をしかめていると、ある事に気付く。
熊に、山全体から呪力が
『コロス、コロス、コロス!!!!』
なるほど。術式を解除して、呪力による身体強化を行うつもりか。一級呪霊との肉弾戦……最悪だ。
メキメキと音を立てながら、熊の体が変質していく。腕や胴体、足はより太く。右腕はアンバランスな程大きく。爪や牙は伸びてより鋭く、より凶悪に。更には山全体に張り巡らせた呪力を吸収し、元の姿以上の大きさへ。
『コロス!!!!』
「デカくなったから強くなったぞ…ってか。あとお前殺すしか喋れないのか?」
と軽口を叩いた次の瞬間。俺は地面に倒れ伏していた。
熊に叩き付けられたと理解する。痛い。
体勢を立て直す暇もなく、跳躍した熊に真上から叩き潰される。そして、ここぞとばかりに追撃の拳を叩き込み続ける。
「はっ、その程度か!?」
全身に痛みが走るが、全身を呪力で覆っていた為、ダメージとしてはそれ程重くない。向かってくる拳を掴み、無理矢理逸らし脱出する。急いで距離を取ろうとするが、無防備な脇腹に殴打が入る。
「ぐ…っ…!」
大きく吹っ飛び、木に叩き付けられる。急いで体制を立て直そうとしたが、追撃として空中に吹っ飛ばされる。跳躍し両腕を振り上げた熊を見て、感じた事。
あぁ、俺、ここで死ぬのか。
──否。
思考を振り払う。
まだ死んでない、骨が何本か折れたがまだ反撃の余地はある、と頭を回転させる。
何をする?何をすれば祓える?
呪蟲か?いや、今では呪力のコントロールが上手くいかない。出した瞬間消されるのがオチだ。
ならば接近戦か?いや、今ではそれ程威力が出ない。
ならば、残る手段は──
と、今度は鮮明に、ハッキリと黒閃を発動した時の映像がよぎる。
───黒閃のみ!!
拳に呪力を込める。
宙返りをし、振り下ろされた熊の拳を足で受け衝撃を吸収し、着地する。
狙うは1点。落ちてきた熊の、隙だらけの胸。
外したら死ぬ、という緊張感が集中力を更に上げる。
そして────
黒 閃
拳が放たれた瞬間、黒い火花が散った。
衝撃を殺し切れなかったのか、両腕がちぎれた熊が吹っ飛ぶ。
あの時と同じ。
動きが遅く見える。
何でもできる様な全能感。
もう2発はいけるかな。
既にダウンしかけている熊との距離を詰め、もう1発。
右膝蹴りがヒットした。
『グオォォォォォォォォォァァァァ!!!!』
激昂か痛みか、雄叫びを挙げる熊。
こちとらお前にボコされたせいで頭痛いんだよ黙ってろ。
「うるせぇ」
と一言放ち、顔面にドロップキックを放つ。
よし、また3連チャン。
熊の頭がちぎれ飛び、木にぶつかって木っ端微塵になる。
うわぁ、グロい。
兎にも角にも昇格任務は完了だ。おそらく、問題なく1級に昇格できるだろう。
山を下り麓に戻ると、五条さんが暇そうに待っていたので報告する。
「終わりました」
一言。疲れてるからもう体力消費したくない。
「お疲れサマンサ~!じゃ、帰ろっか」
そうして俺たちは、北海道を後にした。
……あ、お土産買ってくれば良かった。
オリジナル呪霊
熊の呪霊
主に熊が起こす獣害に対する恐れと、猟銃に対する恐れが合わさって生まれた呪霊。右腕に猟銃が付いている。
術式は呪力で弾丸を作り出すというもの。込める呪力の量によって威力が変り、多ければ多いほど威力が増す。また、呪力の量が多いと作れる弾丸が少なくなり、少ないと多く作れる。
今も獣害に対する恐れが積み重なっている為、強大な呪力を得ていた。成長次第では特級になっていたと思われる。